新社屋をVRでシミュレーション?様々な機器の代替をVRが行う実用例も明らかになった 「NVIDIA PRO VR DAY 2017」レポート


NVIDIAは、1月26日、東京・秋葉原において産業界での VR 導入を支援することを目的とした、「NVIDIA PRO VR DAY 2017」の開催を行った。最初のセッションでは、NVIDIAのバイスプレジデントのボブ・ペティ氏が登壇。VRを使ったプロフェッショナルでの実用例を語ってくれた。

本稿ではそんなセッションのレポートを行う。


■VRの大きなチャンスはどこにある?ボブ氏が語る、プロフェッショナルVRの活用方法とは

 
▲NVIDIAのバイスプレジデントである、ボブ・ペティ氏

5年前であればSFの世界。2年前だと、何年も先だと言われていたバーチャル・リアリティは、もうこの世界にあると語るボブ氏。VR/ARは2025年までに800億ドル(約9兆円)規模の市場になると予想されており、そのうちの10%がパーソナルエンタテイメントの領域になるであろうというのが、多くのアナリストの共通認識であるという。

つまり700億ドル(8兆円)がビジネス分野のVRになるということだ。では、VRの大きなチャンスはどこにあるだろう?

ボブ氏は、製品デザインと建築であると考えており、また作る分野での活用というよりもマーケティングの分野において大きなチャンスがあるのではないかと語った。
 

 
さらに「私見ではあるが」と前置いた上で、VRのフィーチャーにおいて重要なことは、それぞれ別の都市にいながら、同じ場所で話しているような体験ができるコラボレーションではないかと続ける。ボブ氏自身もこういった研究を行っているということだ。

またVR業界での大きな転換としてあげたのは、2014年3月のFACEBOOKによる20億ドル(当時、約2000億円)でのOculusの買収。この出来事が大きな変化を産み、シリコンバレーの人がVRやARに目覚めたと言い、この影響で開発時間がかなり短くなったと説明した。

 
■気になるプロユースの実例とは
 

プロユースでのNVIDIAの活用も紹介された。日産で活用されている例として、メンテナンスを教える場合や、エンジンの構成などを教える際などの事例を挙げた。こういった作業で車の内部を見るにあたって内容を忠実に再現する必要がある。実際と寸分違わぬ状態で検証する必要がある人たちにとっては、ポリゴンだからを理由にボルトの1つ1つまでなくしていいものはないと語った。

またコラボレーションを使った実例も紹介。同じ空間に複数人が集まり、シンガポールの街中に高層ビルを建設した際に、景観がどうなるか、交通の流れがどうなるか、洪水が発生した際に何が起こるか、といった話をするといったものだ。

グラフィカルなバーチャルリアリティを用い、それを同じ仮想空間上で3Dモデルで動的に確認しながらの方が、より濃いディスカッションをしやすいのは間違いない。
 

更に、もう図面を起こさず、フォトリアリスティックなバーチャルリアリティの中で製品のデザインをしていく。そういった空間の中で製品が進化していく、という世界が来る可能性も示唆した。

昨年、NVIDIAは光や物体の物理的挙動をシミュレーションしながらフォトリアリスティックな画像を生み出すIRAYを公開した。同氏曰く、CADで作った物をスタイリングし、作る、といった一連のサイクルを、設計の時から最終製品の形をVR上で見ることができ、設計のサイクルなどを非常に短くできるようになったという。

同社は現在シリコンバレーに新社屋を建設しており、NVIDIA Iray を使い、ビル全体のシミュレーションしている。図面や窓、カーペットなどの材質データをすべて入力し、写真に匹敵する高画質のイメージを制作。Iray を使うことにより、太陽光がどのように差し込むのかを長期に渡って検証することができ、ワークスペース約 6 平方メートルごとに暑すぎるスポットがないかなどの確認も行っているとのことだ。

CEOであるJen-Hsun Huang氏は、ほぼ毎日VR上で、建設中のオフィス内を見渡しては、色や照明を変えたいといった要望を出していると、ボブ氏は語った。


NVIDIA PRO DAYでの語られた実用例は、より現実に近い状態でのシミュレーションを行うことで、やり直しなどの工数を削減、目標をよりよい形で達成する為の手段として非常に大きな解決方法になるのは間違いなさそうだ。

VRが様々な機器の代替えとして機能する範囲は将来かなりの数となっていくだろう。同社の製品がどういった形で使用されていき、日常を変えていくのか非常に楽しみなセッションとなった。



 
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