【サイバーエージェント決算説明会⑤】注力分野AbemaTVへの投資継続、2Qは"正常運転"に 中長期保有の株主に報いる施策も



サイバーエージェント<4751>は、1月26日、2017年9月期の第1四半期(10~12月)の決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した連結決算は、売上高が前年同期比16.9%増と865億円と増収ととなったものの、営業利益が同51.1%減の63億円、経常利益が同53.7%減の59億円、最終利益が同77.6%減の13億円と大幅な減益での着地となった。

決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「計画どおりに推移した。今期は「AbemaTV」に200億円の投資を行うと説明したが、全体の4分の1に当たる50億円を投資した」と振り返った。AbemaTVは、プロモーションを行った結果、ダウンロード数とアクティブユーザー数ともに大きく伸びた。引き続きコンテンツの調達と、連休などに合わせたプロモーションの強化を行い、引き続き拡大に注力する。

かねてより、藤田社長は、「新規事業に入る際、大規模な買収は行わず、自分たちで種を撒いて育てている。現在、数年前に仕込んでいた事業が収穫期を迎えて売上を伸ばしている」と説明していたが、AbemaTVも同様の展開を狙う。ユーザー数の伸びに加え、オンデマンドで番組配信を行う「Abemaビデオ」の準備も行っており、収益化に向けた準備が整いつつあるようだ。決算説明会では、AbemaTVに多くの時間を割いたが、会場からの質問もそこに集中した。

 


また、新たな経営指標として、DOE(配当性向×ROE)5%以上を目安とすることも明らかにした。自前で新規事業を育成しているため、先行投資期間と回収期間があり、業績面でのボラティリティが大きくなり、結果として株価の変動性も大きくなる。そこで一種の株価の下支え策といえるものだが、藤田社長はその意図について、「中長期で応援していただける株主に応えるため、この水準を下回るようであれば機動的に手持ちの現金を使って、自社株買いを行うか、もしくは配当を増やすことで対応したい」とコメントした。

 



セグメント別の状況に入る前に、第1四半期の決算の状況を見ていこう。

その前に、前の四半期(16年7~9月期)の状況をおさらいをしておこう。売上高はQonQで12.1%増で856億円、営業利益が同49.3%減の42億円となり、四半期ベースでは過去最高の売上高となったが、大幅な減益となった。スマートフォンゲーム事業が順調に拡大したが、4月11日に開局した「AbemaTV」への先行投資と、決算賞与が響いた格好だ。

続くこの四半期(16年10~12月期)は、売上高がQonQで1.1%増の865億円とほぼ横ばいだが、過去最高を更新した。営業利益は同50.5%増の63億円と大きく伸びた。最も大きな要因は、前四半期に計上された決算賞与が計上されなかったことによる。給与改定に伴う人件費とその他(業務委託費)が増加し、広告宣伝費は91億円と減少した。

 


続いてセグメント別の状況を見ていこう。
 
インターネット広告事業

売上高がQonQ1.6%増の487億円、営業利益が同10.0%増の47億円といずれも四半期ベースでは過去最高を更新した。「第1四半期は例年、良い時期ではないが、好調に推移した」(藤田社長)。スマホ広告市場の拡大とともに売上を伸ばしているという。「スマホに早めにシフトした強み」を活かし、2017年でもさらに実需を取り込み、シェアと売上を増やしていく考え。特に期待分野は、インフィード広告と動画広告だという。
 


 
ゲーム事業

売上高が横ばいの346億円、営業利益が同14.1%減の64億円とQonQで減益となった。営業利益が2ケタ%の減となったが、AbemaTVと同様、年末年始に合わせて「かなり広告費を使った」ため。売上は底堅く推移しているという。第2四半期以降、広告宣伝費は通常運転に戻るため、売上をキープできれば、営業利益は増加に転じることが見込まれる、とした。

 


広告宣伝費を使った割に売上が伸びてないのでは、という質問に対して、藤田社長は「年末年始は同業他社が広告宣伝費を増やす時期なので、以前ほど伸びなくなった。また、『シャドウバース』のプロモーション活動のように、売上よりも、ユーザー数を増やすような広告宣伝に力を入れたことも大きな要因だった」と回答した。

新作は6本リリースする計画。Cygames作品に加え、Craft Eggとブシロードの『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(今春予定)に期待を示した。同タイトルは1月1日より事前登録を開始したが、1ヶ月弱で20万人を突破した。さらに「AmebaTV」で先行配信中のTVアニメ「バンドリ!」は「大変な人気に」とのことで、「ゲームがヒットする可能性は十分ある」とコメントした。

 

▲主力8タイトルのランキング推移は引き続き堅調。


 
メディア事業

AbemaTVへの先行投資で赤字が継続している。ここでAbemaTVに続くメディア事業の注力分野として、カップリングサービスを紹介した。2014年にサービスを開始した主でつながる恋活サービス「タップル誕生」は黒字化したほか、位置情報を利用したすれ違いを恋のきっかけにするサービス「CROSS ME」、「Qunme」「mimi」「トルテ」といったサービスを次々と展開しているという。

かつて「出会い系サービス」と言われていており、様々な事件が起こったが、最近ではサービスも整い、オープンな世界になっているという。同社では、2014年から事業を開始したが、「タップル誕生」は月に2~3億円の売上を出すタイトルとなっており、現在、矢継ぎ早に事業を拡大している最中にあるという。藤田晋社長は、「少子化の問題もあるように、出会いに困っている人は多く、大きな市場。注力分野として強化し始めている」と述べた。

 


メディア事業の注力分野は、インターネットテレビ局「AbamaTV」だ。12月MAU(月間アクティブユーザー数)が前月比103万人増の686万人に急拡大し、WAU(週次アクティブユーザー数)についても、年末年始に最高記録を更新し、514万(12月29日~1月4日)になったことを明らかにした。MAUについては、藤田社長は、「1月に800万人を伺うところにきた。1000万人も近いところに来ている」とし、その後も順調に拡大していることを強調した。

WAUについては、正月休み明け後に低下しているが、「想定していたこと」だという。大規模なプロモーションによって一時的にアクティブユーザー数が急増し、プロモーション終了後に低下した。ゲームのプロモーションでも見られる事象だが、「ベース」となるユーザー数が着実にアップしているという。確かに大規模プロモーション以前に比べて、100万人ほど増加していることがわかる。

 


同社では、今後も、4月の1周年や、夏休みシーズン、そして、年末年始に合わせて大規模なプロモーションを展開し、これまでと同様、ベースとなるユーザーの獲得に注力していく方針だ。そのため、次の四半期(1~3月期)については「通常運転に戻る」見通し。会社全体で50~60億円程度がその水準と想定しているという。

さらに、10~30代という若い利用者がメインの視聴者層になっていることも明らかにした。もともとテレビを視聴しない若い世代をターゲットにしていたサービスだったが、狙いどおりになっているという。また、女性ユーザーは当初の想定である50%を下回っているが、ドラマなどの番組を増やすことで高めていく。「女性のライフスタイルは変わりづらく、徐々に慣れていってもらうしかない」。

 


今後の番組編成については、スポーツコンテンツを中心に配信を強化するとともに、3月にスマホのタテ型再生に対応する予定。「バックグラウンド機能に対応しているため、SNSを利用しながらAbemaTVが利用できる」。加えて、オンデマンドで番組配信を行う「Abemaビデオ」も3月末~4月にオープンする予定。こちらは一部無料で、プレミアサービスに入った人が見放題となる。本格的に広告販売を行う際には、課金売上と広告売上を半々程度にする考え。

ちなみに、スポーツコンテンツは、ゴルフやサッカーのチャンネルとなる。サッカーについては世界の有名サッカークラブの試合を24時間・365日配信する。近年放映権料の高騰の影響が懸念され、会場からも質問がでたが、試合の模様を生中継するのではなく、すでに終了した試合を放送する、いわゆるディレイ放送となるため、放映権料は「びっくりするほど安くなる」とのことだった。

 



 
■2017年9月期通期予想は変更なし

なお、2017年9月期通期の予想は、従来予想から変更なく、売上高3600億円(前期比15.9%増)、営業利益280億円(同23.9%減)、経常利益267億円(同24.5%減)、当期純利益100億円(同26.5%減)と増収減益の見込み。

 



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(編集部 木村英彦)
 
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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