【ネクソン決算説明会】16年12月期は中国『アラド戦記』が好調で実質"増益"に 不振続いた日本も『HIT』『H&F』『TOS』中心に底打ち反転へ



ネクソン<3659>は、2月10日、2016年12月期の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上収益が1831億円(前の期比3.8%減)、営業利益は406億円(同34.7%減)、最終利益は201億円(同63.5%減)だった。為替の円高に加え、子会社gloopsののれんの減損処理を行ったことが影響した。減損の影響を除くと、実質的には営業増益での着地となる。
 


決算説明会に臨んだオーウェン・マホニー社長は、上場から5年が経過したが、当時良く聞かれたのは「主力のオンラインゲームタイトルがいつピークを打って落ち込むか」という質問だったと振り返った。モバイルゲームの状況を見るとこうした質問が出るのは仕方ないこととしつつ、ネクソンは、『アラド戦記』や『メイプルストーリー』を「ライブゲーム開発と運用」で長期にわたって育てることができていると胸を張った。
 


氏は2014年の社長就任以来、国内外のゲーム開発者やゲーム開発会社とのパートナー契約を進めてきたが、撒いてきた種が昨年から芽が出してきた。今年は『野生の地:Durango』『2Dアラド戦記モバイル』『LawBreakers』『ダークアベンジャー3』『TANGO 5』など新作の配信ラッシュを迎える。「面白いだけでなく、ユニークなゲーム体験となっている」とし、チャレンジした新作ゲームの数々に期待を示した。
 


今回のレポートでは、第4四半期(2016年10~12月)の状況を中心にレポートしていく。前四半期(QonQ)ではなく、前年同期との比較を行うが、これは旧正月や国慶節など季節要因の影響で四半期ごとに収益が大きく変動するため、QonQで業績を見ていくのは適切ではないためだ。


 
■第4四半期の状況

さて、売上収益は前年同期比6%減の432億円だった。為替の円安の影響だ。為替レートの変動がなかったと想定する「一定為替レート」では7%増になる。中国の『アラド戦記』の冬期アップデートとゲーム内売上が好調だったことに加え、韓国の『EA SPORTS FIFA Online 3』『EA SPORTS FIFA Online 3 M』のライブゲーム運用とプロモーションが奏功したとのこと。さらに台湾とタイで配信したモバイルゲーム『HIT』も押し上げた。

また、営業利益は29%減の72億円と減益となった。これは「減収」に加え、主にパブリッシングタイトルに関連した前払いロイヤルティの減損損失37億円を計上したことによる。説明にあたったCFOの植村士朗氏は、ゲーム開発の段階で中止したものを減損したもので、「いわば小さい金額の寄せ集めで、1つ1つの金額は大きくない。ゲーム会社にとっては宿命といえるもの」とコメントした。
 


続いて地域セグメント別の状況を見ていこう。


■中国
売上収益は、153億円だった。会計基準ベースでは6%減、一定為替レートでは11%増となる。主力の『アラド戦記』の好調が続いたようだ。アクティブユーザー数と課金ユーザー数は前年同期との比較で増加し、四半期を通じて高い水準で推移した。第3四半期から継続した国慶節アップデート(9/27-11/17)と冬季アップデート(12/1)が好評だったという。

植村氏は『アラド戦記』のレベル感が上がっているのではないかという会場からの指摘に対して、「主要KPIが非常に好ましい状況」とコメント。廉価なアイテムを販売して好調だったという。「ユーザーベースがしっかりしている中で、旧正月のアップデートがうまくいき、パッケージの販売も好調だった。MAUも堅調だ」と述べ、第1四半期も順調であると強調した。
 


■韓国
売上収益は184億円だった。会計基準ベースでは8%減、一定為替レートベースでは2%増だった。『EA SPORTS FIFA Online 3』と『EA SPORTS FIFA Online 3 M』が新たな選手の追加や運用・プロモーションが好調だったほか、『メイプルストーリー』と『アラド戦記』が前年同期比で成長したという。『メイプルストーリーM』と『三國志曹操伝 Online』をリリースしたが、前年同期の『HIT』の爆発的なスタートには及ばなかったようだ。
 


■日本
売上収益は1%減の46億円だった。前年同期比ではマイナスとなったものの、四半期ベースで続いていた下落トレンドに歯止めがかかった格好だ。前四半期比25.6%増となった。PCオンラインゲーム『ツリーオブセイヴァー』が寄与したほか、『HIDE AND FIRE』が四半期を通じて貢献し、さらに12月にリリースした『HIT』も好調な滑り出しを見せたとのこと。この結果、モバイルゲームに占めるネイティブゲームからの売上収益は1/3に達したという。

植村氏は、競争が厳しく楽観できる状況ではないと前置きしつつ、「日本も高品質モバイルゲームが受け入れられる環境になってきた。ネクソングループのネットワークを使って高品質タイトルを日本向けに配信してきた」と述べた。今後も良質なタイトルのパブリッシングを行いつつ、日本の開発力強化にも取り組む考え。
 


■北米、欧州及びその他の地域
北米の売上収益は20億円(会計基準13%減、一定為替レート3%減)、欧州およびその他の地域では26億円(会計基準24%増、一定為替レート38%増)だった。欧州及びその他の地域の伸びが著しいが、台湾とタイで配信している『HIT』が好調だったとのこと。
 


 
■第1四半期(1~3月)の業績見通し

売上収益は624億~671億円(前年同期比8.6%~16.8%増)、営業利益303億円~347億円(同719.5%~838.8%増)、最終利益270億円~307億円(前年同期は62億円の赤字)と大幅な増益を見込む。
 


前年同期に計上したgloopsののれんの減損が今期計上されないだけでなく、中国と日本が寄与してくる見通しだ。特に中国では『アラド戦記』は、旧正月アップデートが好調で、前年同期比で30~40%と高い成長率を見込んでいるという。さらに日本でも『ツリーオブセイヴァー』や『HIDE AND FIRE』に加え、『HIT』が四半期でフル寄与する見通しだ。
 
 
(編集部 木村英彦)
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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