KDDIとJR西日本、VRによる災害対策訓練ソリューションを共同で開発 津波などの災害対策訓練の商用化では日本初と説明

KDDIは、2月16日より、ルームスケールVR「HTCVive」などを使った「VRによる災害対策訓練ソリューション」(以下、本ソリューション)の提供を開始すると発表した。

また、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)では、本ソリューションを新宮駅と和歌山市駅を結ぶ紀勢線の津波対策に関わる運転士向けの訓練に4月以降、順次導入するという。

本ソリューションは、鉄道会社の運転士を対象に、VR機器と実写VR動画コンテンツを活用した津波などの自然災害対策訓練の商用化事例としては日本で初めて(注1)となる取り組みだと説明している。

 



<以下、プレスリリースより>

1 導入に至った経緯と目的
JR 西日本和歌山支社では、南海トラフ巨大地震(注 2)や、それに伴う津波発生などの万が一の事態に備えるべく、ハード・ソフト両面での様々な対策を進めていますが、紀勢線において南海トラフ地震が発生した場合、総延長の約 3分の 1 にあたる約 73kmの区間が津波で浸水し、特に、紀伊半島南岸に位置する白浜~新宮駅間は、地震発生から 5 分以内に 10mを超える津波が襲うという厳しい想定がなされています。

そこで、今回、運転士のさらなる判断力の向上を目指すために、JR西日本とKDDIが共同で開発した VRを活用した災害対策ツールを導入することとなりました。

2 VR コンテンツについて

・運転士の視点を 360 度動画で撮影
対象区間:紀勢線の一部区間(串本駅~新宮駅区間)約 43km

・現時点で最高水準の 9K(注 3)の高解像度(VR 向け画質)で撮影
リアルな走行感や避難誘導の判断に必要となる標識などを肉眼で確認可能としている。

・コンテンツの構成 ① 避難行動の演習コンテンツ

② 地震・津波発生疑似体験コンテンツ

3 導入による効果

運転士自身が、常日頃から運転している路線の実際の映像により、想定浸水深の確認、避難誘導に関わる設備の確認や震災発生時の津波が起こる様子を疑似体験できることなどから、運転士の判断力を培うことが可能となり、結果として、列車をご利用されるお客様の安全・安心につながると考えています。

4 運用開始日等

2017 年 4 月以降、JR西日本和歌山支社の新宮列車区と紀伊田辺運転区において各 1 セットを導入

・新宮列車区(住所:和歌山県新宮市)
・紀伊田辺運転区(住所:和歌山県田辺市)

(注 1)2017 年 2 月 15 日現在、KDDI 調べ。
(注 2)南海トラフ沿いで発生する大規模な地震について、今後 30 年以内の発生確率が南海地震について 60%程度、東南海地震に
ついて 70%~80%と文部科学省地震調査研究推進本部によって長期評価されている
(出典:南海トラフ巨大地震対策について (最終報告) - 内閣府防災情報)
(注 3)K:コンピュータなどのディスプレイに表示される総画素数


■JR 西日本における「VR(仮想現実)」による災害対策ツールの概要について 

(1)JR 西日本における導入目的
VR 機器を活用し、地震や津波などの自然災害や、マニュアルだけでは対応が難しい緊急事態に直面した際に柔軟かつ最適な行動を取ることができる運転士・社員の育成を図る。

(2)コンテンツの構成内容
VR 機器「HTC Vive」およびオリジナル VR 動画コンテンツにより自然災害を疑似体験する。

1.「最適行動の演習コンテンツ」
JR 西日本 紀勢線内における「想定浸水深」および「自列車の位置から最寄りの避難出口」や「高台」の位置などが、実際の地理と重ね合わせて確認することができ、訓練を行うことが可能。
 ※撮影場所:JR 西日本 紀勢線(新宮駅~串本駅区間)の路程(予定)

2.「地震・津波発生疑似体験コンテンツ」
地震発生とそれによる津波発生という万が一の自体を、よりリアルに疑似体験することが可能。
 ※撮影場所:紀勢線における実際の橋りょう付近

(3)主な機能
・紀勢線 串本駅~新宮駅間の約 43kmの実際の映像をもとに、運転士の視点で 360 度を見渡せる
・訓練者は、アクセルとブレーキにあたるコントローラーを両手に持ち、列車の停止や移動が行える
・画面上に「標高」や「キロ程」を表示しており、数字は走行に応じて変化する。
・停止させた位置と連動した JR西日本オリジナルの「津波避難アプリ」を VR画面上に表示することにより、訓練者は停止地点から最寄りの出口や避難場所を確認することができる。(注 1)
・VR 機器セットについて、5m 四方のスペースがあれば設置可能で、持ち運び可能
・訓練に関するデータは、緊急地震速報鳴動地点やその際の対応などをログとして抽出でき、次回の訓練に活用できる機能も備えている。

▼「最適行動の演習コンテンツ」VR 動画内イメージ
 

▼「地震・津波発生疑似体験コンテンツ」VR 動画内イメージ
 

(4)訓練方法について

・訓練は、指導者が訓練対象者(主に運転士)に対して実施する。対象者の視点を表示するモニターがあり、指導者が任意の場所で緊急地震速報を鳴動させ、訓練者の行動をモニターする。
 
▼JR 西日本運転士の訓練様子(イメージ)

・訓練終了後は、訓練者の行動についてディスカッションするなど、より良い判断や行動について検証することを想定している。

・VR装置(本ソリューション機器)は、2017年4月下旬に新宮列車区と紀伊田辺運転区に配備予定

・2017 年度、串本駅~新宮駅間を担当する全運転士を対象にした訓練を 2 回以上実施する計画

(5)オリジナル VR 動画コンテンツについて
リアルな走行感だけでなく、万が一地震、津波が発生した場合に、運転士が避難誘導などを行う判断基準として、線路上の電柱標識などを肉眼で確認する必要があるため、VR 動画素材としては、最高レベルの「9K/60fps(注 2)」で撮影を行い、実装するための最適なサイズである「6K/60fps」に圧縮しています。

参考)画質による電柱標識などの視認性比較
▼「6K/60fps」動画のキャプチャ画像。右画素数を低くした場合
※ 全天球における 6K 同等画質 


▼各 VR コンテンツ動画の撮影の様子

(注 1)2017 年 2 月 15 日現在、KDDI 調べ。
(注 2)南海トラフ沿いで発生する大規模な地震について、今後 30 年以内の発生確率が南海地震について 60%程度、東南海地震について 70%~80%と文部科学省地震調査研究推進本部によって長期評価されている
(出典:南海トラフ巨大地震対策について (最終報告) - 内閣府防災情報)
(注 3)K:コンピュータなどのディスプレイに表示される総画素数

<JR 西日本>
JR西日本は、これまでに実施してきた対策に加えて、今回の災害対策ツールを導入することにより、さ
らなるお客様の安全確保に努めるとともに、引き続き、地震・津波対策についてハード面・ソフト面から取り
組みを進めてまいります。
(参考)紀勢線における津波対策これまでの主な取り組み

○ ハード対策
・列車内への避難梯子の設置
・線路から国道に上がる階段の整備
・避難誘導標の整備
・避難支援アプリの導入
・特急「くろしお号」に津波避難用リーフレット搭載
○ ソフト対策
・「津波避難誘導心得」の制定
・「紀勢本線 津波浸水地図」の策定
・避難ルートマップの駅頭掲示
・津波避難訓練の実施
など 

<KDDI>
KDDI は通信事業者として、2016 年 3 月より、VR を「スマートフォンの次のコミュニケーション手段」および企業のお客さまへの「ソリューション商材」として捉え、VR コンテンツの開発およびプラットフォームの提案を行ってきました。今後も、さまざまな業種の法人のお客さまのニーズに対し、VR 機材や高品質な VR コンテンツを活用したソリューションの提供を通じ、お客さまの本業に貢献していきます。

■和歌山県内の鉄道路線と南海トラフ巨大地震の津波浸水深 




(出典:和歌山県地震被害想定調査 報告書 概要版)
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011400/documents/wakayama_higaisoutei_gaiyou.pdf
KDDI株式会社
https://www.kddi.com/

会社情報

会社名
KDDI株式会社
設立
1984年6月
代表者
代表取締役会長 田中 孝司/代表取締役社長 髙橋 誠/代表取締役執行役員副社長 村本 伸一
決算期
3月
上場区分
東証プライム
証券コード
9433
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