【決算まとめ】ゲーム関連企業32社の10-12月…『モンスト』復調でミクシィがV字型回復 IPタイトルを手掛けるドリコムやアカツキの好調が目立つ

10~12月の決算発表シーズンも終了し、大手ゲームソフト、主要モバイルゲーム企業の2016年10~12月期(一部8~10月期と9~11月期)決算が出そろった。そこで今回もゲーム関連企業32社分の決算の状況をチェックしてみたい。

まずは、四半期業績の売上高規模で並べてみたのが下の表だ。決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字は8~10月期と、これまでと同様に2ヶ月前の数字となっている。また、従来どおり、gloopsなどを含むネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載し、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。
 

今回の決算では、32社中、増収が23社、減収が9社となっている。前四半期の7~9月期決算と比べても増収企業の比率が高くなっているが、これはいわゆるクリスマスや年末年始の商戦期を含む四半期であったことも影響しているものと思われる。

一方、特筆すべきなのは、赤字計上企業が4社に減少し、収益性の改善が見られたことだ。7~9月期は赤字計上企業が9社で、そこから半減したことは素直に評価したい。これはかねて各社が進めてきたネイティブゲームへのシフトが一巡してきたこと、そしてこれは後ほどもう少し詳しく取り上げるが、各社が1社ですべてを賄わず、複数社でリスク分散する傾向が目立ってきたことなどが影響しているものと思われる。

ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。

増収増益…ミクシィ<2121>、アクセルマーク<3624>、ケイブ<3760>、ドリコム<3793>、gumi<3903>、カヤック<3904>、シリコンスタジオ<3907>、Aiming<3911>、アカツキ<3932>、エディア<3935>、セガサミーHD<6460>、バンダイナムコHD<7832>、マーベラス<7844>、スクエニHD<9684>、カプコン<9697>、コナミHD<9766>
増収減益…グリー<3632>、エイチーム<3662>、モブキャスト<3664>、オルトプラス<3672>、モバイルファクトリー<3912>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>
減収増益…ボルテージ<3639>
減収減益…クルーズ<2138>、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、enish<3667>、コロプラ<3668>、イグニス<3689>、ガンホー<3765>



■ネクソンのモバイル事業が好調 大手ゲームソフトも軒並み売り上げを伸ばす


次に四半期売上高100億円以上を抽出して並べたグラフを見てみよう。このグラフを見ると、コロプラがカプコンとグリーに抜かれて順位を落としていることがやや目立っている。また、この四半期はネクソンのモバイル事業の売上高が100億円大台を突破した。ネクソンのモバイル事業は国内も『HIT』や『HIDE & FIRE』が好調な推移を見せており、潮目が変わってきた印象だ。
 

今回もこのグラフに掲載されている大手ゲームソフト企業各社のゲームにかかわる事業のみを取り出して比較してみたい。こちらで見ると、大手ゲームソフト会社がこの四半期で売上高を伸ばしているのが目立つが、これは前述のクリスマスや年末年始の商戦期ということで、パッケージソフトの新作タイトルが貢献していることも大きいだろう。中で比較的モバイルゲームで売り上げを伸ばしたと思われるのはコナミHDだろうか。新作『遊戯王 デュエルリンクス』と『実況パワフルサッカー』がこの四半期から寄与しており、同社のデジタルエンタテイメント事業は、前四半期比(QonQ)で45.8%の増収を達成している。
 

四半期売上高100億円未満の企業を見てみると、こちらはマーベラスが大きく売り上げを伸ばしている。また、アカツキが四半期売上高30億円規模、ドリコムが同じく20億円規模へと躍進している。この四半期のけん引役はアカツキが『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』、ドリコムは『ダービースタリオン マスターズ』でどちらもIPタイトルが躍進の原動力になっていると言えるだろう。
 


■営業赤字を計上した企業は4社に大幅減


続いて各社の営業利益の状況を見てみよう。まずは四半期の営業利益20億円以上の企業をまとめたのが以下のグラフだ。前四半期はトップのバンダイナムコHDが150億円台の規模だったが、この10~12月期はトップのミクシィとバンダイナムコHDが200億円台、3位のセガサミーHDも200億円に迫る水準となるなど各社の収益性の改善が目立つ内容となっている。また、スクエニHDは前四半期の20億円台から100億円台に利益を大きく伸ばしている。
 

四半期の営業利益20億円未満の企業は、LINEとグリーが利益を落とし、ここに入ってきた格好となるが、その両社に迫る水準までアカツキが利益を伸ばしてきている。アカツキは、同規模の売り上げ規模の企業と比べて利益率が突出した形になるが、これは同社の業績に大きく貢献している『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』がネットの売上計上となるためだと思われる。
 

また、前述の通り、この10~12月期は赤字計上となった企業が4社と大きく減少した。下のグラフは過去10四半期分の営業赤字企業数の推移となる。新規上場企業の追加などで集計対象企業数を徐々に増やしているため、あくまで参考としての数字になるが、2014年7~9月期の3社に次ぐ水準まで赤字計上企業が減ったことになる。

この要因は、各社のブラウザゲームからネイティブゲームへのシフトが一巡してきたことに加え、このところ様々な形で各社が合従連衡するようなタイトルが増えてきたことも大きいものと思われる。つまり1社がリスクを負うのではなく、例えばIPホルダー、制作メーカーが先行投資を分散して負担するようなケースが増えてきたのではないかと想定される。その最たる例がこのところ黒字体質が定着しつつあるドリコムなどと言えるのではないだろうか。
 
 

■ミクシィが復調もモバイルゲーム大手は苦戦が目立つ


ここで今度はモバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを見てみたい。売上高については、QonQで増収に転じ、2四半期前の水準も上回った。ただし、これはミクシィの大幅な増収による貢献が大きく、そのほかのモバイルゲーム大手の数字だけ見ると、ほぼQonQで横ばいの推移となっている。

ちなみにミクシィは『モンスターストライク』が勢いを取り戻した格好だが、これは同社自体の取り組んできた施策が奏功したことももちろんあるが、市場全体という点から見ると、前四半期に比べてNianticの『ポケモンGO』のヒットが沈静化した影響もあるのではないだろうか。つまり前四半期は『ポケモンGO』に流れていたユーザーがうまく還流してきた上、さらに『ポケモンGO』が開拓した新たなユーザーも一部取り込めているものと思われる。
 

一方、営業利益は、ミクシィが大きく伸ばしたにもかかわらず、トータルではQonQでほぼ横ばいの推移となっている。タイトルの大型化や、開発の長期化でモバイルゲーム大手各社の利益率が軒並み低下傾向にあることがあらためて浮き彫りになったと言えそうだ。
 

四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの売上高推移は、2四半期連続の増加となった。ただ、こちらはネクソンのモバイル事業の貢献度が大きく、全体を押し上げた印象だ。また、クルーズの売上高が大きく減少しているが、これは同社の売上高にゲーム事業分のみを採用しているためで、マイネット<3928>へのゲーム事業の譲渡の影響が出ているということになる。なお、そのマイネットについては、今後四半期業績データの蓄積がある程度できた段階で、このまとめ記事にも加える予定だ。
 

続いて上記の四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの営業利益推移を見てみたい。こちらは合計値が3四半期ぶりに30億円台を回復するなど利益率の大幅な改善が見受けられる。前述の赤字計上企業の4社への減少ももちろん大きく寄与しているわけだが、こうした傾向が次の1~3月期以降も続いていくのかどうかがも今後の注目ポイントとなってきそうだ。
 
 

■『ポケモンGO』の大ヒット鎮静化も市場に影響か?


ここまで市場全体の状況を見てきたが、モバイルゲーム大手はミクシィのV字型回復が目立つものの、そのほかは苦戦する企業が目立っている。これまで収益の中心を担っていたタイトルが経年する一方で、それに変わるようなヒットタイトルが生み出せない状況が続いているようだ。

一方、四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPは収益性の改善傾向が進んでいる。こちらは大手IPホルダーと組んだタイトルなどの開発・リリースが進んでいることなどがやはり大きく影響していると思われる。つまり、オリジナルタイトルのヒットが難しく、IPタイトルが強い市場環境が足元も続いているということなのだろう。

なお、前四半期は『ポケモンGO』の影響を特にモバイルゲーム大手のタイトルが受けた印象だったが、その大ヒットの過熱感が収まってきたところで、ミクシィの『モンスターストライク』が急回復してきたことは、あらためてそれを裏付けているのではないだろうか。

続いて、各社の個別の状況を見てみたい。今回は増収増益の企業が32社中15社と全体の半分近くを占める結果となっている。
 

■増収増益組


・ミクシィ<2121>
『モンスターストライク』が昨年10月の3周年で過去最高のアクティブユーザー数を獲得し、その後も好調を持続したことで第3四半期(10~12月)はV字型の業績回復を達成した。さらに足元の第4四半期(1~3月)も1月にさらに昨年10月を上回るアクティブユーザー数を獲得するなど順調な状況だ。ちなみに『モンスト』は、2月16日より、スクウェア・エニックスの人気ゲームシリーズ「ファイナルファンタジー」生誕30周年を記念したコラボを開始しており、2月も好調を持続している可能性が高そうだ。会社側が打ち出した、第4四半期の売上高600億円という数字が達成できるのかどうか、じっくりと確認したい。

・アクセルマーク<3624>
前四半期にコンテンツ事業の譲渡を行ったものの、その減少分をモバイルゲーム事業の拡大で完全にカバーし、第1四半期(10~12月)はQonQで9.5%の増収を達成した。また、前四半期は『ワールドクロスサーガ』のTVCMなど大型のマーケティング活動を実施したが、これが一巡したことでその収益性も健全な水準に正常化した。なお、続く第2四半期(1~3月)は、新事業として立ち上げるコスプレ事業の先行投資や新作開発費用で赤字計上の見通しとしている。

・ケイブ<3760>
『ゴシックは魔法乙女』の売上の伸びが継続し、第2四半期(9~11月)はQonQで4%の増収を達成した。また、利益面については前四半期は『ゴシックは魔法乙女』のTVCMを実施した影響で広告宣伝費が増加し、赤字計上となっていたものの、この四半期は広告宣伝費が通常並みに戻ったことで黒字転換を果たしている。『ゴシックは魔法乙女』は、韓国に続き、台湾・香港・マカオでの展開も正式に決定するなど順調に成長しているが、その業績にかかる比重がかなり高まっており、これに続くタイトルの育成がますます大事になってきそうだ。

・ドリコム<3793>
『ダービースタリオンマスターズ』が想定を大きく上回るスタートを切ったことで、同社の第3四半期(10~12月)は四半期ベースで過去2番目の売上高を記録した。開発中のタイトルについては、『みんゴル』と『Project LayereD』が明らかになっているが、特に『みんゴル』は、IPの圧倒的な知名度に加え、フォワードワークスの第1弾タイトルとして注目度が高く、そのリリースが同社の収益に大きく貢献してくる可能性もありそうだ。

・gumi<3903>
第2四半期(8~10月)は、QonQで11%増収、22%営業増益と2ケタ増収増益を達成した。2周年イベントを実施した『ファントム オブ キル』に加え、コラボ施策などが奏功した『誰ガ為のアルケミスト』、スクウェア・エニックスとの協業となる『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』などが業績をけん引している。また、第2四半期は徹底的な効果検証を継続し、売上高広告宣伝費率を8.5%まで低下させたことで利益率も大きく改善した。ただし、第3四半期は、『誰ガ為のアルケミスト』と『クリスタル オブ リユニオン』のTVCMを実施したため、広告宣伝費は増加する見通しだ。

・カヤック<3904>
2016年12月期は、クライアントワーク、ソーシャルゲーム、Lobiの主力3事業がすべて成長し、大幅増収増益を達成した。ただ、この主力3事業のうち、Lobiは一部の広告商品がApp Storeの審査ガイドラインに抵触する可能性が生じるなど課題も発生しており、続く2017年12月期はビジネスモデル(収益構造)の見直しを実施し、収益が減少する見通し。一方、ソーシャルゲームは2016年12月期は新作がゼロだったが、2017年12月期は下期に3~4タイトルをリリースする予定だ。そのため、今期はLobiの見直しの影響と新作の先行負担が第1四半期はかかってくることが予想される。

・シリコンスタジオ<3907>
2016年11月期の連結決算は、前々期比で14%の減収、4.1億円の営業赤字計上という結果となったが、QonQでは3%の増収、赤字幅縮小と改善が見受けられた。2017年11月期のコンテンツ事業は、上期に1本、下期に2本の新作リリースが予定されているが、うち2本はスクウェア・エニックスとの取り組みとなる『ブレイブリーデフォルト フェアリーズエフェクト』と、ミストウォーカーコーポレーションとの協業タイトルであり、その注目度は高い。開発推進・支援事業はスマホ・VR/AR・MRに対応した次世代ゲームエンジン「Xenko」の投入が待たれるところ。

・Aiming<3911>
第4四半期(10~12月)は、QonQで6.3%の増収となり、各利益項目は大幅黒字転換での着地となった。新コンテンツの追加や『Fate/EXTELLA』など他社IPとのコラボが奏功したことで、主力タイトルの『剣と魔法のログレス いにしえの女神』のDAUが回復するなど、好調な推移を見せたことが奏功した。続く2017年12月期は、2016年12月期の結果を踏まえ、新作タイトルについてオリジナルタイトルの比重を落とし、IPタイトルと他社との共同タイトルを増やす戦略を進めていく。なお、これらのタイトルはすでに開発に着手している段階で、第1四半期はそうした先行投資費用を織り込んだ予想となっている。

・アカツキ<3932>
第3四半期決算の発表とともに2017年3月期の連結業績予想の上方修正を発表しており、売上高、各利益項目ともに従来のレンジ予想の上限を上回る見通しとなった。その最大のけん引役はバンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』で、特に海外展開の成功で一段上の収益を計上するタイトルへと育ってきているようだ。ただ、『ドッカンバトル』の比重がかなり強まっているものと思われ、それを緩和するためにも次の新作の動きがポイントとなってきそうだ。

・エディア<3935>
第3四半期(9~11月)は、QonQで8%の増収、黒字転換を達成した。10月に新作『蒼の彼方のフォーリズム - ETERNAL SKY -』をリリースし、累計100万ダウンロードを突破するなど順調なスタートを切ったことがその要因。ただし、それ以前にリリースしたタイトルは不発が目立っており、今後の新作タイトルの戦略をどのように打ち出してくるのかも注視しておきたい。

・セガサミーHD<6460>
第3四半期決算は、エンタテインメントコンテンツ事業の営業利益率が前年同期比で7.8ポイントの改善となるなど大きく改善した。主力タイトルの顔触れ(『PSO2』や『オルサガ』『ぷよクエ』『チェンクロ3』)に大きな変化はなく、効率的なマーケティング展開が行われていることが奏功しているとみられるが、これには同社の展開する相互送客ネットワーク「Noah Pass」の貢献もあるようだ。なお、足元はセガ・インタラクティブの新作アプリも次々とリリースされ、特に『ソウルリバース ゼロ』は好調な推移を見せており、その寄与も期待されるところ。

・バンダイナムコHD<7832>
スマートフォンゲームを中心とする「ネットワークコンテンツ」の売上高が前年同期比55.3%増となるなど業績のけん引役になっている。特にこの第3四半期(10~12月)は、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』が国内だけでなく、海外でも人気を博したことが大きく貢献したもよう。なお、各社がIPタイトルの開発に注力しており、国内有数のIPホルダーである同社は、ますますその存在感を強めていくことになりそうだ。

・マーベラス<7844>
音楽映像事業の好調が続いていることに加え、オンライン事業もQonQでは『剣と魔法のログレス いにしえの女神』の新機能の実装、3周年イベントの実施などで売上高が19%増、営業利益が4倍と大幅な増収増益を達成した。ただ、『ログレス』に続くタイトルの育成には苦戦しており、続く第4四半期も『ログレス』が好調を維持できるのかどうかにオンライン事業の業績が左右されることになりそうだ。

・スクエニHD<9684>
第3四半期(10~12月)は、全体業績もQonQで増収増益となったが、デジタルエンタテインメント事業を見てみるとQonQで66.6%の増収、3.6倍の営業増益とその好調ぶりが目立った。これは家庭用ゲーム機向けの大型新作『FFXV』の寄与が大きいと思われるが、ネットワークコンテンツも増収増益ペースを維持するなど同社の安定収益源として貢献している。ただ、スマホゲームで新たなヒットタイトルに恵まれていない感があり、次のヒットタイトルを生み出せるかどうかが問われるところか。

・カプコン<9697>
前年同期比では大ヒットタイトル『モンスターハンタークロス』の反動で減収減益となっているが、第3四半期(10~12月)をQonQで見ると、39%の増収、39%の営業増益と大幅な増収増益での着地となっている。なお、2017年3月期通期については、『バイオハザード7 レジデント イービル』と『モンスターハンターダブルクロス』を第4四半期にリリースし、前年同期比で2ケタ超の増収増益を見込んでいる。

・コナミHD<9766>
第3四半期(10~12月)は、営業利益が2012年3月期の第4四半期(1~3月)以来、19四半期ぶりとなる100億円の大台乗せとなった。モバイルゲームで『遊戯王 デュエルリンクス』と『実況パワフルサッカー』を配信開始し、両タイトルともに同社最速のスピードでダウンロード数を記録するなど好調なスタートを切ったことが大きく貢献している。なお、こうした足元の好調を受けて、第3四半期決算の発表とともに017年3月期通期の連結業績予想の上方修正も実施された。
 

■増収減益組


・グリー<3632>
第2四半期(10~12月)は、ネイティブゲームの貢献により、QonQで4年ぶりに増収を達成した。ただ、営業利益は北米で「DragonSoul」を取得したことによって減価償却費とのれん償却額が増加したこと、その北米分の広告宣伝費が増加したことで10%の減益となっている。なお、新作のパイプラインは第2四半期末で10本で、うち7本が2017年6月期のリリース予定。既に1月にリリースされた『ららマジ』など、決算発表時に明らかになっていたタイトルは従来から変化がなかったが、直近の新たなトピックスとして、ポケラボがスクウェア・エニックスとの共同タイトル『SINoALICE』、そして『AKB48ステージファイター2 バトルフェスティバル』を開発していることが明らかになった。

・エイチーム<3662>
第1四半期(8~10月)は、四半期ベースで過去最高の売上高を記録したものの、ゲームと結婚関連、自転車通販への先行投資を継続したことで、QonQで6.4%の営業減益となった。ただ、第2四半期については、2月1日に累計の連結業績予想の上方修正を発表しており、従来の減益予想が一転増益予想となるなど、その利益率は大きく改善する見通しだ。なお、『ユニゾンリーグ』と『ヴァルキリーコネクト』の好調で、売上高も従来予想を上回って着地する見通し。

・モブキャスト<3664>
マイネット<3928>へのプラットフォーム事業移管が第3四半期までで完了したこともあり、ブラウザゲームが回復傾向となったほか、売上高は前四半期比5.1%の増収を達成した。利益面については、広告宣伝費の抑制に努めているものの、費用全体ではQonQで増加しており、赤字幅が拡大した。続く2017年12月期は新作5タイトルのリリースを予定するなど同社としては勝負の1年になる可能性が高い。まずは3月9日に新情報が発表される予定の大型IP×岡本吉起氏のProject「OK」に注目したい。

・オルトプラス<3672>
他社運営タイトルの新規獲得とオフショア開発の案件が増加し、売上高は増収を達成した。ただし、利益面については、11四半期連続の営業赤字計上となるなど、前年同期と比べると赤字幅は縮小したものの、まだ収益性の改善途上にあると言えるだろう。明るい材料は、フォワードワークスやKADOKAWAなどとの協業により新規タイトルの開発を進めていることで、これらの開発の進展が待たれるところか。

・モバイルファクトリー<3912>
『ステーションメモリーズ!』をけん引役に位置情報ゲームの成長が続いており、第4四半期(10~12月)も四半期ベースで過去最高の売上高を更新した。一方、営業利益は広告宣伝費を前四半期の7400万円から1億2800万円に増やしたことで、8%の減益にとどまった。『駅メモ!』は、大ヒット映画「君の名は。」とのコラボや、交通広告などのプロモーションが奏功し、DAU(日次アクティブユーザー数)が過去最高を更新しており、第1四半期はこのユーザーの定着化が課題となってきそうだ。

・LINE<3938>
パフォーマンス型広告の寄与で広告サービスが成長しており、第4四半期(10~12月)もQonQでの増収トレンドが続いたが、マーケティング費用が前四半期の28億円から43億円に増加したことなどで、営業利益は67%の減益となった。コンテンツサービスは『LINEブラウンファーム』や既存カジュアルゲームが堅調に推移して横ばい推移となっているが、新たなヒットタイトルが生み出せていないことは気になるところ。

・サイバーエージェント<4751>
第1四半期(10~12月)は、全体業績、ゲーム事業ともに四半期ベースで過去最高の売上高を達成したが、全体業績は「AbemaTV」など新規事業への先行投資、ゲーム事業は『シャドウバース』のプロモーション活動など広告宣伝費の増加でともにQonQで営業減益となった。なお、今期は第2四半期以降に6本の新作タイトルをリリースする予定だが、同社ではTVアニメの人気なども踏まえ、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のヒットへの期待が高いとみているようだ。
 

■減収増益組


・ボルテージ<3639>
赤字だった第1四半期(7~9月)と比べるとこの第2四半期(10~12月)は黒字転換を果たしたものの、「シークシリーズ」などの新シリーズや、「パズルアクションゲームシリーズ」など実験作が会社側予想よりも伸び悩み、2017年6月期通期の連結業績予想の下方修正を余儀なくされた。第3四半期(1~3月)は主力タイトルの『天下統一恋の乱 Love Ballad』において、配信2周年を記念した新章をアプリ内配信するほか、新シリーズや実験作の新作もリリース予定で、どこまでばん回できるのかが注目される。


■減収減益組


・クルーズ<2138>
QonQで減収減益となったが、これは2016年11月にインターネットコンテンツ事業(ゲーム事業)の『エレメンタルストーリー』以外の全てのゲームタイトルをC&Mゲームスに移した上で、マイネット<3928>グループに譲渡したことに起因する。つまり、足元の第4四半期(1~3月)はこれがフルで影響する形になり、数字上はさらなる減収減益となる可能性が高い。今後のゲーム事業への取り組みは「一球入魂」の体制で取り組むとしており、『エレメンタルストーリー』に続くヒットタイトルを生み出せるかどうか、正念場になってこよう。

・ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>
第3四半期(10~12月)は、スポーツ事業がオフシーズンに入ったことで、QonQで16%の減収、56%の営業減益となった。また、12月1日にキュレーションプラットフォーム事業の全記事の非公開化が行われたため、第3四半期は1ヶ月分の影響を受けた格好となる。なお、ゲーム事業のみを見ると、QonQで3%の減収となった。任天堂<7974>との協業タイトル『Super Mario Run』を12月にリリースし、グローバルでのコイン消費を伸ばしたものの、採算性の高い「Mobage」プラットフォームにおけるコイン消費の減少が続いた。続く第4四半期は協業タイトル第3弾となる『ファイアーエムブレムヒーローズ』がリリースされており、ゲーム事業の収益状況に変化が生じているのかどうか注目される。

・コーエーテクモHD<3635>
好調な業績推移が目立つ大手ゲームソフト会社の中で、この第3四半期は唯一QonQで減収減益となるなど、やや出遅れ感が強まってきている。さらなる品質向上を図るため複数のタイトルの発売時期を延期したことや、第4四半期以降に発売を予定しているタイトルの開発費が先行して発生していることが利益面を圧迫しており、これを第4四半期(1~3月)でどれだけばん回できるのかに関心が募るところ。

・KLab<3656>
2015年にリリースしたタイトル(『GleeForever!』『Age of Empires:World Domination』『パズルワンダーランド』)の不振が2016年12月期の減収減益という結果につながった。また、QonQでは、前四半期にアニメ放送の恩恵を受けた『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』がアニメの終了ともに減速したこともあって、こちらも減収減益となっている。なお、先日2月8日に「キャプテン翼」を題材にした新作スマホゲームの開発を明らかにしたが、今後の新作は日本の人気IPを活用したタイトルに回帰して展開していく方針だ。

・enish<3667>
4四半期(10~12月)は、『12オーディンズ』が順調な推移となったものの、『ドラゴンタクティクス』をマイネット<3928>に譲渡した影響もあって、QonQで7.2%の減収となった。この影響に加え、不採算タイトルの減損の計上などもあって、営業赤字幅は第3四半期と比べて拡大した。なお、今後は前述の『ドラゴンタクティクス』の譲渡などを進めたように、主力タイトルへの「選択と集中」を進めるとし、ブラウザゲームは『ぼくのレストラン2』『ガルショ☆』に絞り、新規ネイティブゲームにリソースを集約していくとしている。

・コロプラ<3668>
第1四半期(10~12月)は、QonQで売上高28%減、営業利益41%減と大きく落ち込んだ。ただし、これは期初の会社側想定の範囲で、年末施策で『白猫プロジェクト』など主力タイトルの12月の売り上げが伸び、期初の計画は上回っての着地となった。なお、今期は新作が第3四半期以降の寄与となる見通しとしており、続く第2四半期も厳しい局面が続く可能性が高そうだ。

・イグニス<3689>
『ぼくとドラゴン』は安定的に推移したものの、直近で2周年を迎えるなど成長期からやや成熟期に入りつつある。その一方で、同社は新プロダクトや新規事業の開発に注力しており、研究開発費が増加し、加えて注力中の婚活サービス「with」の広告宣伝費も増加するなど費用が先行した。子会社パルスのVR事業など話題性は大きいが、新規事業は長い目で見て収益源として育てていけるかどうかが注目される。

・ガンホー<3765>
主力タイトルである『パズル&ドラゴンズ』の売り上げ減少が続き、第4四半期(10~12月)はQonQで3%減収、3%営業減益での着地となった。ただ、売上高、利益ともに減少ペースは緩やかになってきており、ここで歯止めをかけられるかどうかが次の四半期の焦点となりそう。PS4向けオンラインアクションゲーム『LET IT DIE(レット イット ダイ)』が足元2月に全世界200万ダウンロードを突破したことが光明となるかどうか期待がかかる。
 

■まとめ


今回の四半期決算では、ミクシィ以外のモバイルゲーム大手が引き続き苦戦している一方で、ドリコムやアカツキなど大手IPホルダーと協業タイトルを手掛けている企業の好調が目立った印象だ。

これらの企業は有力IPを使うことでタイトルのヒット確率が上昇するという利点があるが、IPホルダーにとってもスマホゲームに慣れたメーカーがタイトルを作った方がやはりヒット確率が上がるということで、うまくWin-Winの関係が築けているということなのだろう。このIPホルダーという点では、今後は任天堂やフォワードワークスがさらに存在感を強めてくる可能性もあり、さらに市場で各メーカーの合従連衡の動きが進んでいくことが予想される。

任天堂タイトルは好スタートを切ったが、『みんゴル』を皮切りにフォワードワークスのタイトルがどのようなスタートを切っていくのか大いに注目したい。
 
(編集部:柴田正之)