【インタビュー】マーベラス松本常務に訊く音楽・映像事業の好調要因  『刀剣』『あんスタ』が大ヒット 多様化で収容人数という天井を克服



マーベラス<7844>の音楽・映像事業は好調だ。第3四半期累計(2016年4~12月)の業績をみると、売上高が前年同期比で25.2%増の37億0900万円、セグメント利益が24.2%増の9億9000万円となり、過去最高記録を更新した。四半期ごとに一定の変動は見られるものの、セグメント赤字を出すことはなく、安定した収益成長でマーベラスを支える事業に育った。

今回、音楽映像事業を統括する、マーベラス常務取締役執行役員の松本慶明氏(写真)にインタビューを行い、第3四半期までの状況を振り返ってもらうと同時に、2.5次元市場に対する見解、今後の展望を聞いた。前編(今回)と後編に分かれており、前編は第3四半期の決算フォローアップという内容となっている。

まず、同社の音楽・映像事業を紹介しよう。この事業は、主に音楽と映像商品、舞台といったコンテンツを手がけている。特定のコンテンツをパッケージ商品として提供するだけでなく、舞台公演、コンサート、グッズ販売、動画配信など、多方面での展開を行い、収益をあげている点に特徴がある。この複合収益が安定した収益成長の源泉となっている。浮き沈みの激しいコンテンツ業界にあって、マーベラスならではの強みと言えよう。

第3四半期の業績について、松本氏は「予想を超える内容だった」と振り返った。「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」(16年5月公演)や、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』(16年6月公演)が大ヒットした。「2.5次元」については、以前であれば、グッズ販売と劇場への入場料収入が収益の中心であったが、収益の分散化が進んでいるという。例えば、映像のパッケージ商品の販売や動画配信、ライブビューイングなども展開し、一定のセールスを記録するようになった。
 


こうしたビジネス展開は、アニメビジネスと似ている。アニメビジネスの収益は、かつてはパッケージ販売に依存していたが、グッズやイベント、ゲームなど多様な収益源を持つようになっている。2.5次元の場合、以前は劇場の収容人数がいわば収益の天井だったが、収益源の多様化に取り組むことで、こうした"天井"を克服することに成功した。劇場の収容人数の問題についても、国内だけでなく、台湾や香港など海外にもライブビューイングを展開することで、より多くのファンに見てもらえるようになった。「デジタルとのマッチングでビジネスの可能性が広がっている」という。

他社の事例となるが、松本氏は「おそ松さん」などアニメ原作からのマルチ展開の成功にも言及した。「おそ松さん」は、パッケージソフトだけでなく、グッズやゲームアプリ、舞台もヒットしたことは記憶に新しいが、「自分の好きな作品を色々な視点から楽しみたい、という方が増えている証左だ」とコメントした。収益の多様化は、こうしたユーザーニーズに沿ったものでもある。「IPをどう展開させるかで躍動的に見える。僕らもファンが最大限楽しめるエンターテインメントにしたい」。
 


これに加え、新しい取り組みも開始した。PSVRで舞台『刀剣乱舞』の一部のみが視聴できるものだが、VRコンテンツのダウンロード販売に着手しており、将来的には全編360度動画の配信を行っていきたい、とする。ただ、現状のハードウェアでは「酔い」などのほか、長時間の視聴にはまだ問題が残っているうえ、何より収録した映像のファイルサイズが非常に大きくなるという問題もある。現状では試験的な取り組みといったところで、ハードウェアの性能アップが条件となるが、長期的にVR向けのコンテンツ提供にも力を入れていく考えだ。

続く第4四半期(1~3月期)の状況も順調だ。「舞台『刀剣乱舞』」の再演を行うとともに、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の新作を展開し、いずれも大盛況だった。これ以外にも、第4四半期に手がけたプロジェクトはいずれも順調に推移しているという。さらに『刀剣乱舞』のアニメのパッケージ販売も伸長しており、第4四半期においても業績貢献が見込まれる。期初に計画した通期の見通しから第3四半期までの累計値を差し引くと、第4四半期(1~3月)の予想数字は売上高10億9100万円、セグメント利益3億6000万円となるが、当サイトではこれを上回る可能性が高いと見ている。
 


少し気の早い話だが、来期(2018年3月期)についても聞くと、すでに準備を行っているという。完全新作としては、すでに発表のあったように、舞台『ジョーカー・ゲーム』やBIGアイドルプロジェクト『B-PROJECT』などの舞台化に取り組む予定。同時に、自社で保有するIPの展開も強化していく。『戦刻ナイトブラッド』については、ゲームアプリだけでなく、先日開催されたAnime Japanでアニメ化を行うと発表した。複数のエンターテインメント分野を持つマーベラスならではの展開を行い、音楽・映像事業のさらなる飛躍を狙う。

 
(編集部 木村英彦)
株式会社マーベラス
https://www.marv.jp/

会社情報

会社名
株式会社マーベラス
設立
1997年6月
代表者
代表取締役社長 執行役員 兼 デジタルコンテンツ事業本部長 佐藤 澄宣
決算期
3月
直近業績
売上高253億4100万円、営業利益24億8800万円、経常利益29億3100万円、最終利益19億2500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7844
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