【インタビュー】VRを創りたいクリエイター達のパッション、PS VRの開発からVR元年まで…SIE WWS プレジデント吉田修平氏に聞く(4/5)



 
VR業界の最前線に立つキーマンにVRに携わる前と、VRに携わった後の話を伺うインタビュー企画の第1回。

本企画の第1回目は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)傘下のSIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏(写真)に、インタビューを実施した。

今回はPlayStation VRの開発から、 VR元年と呼ばれた2016年までを振り返っていただいた。
 

■新しいものへの懐疑は繰り返す。PlayStation VRの始動とVR元年を振り返る

PlayStation VRは、2010年秋頃から開発に着手していまして、最初にプロトタイプを発表したのが2014年の3月です。その少し前から業界の方々に見せ始めていました。以前からVRに興味があり、色々な実験をしている人が業界の中にいらっしゃったんです。

その時の状況も、とにかくVR向けのソフトを作りたい、Oculus Riftを使ってもう実験をしていると、そんなパッションがある人達がいらっしゃって、初代PlayStationの頃を思い出しました。

VRでは全く新しい表現ができるので、初代PlayStation時代に初めて3Dリアルタイムグラフィックスに触れた時のような、いったいどんなゲームができるのだろうというワクワク感もあります。『バーチャファイター』、『メタルギア』、『FINAL FANTASY VII』などを通じて、すごく盛り上がった"あの時"のような状況が、またVRを通して起こると。
 

ただ、もう一方で初代PlayStation発売時と似たような話もありました。クリエイターは熱望していても「本当に売れるのか?まだ1台も普及してないハードに予算を付けられない」ということでした。

その中でも、クリエイターの皆さんは色々な工夫をして実験をし、その手応えを経てタイトルを世に出していただきました。カプコンさんの『バイオハザード』も、最新作ではVRを全編対応されています。もちろんホラーはVRとの相性も良く、見事な体験ができました。その他にもPlayStation VRには当初から、『サマーレッスン』(バンダイナムコエンターテインメント)や『Rez Infinite』(エンハンスゲームズ)といったVRの良さを体感できる多くのタイトルにも恵まれました。

VRは全く新しいデバイスですので、制作側にも学ばなければならないことがたくさんあります。当初VRならではのタイトルを制作するのには時間がかかるだろうと思っていたのですが、私が想定していたよりも速いスピードで業界全体が動いていますね。

これはFacebookがOculusを買収して以降、好きな人がやっているものというだけではなく、Googleさん、サムソンさん、SIEなどの企業がどんどん投資し始めたことで、世の中の見方が変わったことも影響しています。
 

スマートフォンやソーシャルゲームでも、スーパーセルさんやジンガさんはインディーからメジャーになりました。ベンチャーキャピタルの資金が入り、市場が大きくないうちからチャレンジしたデベロッパーが大きく躍進しています。

VR業界もまだ市場は大きくありませんが、これから伸びていく分野です。欧米のベンチャーキャピタルは、最初の段階からVRのゲームでどこかの会社が大きく飛躍するだろうと想定してかなりの投資をしています。大手の会社に勤めているクリエイターが独立して、そこにベンチャーキャピタルの資金が入ってVRコンテンツの制作をしているケースもあります。

もちろん皆が成功する訳ではなく、成功する企業の方が少ないかも知れません。良いものを作ったけど、そこまで売れなかった、という人たちも、その中で得た経験を活かして、また別のチームに入って仕事をしたりVRのゲームを作ったりする、そのような流れは今後もVR業界で加速していくと思います。

今は、UNITYやUNREAL ENGINEといったゲームエンジンがあり、パソコンでHTC ViveやOculus Riftなどを個人で買ってVRコンテンツの制作が簡単にできるようになりました。敷居が非常に低いので学生でもできますし、実際に高校の部活などでも作られています。開発者もどんどん増えていくでしょう。

<続く>
 

 
(取材・文・撮影 : 編集部 和田 和也)