【ドリコム決算説明会】第4四半期は過去最高の売上 IPシフト第1弾『ダビマス』が主力タイトルに成長 今期は6~7本のIPタイトルをリリース予定



ドリコム<3793>は、5月10日、2017年3月期の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高83億8800万円(前の期比28.4%増)、営業利益9億3200万円(前の期2億0600万円の赤字)、経常利益8億4400万円(同2億1700万円の赤字)、最終利益8億1400万円(同5億3700万円の赤字)と増収・黒字転換に成功した。

また、第4四半期(1~3月)をみると、売上高27億1200万円(前四半期比19.4%増)、営業利益4億1600万円(同176.4%増)、経常利益3億9300万円(同205.7%増)、最終利益3億9700万円(同61.2%増)と売上高は四半期ベースで過去最高となり、営業利益も大幅に伸び過去2番めの水準となった。
 


決算説明会に臨んだ内藤裕紀社長(写真)は、「ようやくスタートラインに立って出走することができた」と述べた。ゲームアプリ事業について、オリジナル中心からIPタイトルにシフトし、方針変更後の第1弾タイトル『ダービースタリオンマスターズ』がヒットした。他社IPを使った既存2タイトルも好調で、引き続きIPタイトルに傾注する考え。IPタイトルが市場の中心になると想定して展開してきたが、その見通しと思いきった方針転換の正しさが証明された格好だ。

今回のレポートでは、第4四半期の状況を中心に見ていきたい。


 
■第4四半期は過去最高の売上高、営業利益も過去2番めに

まず、第3四半期(16年10~12月)を振り返っておこう。売上高がQonQ37.5%増の22億7300万円、営業利益は同16.2%増の1億5100万円と増収増益となった。既存の2タイトルが堅調だったことに加え、11月にリリースした『ダービースタリオンマスターズ』が7億4000万円の売上となるなど垂直的に立ち上がり、収益に寄与した。1億5000万円の寄与を見込んでいたが、大きく上回った。競馬のGIシーズンに合わせて実施した広告宣伝費の増加を増収効果が吸収した。
 


続く第4四半期は、売上高がQonQで19.4%増の27億1200万円、営業利益が営業利益が同176.4%増の4億1600万円と大幅な伸びとなった。主力タイトルに育った『ダービースタリオン マスターズ』が四半期ベースで初のフル寄与したほか、『ONE PIECEトレジャークルーズ』と『ジョジョの奇妙な冒険スターダストシューターズ』も国内外で好調に推移した。また利益面では、さらに競馬のオフシーズンだったこともあり、広告宣伝費を減らしたことも大きな増益要因となった。
 
 
▲アプリ開発の労務費と外注費は費用計上していたが、資産計上することになった。自社タイトルはソフトウェア資産としリリース後に1年かけて減価償却する。また、他社がパブリッシングするIPタイトルについては、自社で配信するものではないため、棚卸資産に計上する。α版、β版と「納品」して売上を計上すると同時に費用も計上して相殺する。


 
■第1四半期の予想は保守的

続く第1四半期(4~6月)の業績は、売上高27億5000万円(QonQ1.4%増)、営業損益1億円の赤字(前四半期4億1600万円の黒字)、経常損益1億2000万円の赤字(同3億9300万円の黒字)、最終損益1億円の赤字(同3億9700万円の黒字)と増収・赤字となる見通し。
 


この見通しについて、内藤社長は保守的なものであると示唆した。『ONE PIECEトレジャークルーズ』については3周年イベントの開始前だったこともあり、「開始前のイベントの数字を強気に見込むことはできない」とコメント。また、『ダービースタリオン マスターズ』についても、前四半期(1~3月)と同水準を見込んでいるとのこと。
 


 
■四半期売上高10億円超えた『ダービースタリオンマスターズ』

トピックスとしては、『ダービースタリオンマスターズ』がある。内藤社長は、第4四半期の売上高が10億円を超えたことを明らかにした。競馬でGIレースの少ない、いわゆる「オフシーズン」となるため、同社としては保守的に見込んでいたとのことだが、引き続き順調に推移したようだ。
 
内藤社長は、「株式市場の関係者は、アプリストアの売上ランキングを見て売上を予想される方が多いようだが、このゲームはガチャやイベントで大きく変動せず安定しているところが特徴だ。ランキングの見た目よりも売上が出ていると思われる方が多いのではないか」とコメントした。
 
同社では、リリース以来、『ダービースタリオン』で遊んだファンを中心にプロモーションを行なってきたが、100万ダウンロードを突破したことからほぼリーチが完了したと判断し、今後は競馬ファンを中心にアプローチしていく考えだ。
 
この方針にしたがって、連休期間中、藤田菜七子騎手と武幸四郎調教師を起用したテレビCMを関西圏で放映を開始した。競馬のG1シーズンが始まったこともあり、DAU(日次アクティブユーザー数)が「顕著に上がっている」とのこと。来週末からは関東圏でテレビCMを放映する予定で、さらなる拡大を狙う。 
 


また、この期間獲得したユーザーについては、これまでのダビスタファンとくらべて、継続率などに大きな違いはないという。ARPU(顧客単価)は上がっているが、連休の効果なのか、客単価の高いユーザーの増加なのかはまだ分析できていないが、「いずれにしてもネガティブな状況ではない」。


 
■開発人員の強化と運用体制の再構築

もうひとつの大きなトピックスとしては、今期の新規IPタイトルを6~7本リリースするにあたって、人材採用の強化を進める考え。月間の社員採用は、7~8名だったが、足元では倍となる15人ペースになってきた。採用体制を強化した効果と、マーケットの中で戦略や実績への評価が上がっており、応募者数が増えているという。業務委託でも月10人ペースで増えており、毎月25人ペースで増えているとのこと。採用の基準は甘くせず、むしろ上げているのだが、応募が増えているから増員できているとのこと。

その結果、同社のオフィスでは600人が働いているが、そのうち300人が社員、200人が業務委託、100人がアルバイトと派遣となっているという。引き続き増員を行い、今期中に900名体制を目指すとのこと。また、開発体制については、個人の企画力、開発力に依存しない体制に移行するとともに、タイトルの開発後期から開発チームと運用チームを混成にすることで、開発フェーズから運用フェーズへのスムーズな移行も目指していく方針。
 


 
■今期のリリース計画は6~7本

今期(2018年3月期)において新作タイトルを6~7本リリースする考えを改めて示した。リリース時期についても「上期が多めになる」とのこと。内藤社長は、「音楽やアニメなど他のエンタメと同様、アプリについてもどうしても当たりハズレが出るものだが、すべてのタイトルのヒットを狙って開発している」とした。たとえ開発費を追加で負担することになっても絶対にヒットさせるという決意で取り組んでいるそうだ。
 
幸い「IPシフト」を行なった後の第1弾タイトル『ダービースタリオンマスターズ』がヒットしたことで、社内の士気が上がっているだけでなく、採用面でも有名タイトルを手掛けたプロデューサーやディレクターが入社するなど開発陣のベースアップが図られているという。
 
リリース予定タイトルは、フォワードワークスとの共同タイトル『みんゴル』や、バンダイナムコエンターテインメントとの共同プロジェクト『Project LayerD』が発表されているが、それ以外のタイトルについての発表はなかった。これは主に版権元が発表するものとなるためだが、『みんゴル』については近々何か発表がある模様。
 


また、ヒット作が生まれていることでリピュテーション(評判)が向上し、版権元からのアプリ開発の打診も増えていることも明かした。「皆さんが想像されるような、ほぼすべての版元さんとコミュニケーションを取っている。新規のタイトルの検討チームが毎週のように新しい案件を検討している状況だ」と引き合いが非常に多いことを示唆した。
 
ドリコムでは、開発にあたって、「(収益が出るかどうかという)ビジネス上の視点だけではなく、良いもの、ファンに求められるものが作れるかどうかを重視している」と収益性だけでは開発の是非は判断していない。そして、ドリコムが運用するゲームとユーザー層が被らないこと、そして、社内に開発リソースがあり、作品へのファンがいることを重視しているという。


 
(編集部 木村英彦)
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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