【インタビュー】「地道な努力と新規IPの創出を」…KLab森田氏が語るゲーム事業の展望とオリジナル創出の狙いとは

KLab<3656>は、去る5月11日、平成29年12月期の第1四半期累計(1~3月)の決算を発表し、売上高52億4900万円(前年同期比8.9%増)、営業利益9億3500万円(前年同期7000万円の赤字)、経常利益10億5500万円(同4億3500万円の赤字)、最終利益6億8900万円(同4億1300万円の赤字)と営業黒字に転換となった(関連記事)。
 
また、同社では、3月25日、KLabGamesにおけるゲーム展開コンセプトを「Japanese IPs」「Global Growth」「Original Creations」という3つの軸から紹介する新作ゲームラインナップ発表会「KLabGames NEXT VISION」を開催し、『幽☆遊☆白書 ゲーム化第2弾』、『BLEACH境·界-魂之觉醒』、『Project FORCE(仮)』を開発中であることを明らかにしたほか、『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』と『MIRRORS CROSSING』に関する追加情報も公開した(関連記事)。
 
本稿では、KLabの専務取締役 CGOの森田 英克氏にインタビューを実施。ゲーム事業の振り返りとともに、今後の展望について語ってもらった。
 
 

◼︎泥臭い努力が身を結んだ第一四半期


KLab株式会社
専務取締役 CGO
森田 英克
 

—はじめに昨年や第1四半期のゲーム事業を振り返るといかがだったでしょうか?
 
新作のリリースがなく、運用のタイトルだけになりましたが、数字としては良い結果が出せたので、地道な努力が実を結んだなと考えています。
 
 
—具体的な取り組みとしてはいかがでしょうか。
 
特に目新しいことをしたわけではなく、運用のクオリティを上げるべく、必死で研究を行い、データ分析や他社様の事例も調べて、みんなで考えてトライアンドエラーを重ねていっただけですね。そして、やってよかったノウハウをすべてのチームにしっかり浸透させました。どのタイトルのチームも運用のクオリティに差がなく、良い水準になってきたと言えます。
 
スマートに言うと、データを分析して、KPIを調整しながら進めたと言えるのですが、実際はそんなにカッコ良いものでなく、本当に泥臭く、失敗しながらもお客様に一番楽しんでもらえる為に作り方や提供方法を考えてやっていった結果でした。

また、第一四半期がよかった理由としては、他社様同様、年始ということで1月の数字がよかったこともあります。2〜3月は1月と比べると落ち込む傾向ですが、その落ち込みを上手くコントロールできるように、安定させられるようにできました。

 
 
—各タイトル全体として骨太な体制が築けたのですね。
 
新作タイトルに関しても、もちろんゲーム性や出だしが大事という前提はありますが、運用フェーズに乗せられることができれば安定して数字は出せられる体制や手法は整ってきていると思います。
 
 
—海外版好調の要因についてもお聞かせ下さい。
 
こちらも大きく伸びたとは捉えておりません。と言うのも、元々弊社ではいくつかのタイトルを海外配信していた経験があり、その中で国内市場のように最初に大きく盛り上がってそこから逓減していく、という訳ではなくて、最初に熱量の高いお客様に遊んでいただいて、少しずつお客様や売り上げが増えていくという動きが多いです。ですので、こちらも地道に増えていったという印象です。
 
 
 
 
—海外は海外として地道にユーザーを増やしていったのですね。
 
ただ、弊社の場合、海外と国内で同じ運用を行なっているんですよ。海外版を運用していると、海外版のお客様でも日本版の情報を知ることができるバイリンガルな方は必ずいらっしゃいます。そうすると、国内版と海外版とで商材やイベント情報のタイムラグが大きいと、「フェアじゃない。海外版を軽視しているのか。」などのクレームになることがあります。
 
弊社では同時に運用していることから、そのタイムラグは極力短くしていますし、キャンペーンもきちんと公平になるようにコントロールしています。
 
 
—海外版と国内版で仕様を分ける企業も多いので特徴的ですね。
 
総じて特別なことはしておらず、商売の基本と言えるような顧客満足度を上げるよう努めるとか、店舗(タイトル)ごとのクオリティを公平に高い水準で揃えるようにする、といったものでしょうか。チームごとの考え方やお客様に対する姿勢は揃えるようにしていますね。
 
 
—会社全体を挙げての意識合わせは以前から取り組まれていたのでしょうか。
 
数年前から「ユーザーファースト」の運用をしようと決めて、社内のスローガンにして、愚直に進めてきました。短期的な利益追求でなく、長く遊んでもらえるようにしようという考えです。
 
2012年にガラケーのブラウザゲームが全体として落ち込む時期がありましたが、その際も弊社は限定的な落ち込みで済んだので、引き続き「ユーザーファースト」の考えを浸透させていっていますし、今後も地道に努力していくだけですね。

 
 

◼︎新作ゲームラインナップ発表会「KLabGames NEXT VISION」の経緯と反響

 
—新作についてお伺いしたいのですが、先日の発表会開催の背景をお聞かせ下さい。
 
家庭用ゲームではよくある光景ですが、スマートフォンゲームとしては珍しく、以前から新作発表会を行いたいと思っていました。お客様にもっとKLabGamesというブランドを知ってもらって、信頼関係を作っていくためにも、新作ゲームラインナップを発表して楽しみにして頂く場を作ろうという考えです。この3月で準備できつつある新作タイトルが出てきたので、発表を行うことにしました。
 

 
—反響としてはいかがでしょうか。
 

発表した内容について、ビジネスアライアンス含めて、国内外で多く問い合わせがありましたね。
 
 
—新作情報で注目してほしい点をお聞かせください。
 
IPタイトルに関しては原作のファンに納得していただけるゲームを作ろうという考えなので、その点に尽きます。プラスαとして、ゲームを通して原作を知っていただく良いきっかけになりたいです。IPそのものが盛り上がることでゲームにとっても良いフィードバックがあるということを、これまでの経験から認識しています。ゲームを入り口とし、原作を知っていただきたいです。
 
 
—『MIRRORS CROSSING』では公式SNSが開設されましたがいかがでしょうか。
 

『MIRRORS CROSSING』については、世界観やストーリーがしっかり作られているので、RPG好きな方には評価いただけるのではないかと思っています。ゲーム性についても、一般的なコマンド形式のバトルにアレンジを加え、より戦略性も持たせています。いわゆるJRPGになりますので、昨今の同ジャンルの盛り上がりは弊社にとっても追い風にしたいと思っています。昔ながらのRPGが好きな方にはご期待いただきたいですね。
 

 

◼︎形成された文化の理解が肝となる「Japanese IPs」

 
—発表会ではコンセプトを3つの柱として掲げていました。その一つである「Japanese IPs」において、日本のIPをゲーム化することで肝となるのはどの点だとお考えでしょうか。
 
実は日本のIPかどうかはそこまで重要ではなく、日本で浸透しているIPかどうかがポイントですね。作り手と受け手がいるのかどうかという点です。
 
作り手として知らないものは作れません。IPを知っていたとしても、受け取る人たちがそのIPに対してどのように向き合っているかを知っていないと良いものは作れません。日本のIPであれば、弊社の人間もこれまでファンとして向き合ってきていることから、お客様に喜ばれるものが提供できます。
 
逆に言うと、海外のIPでも日本に浸透しているIPであれば、我々でも日本向けに提供はできるかと思います。しかし日本に浸透している海外のIPでも、海外向けでの提供は難しいですね。我々としてそのIPの理解はあったとしても、海外ではどのように受け止められているのはわかっていないですから。IPの世界観や魅力をスマートフォンゲームに凝縮してまとめていく作業ですから、何をコアにして凝縮すべきかは苦労すると思います。

 
 
—その作品で形成された文化を知っているかどうかが肝なのですね。
 
作り手がスマートフォンゲーム作りの作法をわかっており、IPを熟知し、ターゲット市場ではどのように受け止められているかもわかっていて、どういう風にゲームにまとめれば良いか把握できていないと、お客様は喜ばないということをこれまでの経験から明確にわかりました。
 
 
日本文化が好きで、理解のあるスタッフが集まっている会社ということもあり、日本のIPゲームを日本向けに出すようにしています。そして、日本向けゲームを遊びたいと言う日本の文化が好きな海外ユーザーに対しても配信している、といった考えですね。これでうまくいったのが『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や『BLEACH Brave Souls』であり、やっていることは一貫しています。
 
 
—海外拠点としてはKLab Chinaを強化するそうですが、中国市場に対してはどのようにお考えですか。
 
中国にも拠点を構えており、中国のモバイルゲーム業界内でもKLabという会社を知っていただいているので、日本から中国への架け橋になればと考えています。

日本で作った日本のIPゲームをそのまま中国で出すという形もありますし、中国向けのゲームを中国の企業さんと一緒に出す形があっても良いと思っています。
 
将来的には自社のコンテンツだけでなく、他社様のコンテンツを中国に展開するお手伝いをしたいです。ゲーム展開だけでなく、クロスメディア展開でもご協力できればと思います。

 
 
 

◼︎次世代コンテンツに投資するのが最も合理的…新規IP創出の狙いとは

 
—「Japanese IPs」の一方で、「Original Creations」を掲げる理由もお聞かせ下さい。
 
IPをお預かりしてゲームを出すというのはいつまでできることだと思いますか?もちろん、IPが無くなるまでですが、オリジナルIPがなければ必ずいつかは無くなります。すでに、ファンが多いと言われるIPも限られてきている状況です。
 
そうなると、新しい人気IPに各社が殺到せざるを得なく、獲得競争がより激化するという状況になりますので、自分たちでコントロールできるオリジナルIPを作るのです。例えば、今から3〜4年後に流行るIPがあるとして、それはまさに今、誰かが作っているIPじゃないですか。その誰かになりたいと考えています。

IPをお借りするにも各社が手を挙げるので、結果として、大手企業しか人気IPのゲームを作ることができなくなるかもしれません。我々の実績や経験値ですと、それでも有利なポジションにいるとは考えていますが、今よりもブランドとしてステップアップしていくためには、自分たちでオリジナルIPを作れるようになる必要があると考えています。

 

—IPやシリーズ物が多くなり、新規タイトルが出てこないのは、これまでのゲーム業界でも辿ってきた道ではありますからね。
 
そうですね。また弊社では「オリジナルタイトル」というより「新規IP」を作りたいと考えています。アウトプットとしてゲームを最重要視していることはこれからも変わりませんが、それ以外のメディアにも展開していくことを考えています。

また、KLabGamesだけで全て完結していこうという気はまったくなく、原作開発が得意な会社様、クロスメディア展開が得意な会社様、特定のジャンルで強みのある会社様、才能のある個人のクリエイター様など、国内外問わず、積極的にコラボレーションしていきたいです。



—ゲームだけで完結するのではなく、あくまでIP創出が狙いだと。
 
ゲーム関連での投資と考えると、次世代のコンテンツに投資するのが最も合理的だと思います。2〜3年後はどういったIPがあるのかも想像がつかないので、IP創出は今やるべき事だと思っています。
 
 
—ゲーム化されていない人気IPはほぼなくなった印象ですからね。
 
人気IPのゲーム化は各社様から一通り出たと思います。あとはリッチな表現を加えるかという部分になり、それさえも飽和したらどうなるのか。今後はスマートデバイスの進歩も限りがあると思いますし、仮にあったとして、受け取るお客様がそこまでの表現を求めていない可能性も高いです。同じIPでいくつも出すのには限界があると思います。
 
 
—似たり寄ったりになってしまうので、オリジナルのIPそのものを作り出すと。
 
一つのIPからスピンオフとして別の作品が出て、スピンオフ作品自体が新たなIPになるケースがありますが、それはひとつの理想形だと思います。それ以外だと、限界はあると思います。
 
 
—創出したいIPについて、構想はございますか。
 
原作設定が固まっている中でゲーム化するケースでは、ゲームから原作範疇に踏み込んで作るのは難しいですが、ゲームと原作の位置関係がフラットでバランスのとれた作品だと、ゲームで広げたコンテンツが原作にも波及できることもありますので、そういったゲームと原作がシームレスにつながるIPを作りたいと考えています。
 
そのバランス感がすごく重要だと思います。IPの枠の中でゲームを作るのではなくて、ゲームというアウトプットを活用してIPを広げていけるような活動を自社IPではしていきたいですね。
 

 
—ゲームからさらに可能性が広げられるような動きですね。
 
そうですね。ゲームを出して、他のクロスメディア展開もする中で、特定のキャラクターに人気が出たらそのキャラクターをフィーチャーしたゲームをさらに出してみるとか、IPをフランチャイズとして多面的に展開していきたいです。同じIPでも、欧米版、中国版、など別のゲーム性のものをそのエリアの会社様と提携して、グローバルに展開することも可能です。
 
その為には、種まきをしていかなくてはならなくて、複数作ってみて、やっと芽が一つ出る、というような話になると思います。会社の体制がある程度築けてきたこの時に、恐れずにやっていくことが大事だと考えています。

 
 
—最後にメッセージをお願いします。
 
IPタイトルは今後もたくさん出てくると思いますし、クオリティの高いゲームだけになってきます。お客様からすると面白いゲームの選択肢は増えていきますが、その分、作り手に求めるハードルも高くなり、ゲームの内容はもちろんグラフィックやプロモーションも、より高い水準をクリアしなくてはいけなくなっています。
 
ただ、だからと言って特別なことはしないです。最終的にはスタッフやクリエイターの能力と熱意次第になると思います。先日発表した3つの柱を軸にしつつ、お客様に喜ばれる努力を地道に愚直にやっていくだけだと考えています。

 
最後に、この記事を読んでKLabGamesの方針に共感してくださる方がいらっしゃいましたら、法人・個人問わず一緒に何ができるか、まずはお話できれば思っています。ご連絡をお待ちしております。よろしくお願いします!
 

—ありがとうございました。
 

KLab お問い合わせ

KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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