【セミナー】ディライトワークスがアカツキ、f4samuraiとの3社合同セミナーを開催 ゲーム開発の理念・ビジョンがもたらすアウトプットとは



ディライトワークスは7月21日、アカツキ、f4samuraiの3社合同で「ゲーム作りの理念・ビジョン」をテーマにしたセミナーを実施した。

本イベントはディライトワークス初となる主催セミナーになり、多くのユーザーに支えられるゲームを開発・運営している各会社の理念・ビジョンが、実際のゲーム作りの現場においてどのように根付いているか。どういったアウトプットが行われているのかを公開するもので、より良いゲーム開発現場に活かしてほしいという願いのもと開催された。本稿ではその模様をお届けする。

 

■4つの意識集中が、理想のワークプランを形成する




f4samuraiからは最高マーケティング責任者・佐藤允紀氏が登壇。佐藤氏は「世界に一番の“ワクワク”を届ける『おもしろき ことがあり世に おもしろく』」という企業理念を紹介すると、理想のマネジメントについてのポイントと、その実例を紹介した。

佐藤氏は最初に「世界に一番の“ワクワク”を届ける『おもしろき ことがあり世に おもしろく』」を分かりやすいように“お客にとっての一番と、自分たちにとってのベストを目指す”“昨日よりも今日をより楽しく”“作っている自分たちが作ることを楽しむ”という3つの要点に分解した。特に“作ることを楽しむ”では、「ゲーム業界の仕事において苦しい時期と楽しい時期では、苦しい時期の割合のほうが正直多い。だからこそ、作ることを楽しむことが、エンタメ作りにおいて大切だ」と佐藤氏は語った。



また、f4samuraiでは部署がないことから、各職種リーダーで集まって、f4samuraiのメンバーとしての8つの行動指針を作ったことも紹介。当たり前のように思えるものはあるが、これは会社の規模が大きくなってきたことで、改めて必要になったという。
 
1.妥協せずモノを作る人
サービスの向上に100%の情熱を注ごう。
自分たちが納得するまで作り込み、ユーザーの期待に応える。それがf4samuraiのモノづくり精神。

2.リスクを恐れず挑戦する人
自分の枠を決めずチャレンジできる人になろう。より厳しい選択肢でも、良いものを作るための決断をしよう。
チャレンジできるタイミングは見逃さないアンテナを持とう。

3.仲間を思いやれる人
仲間意識を持ち、みんなで助け合おう。

4.自分の仕事以外にも関心を持てる人
自分が会社の環境やプロジェクトを支えていると自覚しよう。

5.進んで問題を解決する人
問題かと思ったら、早めに相談しよう。
そして、あなたと誰かで解決し、みんなで成長しよう。

6.質問と回答ができる人
わからないことや気になったことは必ず質問しよう。また質問には真摯に対応し、相手が理解できるよう心がけよう。その繰り返しが信頼や次に繋がる行動力を生み出すのです。

7.ポジティブに考える人
つらい時でも現実を理解し、みんなで乗り越えよう。
善意と前向きな言葉を発信して、超イケてる雰囲気にしようぜ!

8.自分に正直になる人
一人のプロとして、かつf4メンバーの一員として、
“みんなが信じる正しい自分”であろう。自分を飾らず、感謝、謝罪、反省をしよう。

さらに佐藤氏は長期から短期における、プランナーにおける理想のワークプランも公開した。



長期では、“より面白いもの良いものを生み出す・届ける、またはその力を身につけること”と紹介すると、それを実現するための中期には“それを実現できるチーム・社会に属する。属したチームで結果を出す。あるいは、属したチームの力を最大化する”が。そして、短期では“日々の売上やアクティブユーザーの増加、新規開発における妥協なき研鑽”があり、優先すべきは長期のものから順にあるべきと定義。

そして、この理想を叶えるために4つの意識集中を行うことが重要であり、これらの意識集中を持って前進することがf4samuraiにとって理想のマネジメントであると佐藤氏は語った。

そして、この理想を叶えるためには、ある意識集中を行うことが重要であると語る佐藤氏。

1つ目が“ユーザーに対する意識”。これは部署を設けていない点から、CS担当などを個別プロジェクトに置かず、全員でCSについて取り組んでいると説明。また、KPI報告や数値結果で詰められる機会がないことから、売上予算を立てずにユーザーへのコミットを優先していると説明した。



2つ目は“クオリティに対する意識”。f4samuraiではエンジニアの採用を厳選しており、エンジニアが性能面だけでなくゲーム仕様をプランナーよりも深く考える局面があると紹介。これはプランナーが伝えた情報をエンジニアがしっかりとした形にできる重要なポイントでもあると佐藤氏は語った。



3つ目に“メンバーに対する意識集中”。メンバー同士で円滑なコミュニケーションを図れるように、新入社員にはメンターをつけ、職種リーダーによる技術交流会を定期的に開催していると実例を紹介した。また、アットホームな空気感で仕事ができるようにオフィスはスリッパ履きで会議も和室で実施したりと、現在も試行錯誤を続けている段階だという。



最後の4つ目が“将来への意識集中”。f4samuraiでは3年以上の長期運用を前提に物作りを実施していると公開。これはゲーム業界に長い間身を置いたとしても開発2年+運用3年の5年では携われるタイトルは5本や6本程度が限界になるため、この貴重な5年間をコミットするに足るプロジェクトにしていくことが大切だと語った。



以上の4点が理想を叶えるための重要な意識集中であり、これらを持って成長していくことがf4samuraiにとって理想のマネジメントであると説明した。
 

■ゲーム開発はチャレンジの連続 失敗を自身の成長のチャンスと捉えよう



▲New Game Guild プロデューサー山口 修平氏

アカツキでは『八月のシンデレラナイン』プロデューサー山口修平氏(以下、山口氏)が登壇。山口氏はアカツキを“ゲームの力で、世界をより幸せに感じられる場所に変えていきたい”と本気で考えている会社と説明すると、開発現場での3つの取り組みについて紹介した。


▲会社の根幹にある原則や哲学を「共通言語化」して本にまとめている。

山口氏は1つ目に「WHYから考える」を紹介。これはアメリカのサイモン・シネック氏が提唱した考え方で、人は“何を”ではなく“なぜ”に共感して動かされる、という考え方で、why(なぜ)→how(どうやって)→what(何を)の順に伝えると伝わりやすいメッセージになると説明した。



アカツキでは、この“why”を重視しており、全タイトルに「なぜそのアプリを世に出したいのか?アプリを遊んでくれた人にどうなって欲しいのか?」を義務付けていると公開。

『八月のシンデレラナイン』の場合
夢を諦めかけてる人、今夢を追いかけてる人に、もう一歩踏み出すための元気と勇気を与える。

このwhyは1人だけでなく、メンバー全体に浸透させることが重要と語る山口氏は、資料の頭に付けていたり、社内のホワイトボードや壁などの常に目につく場所に置いていると紹介した。

また、メンバー同士の会話でもwhyが重要で、感性が大きく影響する「面白い・面白くない」議論の中でもwhyに立ち返ることで、一定の基準が生まれ論理的な議論が可能になるという。



2つ目の取り組みは「チームで勝つ」。アカツキは突出した人に依存するチームではなく、誰もが自発的にリーダーシップを発揮できる「フラットで強い組織」を目指していると山口氏は語った。

その原因にはスマートフォンゲームの大規模化で、一人ではカバーしきれないほどの広い領域・深い専門性・物量の消化が求められるようになり、より専門性の高い集団が必要なった点が挙げられる。



したがって天才や超人を求めず、適材適所で能力を十分に発揮してもらうことや、逆に不得意であることを承知で成長の場にしてもらうなど、楽しんで仕事に臨める環境を作ることが重要だと説明した。


▲アカツキでは個人の適性や強みを見出す「Strengths Finder」を活用し、社内で公開している。

最後の3つ目は「失敗を財産にする」。山口氏はゲーム開発が常にチャレンジしていくものであると説明。より高みを目指すほど、不確実性は高まり失敗をゼロにすることは難しくなる。もし、チャレンジの結果の失敗を叱責することで、チャレンジに対して臆病になってしまったら、それは再失敗につながってしまうと、叱責の危険性についても語った。

また、山口氏はプロデュースを務めている『八月のシンデレラナイン』の延期について、大きな失敗があったからこそ、自身に足りない部分を理解でき、大きな成長に繋がったと、自身の苦い思い出も紹介した。



以上がアカツキの取り組みであり、最後に山口氏は「人は夢や目標を持つことで、より良いパフォーマンスを発揮できる。自分はゲームに人生を変えられた一人であり、そのゲームの力で世界を変えていきたい」と今後の抱負を語った。
 

■ゲームを作り続けるクリエイターのための会社であるために



▲FGO PROJECTクリエイティブディレクター塩川 洋介

ディライトワークスからはFGO PROJECTクリエイティブディレクターの塩川洋介氏が登壇。塩川氏はディライトワークスが掲げる「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という開発理念を紹介し、この理念が実際のゲーム作りの現場にどのように浸透しており、どういうアウトプットが生み出されているのかについて説明した。

中でも会場の興味を引いていたのは、「ゲーム開発には“政治”はいらない」という考え方。これは“誰が”言ったのか、が重要なのではなく、その内容が“どうなのか”が重要であり、会社の内外を問わず、その意見はゲームを面白くするものなのか、という基準で判断すると塩川氏は説明した。

他にも、KPI(Key Performance Indicator)は、過去のデータを表すものであり、ゲーム開発において大切なものは未来にある。したがって、KPIだけで判断し指針を取ることはない等、全ての判断の基準が「面白さに繋がるか」という一貫した姿勢が感じられた。

最後に塩川氏は、ディライトワークスの開発理念「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」ということが、単純明快でありながら、非常に難しいことであると改めて説明。



ディライトワークスは“生涯”ゲームを作り続けたいクリエイターのためのゲーム開発会社であり、ものづくりに“専念したい”クリエイターの理想郷を目指していると、将来の形を語り、講演は幕を下ろした。
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高243億3600万円、営業利益57億円、経常利益52億700万円、最終利益13億4200万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
企業データを見る
ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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