グリーと千葉大学教育学部の共同授業で荒木英士氏が特別講義を実施…「アイデアを製品企画に落とし込む方法論」を展開

グリー<3632>と千葉大学教育学部藤川研究室は、2013年度より、共同で「ゲームの力を教育の未来へ」と題し、将来的に「教育の情報化」を担う教員を養成することを目的とした共同授業を進めており、2017年度も千葉大学教育学部の後期授業をプロデュースしている。
 
10月18日、学習ゲームの制作をテーマとした本授業の一環として、グリーのアプリ開発スタジオWright Flyer Studiosを統括する、グリー取締役 上級執行役員の荒木英士氏が「アイデアを製品企画に落とし込む方法論」が講義を行った。本稿では、当日の様子をレポートしていく。

 

■学習ゲーム制作における「アイデアを製品企画に落とし込む方法論」とは

 
本講演は「特別講義」と「ワークショップ」の二部構成となっている。
 
特別講義「アイデアを製品企画に落とし込む方法論」では、まず始めに荒木氏より自己紹介が行われた後、ゲームを企画する際のアイデア出しについて、今後の制作物のヒントになる話が展開された。
 

▲グリー取締役 上級執行役員の荒木英士氏。
 

▲アイデア出しに始まり、1年を通して小学生向けの教育ゲームを作り、小学校でアプリの実証研究をするまでが目的となっている。なお、制作するゲームのテーマは毎年異なり、今年は「英語」となっている。
 
以下、昨年度の授業にて「家庭科」をテーマに制作された学習ゲームアプリである。
 

『SHOW TIME!!』



●アイデアと製品企画の違い
まず荒木氏は「実際に製品を世の中に届けるためには長い工程がある。そこで、最初は自分のアイデアを製品企画にしていく必要がある」と話す。その際、アイデアを出し続けていても製品企画は異なるもののため、いつまで経っても話が進まないのだという。
 

▲どれも良いアイデアだが、製品企画にはならない。
 
では、アイデアを製品企画にまで昇華させるにはどのようにすればよいのか。そのためのポイントとして荒木氏は「製品企画とは問題解決である」ことを挙げた。
 

【ゴールを定める】
これを実行するためにまず始めに考えるべきなのは「誰を、どういう状態にしたいのか」だと続けた。
 
本授業においては”小学生に英語を学習させること”という大きな目的があるが、では顧客はその中でも「英語に全く触れたことのない層」なのか、「少しは英語に慣れ親しんだ層」なのか。さらに顧客については、製品の直接的な買い手が学校の先生や子供の親になる可能性まで考えなければいけない。学校の教材として採用されたいのであれば、学校の営業に売り込めるような要素が必要になってくると、幅広い視野を持たなければいけないことを諭した。
 
さらに、「どういう状態にしたいのか」についても、ゲームを遊ぶことで「英語への苦手意識をなくす」、「英検○級を取得できる」、「教材にすることで偏差値が上がる」といった中から明確な「ゴール」をどの部分に設定するかによって解決すべき問題が変わるため、作るべきゲームの内容も変わってくるという。
 
【問題解明と解決に取り組む】
その後は問題解決に取り組むことになるのだが、そもそも何が問題になっているかという点を浮き彫りにしていく必要がある。荒木氏によると、今回のように企画者が当事者の立場にないケースは珍しいことではなく、小学5~6年生が英語を勉強するにあたって何に困っているのか、自分が知らない人に対して解決策を探すのは難しいことであると話す。
 
そこで、先ほど設定した「誰なのか、どうゆう状態にしたい」という点が重要になってくる。自身の頭に浮かんだお客様がどうなれば成功なのか、明確に思い浮かべる必要があるという話だった。
 
【ゲームとして完成させるために】
続けて荒木氏は、ゲームとして製品を完成させるために重要なポイントして「どうやって面白くするか」が重要になると述べた。もちろん、ここまでに紹介された事項も重要ではあるものの、裏を返せばゲーム以外の製品にも当てはまる事柄である。特に、ゲームを作る際にはこの順番が大きなキーポイントとなっており、「面白さ」が先行しすぎてしまうと「誰のために何をしていくか」がブレてしまうと語った。
 
学習ゲームにおいては、他の教材よりゲームを使って勉強をしたいと思わせる理由が必要となってくるため、製品として成功を収めにくい傾向にあるという。そんな中で、荒木氏が成功タイトルの一例として挙げた英語学習ソフトがニンテンドーDSで発売された『えいご漬け』である。こちらのソフトがヒットした理由として、英語が学べたうえでゲームとしての楽しさ、遊んだときの音や反応の良さ、スコアを上げていく楽しみが内容に伴っていると説明した。
 
●製品企画のフレームワーク
ここまでの講義で、アイデアを製品企画に落とし込むための下記のようなフレームワークが見えてくる。
 

▲また、授業では製品化や実証研究の工程を体験することが主な目的であるため簡略化されているが、実際にビジネスとして成立させるには、ここに流通・販売・宣伝といったコスト面の問題も絡んでくと荒木氏は補足した。
 
ここで荒木氏の特別講義は終了となり、その後はワークショップにて実際にこのフレームワークに従って各チームのアイデアを製品企画に落とし込んでいくことに。
 
 
 
▲ワークショップの時間には、直接、荒木氏から学生にアドバイスが送られる場面も。
 
授業終盤に行われた発表では、「迷子の子供を導きながら日常会話が学べるアプリ」や「リスニング能力を鍛えることを目的としたアプリ」など、様々な製品企画が挙がったが、これに荒木氏が問いを投げかけていく時間が設けられた。そこでは、”問題点として挙げた要素が本当に問題視されているのか”や、”ターゲッティングから顧客の顔を具体的に思い浮かべられることの重要性”が語られた。
 
また発表後には改めて、今回の授業を通して作った製品企画は机上の空論であり、顧客が抱える課題を知らずに制作を進めるとピントが外れてしまうと話し、制作を始める前に、顧客と彼らの課題に直接ヒアリングし、仮説を検証してほしいという宿題を課した。その際には、仮説を立てたばかりに話を誘導したくなる気持ちを抑え、顧客が何を面白いと感じ、何が分からないのかを受け止めて必要なものを考え作っていくことが重要であると述べる。
 
最後に、荒木氏は「製品企画とは人間を知ることだ!」という言葉を今回のまとめとして講義の締めとした。



 
(取材・文 編集部:山岡広樹)
 
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
株式会社WFS
https://www.wfs.games/

会社情報

会社名
株式会社WFS
設立
2014年2月
代表者
代表取締役社長 柳原 陽太
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