サイバーエージェント決算説明会 「何とかなりそう」 AbemaTVはWAU1000万目指し投資 元SMAP3人の起用や独自ドラマなど番組の充実を最優先



サイバーエージェント<4751>は、10月26日、2017年9月期の連結決算を発表し、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高3713億円(前の期比19.5%増)、営業利益307億円(同16.6%減)、経常利益287億円(同18.7%減)、最終利益40億円(同70.4%減)と増収減益となった。AbemaTVなど動画事業への投資を積極的に行ったことが主な営業減益の要因だ。
 


藤田晋社長(写真)は「決算が良いうちに、次の柱を育てる考えのもと、AbemaTVに投資してきた。ここ数年、高成長が続いたが、スマホシフトでいっきにかじを切ったことが大きい。あの時、目先の利益を犠牲にしてでも投資したことが良かった」と振り返った。かつてAmebaブログやスマホへの投資で一時的に"踊り場"を作り、その後、高い成長を実現してきた同社だが、その再現を狙っていく。

また、AbemaTVに関して、「何とかなりそうだ」との発言もみられた。2016年4月の開局からコンテンツを中心に投資を行ってきたが、「まだ漠然とはしている」とはいうものの、事業の柱に成長するイメージが徐々に見えてきたようだ。先行投資を行ってきたが、徐々に投資だけでなく、広告商品の拡販などを通じて売上も徐々に増やしていく考え。

AbemaTVは、現在、ほんとうの意味で競合がいない状況にあるという。競合として比較される動画配信サービスはいずれも有料サービスであり、ビジネスモデルも大きく異なっている。また、新規参入にはコンテンツの準備だけでなく、インフラなど膨大な初期投資が必要になるため、競合が出てきづらい状況にある。そのため、コンテンツの奪い合いによる仕入価格高騰などの影響を受けづらく、「マイペースで投資できている」。

 


ちなみに、AbemaTVへの投資を行わなかった場合はどうなっていたのか。AbameTVにはこの期だけで209億円の投資(損失)を出したが、その影響を除いた既存事業の営業利益は同10.4%増の516億円となった。既存事業の営業利益は、過去最高を更新するなど順調だったことがわかる。
 


なお、最終利益が大きく減っているが、これは株式の60%を保有するAbemaTVが連結納税の対象になっていないため、全て取り込んだことに加えて、Cygamesの少数持ち分を差し引いたため。加えて、減損などの特別損失が発生したことも響いた。「最終利益が厳しい時期」となっている。


 
■第2四半期はQonQでは増収増益

決算については、第4四半期の状況を中心に見ていきたい。その前に、第3四半期(4~6月期)から振り返ると、売上高は895億円(前四半期比QonQ4.0%減)、営業利益は65億円(同17.2%減)と、QonQで減収減益だった。減収になったとはいえ、四半期ベースでは、過去2番目の売上規模となった。ネット広告とゲームが減収となった。特にネット広告は季節要因として3月期末の繁忙期後の反動が出た。また、AbemaTVにはこの四半期では52億円の投資を行ったという。
 


続く、第4四半期(7~9月期)は、売上高がQonQ13.7%増の1018億円と四半期ベースで過去最高を更新し、営業利益についても同49.1%増の98億円となり、QonQでは増収増益だった。ゲーム事業が広告宣伝費を増やしたことで減益となったものの、ネット広告事業がスマホ中心に引き続き伸びたことや、一部投資有価証券売却益を計上したことが増益要因となったという。
 


 
■ネット広告

セグメント別に見ていくと、まず、インターネット広告の業績は、売上高がQonQで9.2%増の557億円、営業利益が同9.9%増の446億円と増収増益となった。9月中間期末ということで広告需要が伸びやすい時期にあるのだろうが、スマートフォン向けインフィード広告と動画広告の拡大がセグメント全体の業績の伸びをけん引したとのこと。
 

成長分野であるインフィード広告をみると、同8.6%増の126億円だった。ここ数四半期は横ばいが続いていたが、『LINE』のインフィード広告の在庫が増えたこと、クライアントが増えたことで再度伸びたそうだ。
 


動画広告も14.6%増の86億円と2ケタの伸びを見せた。ナショナルクライアントが増えているとのこと。AbemaTVなど動画事業に注力していることが動画広告の受注につながっているとのことだった。
 


 
■ゲーム事業

ゲーム事業では、既存タイトルの運用が好調だったことにより、売上高がQonQで8.6%増の363億円と過去最高を更新。ただ営業利益は同24.1%減の52億円にとどまった。『グランブルーファンタジー』や『Shadowverse』『バンドリ!ガールズパーティ!』などの広告宣伝を強化したためだ。「QonQで広告宣伝費を20億円増やしたがユーザー獲得だけでなくブランド強化にもかなり使った」という。
 


なお、今期(2018年9月期)においては、10本の新作をリリースする予定だ。サムザップ『戦国ASURA』や、Cygamesの『プリンセスコネクト!Re:Dive』と『LOST ORDER』などに「かなり期待している」とコメント。このほか、アニメなどの他社IP(知的財産権)を使った新作タイトルの開発も進めているという。
 


 
■メディア事業

決算説明会で多くの時間を割いたのは、AbemaTVの動向だ。「AbemaTV」では、話題性のある番組企画や、動員力のあるタレントを起用した番組などを配信し、意識的にアクティブユーザー数の「ヤマ」を作ってきたという。亀田興毅さんや、将棋の藤井聡太さんの番組などがそれにあたるが、番組終了後、利用を開始した人の一定割合が視聴し続けることでアクティブユーザー数のベースが上がっていく。

同社の開示した指標を見ると、MAU(月次アクティブユーザー数)はすでに1000万人弱で安定して推移しており、WAU(週次アクティブユーザー数)についても500万人規模まで拡大した。藤田社長は「WAU1000万人がマスメディアといえる目安。我々の考える事業が展開できる水準だ」とし、引き続きアクセルを踏む。
 


今期は、前期と同じく200億円の赤字となる見込み。ただ先行投資に注力していた前期とは状況が大きく異なっている。「PumpUp」をキーワードとして、投資するだけでなく、投資などによって売上も増やしていく考えだ。したがって、売上次第となるが、投資規模だけを見ると、前期よりも大きくなる可能性がある。
 


KPIのベースを引き上げる「ヤマ」をつくる番組として、藤田社長は、草彅剛さん、稲垣吾郎さん、香取慎吾さん出演の「72時間ホンネテレビ」に期待を示した。「いまも大変な話題になっている。(アクティブユーザー数が)過去最高を更新するのは間違いないと思う」。買い付けた番組よりもオリジナル番組の方が視聴者からの反応も良く、KPIにも好影響があるという。
 


また、女性比率も徐々に改善しているが、目標である50%に引き上げるため、リアリティショーや、ドラマの自社制作にも着手。ドラマについては「キャスティングありきではなく、あくまで脚本ありきで、役柄にあった俳優をオーディションで決めている。最近のドラマとはひと味違ったものになるのでは」とした。第2弾、第3弾以降も制作する方針。「Netflixの躍進からわかるように、ドラマはキラーコンテンツとして重要だとわかっていたが、コストがかかるうえ、簡単に当たるものではないため、慎重に準備を進めていた。機は熟した」。
 
 

このほか、「視聴習慣」を持ってもらうための取り組みとして、ニュース番組の充実もあげた。テレビ朝日からの「強烈な協力」もあり、「報道ステーション」に続き、「羽鳥慎一モーニングショー」を配信している。主要なニュース番組はテレビ局の重要なコンテンツだが、「一通りの主要なニュース番組がAbemaTVでも見られるようになった」。
 


なお、収益化については、広告商品の拡販に力を入れていく。広告代理店だけでなく、サイバーエージェント自身も販売していく。藤田社長自身も本日(10月27日)から営業に回る予定で、本腰を入れるのはこれからになるという。ただ、AbemaTVでは「CMの視聴完了(スキップせずにCMをすべて見る)率が80%と非常に高く、テレビと同時視聴している人も30%に過ぎない。テレビの見ていない層にアプローチできるメディアとして重宝されるのではないか」と自信を示した。
 


最後に、課金や広告収入以外の収益の多角化のための取り組みも行う。プロレス団体DDTの買収や、eSPORTS、アニメファンドなどのように、AbemaTVと一緒に取り組むことで伸ばせそうな分野の企業買収なども行っていく考えを示した。「現在、専門の担当者を付けて買収先を探している」。
 
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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