【イベント】企業・クリエイター・地域が繋がるゲームコンテスト…KCROP主催の「京都ゲームクリエーターズジャム」をレポート


 
KYOTO CMEX実行委員会と京都クロスメディア推進戦略拠点は、次世代のゲーム産業を担うゲームクリエイターの育成・発掘を目的とした「京都ゲームクリエーターズジャム」を12月2日、12月3日に京都市内にあるImpact Hub Kyotoで開催した。

本イベントは、全国から若手ゲームクリエイターを募り、2日間でゲームを作りあげるイベント。イベント期間中は、参加者がチームとなってゲーム制作に取り組むことになっている。
 
各チームには京都のゲーム企業で活躍する現役ゲーム開発者がメンターとなってサポートを行う。限られた時間内でゲームを作ることを通じ、参加者にゲーム開発のスキルや経験値を積むだけでなく、京都のゲーム企業を知ることができる場となっている。

本稿では「京都ゲームクリエーターズジャム」の模様を取材。企業、クリエイター、地域が繋がる取り組みをレポートする。
 
 

◼︎テーマは「つなぐ」…現役と若手ゲームクリエイターによるチーム制作

 
冒頭は、京都クロスメディア推進戦略拠点(以下、KCROP)の横田洸哉氏と運営協力を行っているファリアー馬場保仁氏から挨拶を行った。
 
▲KCROPの横田氏
 
KCROPは、京都を拠点としたコンテンツ企業の新規事業創出や他業界とのクロスメディア展開を支援する事業団体。映画・映像、ゲーム、漫画、アニメなど多岐に渡るコンテンツ産業が集積している京都にて、企業とクリエイターの人材交流、マッチング、ハンズオン支援を行っている。
 
今回の「京都ゲームクリエーターズジャム」は次世代のゲーム産業を担うゲームクリエイターの育成・発掘を目的として開催され、KCROPとしても初めての取り組みとなる。企業・クリエイター・産業・京都と、皆にとって良き取り組みしていきたいと横田氏は述べた。
 
馬場氏からは、学生に対して貴重なチーム製作の場として活用してもらいたいという思いが述べられた。学生にとって、チーム単位でのゲーム制作を行う機会は多い訳ではない。ましてや、ハッカソンやゲームコンテストは都内で行われることも多く、時間や費用の都合から参加できない学生が多いのも現状だ。
 
▲ファリアーの馬場氏
 
そんな中、「京都ゲームクリエーターズジャム」は西日本圏の学生も参加しやすく、ゲーム企業で働く人と一緒にゲーム制作が行える貴重な機会と言える。この貴重な場を無駄にしないよう、ゲームとして形あるものをアウトプットし、実りのある活動として終えられるようにとエールが送られた。
 
 
各チームにメンターとして参加しているゲーム企業は以下のとおり。
Aチーム:有限会社キュー・ゲームス


Bチーム:株式会社クラウドクリエイティブスタジオ
 

Cチーム:株式会社Skeleton Crew Studio

Dチーム:株式会社トーセ


Eチーム:ポノス株式会社



協力企業
協賛企業


 
今回のテーマは「つなぐ」。各チーム、まずはこのテーマをもとにどのようなコンセプトを行うかをまとめていく。
 
 
各社のメンタースタッフが各々のカルチャーにのっとって、制作の進め方は多種多少、メンバーのモチベーションをうまく盛り上げて進めるチームもあれば、スケジュールを担当ごとに細かく振り分けて進めるチームなどもいた。
 
  
 ▲Eチームの作業模様。
限られた机スペースは学生に最大限利用してもらいたいという理由から、
地べたで作業を行うポノス開発者。
 

二日目になると、ゲームとしての形がそれぞれ見えてくる。演出のブラッシュアップを行うメンバーや、プレゼン資料の作成を進めるメンバーなど、限られた時間で最大限の成果を挙げるよう、分担して制作が進められる。連日の制作となり、疲労の色も出てくるメンバーもいるが、完成形がみえてくるとメンバー内にも活気が溢れ、各チーム最後まで開発に集中していた。
 
 
▲限られる時間にてやるべきことを整理し、作品のブラッシュアップを図っていく。
▲最終段階に入ると、手が空いてきたプランナーがプレゼン資料を作り出す。
発表も重要な要素になるため、スライド1枚にも熱が入る。
   
▲自身が手がけたものがしっかり動く瞬間にはチーム内にも笑顔が溢れる。
 
 

◼︎二日間で作り上げられた甲乙つけがたい作品たち。栄えある最優秀作品は…

 
二日間の制作時間が終わり、各チームのプレゼンテーションが行わられた。くじによって決められた順番に発表された作品は以下のとおり。
 
︎Eチーム(ポノス)
タイトル:結界戦線



寺社や神官をつなぐことで結界を作り、魑魅魍魎からお姫様を守るタワーディフェンスゲーム。時間内に守りきる他に、妖怪の討伐回数もゲーム要素となっている。
 
こだわったポイントはビジュアル。ヒットポイントなどの情報を視覚的にわかりやすくされており、時間経過も日の出の動きなどで視覚的にわかるように工夫されている。
 

◼Dチーム(トーセ)
タイトル:うさ in  Volt



今回の会場となるImpact Hub Kyotoに現れた妖精を操作し、ゴールを目指すアクションゲーム。プラグとなる頭部をコンセントにつなげることで充電を行い、進めていく。
 
ワイヤーアクションの動きをこだわっているが、サクサクと進めることも考えており、足場の判定などを大きくするなど、アクションとしての難易度は低くする工夫も行われたようだ。
 
 
◼Aチーム(キュー・ゲームス)
タイトル:カラミル


不思議な生命体「カラミル」を操作し、カラミルを繋ぎながらゴールを目指す。落下スピードを活用したハラハラドキドキ感を意識した作品。カラミルが食べられることで虹が生まれるという独特な世界観は一人のメンバーの発言から膨らんでいったものだという。
 
 
◼Cチーム(Skeleton Crew Studio
タイトル:コネクリ!


異性同士を繋ぎ、子供を作っていくというシンプルながらセンスが光る作品。背景にもこだわっており、つないだ回数に応じて街が発展していく。また、男性同士をつなげるとバラが、女性同士をつなげるとユリが生まれるなどの遊び心も加えられていた。
 
 
◼Bチーム(クラウドクリエイティブスタジオ)
タイトル:Evolution!ゲジオくん

 
「ヤバい」と表現された敵を避けつつ、ゲジオくんを繋いで進化させていく作品。ゲジオくんが進化する際の演出は各チームからも高い評価が得られていた。
 

各チームのプレゼン終了後、京都市、KCROPと馬場氏による審査の後に、優秀作品の表彰が行わられた。
 
▲各チームが懇親会に移動する中、各作品を吟味する審査員たち。
 
優秀作品は、Dチームの『うさ in  Volt』。トーセ社がサポートに入ったチームになった。講評として、馬場氏はどれもゲーム機能としてはきちんと成立しており、甲乙つけがたい評価になったとコメント。だからこそ、細部の作り込みや難易度設定という細かい差での違いとなり、ゲームとして総合的に楽しめた『うさ in Volt』を優秀作品としたと振り返る。
 
 
また、今回はプレゼンにおいても評価に差がでたとコメント。各チーム、概要の紹介はできていたが、プレイ画面をより楽しく見せられればなお良かったと話す。
ゲームは、いかにユーザーに手に持ってもらうかが大事である。ゲーム業界で働く場合、企画を通す際に「いかに面白そうか」、「ビジネスとしてもチャンスがあるか」をきちんと伝える必要がある。言うなれば、プレゼンテーションやプロモーションもゲーム作りの肝になるのだ。
 
 
どういったストーリーを持って伝えるかを考えるかも重要になり、発表時の実機セッティングなど事前の準備も大事になってくると話した。そういった総合的な評価が大賞につながったDチームの『うさ in  Volt』。栄えあるトロフィーは京都市産業観光局新産業振興室の原田規之氏から授与された。
 
 
懇親会では、各チーム間の交流や作品の試遊も行わられた。終了時には横田氏、馬場氏が登壇し、チームみんなが無事に完成させられたことを祝福し、今回だけで終わらず引き続きゲーム制作を努めてもらいたいとエールを送り、イベントは締めくくられた。

 
 ▲懇親会では各チームの作品が試遊されていた。
 

◼︎写真で見る「京都ゲームクリエーターズジャム」…業界・地域貢献につながる取り組み

 
 
今回のハッカソンイベントには、5チーム・名が参加し、「つなぐ」というテーマをもとにゲーム開発を競った。大学生や専門学校生といった学生の参加に加え、社会人からの参加もあったうえ、各地域から幅広い参加者がみられた点が今回の特徴でもあった。
 

▲チーム内は全て初対面のメンバーで構成される等、各チームにて平等な条件となるような配慮もなされていた。
 
ハッカソンでは、多くの場合、ゲームの実装まで至らないチームや、実装しても動作しないチームが一定割合出てしまうものだが、参加した全てのチームが実装・動作し、実機プレゼンテーションも完遂など、技術レベルの高さや参加企業のサポートが光るイベントであった。
 
 
 
また、「京都ゲームクリエーターズジャム」では2日間という短い時間をより有意義に使えるよう、参加者には日本初のコワーキング併設の宿泊施設「Millennials Kyoto」での宿泊、作業環境も提供された。開催時の運営においても、日本各地にてゲーム制作勉強会を企画・運営の経験があるファリアー社と共に手がけるなど、KCROPの次世代ゲームクリエイターを発掘する意気込みが感じられた。
 
 
 
▲「Millennials Kyoto」での作業模様
 
協賛したゲーム企業においても、企業認知以外で価値を見出していたようだ。サポートに入っていた開発者によると、初めて相対するメンバーと開発を進めることに難しさと理解が得られ、他社の制作スタイルを知る機会になったとのこと。業界としての技術交流会としても役割を担ったようだ。
 
▲チームに参加し、作品完成に導いた各社スタッフ。
 
そして、現場の開発者と共にゲーム制作を進められる事はゲーム業界を志す学生にとっては大変貴重な機会といえる。イベント中は、制作に関わる事以外にも、ゲーム企業のことやゲーム業界で働くことを話し合う風景もみられた。
 
▲懇親会の一幕。発表後も熱心に話し合うメンバー。
本イベント後もメンバーで集まり、作品のブラッシュアップに励むことを決めるチームもいた。
▲開発中はもちろん発表後もコミュニケーションをとる風景がみられた。
 
昨今では、都内だけでなく様々な地域で行われているハッカソン・ゲームコンテスト。そんな中、「京都ゲームクリエーターズジャム」は企業・クリエイター・京都市それぞれが協力し、業界・地域貢献に「つなぐ」取り組みとして大きな一例にはなったのではないだろうか。