【ネクソン決算説明会】17年12月期は中国『アラド戦記』が「素晴らしく好調」で最高業績 『メイプル』再成長、モバイルもヒット続出、米国事業も急拡大



ネクソン<3659>は、2月8日、2017年12月期の機関投資家・アナリスト向けの決算説明会を東京都内で開催した。同日発表した2017年12月期の連結決算(IFRS)は、売上収益2349億円(前の期比28%増)、営業利益905億円(同2.2倍)、最終利益567億円(同2.8倍)と過去最高業績を記録した。第4四半期(17年10-12月)結についても同様で、売上収益526億円(前年同期比22%増)、営業利益117億円(同61%増)、最終損益22億円の赤字(前年同期112億円の黒字)となり、第4四半期として売上収益、利益ともに過去最高の水準となった(前年同期比は会計基準ベース)。

決算説明会に臨んだオーウェン・マホニー社長(写真)は、『アラド戦記』が「素晴らしく好調であった」と総括した。2月の中国における旧正月のアップデートも好調で、「次の四半期決算説明会で報告するのが楽しみ」とし、足元も引き続き好調であることを示した。

主力タイトル『アラド戦記』以外のタイトルも順調に育っている。『OVERHIT』や『AxE』『Dark Avenger 3』などモバイルゲームでヒットが相次ぐなど、種まきが順調に実っているだけでなく、『メイプルストーリー』も全世界の売上収益が2ケタ台%の成長を記録した。特に『メイプルスト―リー』の再度の成長について、マホニー社長は「ライブゲームの運用チームが長期的視点に立ち、短期的な利益は追求しなかったことが奏功した。ネクソンの戦略とゲーム運用に対する姿勢の象徴だった」と振り返った。
 


 
■『アラド戦記』が好調だった第4四半期

ここでは第4四半期の業績を中心に見ていこう。繰り返しになるが、第4四半期の業績は、売上収益は前年同期比22%増の526億円、営業利益は同61%増の117億円、最終損益は22億円の赤字(前年同期は112億円の黒字)となった。前四半期比(QonQ)ではなく前年同期比を使うのは、旧正月など季節要因に大きく左右されるためである。

売上収益と営業利益については、中国における『アラド戦記』が四半期を通して好調であったという。最終損益の赤字については、韓国ウォンに対して米ドル建ての現金預金と売掛金について為替差損が発生したことによる。

なお、営業利益は、事前の予想レンジの下限(122億円)を下回ったが、これはのれん、パブリッシングタイトルに係る前払いロイヤリティ、ゲームIPの減損損失が発生したため。
 


説明にあたった植村士朗CFOによると、減損損失は、サービス終了した時やローンチ後にリクープできないと判断した時に発生するもので、特定のタイトルで大きな損失があったわけではないという。「1つ1つの損失規模は大きくないが、タイトルが多く、積もり積もった結果だ。チャンレジしてどんどん作っていく限り避けられないものと考えている。具体的に見込むのが難しいので予想には織り込んでいない」とのこと。


 
■地域セグメント別の状況

地域セグメント別の状況を見ると、やはり『アラド戦記』が好調の中国における収益の伸びが目立ち、売上収益は48%増の228億円となった。『アラド戦記』は、大型アップデートは実施しなかったものの、複数のゲーム内イベントを実施しユーザーから好評だった。売上収益、課金ユーザー数、ARPPUが増加した。『メイプルストーリー2』も収益に寄与した。

中国に次ぐ主要セグメントである韓国も13%増の208億円と2桁の伸びとなった。韓国については、収益構造が大きく変わりつつある。PCゲームについてはほぼ横ばい(微減)だった一方で、『OVERHIT』や『AxE』『Dark Avenger 3』などモバイルゲームが相次いでヒットし、モバイルゲームの売上収益は同43%増の83億円と大きく伸びた。「大型タイトルであればしっかりとランキング上位に来る。モバイルゲームは良い状況になっている」(植村氏)という。

今回大きく伸びたのは米国だ。売上収益は同53%増の32億円と大きく伸びた。連結子会社となったPixelberry Studiosが寄与したとのこと。11月下旬に連結に加わったので、実質1ヵ月分のみの寄与となる。Pixelberry Studiosは、インタラクティブストーリーゲーム『Choices: Stories You Play』を運営している会社で、「シンプルな映像に奥深い世界が存在している」(マホニー社長)。サーバー統合が完了し、今後、世界展開をサポートしていく考えだ。
 


このほか、日本と欧州その他地域は苦戦が続いている。日本については、2018年のリリースタイトルの準備を進めているという。日本でも人気を博した『HIT』の続編に当たる『OVERHIT』をリリースする計画を立てているそうだ。

なお、欧米事業については、再構築を進めているようだ。ネクソンアメリカとネクソンヨーロッパを統合し、欧州向けにはネクソンアメリカを通じてPCゲームを配信していくことになる。モバイルについては、ネクソンMを中心に展開する方針。「欧米市場に関しては、取り巻く環境が急速に変化しており、迅速に対応していきたい」とした。
 


 
■第1四半期も増収増益の予想

2018年12月期通期の予想は非開示で、第1四半期の業績予想のみを開示した。第1四半期は、売上収益819億円~897億円(前年同期比9.5%~20.1%増)、営業利益451億円~523億円(同13.5%~31.5%増)、最終利益403億円~463億円(同2.0~2.3倍)の見込み。中国での『アラド戦記』は引き続き成長が続いており、増収増益が見込まれる。
 


地域別には、『アラド戦記』好調の中国と、モバイルゲームが好調の韓国、さらにPixelberry Studiosが連結に加わった米国セグメントが伸びる見通し。日本と欧州その他地域については減収となる。日本では第1四半期中に大型タイトルのリリースする計画はないそうだ。
 


目立ったトピックスとしては、モバイル向けオープンワールドMMO『Durango』で、会場からも質問が多かった。本作は、1月25日に韓国でリリースし、アプリストアの売上ランキングで早くも上位に食い込むなど注目を集めたが、マホニー社長は、「素晴らしい状況」と満足の意を示しつつも、長期的な運用が大事であると強調した。
 


同タイトルは、恐竜が生息する原始的な異世界「Durango」を舞台に、他のプレイヤーと協力や対立などを行いながら生き残りを目指す、オープンワールド型のMMORPGとなっている。モバイルでは非常に珍しいが、PCオンラインゲームに近い遊び方をする人もいれば、従来のモバイルゲームのような遊び方をする人もいるとし、ベンチマークやKPIの設定も試行錯誤している最中とした。

同社では、今後の想定としては、PCオンラインゲームに近い成長イメージを描いているようだ。良好なスタートになっていることを喜びつつ、「短期的に収益化を追求するのではなく、あくまで長期にわたってユーザーに楽しんでもらうことが目標だ。そこで売上と利益に貢献してもらえればいい」(CFO植村士朗氏)との見方を示した。
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 オーウェン・マホニー/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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