【グリー決算説明会】第3四半期は売上低迷もコスト削減がカバー 4Qは好調な新規タイトルと既存ゲームの運営強化でV字回復狙う


グリー<3632>は、4月27日、東京都内で2018年6月期の第3四半期(17年7月~18年3月)決算説明会を開催した。同日発表した第3四半期累計の連結決算は、売上高589.4億円(前年同期比27.8%増)、営業利益78.1億円(同39.%増)、経常利益83.9億円(同16.8%増)、最終利益57.7億円(同59.5%減)となった。

また第3四半期(1-3月)を見ると、売上高178.7億円(前四半期比QonQ15.9%減)、営業利益27.8億円(4.4%増)、経常利益26.9億円(変わらず)、最終利益は18.9億円(1.0%減)と減収・営業増益となった。

決算説明会に臨んだ田中良和社長(写真)は、「ゲーム事業においては既存タイトルの運営を強化した成果が出始めている」と評価した。またゲームや広告・メディアに次ぐ新たな柱として、VTUBERをメインにしたライブエンターテイメント事業を日本のみならず、グローバルに展開したいと展望を語った。

 
 
■第3四半期振り返りと、運営を強化し新規タイトルも好調な4Qへの期待


第3四半期では売上高はQonQで減少したものの、営業利益は増加に転じた。営業増益となった要因として、同社では、売上減少による支払手数料の減少に加えて、広告宣伝費外注費などのコスト削減をあげた。
 

続いて売上が減少したのは、ネイティブゲームとブラウザゲームコイン消費の減少が続いたため。ブラウザゲームではフィーチャーフォン経由で8.8%減の62億円、スマートフォン経由で11.8%減の15億円、ネイティブゲームでは14.8%減の98億円と100億円を割り込んだ。既存タイトルで実施した運営体制強化の効果が予想より遅れたことや、子会社ファンプレックスでのタイトルの買い取りに遅れが生じたこと、『NEWSに恋して』のリリース時期が3月末にずれ込んだことなどがあるという。
 
 
次の第4四半期(4-6月)に目を向けると、ゲーム事業は3月末に新規リリースした『NEWSに恋して』の運営成績の好調、運営を強化した既存タイトルで収益回復の兆しが出てきたこと、ファンプレックスの取得した他社タイトルの収益への寄与など明るい材料がある。運営を強化したタイトルとして国内ゲーム事業の主力である『アナザーエデン 時空を超える猫』を例に挙げていた。

同タイトルは2017年4月にリリースを行っており、同月App Storeのランキングで6位を記録している。同社では、昨年夏から運営体制の強化を行い、イベントの開催頻度やキャラクターの追加などコンテンツの充実化に努めたことでユーザー満足度が向上し、今年2月からコイン消費が上向きになったのではないか、と同社取締役の荒木英士氏が述べた。また、マーケティング調査を行ったところ、『アナザーエデン』の認知度はまだまだ低く、今後の取組次第では伸び代が見込めるとした。
 

続けて荒木氏は、『アナザーエデン』については、国内だけでなく、海外展開に関しても期待を寄せているという。会場からは、『ダンまち』については元々海外でも人気のあるIPであるため海外での活躍は期待できるが、「『アナザーエデン』に関してはオリジナルタイトルとなり、海外展開では不利なのでは?」という質問が上がった。
 

これに対し、荒木氏は、『アナザーエデン』についてスタッフに加藤正人氏、音楽は光田康典氏が担当しており、海外のファンからも人気のタイトルである『クロノ・トリガー』の精神的な続編と捉えられているとし、オリジナルタイトルであっても海外では必ずしも不利にはならないとの見方を示した。実際、リリースを待たずして、英語のWIKIページができており、海外のファンから熱い期待を寄せられているという。さらに同タイトルは任天堂Switch版のリリースも決定しており、こちらも成功すればスマートフォン版と合わせて大きな相乗効果が得られそうだ。

さらに、ポケラボのタイトルでは『SINoALICE』が6月6日に1周年を迎えるにあたって、様々な仕込みを行っているほか、7月以降のアップデートの準備もしているという。同タイトルにおいても以前から運営強化をしており、コンテンツ投入ペースも上がり、再びランキング上位へ入ることも増えてきている。

また3月に配信した『NEWSに恋して』が、セールスランキング20位内に、4月に配信した『ぷちぐるラブライブ!』はセールスランキング30位台にランクインと好調な立ち上がりと評価している。直近リリースしたタイトルに関しては、まだ日が浅いため、収益貢献に関しては保守的に見積もっているそうだ。ただ、両タイトルとも潜在力の高いタイトルであると評価しているため、状況を見ながら機動的に広告宣伝費を使っていく考えもあるとのこと。

そして昨今スマートフォンゲームの分野で話題の増えてきたHTML5のゲームに関しても触れた。同社は、先日『釣り★スタ』を『Fishing Star』としてFacebook インスタントゲーム向けにグローバル配信をしている。この分野に関して、同社は一大プラットフォームになる可能性があると評価しているのだそう。有利な点として、ダウンロードもいらず、Facebookメッセンジャーであればバイラルもしやすい、などの点からも展開も検討している。

なおFacebook以外のプラットフォーム展開と『釣り★スタ』以外のタイトルの提供も進めて行くという。
 
 

現在の開発パイプラインは6本が開発進行中で、うち1本を今期にリリースする予定となっている。


 
■「ゲーム」、「広告・メディア」、そして第3の柱として掲げた「ライブエンターテイメント」事業


同社の新たな柱として紹介をしたのが「ライブエンターテインメント事業」でVtuberを主軸にした事業となる。昨今、企業・個人を問わず参入の激しい領域だが、同社は100億円規模の投資、ゲームやVRで培ったキャラクターの魅せ方と運営力、IPとの連帯、といったこれまでのノウハウを基に日本だけではなくグローバルも含めた展開を行っていくとのこと。
 

ただし、立ち上がったばかりの領域ということもあり、現在の方針は市場と文化の形成を重要な点としているとのことだ。そのため、モーションキャプチャシステムや、専用スタジオ、配信システムなど周辺環境に関してもケアを行っていくという。なお、これだけを見ると自社内で大掛かりなエコシステムの様相を見せているところは注目すべき点だろう。

 

なお100億円規模の投資先の内訳としては、約40億円を「VTuberファンド」として運用する。そして残りの60億円ほどの、プロモーション費用として大きく使用する見込みだ。現状コスト先行にはなるが、同社はこの領域を「Youtuber」、「インフルエンサー」、「アニメ事業」を包括した市場規模と想定し、生身ではできないライセンスビジネスとして、将来的には国内市場だけで数百億円になると予想しているとのこと。


 
■まとめ
 
6月通期は、売上高775.0億円(前期比18.6%増)、営業利益100.0億円(同25.0%増)、経常利益105.0億円(同4.6%増)、最終利益70.0億円(同42.2%減)を見込んでいる。
 
 

ゲーム以外の事業に関してはまだ先行投資と言える、メディア・広告事業に関してもPVは伸びているとするが、業績に対して大きなインパクトを望める段階ではない。一方、ゲーム事業においては、運営を強化した『アナザーエデン』と、6月6日に1周年を迎えアップデートへの期待も高い『SINoALICE』、そして新作の『NEWSに恋して』もTOP20にランクイン、海外での『ダンまち』と『アナザーエデン』への期待の高さなど明るい材料は多い。

またファンプレックスにおいても、開発と運営を分けて最適化する考え方が拡大してきていることも追い風だという。運営を任せられる会社ということでファンプレックスの名を挙げる開発会社も増えているのだとか。また力を入れているメディア広告とライブエンターテイメントという2つの事業で大きなインパクトが残せるまで、ゲーム事業で支えることができるかがポイントとなりそうだ。
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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