【インタビュー】黒字転換を果たしたモブキャストHD…IPタイトルを活かしたヒットの秘訣や今後の展開は?

5月10日に発表した第1四半期(1月~3月)の連結決算で、大幅な増収・黒字転換に成功したモブキャストホールディングス<3664>(関連記事)。同社では、岡本吉起氏がゲームプロデューサーを務めるでらゲーとの共同開発で制作した『キングダム 乱 -天下統一への道-』(以下、『キングダム 乱』)の売り上げ好調を主な要因として挙げている。
 
そんな同社は今後、どのような戦略をもって業界に貢献していくのか。今回の『キングダム 乱』ヒットの秘訣を始め、ホールディングス化の経緯や今後の取り組みについて、モブキャストゲームス代表の杉野範和氏にお話を伺ってきた。
 

▲モブキャストゲームス代表取締役の杉野範和氏。
 

■大事なのはつくり手もファンであること

 
──:御社では2018年4月1日にホールディングス化を発表されましたが、まずはこちらの経緯をお教えいただいてよろしいでしょうか。
 
弊社では、創業以来、人々に感動を届ける手段としてのメディアの変化を機会と捉え、スマートフォンに代表される新しいメディアの可能性とコンテンツへの価値創造を追及してきました。今までに、100近くの映画作品と100を超えるゲームを生み出してきた実績とそこで培った強み(継続成長できる仕組みづくり、多様な資金調達ノウハウ、エンタメ業界ネットワーク)と市場環境を背景に、エンターテインメントに携わるすべての才能資源を、メディアやデスティネーション、ファイナンスやビジネスモデルの最適化によって、その価値を最大限に引き出しユーザーへと届ける組織として、時代をけん引すべく、ホームディングス化へと移行しました。
 
──:では、ここからは業績好調の要因についてもお話を伺っていきたいと思います。
 
昨年から日本及び中国で配信している『モバサカ CHAMPIONS MANAGER』のグローバル配信を開始しました。香港ではセールスランキングで1位を獲得しましたが、インパクトが大きいのは『キングダム 乱』です。従来から配信している『【18】 キミト ツナガル パズル』、『モバプロ2 レジェンド』、『モバサカ CHAMPIONS MANAGER』、マイネット様と共同運営しているブラウザプラットフォーム事業に、『モバサカ CHAMPIONS MANAGER』のグローバル配信、『キングダム 乱』が加わりました。
 

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──:ヒットの要因はどこにあったのでしょうか。
 
『キングダム』というIPの強さです。人気アニメが持つ力は絶大です。そこに、でらゲー様の開発力が加わり、アニメの世界観を重要視して作品の良さをしっかりと表現できたことが良いスタートが切れた要因になったと考えています。
 
──:昨今、数々の人気IPが存在する中、『キングダム』を選ばれた理由を教えてください。
 
つくり手である私たちが『キングダム』好きであること。IPゲームを開発する際には、作品に対する愛情や想いが乗らないと、ファンやユーザーの皆様に喜んでいただけるゲームは作れないと思います。今回で言えば、でらゲー岡本さんを始め、開発、運営、関係者に『キングダム』ファンが多かったというところは外せません。
 
また、IPをゲーム化させていただく際には、IPが持つ世界観を如何にゲームに落とし込めるかが重要だと考えています。ゲームとしての『キングダム 乱』を上手く表現できていなければファンの皆様はプレイしたいと思わないでしょうし、まだ『キングダム』に触れたことのないユーザー様も定着せず、『キングダム 乱』のファンになっていただけないと思います。

 
──:でらゲーさんとのやり取りはどういった流れで行われているのでしょうか?
 
パブリッシングは弊社、開発は共同という形で、お互いにオフィスを行き来しながら進行しています。
 
──:かなり良い形でスタートを切れた『キングダム 乱』ですが、今後についてはいかがですか?
 
まだ『キングダム 乱』が完成したという認識はありません。今はソロプレイが中心のゲームとなっておりますが、5月16日にマルチプレイが正式に実装されました。計画している機能が全て実装されているわけではなく、今後は大人数でプレイできるモードを中心に、基礎となるバランス調整やバグ改善などを行い、より良いゲームにしていきたいと考えています。
 
──:当初の予定通りということでしょうか?
 
良いスタートが切れたとは思っていますが、ひとりで遊んでいたものが二人で、二人が大人数へと『キングダム 乱』の楽しみ方が増えていくことで、『キングダム』ファンの方に限らず、戦略ゲーム好きなど幅広い層のユーザー様をお招きできるのではないかと思っています。
 

70億人をワクワクさせる共同開発の強み

 
──:そもそも御社がゲーム事業で他社と共同開発をするようになった経緯を教えてください。
 
弊社のゲーム事業は、自社開発及び配信だけでなく、モブキャストプラットフォームを運営してきましたが、市場環境もあり、ネイティブシフトを進める中で、自社開発とアライアンスによる共同開発の二輪で走ってきました。昨今はゲームのリッチ化が進んでおり、開発費が高騰しているなどの市場環境と、アライアンスによる共同開発事業については、国内外で実績が出るようになり、グローバルアライアンス戦略へとシフトしました。

弊社では、"世界70億人をワクワクさせる"というビジョンに向かって事業を進めることを目的としています。自社単独で開発することが目的ではありません。共同開発であれば、開発するゲームジャンルが限定されない、不得意なことも得意とすることができる、より多くの魅力的なゲームを日本だけでなく世界に向けて、開発・配信していきたいと考えています。

 
──:世界に向けてということは、協業企業は国内のみに留まらないということでしょうか。
 
そうです。弊社ではグローバルアライアンス戦略というものを打ち出しています。モブキャストゲームスの強みとして、IP取得力や企画監修力、でらゲーの岡本さんをはじめとした著名なクリエイターとのネットワークがあり、さらに、ここ数年で築き上げた、国内外パートナーとのIPゲームの開発および配信の実績があります。野球やサッカーといったスポーツIPを始め、アニメ、コミックなど日本が世界に誇るIPを原作としたゲームを、パートナーと協力して世界にお届けするのがグローバルアライアンス戦略になります。
 
──:国外も視野に入れた場合、国内のみリリースの場合と比べて何が変わりますか?
 
例えば、初めからグローバルで配信することを想定しているのであれば、市場が大きくなる分、検討しなければいけないことが増えます。それによって配信までの準備期間なども変動はしますが、年単位で変わるというほどではありません。
 


──:ちなみに、自社開発と共同開発では現場にどのような違いがありますか?
 
例えば、弊社では約100人の社員を抱えておりますが、100人でできることは限られています。自社だけでは開発できるゲームジャンル、得意とするゲームシステムなど制約が生まれますが、パートナーとむことで解消されます。働くメンバーにとっては、社内外、国内外、多くの方々と仕事をすることでの大変さもありますが、今までに無かった考え方や技術を学ぶこともでき、逆に培ってきたことを人に伝えることで体系的に身につくなど、個人の成長につながる機会があると考えています。
 
また、開発ラインが増え、複数の開発と配信ができるようになるのもメリットです。新規IPゲームを国内だけでなく海外にも配信し、それを積み重ねて収益性を高めていけます。

 
──:海外パートナーと共同開発を行ううえでの難点や工夫を教えてください。
 
細かいことを言い出すときりがありませんが、言語の問題、商慣習や仕事の進め方など多岐にわたって存在すると思います。企画、開発、運営と続くので簡単なことではありません。例えば、言語についても、通訳と翻訳ができれば良いわけではなく、IP、ゲームビジネス、日本と現地の商慣習を理解していることが前提になります。
 

■モブキャストゲームスがこの先に見据えるものとは

 
──:今後の展望についてもお話を聞かせてください。
 
直近では、6月12日に『モバサカ CHAMPIONS MANAGER』の韓国版をリリースしました。今年は世界的にも4年に一度のサッカー熱が高まる年なので、新たなサッカーゲームを配信する予定もあります。『モバサカ CHAMPIONS MANAGER』と同じパートナーのCAPSTONE様と共同で開発を進めています。弊社としても期待しているタイトルです。
 

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──:パートナーに引き続きCAPSTONEさんを選ばれたのは、ファンの知見や実績があるということからでしょうか。
 
そうです。両社の信頼関係があるからです。国内と同じく海外企業とパートナーシップを組むときには、信頼関係が重要です。
 
その他、プロジェクトRも進行中です。こちらは韓国のNeptune様と共同で開発を進めています。

 
──:日本タイトルを海外に配信するときにはどのようなことを心掛けておられるのでしょうか。
 
本格的にアライアンス事業をスタートしたのは2015年からになります。日本で開発したゲームを海外へ、海外で開発したゲームを日本で展開する取り組みを行ってきました。心がけていることは、日本で配信する時と同じですが、規制等への配慮も必要です。ゲームそのものについては「日本のゲームだから」という考えはありません。ストアランキングなどを見ても、国内外だからという理由で左右されるものは薄まっており、ユーザー様が求めるゲームクオリティは高まっています。
 
──:結局は面白いゲームが求められているということですね。その後の展開はいかがでしょうか?
 
あとは『幽☆遊☆白書』のゲームを開発中です。日本以外に、中華圏、韓国、東南アジアへのリリースを予定しています。
 
──:今後の展開も潤沢でリリースが楽しみですね。最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
 
モブキャストゲームスでは、社内外、国内外、多くの方々と仕事をするため、これからの時代に必要な経験やスキルを磨くことができる環境があり、共に成長できる仲間を増やしていきたいと考えています。最後に、野球やサッカーなどのスポーツIP、アニメ、コミック、ゲームなど日本が世界に誇るIPを原作としたゲームを、パートナーと協力して世界中のファンやゲームユーザーに届けていきますのでご期待ください。様々な職種を積極採用中ですので、チャレンジされたい方はぜひHPよりお問合せください!
 
――:本日はありがとうございました。



 
(取材・文 編集部:山岡広樹)



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株式会社モブキャストホールディングス
https://mobcast.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社モブキャストホールディングス
設立
2004年3月
代表者
代表取締役CEO 藪 考樹
決算期
12月
直近業績
売上高33億7100万円、営業損益4億2800万円の赤字、経常損益4億3600万円の赤字、最終損益3億8000万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3664
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