【インタビュー】KLab執行役員・マーケティング部 部長 柴田氏が明かすTGSブース出展に伴うマーケティングの狙い…ショーケースではなくユーザーと向き合うための場として活用

 
KLab<3656>は、昨年に続いて、今年9月に開幕した「東京ゲームショウ2018」(以下、TGS)にて、KLabGamesブースを出展した。今年は新規タイトルの発表はなかったが、48コマという昨年の倍にブース規模を拡大。

会期中は、一般公開日にKLabGamesの人気タイトルにスポットをあてたステージイベントが行われたほか、ビジネスデイでは、同社のサウンドチーム"KLab Sound Team"によるライブが披露された。

そこで今回、TGSにおいてKLabGamesブース全体を統括した、KLabの執行役員でマーケティング部部長である柴田和紀氏へのインタビューを実施。TGSを振り返ってもらいつつ、ブース出展に伴うマーケティングの狙いについて、お話を伺った。

KLab株式会社
執行役員
マーケティング部 部長
柴田 和紀


――まず、今年のTGS全体を振り返ってみてどのような印象を受けましたか?

TGSは1996年からスタートしていますが、今年は過去最大の出展社数であり、過去最高の動員数でした。TGSというイベント自体はやはりゲーム業界の中で最重要イベントであることは変わらないですし、多くの人から注目されているイベントだと改めて思いました。

来場者や出展社の内容は年々様変わりしています。

個人的に変わってきたと感じたのは、今年のTGSですとeスポーツのイベントが開かれたり、PUBGさんのブースがとても大きかったりと、全体としてゲームの見本市、ショーケースからユーザー向けのファンイベントに変わってきているな、という印象です。

私たちもTGSに対しては、ショーケースよりもユーザー向けのファンイベントであるという意識が強く、昨年のTGSではビジネスデイに新規タイトルの発表を行いましたが、今年は行いませんでした。

そういった新たな発表がなく、TGSに出展するということは、どういった意図があるのだろう?とお考えになる方もいらっしゃると思いますが、私たちとしてはユーザーとコミュニケーションするファンイベントの場としての意味がTGSにあると思っていましたので、今年も出展することを決めました。




――今年のKLabGamesブースは昨年よりも規模を大きくされていましたね。

昨年は20コマでしたが、今年は48コマになりました。これは668社が出展したブースの中では、規模としては10番目くらいのサイズでした。ブースを大きくしたことで、新作・既存あわせて8タイトルの展示コーナーとステージイベントを実施することができました。

タイトルの内訳としては、新規が3タイトル(禍つヴァールハイト、ラピスリライツ~この世界のアイドルは魔法が使える~、ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS)。

一般的にTGSでは新タイトル以外はあまり出展されないかもしれませんが、私たちは既にサービス提供している5タイトル(キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~、うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live、BLEACH Brave Souls、幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル、ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)も出展しました(関連記事)。

各タイトルごとに展示コーナーを設け、ステージイベントも行いました。また、KLabGamesとしてお客様とコミュニケーションする上でも象徴的な「K」マークの巨大ガチャを用意して、オリジナルグッズを配布しました。




結果として企画が盛りだくさんでしたし、昨年出展したときも、新作発表の場だけではなく、既存のサービスインしているゲームのユーザーさんとのコミュニケーションの場としても重要だと考えて出展しましたが、その結果多くの方々に来ていただけました。

ブース内でファンの方にお声掛けいただいたり、あとはユーザーさん同士がせっかくだからTGS一緒に行こうよと言う繋がりもあって。TGSでブースを出展することでファンの皆さんに喜んでいただけるという手応えが大きかったこともあって、今年はブースを48コマに拡大したというわけです。


――確かに今年のKLabGamesブースは出展タイトル数もステージイベント数も盛りだくさんでした。

各タイトルの展示体験コーナーへ多くのファンにお越しいただきました。ステージ企画に関しても、ビジネスデイでは社内のサウンドチームがライブを行いましたが(関連記事)、一般公開日は2日間で7タイトル8ステージを行いました(関連記事)。昨年ステージイベントがなかった『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』も今年は声優の寺島拓篤さん(一十木音也役)に出演いただいてファンの皆さんに喜んでいただける内容になりました。

ステージイベントではステージ上の出演者とユーザーさんが一緒にプレイして楽しんでもらったり、その場でしか味わえないことを提供しましたが、会場に来られない方々や海外ユーザーのために、全ステージの模様を全世界に向けて配信しました。

中国本土については、KLab Chinaという現地法人がありますので、そこを経由してビリビリ動画でもTGSのステージ内容を放送することで、本当に世界中のファンへお届けすることができるようになりました。

日本のイベントということで、お知らせだったりトーク内容は日本語なので、弊社のマーケティングスタッフが配信ブースでボイスオーバーして、ステージで話している内容について英語で解説したり、中国向けの放送では字幕をつけ、リアルタイムで世界中のユーザーさんに状況をお伝えするということもしていました。

海外のユーザーさんもリアルタイムで観たいという想いはあると思いますので、それにお応えした形です。




――TGSは日本のイベントですが、海外のファンやメディアからも注目されていますからね。

海外のお客様も世界中から来ていますが、特にアジア圏の方々は多いという印象ですね。

KLabGamesでは、海外向けにも放送やSNS通じてユーザーコミュニケーションをしています。昨年も実施しましたが、番組の視聴者の方に、「せっかくだからTGSに遊びに来ませんか?」というリポーターを募集したんです。

去年はスペインとアメリカの方をご招待しましたが、今年はカナダとアメリカの方が当選されて会場に来てくれました。

実際その方々は、ユーザーコミュニティからファンアートやKLabGamesに対するメッセージを取りまとめて私たちに届けに来てくれました。それから東京から、海外ユーザーのコミュニティに向けてご自身で動画投稿されたりと、とても喜んでいただけました。


――世界中のユーザーも一緒にTGSに参加している気分になれると。

我々は日本に本拠地があるので、TGSに参加しやすいですが、海外の方たちにその熱狂をどうすればお伝えできるのか、というのは我々にとって重要な課題でした。

全員が全員日本に来るというのも難しいと思いますので、そこをSNSや放送、そして一部のユーザーさんはご招待という形でTGSに参加してもらいながら、一緒にやっていくというのが私たちのスタンスですね。


――そういった意味で、TGSはファンに向けてわかりやすいキッカケになりますね。

KLabGamesは日本のIPタイトルが多く、それを全世界の方に遊んでいただいているので、ユーザーさんはKLab=日本のマンガ、アニメのゲーム会社というイメージが強いと思いますし、そういう方たちは日本の文化やイベントにも興味がある方が多いようです。



――ファンとの交流を第一に考えるというスタンスが、昨年以上に今年のKLabGamesのブース、ステージから感じられました。

既存のゲームのファンの方に今後のアップデート内容や新機能などをお伝えするという意味でもやっています。スマホゲームはサービスインから運営を続けて、お客様と長くお付き合いすることになる。

そう考えると、TGSなど定期的に開催される大きなイベントを活用していくというのは、スマホゲームとは非常に相性が良いのではないかと思います。

もちろんそれはイベントへの出展だけではなく、各タイトルのゲーム内でもTGS出展を記念した施策やユーザーの皆様への還元も行っています。

タイトル個別での周年企画やオフラインイベントも実施ていますが、KLabGamesのタイトルラインナップとしてひとつの場でプロモーションできるという意味ではTGSはとても良いものだと考えています。




――御社はアニメジャパンや海外のイベントにも出展していますが、ファンとの接点の機会を持たせるために敢えて面を増やしているという狙いもあるのでしょうか?

【Original Creations】として新作タイトルはゲームにとどまらないマルチメディア展開を計画しています。アニメジャパンではコンテンツ展開の情報をお届けしています。

海外ユーザーに向けてもKLabGamesのラインナップを揃えてお披露目したり、コミュニケーションをとれるイベントとしてフランスのジャパンエキスポ、アメリカのアニメエキスポ、台湾の台北国際動漫節などにも出展しています。

KLabGamesのラインナップは世界中でサービスをしていますので、できる限りユーザーさんの近くに行きたいと思っています。その為に色々な場に出て行ってお客様とコミュニケーションをとるための面を広げたいと考えています。


――今後もユーザーコミュニケーションの場を設けていくことになると思いますが、昨今は多様性が出てきてやりかたが難しくなると思いますが、どういったところに注力したり、見せ方を意識していきますか?

マーケティングやプロモーションを通しとして考えた場合、多くのお客様に入ってきていただくことは、事業の活性化につながるので非常に大切なことです。

やはりそれと同じように私たちははKLabGamesとして、お客様やコミュニティとどう向き合うのかを、とても重要視しています。

信頼関係を築いていくことを、長い時間をかけて確実にやっていかなければならないことだと思っています。それがKLabGamesのマーケティングに対する考え方の根底にあります。

TGSなどのイベントも、ユーザーさんにどういった体験を提供できるか? その体験によって得られたおもしろかったこと、感動したことを皆に伝えたくなるようなことをせっかくならやりたいんです。

ですから各タイトルの展示コーナーも、これをインストールしたらグッズをプレゼントしますという形ではなく、せっかくなら普段できない体験をしてもらいたいという思いがあります。

例えば『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』であれば、普段はスマホでプレイされているところを大きなモニターでプレイできたらまた新たな体験になりますし、『禍つヴァールハイト』も単純に試遊して頂くのではなく、現段階では世界観に浸っていただくためにVRを活用しました。




――今年は各コーナーとも工夫されたブース作りだったという印象です。

『BLEACH Brave Souls』のコーナーでは、フラッシュを当てて撮影すると絵と文字が浮かび上がるボードを用意しました。その文字は今後の大型アップデートの内容のヒントになっていて、「あ、ということは次はこれが来るんだ」ということがファンにはわかるという遊び心がありました。



『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』ではある位置から撮影すると立体的に見えるというトリックアートを使った撮影コーナーもあって、皆さん炎殺黒龍波を喰らっているシーンを撮影していましたね。



どれもゲームの中ではできない新たな体験だと思います。『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』は昨年に続いて個室に入ってアイドルに触れ合えるものでした。同じようにキャラクターとモーションを使ってコミュニケーションを楽しむというものは『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』も同じ仕組みなんですが、そちらは壁に配置してあり、『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』は個室です。

実際にファンの皆様と向き合っているマーケッターやゲームの企画、開発メンバーから、「絶対に個室のほうがいい」と強く言われたからなんです。逆に『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』チームからは、「個室じゃないほうがいい」という意見がありました。




――各タイトルのチームがユーザーの特性などを理解されていると。

そうです。だから、それぞれのファンがどうしたら喜んでくれるかを考えた結果が今回のブースになります。ブース全体をプロデュースするのが僕の役割でしたが、各タイトルでそれぞれユーザーさんの特性を考えて作られています。

――ブース全体をプロデュースする中で、何か苦労されたことはありましたか?

それぞれのタイトルごとに、世界観だったり楽しさはまったく異なっている中で、KLabGamesとしてのブランドの姿勢を示す、認知していただく部分については、非常に苦労した面もありました。

それぞれのタイトルの良さを潰してはいけないので、バランスを保ちつつ、皆さんが遠めから観たときには誰が見てもKLabGamesブースだとわかるブランドイメージの統一感を出し、逆にそれぞれのタイトルの展示コーナーの近くに来たときにはその世界観だけに浸れるという作りを目指しました。見る方たちがどういった気持ち、スタンスでブースにいらっしゃるかをイメージしながら設計しました。




――確かに遠くからでもKLabGamesのブースだとパッとわかりました。

そう見えるように色々工夫しました。例えば、他社さんのブースをイメージすると、その多くが黒をメインに赤や青のロゴというブースだと思いますが、KLabGamesは白を基調にしました。

パッと見て白がメインで、そこにピンク色のロゴと、部分的に差し色として黒が入っているという。ブース同様、コンパニオンさんの衣装やグッズについても同じ色使いになっています。その色の配分を見れば「これはKLabGamesのブースなんだ」とイメージとして伝わるようにデザインしました。


――では最後に、KLabGamesの今後の展望についてお聞かせください。
 

私たちが掲げている「3 PILLARS」コンセプトの3番目にあたる【Original Creations】を実現するため、『禍つヴァールハイト』『ラピスリライツ』がプロジェクトとして動き出し、着実に進んでおります。

KLabGamesは開発メンバーからマーケティングスタッフ、クリエイティブスタッフまで、全員が同じ方向を向いてより良いものを求めてやっております。

そうした私たちの考え方に共感していただけて、自分も新しい挑戦をしてみたいという方がいましたら、チャレンジしやすい環境だと思いますので、ぜひ一緒に働いていただきたいです。

 

KLabオフィシャルサイト


 
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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