【セミナー】ディライトワークスが円滑な作業環境を作るテクニックを伝授…プランナーの役割は”チームの仕事を作る”こと

 
ディライトワークスは、12月19日、ゲーム開発者向けの技術勉強会「DELiGHTWORKS Developers Conference」(DDC)の第1回を開催した。本稿では、「DDC」の概要とともに、今回の発表内容をまとめて掲載していく。
 
「DDC」とは、ゲーム業界で活動しているクリエイターや、ゲーム業界を目指す人たちに向け、ディライトワークスが開催する勉強会だ。同社所属の開発者が登壇し、テーマに基づいた講習を行っていく。なお、12月19日の回が初回であり、今後も月に1度程度の頻度で開催することを予定している。
 
記念すべき第1回の登壇者は、ディライトワークスのDELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studiosでシニアゲームデザイナーを務める早坂貴志氏だった。「実践で使えるプランナーのテクニック」をテーマとして、ゲーム開発におけるプランナーの思考プロセスについての講習を行った。
 

▲今回登壇した早坂貴志氏。1999年にエレクトロニック・アーツに入社しQAを経験。その後は、スパイク・チュンソフト、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、を経由して、ディライトワークスに入社。ディライトワークスでは開発当初から『Fate/Grand Order』の開発にも携わっていた。
 
早坂氏は、今回の講習において、多岐に渡るプランナーの作業工程の中でも、最も多くの時間を費やす実製作にまつわる部分について、何を意識しながら作業にあたるべきかを解説した。
 
●コミュニケーション
まずは、製作現場において欠かせない「コミュニケーション」について。ここで、早坂氏は実例として「このタスクの進捗、どうですか?」、「このタスク、終わりました?」という、現場でよく耳にする質問を挙げた。
 
これに対して起こる問題が、タスクが完了したかを聞かれているのに進捗を答えたりするような、質問者と回答者の意図がかみ合わないケースだという。
 
はい、いいえで応えられるような質問は「クローズドクエスチョン」、制約を設けない質問の仕方を「オープンクエスチョン」と呼ぶことを早坂氏は取り上げ、それぞれ「クローズドクエスチョン」に対しては「クローズドアンサー」で答えるべきとした。
 

 
これは、回答者だけでなく質問者側も意識し、自分の質問が「クローズドクエスチョン」なのか「オープンクエスチョン」なのかを明確に伝えるようにすることで、円滑なコミュニケーションが生まれるのではないかと早坂氏は提案した。
 
●命名
次に、プランナーにとしては避けられない「命名」の作業について。そもそもなぜ名前が重要になるのかという点に、早坂氏は注目した。
 
その理由として「取り扱いのコスト低減」を挙げている。例として、ゲーム開発の現場において、良く耳にする言葉の数々を紹介した。普段何気なく目にし、耳にしている言葉ではあるが、こうした優れた命名は、共通の認識を生み出すと早坂氏は主張した。
 

 
ひとつひとつの事象や事柄に名前をつけることで、それぞれをいちいち説明する必要がなくなる。これによる、工数が減るというのが命名よって生まれるメリットである。さらには、コミュニケーション不全を減らすことに繋がっていくとまとめた。
 
●ツリー構造
実際にゲームのプランをたてる作業においては、「ツリー構造」の思考の重要になることも示唆した。まずは「何をしたいのか?」を明確にし、それを「目的」として始点に設定する。そこから、それを実現するための「手段」へと分解していく。
 
そうして導き出された「手段」は、新たな「目的」へと変わり、それを実現するために次の「手段」を導き出していく。そうすることで、頂点にある大きな「目的」の実現に必要な「手段」がはっきりと見えるようになる。
 

▲ツリー構造の例。この「ツリー構造」の考え方は、ゲーム開発に限った話ではなく、あらゆる場面に応用が利くので、日常的に意識しておくことを早坂氏は勧めている。
 
ゲームシステムを作っていくにあたっては、「マトリクス図」や「チャート図」を作ることで、現場の混乱を防げる。
 
●マトリクス図にする
まずは例として、2種類のマトリクス図から、『Fate/Grand Order』のシステムを作るうえで、どのようなマトリクス図ができるかを解説している。
 


▲それぞれ、テキストだけで説明するよりも、こうして図式化した方がわかりやすくなる。当然のことではあるが、自分の頭の中にあるものをこうして図式化することで、現場への伝達が容易になる。
 
●チャート図
「チャート図」の解説では、誰もが知っている「じゃんけん」の相関図をベースに使用している。ここでは代表的な例として「じゃんけん」を挙げているが、昨今のスマホゲームにおける属性の強弱関係はこの「チャート図」に現されているものが多い。
 
つまり、こういった図式化は現場での伝達だけでなく、プレイヤーへのルール解説の簡略化のためにも必要なプロセスであることが分かる。
 


▲関係が複雑であればあるほど、「チャート図」の必要度は高くなると言えるだろう。
 
●リスト化する
プランナーとしては、チームの統括にも気を配っておきたい。ゲームに必要なものを、カテゴライズしたうえでリスト化することで、必要なパーツを明確にする。
 
そうすると、それらを作るために必要なプロセスも見えてくるので、そちらをまた別途リスト化する。この「要素のリスト」と「やること(ToDo)のリスト」をつくっておくことで、作業工程の管理がしやすくなる。プランナーは、とにかくこのリスト化から着手してみることを、早坂氏は強く推していた。
 

 
●検算する
ひとつ、忘れてはいけないこととして「検算」の必要性についても解説した。自分の中でアイデアが生まれたとき、それを実行することで生まれるメリットとデメリットを考える。ここからさらに、そのアイデアを実行しないことで生まれるメリットとデメリットについても考察する。
 
こうすることで、それぞれ2パターンのメリットとデメリットが浮かび上がってくる。これらを比較することで、そのアイデアを実行するべきかどうかを考えなくてはいけないと、注意を促した。
 

 
出来上がったものを「検算」する際には、「無理やり初心者になる」ことで、ユーザーライクな開発ができることも付け加えた。
 

▲本当の初心者であるユーザーにとっては視覚情報すら意識して見ることができないデザインになっていることも多い。
 
とはいえ、ゲームの開発過程から制作までゲームのことを全て知り尽くしているプランナーが改めて初心者の気持ちになることは難しい。そこで初心者になるための方法として、早坂氏が提案したのは、端末を反転させてプレイする「逆さまプレイ」だ。現場でも冗談と捉えられてしまうことも多いそうだが、視覚情報を得られない、操作がおぼつかないという状況を意図的に作るには、これほどのことをしないといけないようだ。
 
●まとめ
最後に、早坂氏はプランナーの業務について、「チームの仕事を作る」ことがプランナーの役割であるとまとめた。
 
「チームの仕事を作る」ためのプランナーであるからこそ、今回の講習にあったように、円滑なコミュニケーションや、スムーズな伝達のための工夫が必要となってくるのだろう。 
早坂氏による講習が終わったあとは、ディライトワークスからいくつかのお知らせがあったので、そちらも合わせて紹介していく。ひとつ目は、ディライトワークスが制作した、"PMのためのガイドブック"の公開。こちらは、今回の講習参加者全員にも配布された。
 
 
▲ガイドブックの内容を一部抜粋した写真。
 
コミックマーケット95に初出展することや、恒例となっている「肉会(MEAT MEETUP)Vol.8」の開催についても発表された。次回の肉会の開催日は2019年の1月11日の20時からとなっている。
 
 
 

肉会 Vol.8参加申し込みページ

 
"ディレクター特化型"の採用イベント「創点 弟子入りプロジェクト」の次回開催が、2019年1月27日であることも発表された。「新春! 塩川洋介独演会」と題し、10時から20時までの間、1日時間をかけて行われる予定だ。
 
 
 

創点 弟子入りプロジェクト「新春! 塩川洋介独演会」参加申し込みページ


そして、「DDC」の第2回についての情報も公開された。次回は、「CEDEC+KYUSHU 2018」での講演「R&Dことはじめ ~ゼロから始める研究開発~」に、内容を追加してリファインした「DDCバージョン」の講習が行われる。
 
開催日時は2019年の1月23日の20時から。「CEDEC+KYUSHU 2018」に参加できなかったという人にとっては、またとないチャンスになる。
 

 

DDC vol.2参加申し込みページ

 
「DDC」では、ディライトワークスの開発現場の技術に触れられるだけでなく、講習後の懇親会で、登壇者やディライトワークス社員の方々と直接お話する機会も設けられている。
 
これから毎月開催されるので、気軽にディライトワークスを訪ねる機会が得られる。「DDC」を通して、ディライトワークスのものづくりに触れてみてはいかがだろうか。
 
 
(取材・文 ライター:宮居春馬)
 

 
■『Fate/Grand Order 』
 

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(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT
FGO PROJECT

会社情報

会社名
FGO PROJECT
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ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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