【年始企画】大きく飛躍した「RAGE」と「OPENREC. tv」 CyberZ青村陽介氏が語る2018年の取り組み 今年は「えー!」と驚くようなことを複数

木村英彦 編集長
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スマートフォンゲームアプリ業界の最前線で働く方々に話を伺う年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2018-2019」。これまでは市場動向の振り返りと展望をメインとしていたが、今回は、各社の個別の状況にフォーカスし、2018年の取り組みや課題、そして、2019年の展望について語ってもらうことにした。

今回は、CyberZ取締役の青村陽介氏(写真)にインタビューを行い、ゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」とともに、年々開催規模が拡大し、国内最大級の規模に成長したeスポーツ大会「RAGE」を中心に振り返ってもらいつつ、2019年の取り組みを語ってもらった。


■青村陽介氏プロフィール
2009年にサイバーエージェントに入社。2010年からグループ会社のCyberZに入社。広告営業、マネージャーなどを経て、2013年にCyberZ取締役員に就任し、2015年からゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」およびeスポーツ大会「RAGE」に携わる。


――:よろしくお願いいたします。2018年の事業展開を振り返っていただきたく思います 

全体をみると、「OPENREC.tv」のユーザー数が非常に伸びたかと思います。今年は特にコンテンツ拡充に注力しました。番組数については月間で100本くらいになりました。1年前は30本ほどでしたので、一気に増えたといえます。ストリーマー(配信者)さんの番組を充実させたほか、新しい動きとして、eスポーツ関連の番組や、芸能事務所とのお取り組み、Vtuber がゲームするといったコンテンツにも力を入れました。

eスポーツの番組については、カプコンプロツアーやオーバーウォッチのワールドカップ、レインボーシックスの世界大会など、RAGEを含めて国内外の大会を配信しました。全体として、世の中で起きている eスポーツ のコンテンツが非常に増えていることを感じさせるものになったと思います。同時に視聴してくださる方も市場全体で増えてきている実感があります。

また、各社のお話などを聞いていると、eスポーツをやらないと取り残されるのではないかという危機感が出ているようにも感じます。当社が大会を実施する際、必ずライセンスホルダーに合意いただいてから実施をしているのですが、お話をお聞きしている限り、eスポーツを検討に入れていないという企業はほとんどないように感じております。

 



――:番組の充実については、スタジオや機材が充実したことの影響が大きいのでしょうか。

はい。2018年の2月に現在のeスポーツスタジオを作りました。eスポーツスタジオだけでなく、番組スタジオ、控室や作業スペースも増え、機材も充実させ、画作りもグレードアップしました。ただ、今後の展開を考えると、もっとキャパシティを上げたいですね。


――:相当な規模に見えますが、さらなる拡大が必要ということですか。番組も拝見しましたが、映像もクリアですよね。

そこはかなりこだわっています。機材もゲームの配信においては国内でもトップクラスと誇れるようなものを揃えました。海外の企業様も何社も視察に来られましたが、しっかりと整備した機材に感心してくださる方ばかりでした。あとはメディア側も機能改修をかなり重ねていて、1080p/60fpsの高画質で放送できるようになっています。


――:はい。画質がいいのにそれほど重くないとも感じました。

そこのバランスが凄く難しいんです。その点は日々研究開発を行っていまして、いまも追求し続けている重要事項です。ラグをほぼなくす研究もやっておりまして、最小で0コンマ秒台の低遅延を実現する「超低遅延モード」の正式版をリリースさせて頂きました。2019年はさらに良い視聴環境が提供できるようにしていきたいです。


――:またeスポーツ大会「RAGE」についてはどのくらい主催されたのですか。かなり増えたなと感じているのですが。

「RAGE」は、大きな大会は1年間に4回やりました。さらにそれに関連する予選も2回ずつやりましたので、オフラインでの大会は12回やったことになります。これ以外には、『Shadowverse』のリーグを11回、『ストリートファイター』のオールスターリーグも10回ほどやりました。関連のイベントや放送含めて、合計で40回近くRAGEとしての企画を行ったことになります。


――:同時に、御社の活躍もありますし、他社もeスポーツの大会を積極的に行っていて、社会での認知度が上がったように思います。どう評価されていますか。

弊社で実施したeスポーツ認知度調査では、認知率が前年の2倍、約5割の方にeスポーツという言葉が、浸透していることがわかりました。eスポーツにそこまで詳しくない人にも知っていただけること自体は本当に素晴らしいことだと思っています。また、今年の流行語大賞に入ったことはとても喜ばしいことです。言葉を流行らせることは大きなお金をかけたとしても難しいことだと考えています。自然に言葉が流行っているのはそれだけで価値があることだと思います。

ただ、その一方で、eスポーツの流行に関して、焼き畑にしてしまうような事業展開や、何も知らない企業が参入してきて市場を食い散らかしてしまうのではないかと懸念される方もいらっしゃるのも事実です。ユーザー、選手、チーム、メーカー、主催者、パートナー各々がWINになるような良質な大会を今後も開催し続けて、「eスポーツってこういうことだ」ということを世の中に示し続ける必要があります。



――:大会をされていて、eスポーツをどうビジネスにしていくか。2年ほど前までは手探り感があって、とにかく良い大会をやって人を集めようといった感がありました。今年に入ってビジネス面で良い兆候が出てきたかと思います。

そうですね。「これはもしかするといけるかもしれない」といった感触です(笑)

スポンサー企業からも前年と比較して1段上のスポンサードをいただけるようになりましたし、RAGEでは「LoL」の大会を実施した際、チケットの販売も行いました。チケットを大規模に販売したのは初めてでしたので不安もありましたが、思ったよりも売れて手応えを感じました。あとはOPENREC.tvをみると、課金の機能がありますので、そちらも伸びています。少しずつですがエコシステムができはじめてきており、来年は期待が持てるのではないかと感じています。

また、収益源も多様になってきました。CyberZの子会社としてeStreamという会社を設立しました。こちらではオンラインくじサービス「eチャンス!」を展開し、グッズ関連のビジネスを展開しています。こちらも順調です。

 



――:CAグループとの連携が強くなっていますよね。

今年は力を入れて取り組んだ事項の一つです。ここ最近の決算説明会でも毎回eスポーツの話が入っていますし。グループ全体として取り組むいい流れになってきたかと思います。


――:ここまでできるのはやはり運営体制が強化できていることが大きいのでしょうか。

はい。いい人材を多く採用できたことが大きいですね。eスポーツへの注目度が上がっていることが背景にあると思っています。合否の基準は変えていませんが、例年の3倍位に応募が増えました。いいチームができて、良いコンテンツを作る原動力になっていると感じています。


――:どういった方が多いのでしょうか。

ゲームの好きな方と、伸びている市場で成長したいと考える方が多いですね。テレビ番組制作会社やイベント運営会社出身の方が全体の3分の1くらいで、全く違う業種からの応募者もいらっしゃいます。アパレル業界や家具業界、業務用掃除機の会社、ガスバーナーのトップ企業からの転職など、全然違いますが、皆さん優秀です。この1年採用した方がこれから2、3年ですごく効いてくると考えています。


――:全く異業種からの転職でも問題はないのでしょうか。

弊社としては、スキル重視の採用はしていません。むしろ、会社の文化や社風にどれだけマッチしているかを最も重視しています。即戦力として期待はできないのですが、文化にマッチしている人だと成長速度がすごく早いんです。半年程度見ておけば、スキル部分でも十分経験者に追いつくことができます。研修2、3日やったら現場に入ってもらって、1週間くらいでスタジオのフロアに出てもらっています。もちろん、トレーナー=トレーニーのセットにして成長の支援も行っています。


――:文化マッチとはどういうことでしょうか。

いくつかあるのですが、変化への対応力、変化に強い人材を求めている、ということです。あとはリスクをとってチャレンジすることを恐れないことです。eスポーツのこの部分しかやりたくないんですという人は難しいです。RAGEをやりたいという人に適正や事業状態を総合的に判断し、OPENREC.tvに行ってもらうこともあり得ます。そこで嫌だと言われてしまうと、組織として変化への対応力が落ちます。組織が事業の変化に耐えられなくなってしまいます。組織も事業もセットで市場の変化に先んじて対応していけることこそ、こういった新しい市場では特に大事なことだと考えています。
 



――:2019年の展望と取り組みをお願いします。

新しいことをどんどん仕掛けていきたいですね。RAGEでは、リーグをもっと楽しんでいただけるものアップグレードして開催しますし、RAGEのイベントも喜んでいただけるような仕掛けを検討しています。また、今年期待しているのは、モバイルのeスポーツシーンです。いろいろな会社からお話を聞いていると、今年は現状ある素晴らしいタイトルに加えて、いくつも良いタイトルが出そうな感じで、盛り上がりが期待できるかもしれません。


――:モバイルのeスポーツについては、何をやっているのか分かりづらいものもあって、色々と難しい部分がありましたよね。

「これがモバイルのeスポーツです」というものを何かつくれないかなと考えています。eスポーツ元年と言われだしたのが2015~2016年頃からだったと思いますが、その頃、開発を始めたタイトルがそろそろ世の中に出てくるタイミングになっています。モバイルゲームの開発期間が2~3年かかるといわれていますから。選手がモバイル端末でプレイしている姿はPCゲームをプレイしている姿と比較して独特な絵で、このプレイしている姿をうまく活かした絵作りもできないかなと考えています。


――:海外の大会を配信しましたが、海外展開は強化されるんでしょうか。

はい。こちらも準備を進めています。OPENREC.tvを海外で視聴しやすくなるような環境整備を行いたいです。昨年はRAGEで、G2 EsportsやFaker選手、Bang選手に来てもらいましたが、それも今年の展開を踏まえた布石です。日本のeスポーツシーンを作るのが第一目標ですが、日本のシーンを海外のファンにも見ていただきたいと考えています。海外の大会とは少し違った雰囲気となっていて、海外の方にも新鮮なものに見えるはずです。


――:OPENREC.tvの番組についてはいかがでしょうか。

OPENREC.tvが一番重視しているのは、ストリーマーさんに活躍していただく機会をたくさん作っていくことです。これまでやっていたことですが、この点は変わりません。今年も昨年以上にやっていきたいですね。


――:事業面ではどういったことをされるお考えでしょうか。

まだお伝えできないのですが、皆さんが「えー!」と驚くようなこともいくつか実現できるのではないかと思います。新しい産業では、経験が物を言うと思われがちですが、若くて変化に対応できる人がそこに100%の時間を使うこと、そういった組織・人材がチャレンジをし続けることが大事だと思っています。そうすると業界でもベテランの皆さんにも引けを取らない発想や機会を生み出せるのではないかと考えていて、会社としても大事にしていることです。ご期待いただければと思っています。


――:ありがとうございました。

株式会社CyberZ
https://cyber-z.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社CyberZ
設立
2009年4月
代表者
代表取締役社長CEO 山内 隆裕
決算期
9月
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