【レビュー】「サガ」ファンのライターが『ロマサガRS』成功の理由を考察…なぜファンは全滅必至の高難度クエストに夢中になるのか


スクウェア・エニックスとアカツキ<3932>がタッグを組んで開発したスマートフォン向けRPG『ロマンシング サガ リ・ユニバース(ロマサガRS)』。
 
「サガ」シリーズ最新作となる本作は、2018年末にリリースされてからすぐにApp Storeセールスランキングで上位となった注目タイトルだ。本作がここまで人気となった理由とは何なのか。シリーズファンである筆者が本作の魅力を通してヒットした要因を紐解いていく。
 
なお、本稿ではいち『ロマサガ』ファンの筆者目線で『ロマサガRS』の魅力や成功の秘訣を分析してお伝えしていくが、一方で開発陣がどのような”想い”を持って『ロマサガRS』を作り上げたかについても、下記の関連記事でお届けしている。こちらの記事では、スクウェア・エニックスとアカツキの両社から、制作に携わったキーマンたちにインタビューを実施。ここでしか聞けない貴重な制作秘話が語られているので、興味を持たれた方は是非ご一読いただきたい。
 
【関連記事】
【インタビュー】スクエニ×アカツキの強力タッグによって誕生した『ロマサガRS』…そのヒットの秘密に迫る!(前編)


「サガ」といえば、1989年にゲームボーイで発売された『魔界塔士 Sa・Ga』を皮切りに始まった人気シリーズ。『ロマサガRS』は1995年にスーパーファミコンで発売された『ロマンシング サガ3(ロマサガ3)』から300年後の世界が舞台となる。
 
▲上記のインタビューでも語られていたが、タイトル画面の曲は「サガ」シリーズの楽曲を手がける伊藤賢治氏の書き下ろし。新曲にも関わらず、懐かしさと新しさが融合した『ロマサガ』らしい楽曲に仕上がっている。
 

■閃きこそが新たな力!今の時代も色褪せぬ「サガ」らしさの詰まったバトルを実現


ポルカやヴァルドーなどの本作オリジナルキャラクターを筆頭にストーリーが展開する本作には、モニカやバーバラ、アルカイザーといった歴代のシリーズからもキャラクターたちが多数登場。手に入れたキャラクターで5人パーティを組み、バトルを繰り広げていく。
 
 
▲メインクエストでは、オリジナルのストーリーが展開。主人公のポルカがさらわれた妹リズを探すため、魔獣の手から人々を守る塔士となって冒険を繰り広げる。
 
1989年から続く長寿シリーズなので、ファンになった年代によって「あのタイトルが好き」「このキャラクターがお気に入り」という好みのシリーズは異なるだろう。多くのシリーズからキャラクターが登場するため、「サガ」を遊んだことのあるプレイヤーなら、きっと当時を思い出させてくれるはずだ。当時使用していたメンバーでパーティを組んで攻略する、といった楽しみ方もできる。
 
▲筆者は『サガ フロンティア』に思い入れが強く、原作ではストーリー上の都合で一緒のパーティには入れられなかったブルーとルージュをパーティに入れてプレイしている。双子にも関わらず戦う運命にあった2人をここで共闘させられるのは、非常に感慨深い。
 
また、本作では「閃き」「陣形」「コマンド選択」といった従来のシリーズにあったシステムが踏襲されているのもファンにとっては嬉しいポイントだ。キャラクターを入手した時点では通常攻撃しかできないものの、バトル中に「技を閃く」ことで新たな技を習得し、以降のバトルで使用可能となる。本作ではひとりのキャラクターにつき3つまで技を習得できる。
 
▲バトルはコマンド選択式。技の発動にはターン開始時に溜まるBPが必要となるが、消費BPを満たしていれば好きな技を繰り出せる。
 
 
▲技を閃いた際には頭上で電球が輝く。シリーズファンの中には、この瞬間がたまらなく好きだという人も多いのではないだろうか。前述の通り、本作では1キャラにつき閃く技の種類は3つまでだが、代わりに技のランクアップという形で何度も閃きの快感を味わえるようになっている。
 
また、「陣形」もバトルにおいて重要な要素だ。陣形ごとにキャラを配置する位置によって腕力が上がって与えられるダメージが増加したり、素早さが上昇して先制しやすくなったりと様々な効果を得られる。キャラクターはそれぞれ装備できる武器の種類が決まっており、武器に見合ったパラメータがダメージに反映される。技の効果や陣形を組み合わせることで、幅広い戦術をとれるのもバトルを盛り上げる要素のひとつとなっている。
 
▲小剣の攻撃力に反映される器用さが上がるハンターシフト。
 
▲全員の素早さが上昇するラピッドストリーム。
 

■独自の「スタイル」システムが育成と戦いの幅をさらに広げる

 
キャラクターは基本の能力値に加え、「スタイル」と呼ばれるものによって戦闘方法や成長傾向が変化する仕組みになっているのも本作の特徴だ。例えば、同じキャラクターでも「[心を射貫く者]クローディア」、「[森の守護者]クローディア」といったように色々なスタイルが用意されており、スタイルごとにレベルが設定されている。また、レベルが上がることで恩恵を受けられる能力値も異なるため、育成後もキャラクターの特色に差が現れる。
 
さらに、スタイルによって閃く技も異なるため、複数の敵を相手にするときは全体攻撃のあるスタイルで、単体の敵が相手であればデバフ効果のあるスタイルで、といった具合に使い分けられるようになっている。
 
また、同じキャラクターであれば別のスタイルからひとつだけ技を「継承」させて使用できるようになる。1キャラクターにつき習得できる技は3つまでだが、継承させれば4つまで技を使えるようになるというわけだ。
 
▲スタイルにはA、S、SSといったようにレアリティが存在する。
 
 
▲技だけでなく、スタイルによって「アビリティ」も異なる。レオニードの場合、Sの[聖杯の守り手]のスタイルで戦うと攻撃時やターン開始時に敵を毒にするという効果を得られる。
 
筆者としては、ひとりのキャラクターが技を習得できる数に限りがあるというのも本作にハマったポイントだ。敵によって弱点が違うため、「この敵に挑むときは対策としてこの技を持っているキャラクターを連れていこう」、「このステージは単体攻撃をしてくる敵が多いのでパリィを使えるキャラクターがいるな」とパーティ編成に悩むことも多い。それだけ戦術を練って挑むからこそ、強敵に勝てた時の喜びは一入だ。
 
▲先日、ついに常設イベント「魔塔ロックブーケ」のVeryHardをクリアできた筆者。このときばかりは思わずリアルにガッツポーズをしてしまったほど嬉しかった。
 
これまでの「サガ」シリーズであればマストともいえる成長システムも、本作で初めて「サガ」をプレイするユーザーにとっては珍しいシステムとして映るだろう。スタイルのレベルを上げることでもパラメータは上がっていくが、本作では加えて戦闘後にもパラメータが増加する仕組みになっている。
 
▲戦闘終了後、一定確率でランダムにパラメータが上昇する。
 
パラメータというのは、前述したキャラクターの基本能力値のこと。スタイルはあくまで閃く技、アビリティ、そして基本能力値に対する補正が主で、キャラクター自身の基本能力を上げなければ強くは育たない。そのため、育成、クエストをクリア、難易度の高いクエストをクリアするために育成、戦術の練り直しといったゲームサイクルができあがっている。新しいスタイルを手に入れたからレベルを上げて育成終了、ではなく、愛を注ぎ使い込むことで強さを手に入れられるようになっているという点はまさに「サガ」シリーズの系譜を汲むポイントだ。
 
▲スタイルごとにレベルがあり、成長させると基本能力値の補正が高くなる。
 
▲キャラクターは、武器や防具を装備させることでも強化可能だ。武器や防具は、主にメインクエストの報酬として得られる。難易度が高いほど強力な武具を入手できる。
 

■随所に見られる『サガ』らしさはソーシャルゲームに新風をもたらす

 
ここまでは本作のプレイを通して筆者の感じた魅力について書いてきたが、ではどうして『ロマサガRS』がここまで多くのプレイヤーを虜にしたのかを考えていきたい。
 
出展:App Annie
▲App Storeの売上ランキングでは、リリースから1ヶ月以上TOP30位圏内をキープするなど好調な出足となった。直近でも、何度もTOP10入りを果たすほど上位に定着している。
 
大きく挙げられるのは、バトルにおける絶妙な「バランス」ではないだろうか。先日から本作のTVCMが流れているが、「全滅」というワードを強くプッシュした内容になっている。
 
【『ロマンシング サガ リ・ユニバース』TVCMバトル全滅篇】
 
確かにプレイしてみると分かるが、本作で出現する敵はメインクエストであってもかなり強敵揃いの印象を受ける。
 
 
▲攻撃力の高いインパラやこちらを眠らせてくるレブナントの大群など、一見「どうやったら勝てるの?」と思わせられるステージも多い。
 
全滅してしまった場合、他のソーシャルゲームでは課金アイテムを使用して復活という救済措置が設けられていることも多いが、本作にはない。つまり、やられる前に倒すというRPG本来が持つ攻略の楽しみが設けられているのである。また、全滅するほどの強敵が出現するとはいえ、敵の弱点を突く編成にしたり、状態異常を与えて対策するなど、戦術をしっかりと立てて挑めば必ず活路を見い出せる造りになっている。こういったポイントが、「サガ」シリーズらしいバトルの緊張感を生み出している。
 
そもそも、『ロマサガ』シリーズのバトルは難易度が高いということでもおなじみだ。シリーズのファンであるほど、むしろ難易度が高くないと物足りなさを感じるという人もいるだろう。そういったファンが期待するポイントを、本作でもしっかりと踏襲している格好になる。
 
確かに敵は強いが、パーティ編成で戦術を考えることで勝てるというバランス。そして全滅してしまったら後はないという緊張感も相まって、勝利を手にした時はこれ以上にない喜びを得られる。例え負けても「次はこうしてみよう」「育成に注力してみよう」など、勝つための意欲が湧き出る仕組みとなっているのだ。
 
 
とはいえ、「ソーシャルゲームなんだし課金で強いキャラを手に入れる必要があるんでしょ?」と問われると、本作に関しては全くそんなことがないと断言できる。ゲームスタート時にもらえる「SS[傭兵だ、好きにやる]ヘクター」やイベントクリア報酬の「S[うるさい人はキライよ]ロックブーケ」など、いわゆる配布キャラクターも第一線で使用できるほどの能力を秘めているのもポイント。事実、報酬でもらえるロックブーケはレアリティがSで、最高レアリティではないものの、筆者のパーティにおけるメインメンバーのひとりとして大活躍中だ。ゲームをプレイしているだけで強力なキャラクターが手に入るので、工夫次第で実はガチャを引かずとも進めていくことは可能となっている。
 
▲また、リリース時からプラチナガチャは毎日1回無料で引けるようになっている。コツコツとプレイすればキャラクターが増えていくので戦術の幅もどんどん広がる。
 
そのようなバランス設計になっているにも関わらず、前述した通りApp Storeの売り上げランキングでは上位をキープし続けているのもまた事実。それはつまり、多くのユーザーにガチャが回されて支持されているということに他ならない。では、何故このような結果が得られたのであろう。それは、キャラクターの魅力が大きいだろう。
 
本作のメインターゲットは、やはり「サガ」シリーズ既プレイの、30代であるのではないかと筆者は考える。SNS上でも、筆者と同世代と思われるユーザーから本作が強く心に刺さっているという感想が数多く見受けられる。
 
例えば、これまでに開催されたピックアップガチャに登場した七英雄は『ロマサガ2』をプレイした多くのユーザーを魅了した敵である。非常に強力な七英雄の討伐を目標に、多くのプレイヤーが長時間プレイに臨んだ。2018年の秋には七英雄を主人公とした舞台「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」が上演され、多くの『ロマサガ』ファンを虜にした。敵でありながら主役を張れるほどの人気を誇っているのだ。
 
他にも、『ロマサガ』『ミンサガ』のナイトハルトや『サガフロンティア』の白薔薇姫など、「サガ」シリーズはいわゆる脇役の中にも人気のキャラクターが多い。数多くの魅力的なキャラクターが存在し、『ロマサガRS』で手に入れられるからこそ、あの時の強敵を自分の手で育てたい、もう一度思い入れのあるあのキャラと一緒に冒険したいと思うのは自然な流れだろう。
 
 
また、ランキング上位をキープしているもうひとつの大きな理由として、運営側がユーザーの声を積極的に聞く姿勢があることと、その対応速度にあると考える。筆者はほぼリリース時から本作をプレイしているが、不具合などに対する対応がとにかく早いのだ。
 
▲2月20日行われたメンテナンスでは、クエスト出発時に編成を変えられるようになり、より快適に遊べるようになった。
 
12月6日にリリースされて以来、今日までクリスマス、正月、バレンタインと季節イベントを行っているが、それに加え強力なキャラクターと戦える「武闘会」や多くのアイテムが入手できた「財宝の穴」など、プレイヤーに好評な施策を打ち出せたのは大きい。
 
とはいえ、コアなファンが多い「サガ」シリーズであるからこそ、より遊び応えのあるコンテンツを求める声は多く、その点は本作におけるこれからの課題となってくるだろう。ただ、リリース時からメニューに表示されている「ギルド」のように、まだ実装されていないコンテンツもある。「チャレンジし続ける姿勢」を持つ開発チームなら、今後我々をあっと驚かせ、ワクワクさせてくれる大きな施策をきっと打ち出してくれるはずだ。
 
▲キャラクター育成に適していると好評だった武闘会。
 
冒頭で紹介したインタビュー記事からも分かる通り、開発チーム全体が「サガ」らしさとは何かという点に対して共通認識を持っているからこそ、ファンとしても今後に対する期待が高まる。筆者自身も、日々クエストを周回し、時に「全滅」の文字を大きく液晶に表示しながら、次はどんな展開を見せてくれるのかを期待しているファンのひとりである。長い付き合いになるゲームであるという確信を持っているからこそ、今後の展開にも心から期待したいものである。
 
高難易度のバトルやキャラクターといった「サガ」の魅力を十分に理解したうえで、スマホゲームとして必要な施策をきっちりと打ち出す。このどちらかが欠けても、ユーザーの支持は得られなかったはずだ。『ロマサガRS』を遊び始めて、隙間の時間に編成を考えるようになったり、高難度クエストの対策を考え出した時には、既にあなたは『ロマサガRS』、ひいては「サガ」の虜になっているはずだ。

 
(文 ライター:谷山義人)


 
■『ロマンシング サガ リ・ユニバース』
 

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ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI
株式会社スクウェア・エニックス
https://www.jp.square-enix.com/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高243億3600万円、営業利益57億円、経常利益52億700万円、最終利益13億4200万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
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