【DeNA決算説明会】第4四半期はゲーム事業の収益が急回復 「第2四半期の水準に回復できた」 周年効果と費用適正化による筋肉質化が奏功 



ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、5月10日、2019年3月通期の連結決算(IFRS)を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上収益1241億円(前の期比11%減)、営業利益135億円(同51%減)、営業利益(Non-GAAP)86億円(同53%減)、最終利益127億円(同45%減)と減収・減益だった。

ただ、第4四半期(2019年1~3月)の業績を見ると、売上収益295億円(前四半期比QonQで12%増)、営業利益49億円(前四半期は21億円の赤字)、営業利益(Non-GAAP)0(同15億円の赤字)、最終利益47億円(同17億円の赤字)となり、増収・黒字転換に成功した。前四半期の決算説明会で発表した計画に沿った着地となった。
 


決算説明会に臨んだ守安功社長(写真)は、「ゲーム事業で健全な収益性を確保し、第2四半期の水準に回復することができた」と収益回復した第4四半期の決算を振り返った。スポーツ事業をさらに発展させて、事業の柱に育てること、新規事業への投資も引き続き行っていく考えを示した。

また、事業セグメントの変更についての説明もあった。ゲーム事業とスポーツ事業は変わらないが、新規事業・その他に入っていたオートモーティブとヘルスケアが独立のセグメントとなる。他方、EC事業が独立したセグメントでなくなり、新規事業・その他に入った。注力中の新規事業を独立して説明することで「その進捗状況をわかりやすく説明したい」という意図がある。
 


今回は、第4四半期の状況を中心にレポートしていく。セグメント別の状況から見ていこう。


 
■ゲーム事業

売上収益211億円(同7%増)、セグメント利益51億円(同62%増)と大幅な増益を達成した。売上・利益ともに第1四半期と第2四半期の水準まで回復した。『ファイアーエムブレムヒーローズ』や『逆転オセロニア』『キン肉マン マッスルショット』など周年タイトルが寄与したほか、『メギド72』などのタイトルも好調に推移した。マーケティング費用や業務委託費などの見直しも行い、「費用の適正化と筋肉質化」を図った。
 


2020年3月期は、増収増益を目指していく。任天堂<7974>との協業タイトル『Mario Kart Tour(マリオカート ツアー)』や、ポケモンとの協業タイトル、DeNAの新作タイトルなど新作タイトルが業績拡大をけん引する。ただし、既存ゲームのみを取り上げていくと、減収減益になる見通しだという。
 


この日明かしたポケモンとの協業タイトルは、グローバルで人気を博す「ポケモン」を活用したスマホゲームで、今期より配信する予定だ。会場からも何度か質問が出たが、守安社長は「回答は差し控えたい」と詳細を明かさなかった。ゲーム内容やリリース時期、配信エリアなどの詳細は後日アナウンスするとのことだ。
 


 
■スポーツ事業

スポーツ事業は、売上高23億円(同16%増)、営業利益16億円の赤字(前四半期は24億円の赤字)だった。この四半期については、前四半期と同じく、プロ野球・横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)がオフシーズンであった関係もあって、営業損益は赤字となった。
 


2019年3月期では、ベイスターズの観客動員数が球団史上最高の200万人を突破したが、3月29日から始まったシーズンでもさらなる伸びが期待される。横浜スタジアムの増築・改修が順調に進捗し、一部が稼働を開始する。「今シーズンも観客動員数が順調で、稼働率も変わらない状況」。

また、昨年7月に経営権の譲渡が完了したプロバスケットボールチーム「川崎ブレイブサンダース」についても収益性の改善を行っているそうだ。「スポーツ事業の柱の一つとしてさらに発展させたい」としており、スポーツ事業の増収増益にも寄与してくる見通しだ。
 


 
■オートモーティブ事業

売上収益1億円(同203%増)、セグメント利益11億円の赤字(前四半期11億円の赤字)だった。まだ、先行投資フェーズだ。機器の導入費用や販促費などがかかるそうだ。次世代タクシー配車アプリMOVは、神奈川のタクシー会社からかなり利用されるようになってきたが、首都圏や京阪神などの地域での事業者への導入を進めていく。

 


また、SOMPOホールディンストとの合弁会社DeNA SOMPO Mobilityを設立し、DeNAの展開していた個人間のカーシェアサービスAnycaを引き継いで発展させていく。合弁会社は、これ以外にも、個人向けのカーリース事業も展開。2019年6月よりカーリース商品を首都圏と大阪、名古屋で販売していく予定だ。


 
■ヘルスケア事業

売上収益7億円(同27%増)、セグメント利益2億円の赤字(前四半期4億円の赤字)だった。こちらも先行投資の最中だ。2021年3月期には、ヘルスケア型保険とともに、がんの超早期診断の事業化を行っていき、その翌期から収益貢献を目指していく考えだ。

 


 
■ファンド設立

このほか、総額100億円規模の投資事業有限責任組合(名称は今後決定)を設立することを明らかにした。設立予定は2019年夏としている。守安功社長(写真)は、「当社は、永久ベンチャーとして様々な新規事業を生み出してきた。当社自体がスタートアップに直接投資したこともあったが、新規事業の生み出し方はもっと色々なやり方があっても良いということで、ファンドを設立することにした」と説明した。

ファンドの投資対象は、プレシードからその後のフォローオンまでの、いわゆるスタートアップ企業を対象にしており、業種や事業内容などについては特に制限せずに行う考え。とりわけ、「DeNA社内に在籍している起業家精神旺盛な社員への支援も積極的に行っていきたい」と意欲を示した。
 


 
■自社株買い

3800万株・500億円を上限とする大規模な自社株買いを行うことを明らかにした。実施期間については、取得規模が大きいことから、5月13日から2020年4月30日までとし、市場で買い付ける。資本効率の向上と経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行とともに、株主還元策として1株当たりの価値向上のため、と説明している。

 


決算説明会で、新規事業への投資やM&Aなど資金需要との関係を聞かれると、守安功社長は「成長に向けた投資を抑える考えはない」とコメントした。ゲーム事業とスポーツ事業で収益を稼ぎながら投資を行っていく。M&Aについては「積極的にやると言ってからまだ実現できていないが、利益が出てキャッシュを生んでいる会社を対象に考えている」と述べるにとどめた。

最後に2018年3月期の見通しは以下のとおり。業績予想は発表しておらず、定性的な情報のみとなる。
 


 
(編集部・木村英彦)
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1349億1400万円、営業利益42億0200万円、税引前利益135億9500万円、最終利益88億5700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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