【セミナー】ディライトワークスが語る、市場変化に耐えうる開発環境とエンジニアが成長する組織づくり


ディライトワークスは、6月26日に「DELiGHTWORKS Developers Conference(以下DDC)」の第7回を開催した。今回はディライトワークス所属の甲英明(かぶとひであき)氏が登壇し、近年のゲーム開発環境に起きている変遷と、これから標準となっていくであろう"モダンな開発環境"とはどういったものなのかについて講演を行なった。

「DDC」は、ゲーム業界で活動している人や、ゲーム業界を目指す人たちに向けて、ディライトワークスが開催している勉強会であり、今回で7回目の開催となる。今回はディライトワークス技術部でマネージャーを務める甲英明氏が登壇し、「モダンなゲーム開発環境とエンジニアが考える組織運営とは」と題したセッションを行なった。
 


▲ディライトワークス技術部マネージャーの甲英明氏。
 
まず、開発環境の変化の前に、ゲーム市場の変化から甲氏は話し始める。参考資料として、調査会社Newzooが制作した2018年版のレポートを提示しながら、ゲーム市場がいかに成長を遂げているかを示した。
 



 
しかし、市場が拡大していくに伴い、開発費や宣伝費は高騰していき、強力なタイトルも増えてきたことで市場のレッドオーシャン化も進んでいる。
 


 
そんな市場の環境に適応していくためにも、開発現場ではモノづくりの基本となるQCD(それぞれクオリティ、コスト、デリバリーの意)を強く意識することが必要だと甲氏は主張する。さらに、技術は日々進化しているため、開発を開始した段階では新しい技術が数年後には過去のものになっていることも少なくない。
 

▲そこで、甲氏が推進しているのが、守りと攻めを共存させるバイモーダルな開発体制だ。今回は、そのなかでも攻めの体制にあたる、モダンな開発環境を整備するための取り組みについてまとめている。
 
そもそも、モダンなWebアプリケーションを構成する要素は何かという疑問に対しては、アメリカの企業Herokuが過去に公開した"The Twelve Factors"を参照している。併せて、Pivotal社のKevin Hoffman氏がアップデートしたバージョンである" Beyond the Twelve-Factor App "も紹介している。
 





 
以上を見てもわかるように、モダンな開発環境と一言に言っても、必要となる要素は非常に多岐に渡る。
 
そこで、ディライトワークスがまず取り組んだのは、開発に専念できるような環境づくりだ。開発スケジュールがタイトな環境においては、開発工程の効率化は欠かせない。各工程の効率が良くなれば、より開発に時間を割き、専念できるようになる。
 

 
実例として紹介したのは、開発環境払い出しの流れの改良だった。これまで、サーバーやインフラのエンジニアが仲介していた部分を、自動構築ツールを使用することで省略する。これにより、コミュニケーションや都度の構築に時間を割く必要がなくなる。
 




▲自動払い出し環境の全体図式と、各手順の解説。


▲この仕組みを取り入れた結果をまとめた表。各所での所要時間が大幅に削減されているのがわかる。
 
もうひとつの取り組みとして、新規プロジェクトの開発現場におけるサーバー、インフラのアーキテクチャ例を紹介している。現在進行中のプロジェクトということもあり、詳細な図式や、数値は公開されなかったが、時流に合わせて開発環境を変化させる必要性を示している。
 

 
ここから少し話は変わり、エンジニアにとって理想的な組織の作り方という話になる。エンジニアの欲求を満たせる環境や、キャリアアップに必要な要素を支援する体制について解説となる。
 

▲この話をするうえで、甲氏が提示した、エンジンアがどんな人物なのかという考察の内容。



 
まずは、新しいことへの挑戦がしやすい環境づくり。これは、新規プロジェクトへの参画を推し進め、現在のスキルを重視したアサインではなく、中長期的な成長を重視したアサインにすることで、キャリアアップを意識することから始めている。さらに業務時間の一部をプロジェクト外の業務に充てることを許容しており、これが新技術の導入へのモチベーション維持にもつながっている。
 

 
そして、社内外を問わずに、発信の機会を多く設けているという点でも、ディライトワークスは特徴的な企業であると言える。大きな技術系イベントへの参加だけでなく、短時間でのプレゼンテーションを行う社内LTや、勉強会を主催だけでなく、共催でも積極的に行っている。また、今夏には開発ブログの開設も予定しているそうだ。
 


 
そして、キャリアアップを促進するためには、組織としてだけでなく個の強化にも注目しなくてはいけない。まず、個々の能力をより子細に把握するための方法として、甲氏は才能診断ツール「ストレングスファインダー®」の導入を推奨している。

 
▲アメリカのギャラップが開発したツールで、質問に答えていくことで、その人の思考、感情、行動における優先度が明確になっていく。4つのグループに分けられた34の資質の中から、上位5種類をはじき出してくれる。



▲「ストレングスファインダー®」を実際に使用した例も紹介している。エンジニアであれば、やはり思考力グループに分類される資質が高くなりやすい。その他にどのような資質を持っているのかに着目することで、その人物の輪郭がよりはっきりと見えてくる。
 
次に、現状と理想の差を埋めていくために、コーチングの実践を勧めている。甲氏は、コーチングに必要な要素を、傾聴、質問、承認、提案と定義している。メンバーが抱えている理想像は、現状とのギャップをはらんでいるケースが多い。このギャップを解消するために行動していくことが、コミュニケーションをしていくなかで重要となる。
 

 
そして、将来的にはメンバーを統率するリーダーとなるため、リーダーシップを身に付けることもキャリアアップしていくためには必要となる。ここで、優れたリーダーに求められるものとして、明確な目標を定めることで結束力を生む「ビジョナリー」、自らが率先して動くことで周囲を引っ張っていく「イニシアティブ」、自分から奉仕することで良質な関係を築く「サーバント」という3つの要素について解説した。

 
▲ビジョナリーやイニシアティブは先導者として結びつきやすい要素だが、自ら奉仕するサーバントは見失いがちな要素に見える。リーダーは、自らがチームのために動くことを忘れてはいけない。


▲個の強化に関するまとめ。
 
また、個をサポートし、組織での活動を円滑にするための方法として、聞き取りの機会を増やすことを甲氏は推奨している。内容として1on1、懇親会、ランチMTGという方法を例にあげているが、このなかでも、1on1は是非とも実施していくべきだと、特に強く勧めていた。
 


▲今回の講演内容全てをまとめたスライド。甲氏も言っていたが、あらゆる課題において正解と呼べるようなものはなく、色々なことを実践していくことが大切だ。今回甲氏が紹介した方針だけに固執するのではなく、これらを参考にまた新たな方針を模索すべきだろう。
 
以上で、甲氏による講演は全て終了となる。次回以降のDDCの開催に関しては現在未定となっている。今後の動向については、引き続きPeatixをチェックしてほしい。
 


■DDC(DELiGHTWORKS Developers Conference)
 

Peatix

ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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