家庭用ゲーム大手6社の単体決算、21年3月期は全社が50%超の増益を達成 "巣ごもり消費"背景に家庭用・スマホゲームが好調

家庭用ゲーム大手6社の「単体」の決算が出そろい、6社全てが前の期比で50%を超える大幅な増益を達成したことがわかった。新型コロナによる「巣ごもり消費」による世界的なゲームへの需要増加を背景に、採算性の高い家庭用ゲームのリピード販売やライセンス収益、あるいはスマホゲームが大きく伸び、いずれも利益を大きく押し上げた。

連結ベースの決算数字の比較では、セガサミーホールディングス<6460>のみが大幅な減益だったが、これは主に遊技機やアミューズメント機器、統合リゾートが新型コロナのネガティブな影響を受けたことによる。ゲーム事業を展開するセガそのものの業績は、営業利益159%増、経常利益180%増と好調だった。

事業を幅広く展開する他社も同様だ。バンダイナムコエンターテインメント(バンナム)は、親会社である持株会社の営業利益は7.5%増だったが、同社は73%増の428億円だった。コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)も同様で、持株会社の税引前利益は17.1%増だったのに対し、同社単体は113.6%増と大きく伸びた。

 



各社好調だったが、数字を比較すると、まず売上高で最も大きいのは2511億円のスクウェア・エニックス(スクエニ)で、前の期にトップだったバンナムを抜いた。スクエニは、ゲーム以外に伸び盛りの出版事業なども有していることも大きい。以下、KONAMI、セガ、カプコン、コーエーテクモと続いた。

 



利益の比較は少々厄介だ。会計基準の違う会社が入っていることや、開示されている内容に相違点があるため、直接比較しづらい。KONAMIの場合は、IFRS(国際会計基準)を採用しているため、細かくというと、売上についても比較には適さない。

共通点のある経常利益を見ると、スクエニが587億円、バンナム440億円、コーエーテクモ363億円、カプコン312億円、セガ225億円と続いた。IFRSを採用するKONAMIは、税引前利益が648億円だった。

 



最終利益については、一時的な利益や損失に大きく影響されるため、当サイトではあまり比較してこなかったが、あえてみていくと、KONAMIが435億円で1位、スクエニが413億円、バンナムが332億円、コーエーテクモが275億円、セガが256億円、カプコンが229億円と続いた。

 



利益率について見ていこう。通常の経営活動における企業の収益力を示す「売上高経常利益率(税引前利益率)」と、会社全体の収益力を示す売上高当期純利益率は下の表のとおり。

 



すでに載せた記事をまとめたものだが、各社の状況は以下のとおり。グラフなどは掲載していないが、詳細はリンク先を確認してほしい。


■コーエーテクモゲームス
売上高524億4300万円(前の期比49.1%増)、経常利益363億8300万円(同117.9%増)、最終利益275億3800万円(同123.6%増)と大幅増収増益となった。売上・利益とも過去最高を更新した。

パッケージゲームでは、任天堂<7974>の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の世界観を継承した『ゼルダ無双 厄災の黙示録』が累計出荷本数370万本を超えるヒットとなった。

スマートフォンゲームでは、『三國志 覇道』がイベントや大型アップデート、積極的なマーケティング施策を実施した結果、中期経営計画で重点目標として掲げていた月商10億円を達成した。

さらに海外では、IPを許諾し中国で配信中の『三国志・戦略版』がApp Store月間セールスランキングにおいて18ヶ月連続で上位5位以内にランクインし、引き続き高い水準で推移している。


■セガ
売上高1342億8500万円(前の期比41.7%増)、経常利益225億1700万円(同180.5%増)、最終利益256億2000万円(同425.9%増)と大幅増収増益を達成した。直近では最高水準の利益となった。

セガサミーホールディングス<6460>の決算報告では、コンシューマゲームが「飛躍的に伸長」とコメントしていた。

コンシューマ分野では、フルゲームについては『ペルソナ5スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(欧米版)』、『龍が如く7光と闇の行方(欧米版)』、『Football Manager2021』などの新作タイトルを発売したほか、高採算のリピート販売が好調に推移し、販売本数は4177万本(前期は2857万本の販売)となった。

また、F2P分野については、スマートフォンゲーム『Re:ゼロから始める異世界生活 Lost in Memories(リゼロス)』や『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(プロセカ)』などの新作タイトルに加えて、既存タイトルも好調に推移した。


■バンダイナムコエンターテインメント
売上高2507億6500万円(前の期比4.3%増)、経常利益440億5500万円(同69.0%増)、最終利益332億5700万円(同52.8%増)と大幅増益だった。営業利益と経常利益、最終利益については過去最高を更新したようだ。

ネットワークコンテンツにおいて、ワールドワイド展開している「DRAGON BALL」シリーズや「ワンピース」、国内の「アイドルマスター」シリーズ等の主力タイトルがユーザーに向けた継続的な施策により好調に推移した。

家庭用ゲームは、「リトルナイトメア2」等の新作に加え、「DRAGON BALL」シリーズ、「TEKKEN(鉄拳)7」、「DARK SOULS(ダークソウル)」シリーズ等、高採算のリピート販売が海外を中心に人気となった。


■スクウェア・エニックス
売上高2511億6800万円(前の期比28.9%増)、経常利益587億9600万円(同83.6%増)、最終利益413億9600万円(同70.8%増)と大幅な増収・増益を達成した。売上・利益ともに過去最高となった。

HD(High-Definition:ハイディフィニション)ゲームは、「FINAL FANTASY VII REMAKE」「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」等の大型タイトルの発売があったことに加え、カタログタイトルの販売が好調に推移したこと、ライセンス収入等により、前期比で増収となった。

MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)においては、前期に「ファイナルファンタジーXIV」と「ドラゴンクエストX」の拡張パッケージの発売があったため減収となったものの、同タイトルの継続課金収入等は好調に推移した。

スマートフォンゲームは「ドラゴンクエストウォーク」や「FFBE幻影戦争」等の既存タイトルが堅調であったことに加え、「ドラゴンクエストタクト」「オクトパストラベラー大陸の覇者」「NieR Re[in]carnation」の収益貢献によって、前期比で増収となった。


■コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)
売上高1956億2200万円(前の期比40.2%増)、税引前利益648億4800万円(同113.6%増)、最終利益435億5600万円(同102.4%増)と大幅増収増益となった。現行の会計基準では、売上と利益ともに過去最高となったようだ。

同社は、家庭用ゲームソフト大手で、コナミホールディングスの中核企業。家庭用ゲームソフトからソーシャルゲーム、スマートフォンアプリ、トレーディングカードゲームまで幅広く手がけている。アミューズメントやカジノ関連、スポーツ事業が新型コロナの影響で苦戦するなか、コナミホールディングスを増益に導いた。
 
モバイルゲームでは『プロ野球スピリッツA(エース)』を中心に『eFootball ウイニングイレブン2021』『実況パワフルプロ野球』などスポーツ系タイトルが引き続き好調を維持したほか、中国市場向けに「遊戯王 デュエルリンクス」の配信を開始した。

カードゲームでは「遊戯王トレーディングカードゲーム」のグローバル展開を引き続き進めたほか、「遊戯王ラッシュデュエル」の最新テレビCMの放映などで若い世代のユーザーへの訴求を展開した。

家庭用ゲームでは『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』の出荷本数が5月時点の累計で300万本を突破し順調に推移した。


■カプコン
売上高835億8500万円(前の期比22.5%増)、営業利益303億7200万円(同59.0%増)、経常利益312億9800万円(同66.3%増)、最終利益229億4900万円(同35.4%増)

・売上高:835億8500万円(同22.5%増)
・経常利益:312億9800万円(同66.3%増)
・最終利益:229億4900万円(同35.4%増)

シリーズ最新作『モンスターハンターライズ』が今年3月の発売から早々に全世界で出荷本数400万本を突破するなど好調に推移したほか、『バイオハザード RE:3』も390万本と順調に販売本数を伸ばした。

また、前期発売の『モンスターハンターワールド:アイスボーン』や前期以前に発売した『バイオハザード RE:2』など、採算性の高いリピートタイトルも根強い人気により利益を押し上げた。さらに、次世代ゲーム機向けタイトル『デビル メイ クライ 5 スペシャルエディション』を発売した。

加えて、モバイルコンテンツは、日本国内で『ロックマンX DiVE』のサービスを開始したほか、協業タイトル『街霸:対決(ストリートファイター:デュエル)』の中国でのサービス開始に伴うライセンス収益が利益に貢献した。

株式会社コナミデジタルエンタテインメント
https://www.konami.com/games/corporate/ja/

会社情報

会社名
株式会社コナミデジタルエンタテインメント
設立
2006年3月
代表者
代表取締役会長 東尾 公彦/代表取締役社長 早川 英樹
決算期
3月
直近業績
売上高1940億1100万円、営業利益336億4700万円、経常利益348億9300万円、最終利益278億2800万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
https://www.bandainamcoent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
設立
1955年6月
代表者
代表取締役社長 宇田川 南欧
決算期
3月
直近業績
売上高2896億5700万円、営業利益442億3600万円、経常利益489億5100万円、最終利益352億5600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社スクウェア・エニックス
https://www.jp.square-enix.com/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社カプコン
http://www.capcom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社カプコン
設立
1983年6月
代表者
代表取締役社長 最高執行責任者 (COO) 辻本 春弘
決算期
3月
直近業績
売上高1259億3000万円、営業利益508億1200万円、経常利益513億6900万円、最終利益367億3700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9697
企業データを見る
株式会社コーエーテクモゲームス
https://www.gamecity.ne.jp/

会社情報

会社名
株式会社コーエーテクモゲームス
設立
1978年7月
代表者
代表取締役会長(CEO) 襟川 陽一/代表取締役社長(COO) 鯉沼 久史
決算期
3月
直近業績
売上高681億700万円、経常利益341億6600万円、最終利益268億5200万円(2023年3月期)
上場区分
非上場
企業データを見る
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長COO 杉野 行雄/代表取締役副社長 内海 州史
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
企業データを見る