グリー田中社長とヤフー宮坂社長が登壇した共同記者会見の模様をレポート…包括提携の内容と狙いとは?

ヤフー<4689>とグリー<3632>は、本日(11月8日)発表した両社の包括的業務提携に関する共同記者会見を東京都内で開催した。

両社はこの日、スマートフォン版「Yahoo!Japan」から「GREE」上のソーシャルゲームへの誘導や、決済手段として「Yahoo!ウォレット」の採用、「Yahoo!ポイント」の連携、ソーシャルゲームの共同開発会社の設立などを行うと発表したが、提携に至った経緯や狙い、提携内容の詳細などを説明した(関連記事)。

今回の記事では、その記者会見の模様をお伝えしたい。

 

■ヤフー…スマートフォン向けゲームを強化

発表会の冒頭、ヤフー代表取締役社長の宮坂 学氏が登壇し、今回の提携に関するヤフーの戦略と狙いを説明した。ヤフーでは、「スマートフォンファースト」を掲げ、スマートフォン向けサービスの充実・強化に全社的に取り組んでいるという。スマートフォン版「Yahoo!Japan」について、2008年9月から2012年3月末までPVが160倍の規模に伸びたが、検索だけでなく、Eコマースや知恵袋、ショッピングといった用途での利用も拡大していることを明らかにした。

 

 

一方、エンターテイメント分野では「Gyao!」や電子書籍なども強化しているが、ゲーム領域への取り組みは強化する考えていた。その際、自前で作るか、他社と組む、他社と独占的に組む、という選択肢があったが、「この世で一番良いサイトにリンクを貼る」というポータルサイトとしての使命を考えると、自前で作るよりも、その分野でNo.1の企業と組むことが最適と判断した。他の分野では、「食べログ」や「クックパッド」と組んでいる。

 

 

今回、「Yahoo!Japan」から「GREE」にリンクを貼ることで、検索せずにすぐに遊べるゲームをユーザーに紹介することができるだけでなく、使い慣れた「Yahoo!ID」や「Yahoo!ウォレット」、「Yahoo!ポイント」が利用できるとした。PC版では、DeNAやスクウェア・エニックス、バンダイナムコゲームスと取り組み、多くのユーザーから利用されているが、スマートフォンについては実現していないことから、ファーストパートナーとしてスマートフォン向けソーシャルゲームが多くの実績を持つグリーと提携するに至った、としている。

 

 

■グリー…総合的なエンターテイメントを目指す一環

次に、グリー代表取締役社長の田中 良和氏が提携に至った経緯と背景を説明した。グリーは、PC向けSNSで出発した「GREE」がモバイル向けのソーシャルゲームを提供し、またサードパーティのコンテンツを提供するモバイルプラットフォームに発展したとこれまでの展開を振り返ったうえで、最近の取り組みを語った。

 

 

まず、ソーシャルゲームについては、「NARUTO」や「BLEACH」といった人気アニメのほか、「ファイナルファンタジー」など人気ゲームソフトといった、いわゆる「IP」を活用したゲーム開発に力を入れているほか、スマートフォン向けのゲームアプリの開発・提供にも注力している。また、「GREE」のグローバルプラットフォームを開始し、日本を含む世界10ヵ国にゲームの開発拠点を設けていることを明らかにした。

 

 

国内については、さらに新しい展開として、総合的なエンターテイメントを目指しているとのこと。従来のソーシャルゲームの開発・運営に加え、関連したアニメやグッズなどの提供も開始した。その一例として、東映アニメと組んだ「探検ドリランド」のアニメ番組や、「GREE」のソーシャルゲームに関連したグッズを専門的に手がける子会社などがあげられる。グリーが今回の提携に至ったのは、総合的なエンターテイメントを提供するための一環とのことだった。

 

 

 

■提携の内容

最後に、宮坂氏と田中氏が登壇し、今回の提携の内容を発表した。提携の内容は、まず、スマートフォン版「Yahoo!Japan」のトップページに「GREE」へのリンクを張り、「Yahoo!Japan」のユーザーに使い慣れたIDやポイント、ウォレットを使って「GREE」で遊んでもらうというシンプルなもので、すでにリンクも貼られているとのこと。グリーにとっては、国内最大のトラフィックを誇るスマートフォンサイト「Yahoo!Japan」のユーザーでかつ、これまでソーシャルゲームで遊んだ経験のない新しいユーザー層にアプローチできる。一方、ヤフーにとっては、詳細は明かされなかったが、ユーザーの誘導や課金状況などに応じた手数料を受け取るものとなるようだ。

 

 

また、両社がソーシャルゲーム開発を行う合弁会社を設立する。詳細はまだ協議中とのこと。ヤフーのもつネットサービスの開発力・集客力、多様なサービスの連携といった強みと、グリーのソーシャルゲームの企画・開発・運営ノウハウを組み合わせて、優良タイトルを豊富に提供していく。田中氏は、「ヤフーにもゲームを開発してみたかったというエンジニアが多く在籍していると思うので、当社のエンジニアと協力して、これまでにないような新しいタイプのソーシャルゲームの提供したい」と意気込みを示した。

 

 

このほか、アニメを中心にした映像デジタルコンテンツへの投資に取り組む。Gyaoとグリーで合弁会社を設立し、コンテンツファンドを設置して、アニメなどへの映像コンテンツの制作員会に出資する。制作した映像作品は、「Gyao」で配信するだけでなく、キャラクターなどの人気を高めたうえで、関連したソーシャルゲームに展開して収益化することも視野に入れている。宮坂氏は、「インターネット発でコンテンツを作り、マネタイズしていくという、これまでにないビジネスモデルとしてに挑戦したい」と語った。

 

 

事業提携以外では、共同でCSR活動にも取り組む。オープンソースコミュニテイなどインターネット技術の発展につながる活動を共同で協賛するだけでなく、それを支えるアニメーターやデザイナー、開発者の育成やセミナーへの協賛なども行う。田中氏は、「今回の事業提携の枠を超えて、ゲームやアニメを含むエンターテイメント産業全体に貢献するため。直接利益を生むものではないが、周りまわって我々の事業にも資するだろう」と説明した。これ以外にもインターネット産業の活性化につながる施策も行なっていく方針。

 

 

 

リリースを見た当初、スマートフォンで強力なトラフィックを持つヤフーから「GREE」への顧客の誘導という面ばかりが目についたが、想像以上に意欲的で、包括的な提携という印象を受けた。ヤフーとソーシャルゲームを共同開発することで、これまでとは一味違うゲームの登場が期待されるだけでなく、映像コンテンツの投資なども単に映像制作にとどまらず、ソーシャルゲームへの展開を踏まえた新しいビジネスモデルといえる。ここ最近、積極的な事業展開が目立つヤフーと、ソーシャルゲームの枠組みを超えたエンターテイメント企業を志向するグリーとの融合で、新しいインターネットビジネスが生まれてくることが期待される。

グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
ヤフー株式会社
http://docs.yahoo.co.jp/

会社情報

会社名
ヤフー株式会社
設立
2019年10月
代表者
代表取締役社長 小澤 隆生
決算期
3月
企業データを見る