【セミナー】『ヘブバン』はいかにして好スタートを切ったのか 〜 デジタルマーケティングで大切にしたこと

6月22日、「【Wright Flyer Studios × グリーアドバタイジング】2022年モバイルゲームのデジタルマーケティング最前線」と題したセミナーがオンラインで開催された。

このセミナーにはGlossom株式会社 取締役でありグリーアドバタイジング 代表取締役も務める柴田直人氏と、Wright Flyer StudiosStudio本部Marketing部のシニアマネージャー / シニアマーケターとして、スタジオのデジタルマーケティングを主導している加藤耕輔氏の2名が登壇。
Wright Flyer Studiosが2月にリリースし、好調なセールスを記録する『ヘブンバーンズレッド(以下ヘブバン)』を軸に、同社がゲームの配信前、そして配信後にどのようなマーケティング、プロモーションを行ったのかが語られた。

ローンチ前に意識したお客様とのコミュニケーション

『ヘブバン』は、Wright Flyer Studiosと「AIR」「CLANNAD」などで知られるKeyがタッグを組んで制作されたドラマチックRPG。原案・メインシナリオを麻枝 准氏が担当。50人を超えるキャラクターデザインは全て「アトリエシリーズ」や「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」を手掛けたゆーげん氏が担当している。
麻枝氏にとっては約15年ぶりの完全新作ゲームとあって、配信前から高い注目を集めていた本作。ファンの高い熱気に後押しされ、各ランキングでも順調な推移を見せている。

本作において加藤氏は、デジタルマーケティングを主導。柴田氏を中心としたグリーアドバタイジングもまた、デジタルマーケを中心に支援してきたという。
まずは配信前、プレマーケティングの話題から始まると、「Wright Flyer Studiosではスマホゲームは初動が非常に大切と考えています」と同社の考えを明らかにした。「とりあえずリリースして、売れたら伸ばしていく」というかつては可能だった戦略の難易度は日に日に上がっている状況で、初動を外さないように、事前段階からマーケティング、プロモーションをしっかりと行うことが重要だという。

この前提のもと、まず行ったのが大規模な市場の調査。定量的なウェブ調査を実施し、本作が持つポテンシャルと、打ち出すべきメッセージ、制作陣が目指すべき方向性をはっきりさせることからスタートした。

続いて事前登録開始直後のタイミングでクローズドベータテストを実施。お客様からの反応も良く、グリーグループでの他タイトルと比較しても良好なパフォーマンスだったとという。この結果を受けて、リリース時のTVCMに対する投資も決まったとのこと。


『ヘブバン』はリリースまでに12回生放送番組を配信しており、その中の1回を「クローズドベータ特集」として、約90分間にわたりお客様からのご意見、フィードバックを紹介しつつつ、リリースに向けてどのような修正を行うか直接説明したことによって、お客様にできる限り安心してもらえる環境を作ったのだ。

リリース前で忘れてはいけないのが事前登録キャンペーンだ。『ヘブバン』は事前登録の推移も好調だったが、事前登録のメディアとしては、App Store、Google Play、Twitter、LINE、メールアドレス、予約トップ10と特に変わったことはない。
「事業計画を担保するために、必要な事前登録数を算出し、達成できるようなコミュニケーションを心がけました」と加藤氏は語った。

一方でデジタルマーケの出稿に関しては「ストア事前登録を非常に重要視していました」と加藤氏。ただ目標数値を達成するだけでは意味がない、リリース直後から成功するためにはストアの事前登録こそが重要と考え、「数値目標の達成だけが責任ではない、成功だけが責任」という意識で取り組みつづけたのだという。

まずAndroidはGoogleのアプリキャンペーンで成果をトラッキングできるため、許容CPAを設定して効率的に出稿を進めたとのこと。それに対してiOSは仕様上「事前登録を広告経由で取りに行くのが難しかった」と当時の状況を告白する。
「クリック数に想定CVRを当てて、大体の想定コンバージョン数が出る」と言われるが、これだとCVRを高く入れすぎて、実際の獲得件数よりも想定コンバージョン数が多くなってしまうことも起こりがち。

『ヘブバン』に関しても、「事前登録の初動では、数を伸ばすのに正直苦戦していました」と語る加藤氏。その中でコンバージョンをどこで設定するか、またどういったネットワークがいいかを「App Store Connect」の数値と広告媒体のレポートを紐付けて、仮説検証を繰り返して最適解を見出していったという。
結果的に事前登録数としても目標を大きく上回るところまで伸ばすことができたという。

  • ▲笑顔も交えつつ落ち着いた様子で語られる当時の様子。マーケターにとっては必聴ナレッジでありつつも、当事者たちのチャレンジの軌跡は胸が熱くなるストーリーでもある。

続いてローンチ時のプロモーションに関する話題へ移ると、「繰り返しになりますが、Wright Flyer Studiosでは運営開始後と同じくらいに初動も大切だと考えており、プロモーションとしても、広く、深く、早く浸透することを重視しました。」と加藤氏は強調する。

大きなプロモーション施策でいうと、TVCM、ホロライブ所属タレント15名が2週間に渡り毎日日替わりで放送する「ホロライブ ヘブバン Week」、池袋駅や秋葉原駅での交通広告などを行ってきた。多彩な施策を行うことで、より多くの人が作品に触れる機会を作ったのだ。
あわせて、これらのプロダクトマーケティングがデジタルマーケティングにどういった影響を及ぼすか、CPAの変化もウォッチしつづけることによって、デジタルマーケティングとプロモーションの両輪を回すことができたという。

時には機械学習に頼らず、伝えたい感情を重視する

ここから話題はデジタルマーケティングにおけるメディアプランニングへと移る。プランニングで工夫した箇所を聞かれた加藤氏は「ファネルも重視したプランニングを心がけました」と回答。

通常のアプリゲームの広告だと、MMPが充実していることもあり、どうしてもインストールや課金など、コンバージョンに最適化する出稿に偏ってしまう。
一方でiOSでのATT導入以降、SKAdnetwork計測なども含めて、コンバージョンで最適化していく場合、どうしてもリーチが広がらなくなってしまい、スケールが難しい状況でもある。

そこで、「認知」を目的とした配信も織り交ぜることで、リーチを広げることも意識したという。YouTube TrueViewやTwitterプロモトレンドなどはWright Flyer Studiosとしても大きな成果が出ているとのこと。
この話を受けて柴田氏は「ATT導入以降、コンバージョンに最適化するような広告配信の効果がどんどん見えづらくなってきました。今回の『ヘブバン』では認知施策も掛け合わせることで、いい結果が出たと思います」と手応えを口にした。また、ATTと機械学習を組み合わせることもあるが、スケーラビリティを失うケースもあり、今後の課題として挙げていた。

Wright Flyer Studiosが注力しているという広告のクリエイティブ制作に関しては、加藤氏は「ATT導入以降、クリエイティブの評価が正直すごく難しくなりました」とコメント。「広告ごとでのROAS評価を100%出来ているというマーケターはおそらくいない」とも語り、その難しさを吐露する。
また業界を見渡すと広告の機械学習が主の時代になっており、クリエイティブの良し悪しはAIが判断、「量」で勝負するのが主流とも話す。

そんな中でWright Flyer Studiosは、機械学習による判断も見つつ、「お客様の感情の動きを非常に大事にしています」と話す。機械学習の判断とマーケター届けたいメッセージがかけ離れているケースも多く、例えば「インセンティブを強く訴求する」「肌の露出が増える」など、ブランドを摩耗するようなクリエイティブに寄ってしまうことも少なくない。短期的にはよい結果が出たとしても、今回のように大きな予算をかけたデジタルマーケティングを実施する場合、ブランドとしての訴求軸がブレることで長期的にCPAへの影響が出てくることが考えられる。
そこでWright Flyer Studiosは「切ない」「かっこいい」「かわいい」といった感情のパラメーターに訴求軸を掛け合わせることで、クリエイティブの網羅性を高めている。もちろん機械学習の判断も参考にするが、時には無視して「自分たちが届けたいポイント」を重視することも大切だと語った。

ここからは少し切り口が代わって、プロモーションにかかる予算にまつわる話題も。加藤氏いわく、クローズドベータテストの反応が良かったことで大きなプロモーションを仕掛けられたという。次に、「ローンチ直後のKPIは自分たちが想定していた以上に良く、度肝を抜かれた」と加藤氏。それを見て「より多くの方に広げるべき」と判断、当初計画したよりも、多くの広告宣伝費の予算を取ることになったとのこと。
加藤氏は「マーケティング部門だけではなく、社長の柳原(柳原陽太氏)、プロデューサー、経営企画など何度も細かい事業試算を行った上で、今投資しないと大きな機会損失になるという判断を行いました」と、会社全体で大きな動きがあったことも明かした。
具体的な金額は語られなかったものの投資回収も順調に進んでいるとのことで「非常に良い投資になったと思います」と笑顔を見せた。

最後に加藤氏は、「『ヘブバン』を通じて、デジタル広告についての考えが180度くらい変わりました」と語る。AI中心の広告配信が主流であることは間違いないが、ATT以降時代は大きく変わり、同じアプローチだと事業を大きくできない。「大切なのはテクノロジーを駆使しつつも、テクノロジーに踊らされるのではなく、常に自らの思考を止めないこと」と加藤氏。これは以前から感じていたそうだが、『ヘブバン』で確信に変わったという。

加えて「デジタル広告を活用して、認知を広げることはできるか?」といった点では、まだまだポテンシャルがあるともコメント。
クリエイティブの作り方はもちろん、キャンペーンの設定など運用方法も時代によって変化すると予想。「アトリビューションの取り合いではなく、広告としての価値がある配信を今後は重視していきたいです」と展望を語った。

柴田氏は「プラットフォームのルールが変わり、激動の時代になっています」と述べると、時代の流れをキャッチし、デジタル広告で認知を伸ばす施策に関しては、これからも精度を上げていきたいと意気込みを語った。

これにてセミナーの本項目は終了となったが、その後も第二部として「グリーアドバタイジングが提供するデジタルマーケティングソリューション」と題したセッションが行われた。
ここでは柴田氏からグリーアドバタイジングが提供するベネフィットとしてマーケター経験者によるグロースコンサルティングやグリーグループのアセット活用による効果的な広告運用、ワンストップ支援可能なマーケティングプロダクト群が次々に説明された。

最後に柴田氏は「今後も、グリーアドバタイジングは“お客様のゲーム事業成長のためにグリーグループのアセットと経験値を武器に伴走型でお客様と一緒に課題解決にあたるゲームマーケティングの専門家集団”として頑張っていきたいと思います」とあらためて挨拶。第一部のセミナー内容もあわせてゲーム業界のマーケターであれば非常に勉強になる内容だった。

株式会社WFS
https://www.wfs.games/

会社情報

会社名
株式会社WFS
設立
2014年2月
代表者
代表取締役社長 柳原 陽太
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グリーアドバタイジング株式会社
https://www.gree-advertising.net/ja/

会社情報

会社名
グリーアドバタイジング株式会社
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