【インタビュー】クラウドサービスも競争時代に…第8回テックヒルズのテーマ「ゲームのクラウド活用」についてクルーズ田沢氏に聞く

4月24日にクルーズ<2138>主催で開催されるIT技術勉強会「テックヒルズ」。第8回のタイトルは「Games on the Cloud!~ゲームシステムをクラウドで~」と銘打ち、ゲームにおけるクラウド活用をテーマとする(関連記事)。
 
今回、クラウドサービスを提供しているアマゾン データ サービス ジャパン、グーグル、日本アイ・ビー・エム、日本マイクロソフトと、豪華メンバーが一堂に会することとなった。各社、自社のクラウドサービスでゲームを運用する際の特徴を話す予定という。
 
今回、登壇者の一人で、クルーズのインフラ全般のマネージメントをしている田沢知志・技術統括本部ディレクター(写真)に話を聞く機会を得たので、クラウドサーバーをテーマを選んだ背景を伺った。田沢氏はクルーズの創業メンバーでもある。

 
■『ACR DRIFT』の世界展開で見つけたクラウドサーバーの利点


――本日はよろしくお願いします。今回のテックヒルズは、案内を見た時に驚いたほどの豪華メンバーでした。今回取り扱うクラウドサーバーは熱いトピックなのですか?
 
「熱いですね。大きく分けて2つ理由がありますが、ひとつは新規参入の流れです。これまでアマゾンのAWSが老舗として大きなシェアをとっていたところに、他社クラウド業者も本腰を入れてきたという状況です」
 
3月末ごろから各社で値下げが相次いでおり、競争の空気が出てきています。3月25日に米国でグーグルがクラウドサービスの値下げを発表すると(関連リンク)、その翌日にアマゾンがAWSの値下げを発表しています(関連リンク)」(なお、3月31日にはWindows Azureも値下げを発表した→関連リンク
 
「もうひとつは、我々が『ACR DRIFT』で挑戦している、今後実装予定の全世界同時対戦ですね。これをやろうとすると、どうしても、世界各地に拠点のあるクラウドサービスを使うという選択肢が有力となってきます」
 
――それはなぜでしょうか。
 
「モバイルアプリで世界同時対戦をやろうとすると、通信のレイテンシー(遅延)の短縮という課題に突き当たります。となると、海外に拠点があるクラウド業者の利用を考えなければなりません。(今回のテックヒルズをきっかけに)そのあたりのノウハウを聞けたらいいな、という気持ちもあります」
 
「バースト(瞬間的に突発する高負荷・高トラフィック)があったときに柔軟に拡張できる点も、クラウドのいいところですね。全世界のモバイル向けでゲームを配信するとなると、もちろんシミュレーションはしますが、どれくらいのバーストが発生するか、はっきり言えば読めません」
 
「当初はデータセンターを借りるという議論もありましたが、海外だと契約に時間がかかります。突発的なアクセスが増えたときには間に合いません。結果、拡張性の高いクラウドしかない、という結論にいたりました」
 

■クラウドサービス業界も競争時代に


――各社の参入の状況を見ていると、これからは「クラウドサーバーといえばAWS」という時代ではなく、選択肢が増えて、競争が激しくなりそうですね。
 
「確かに選択肢は増えました。競争で値段が下がり、同時に性能が上がるという状況は、利用者側からすれば嬉しいことです。過去の様々な産業でも起こった流れですが、各社の本格参入をきっかけに、クラウドサービスにも同じ流れがやってくるのではと考えています」
 
「また、私は今後、1社だけのクラウドサーバーを使う、という状況は無くなるのではないかと思っています」
 
――マルチベンダークラウドということですか?
 
「そうですね。複数社のクラウドを使い分けるという形になるでしょうね。各社、強みのあるサービスが違いますので、そこを見極めながら組み合わせる、という感じでしょうか」
 
「インフラ構築基盤としてのIaaS(Infrastructure as a Service)型サービス、PaaS(Platform as a Service)型のサービス、物理サーバーのホスティングを含めたサービスなど、各社さまざまな特徴や強みがあります。今回のテックヒルズでは、そのあたりの説明をしていただけると期待しています」
 
――各社がそれぞれの強みを出して、クラウド市場で切磋琢磨するわけですね。最後に、Social Game Infoの読者にメッセージはありますか?
 
「みなさん、まずは(クラウドサービスを)使ってみましょう、というのがメッセージですかね。(ゲーム開発エンジンの)ユニティが登場してゲーム開発の難易度が低下したように、クラウドサービスを使えば、インフラの知識が乏しくても、比較的安いコストでワールドワイドなサーバー環境を手軽に検証できるようになったと思っています。どんどん使って試してみると、面白いと思います」
 
――ありがとうございました。テックヒルズでの講演も楽しみにしています。

 

テックヒルズの詳細はこちら

クルーズ株式会社
http://crooz.co.jp/

会社情報

会社名
クルーズ株式会社
設立
2001年5月
代表者
代表取締役社長 小渕 宏二
決算期
3月
直近業績
売上高140億円、営業利益6億4400万円、経常利益6億2800万円、最終利益2億5400万円(2023年3月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
2138
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