モブキャスト決算説明会 減収減益の2Qに復調の兆し 3Qは『モバノブ』の強化や海外展開で成長を目指す 新作『ドラゴンスピンZ』にも自信

モブキャスト<3664>は8月8日、2014年12月期第2四半期(2Q、4-6月期)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。第2四半期の業績は、売上高が前四半期比16%減の9億2500万円、営業利益が71%減の4700万円となり、前四半期比では減収減益となった。大幅な減益であるが、コスト抑制の効果で黒字を確保。

説明会で藪考樹社長は、前四半期(1Q、1-3月期)比で減収減益でありながらも売上は4月を底に微増したことを説明。第3四半期(3Q、7-9月期)の事業戦略としては、テレビCMを活用した『モバノブ』のクロスマーケティング展開をはじめ、新作『ドラゴンスピンZ』のリリース、海外ライセンスの販売推進など4つのキーを掲げた。(以下、かぎ括弧内は藪社長の発言)
 

■前四半期比で減収減益。しかし月別で見ると復調傾向に




前述しているように第2四半期の業績は、売上高が前四半期比16%減の9億2500万円、営業利益が71%減の4700万円と前四半期比では減収減益となった。売上減少については、2013年2月に子会社化したエンタークルーズ社のPCゲーム事業売却(日本・韓国)に加えて、4年目に突入した同社の人気作『モバプロ』の売上が落ち込んだことも影響しているという。

しかし、第2四半期を月別に切り分けてみると、売上は4月を底に微増していることが分かった。微増の要因には、既存タイトルはもちろんのこと、6月にコーエーテクモゲームスと共同開発した携帯合戦シミュレーションゲーム『モバノブ』もリリースされたことで、復調に繋がったようだ。藪社長は「7月も同様に右肩上がりで売上が伸びている」と言葉を添えた。

費用の推移は、第1四半期(1-3月期)から引き続き広告宣伝費のコントロールが効いており、同費用もほぼ変わらない状況となっている。



 

■月別の復調はサッカーW杯の影響と『モバノブ』が大きく寄与


続いて第2四半期のハイライト。プラットフォーム「mobcast」の会員数は、第2四半期で日韓合わせて32万人増加の累計550万人を突破。会員数増加について藪社長は、「サッカーワールド杯が寄与して『モバサカ』の会員数が増え、さらに『モバノブ』のリリースも影響した」と述べた。
 

新作ゲームでは、前述しているように期待の新作『モバノブ』が6月にリリース。月商1億円タイトルである『モバサカ』の初月を超える初動という好スタートを切った模様。『チェインイレブン』は、国内におけるKPI(重要業績評価指標)を改善しているほか、韓国でも配信が開始された。今後は提携しているgumi社と共に、海外展開を積極的に仕掛けていくようだ。

2013年第3四半期の終わりにリリースして、2014年第1四半期に改善したタイトル『激闘!ぼくらのプロ野球』に関しては、「KPIは良くなかった」と不振であることをコメントした。おもな原因には、権利元の制限により、ネットでの広告展開に限界があることを挙げた。なかでも「ブースト」などの広告手段が展開できなかったのは打撃になったようだ。なお、今後の展開については現在調整中とのこと。

既存タイトルでは、『モバプロ』『モバサカ』『モバダビ』の3タイトルが復調した。パートナーゲームは、第2四半期で7タイトルが追加。プラットフォームオープン化以来、課金流通額は最高額を更新し続けており、藪社長は「mobcastプラットフォームが着実に収益源として確立されてきた」とコメントした。

 

■第3四半期の事業戦略(1) 『モバノブ』強化と新作『ドラゴンスピンZ』に自信


第3四半期の事業戦略として、4つのキーを掲げた。

ひとつ目は、テレビCMを活用した『モバノブ』のクロスマーケティング展開。テレビCMは、モブキャストがスポンサーを務めるテレビ朝日系列「やべっちFC」より順次放送を展開している。第3四半期では、テレビCMに連動したネット広告のクロスプロモーションを小規模で実施・検証を行い、アプリストアでのランキング上昇施策により新規入会者を増大させるという。藪社長は「実際に8月現在まで、小規模の実験にしては大変良い形で結果が出ている」と述べた。なお、第4四半期(4Q、10-12月期)に大規模プロモーションを計画しているとのこと。

新規入会数増加の後は、「mobcast」タイトルの勝ちパターンでもある“友達招待による拡散”を展開してバイラル率を上げ、さらにゲーム性を深化させることでARPPU(ひとり当たりの平均月間売上高)の上昇にも繋げていくようだ。
 

ふたつ目は、9月配信予定の新作ネイティブアプリゲーム、『ドラゴンスピンZ』の年末商戦を狙った大規模プロモーション計画。本作は、『セガラリー』『スペースチャンネル5』などを手掛けてきたゲームクリエイター・水口哲也氏プロデュースのもと、スマホRPGにビデオスロットの要素を融合させた日韓ハイブリッド開発作品第一弾である。昨年末にリリースした外注開発の『ドラゴンスピン』を社内で引き取り、改修・新機能追加を経て、リファインさせた作品とのこと。

昨年末にリリースしたバージョンは良い反響だったようだが、当初予定していたKPIを下回ったため今回の改修にシフトしたようだ。本作に関して藪社長は「0→1のタイトルではない。すでに、ある程度のユーザー層が見込めているため、9月の初動KPIを見極めて年末商戦での大規模プロモーションの実施を検討する」と意気込みをあらわにした。
 
 

■第3四半期の事業戦略(2) 海外展開と既存タイトルのアプリマーケット対応



3つ目は、『モバノブ』『ドラゴンスピンZ』、そして未発表の新作パズルゲームなど、海外ライセンス販売の推進を積極的に展開するという。見込率の高いパブリッシャーに関しては訪問予定とのことだが、世界各国で開催されるゲームショウを利用した営業活動も計画しているようだ。なお、8月に中国・上海で開催されたゲームショウ「China Joy」では複数のパブリッシャーとの交渉も始まっており、すでに『ドラゴンスピンZ』は中国・台湾・香港・マカオへの展開が決定している。

4つ目は、既存タイトルの再成長。『モバプロ』『モバサカ』『モバダビ』の既存タイトルをストア最適化し、Google Play、App Storeからの新規ユーザー獲得を積極的に行うという。

現在、アプリマーケットのユーザーに対応するため、UI(ユーザーインターフェイス)も変更しており、これらの施策が功を奏してか、第2四半期より既存タイトルへのアプリストアでの課金流通額が急増しているようだ(右図)。

第3四半期以降も既存タイトルを最適化することで、新規会員の獲得や売上増を見込むとしている。また、『モバノブ』などの新しいヒットタイトルから回遊してくるユーザーも既存タイトルに流入していくという。

パートナーゲームでは、第3四半期で6タイトル以上追加予定。現在獲得しているのは、『バハムート クライシス』(enish)、『熱狂!新日本プロレス』(テレビ朝日)、『スマサカS』(GMOインターネット)の3タイトルとなる。

 

■ネイティブ強化と既存ゲームの再成長実現のため7月より体制を一新


また、モブキャストは7月1日付に組織変更を実施した。



新設された「mobcast 事業本部」では、ゲーム事業本部とプラットフォーム事業本部、Korea 事業本部が統合。プラットフォーム「mobcast」で展開するブラウザゲーム開発はもとより、WEBマーケティングのノウハウ(アクセス解析×広告宣伝投資)をゲーム運営にも応用していくようだ。すでに第2四半期では、アクセス解析やプラットフォームと連動したサービス提供も実施しており、前述した既存3タイトルでも好結果が出ていることから、第3四半期でも変わらず力を入れていくとのこと。

「ネイティブ事業本部」では、3つのスタジオ(社内2・韓国1)のほかに、IPや海外ライセンスを獲得するビジネスプロデュース部門が存在。ネイティブアプリ開発では、社内で決めた一定の「品質×納期×コスト」をコントロールして、リリース数を安定化し、売上を広く管理していくことが可能になるという。

 

■通期予想は据え置き。年末商戦で巻き返し図る


2014年12月期業績予想は、売上高53億円(2Q累計20億円)、営業利益1億円(2Q累計2億円)、経常利益1億円(2Q累計2億円)、当期純利益1億円(2Q累計1億5800万円)と、当初の予想から据え置いた。

理由としては、第4四半期に年末商戦を控えていること、さらに市場環境の変化が激しい状況が継続しているため、今回修正は行っていないようだ。最後に藪社長は「『モバノブ』と『ドラゴンスピンZ』の第3四半期の結果を見て、第4四半期における広告展開を考える。ただし、今年計画している営業利益1億円を下回らないように、広告宣伝費のコントロールはしていく」とコメントした。


■関連リンク

決算説明会資料(pdf)


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株式会社モブキャストホールディングス
https://mobcast.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社モブキャストホールディングス
設立
2004年3月
代表者
代表取締役CEO 藪 考樹
決算期
12月
直近業績
売上高33億7100万円、営業損益4億2800万円の赤字、経常損益4億3600万円の赤字、最終損益3億8000万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3664
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