グリー<3632>は8月13日、2014年6月期通期の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。通期の売上高は、前期比18%減の1255億円、営業利益は28%減の350億円と減収減益。第4四半期(4Q、4-6月期)も売上高266億円(前四半期比310億円)、営業利益61億円(同99億円)と、同様に減収減益となった。
説明会で田中良和社長は、新規スマホタイトルのヒット不足が課題であることを述べ、2015年6月期には国内スタジオでネイティブゲーム事業の組織規模を3倍の1000人に増強することを説明した。また「GREE Platform」を含むウェブ(ブラウザ)ゲーム事業は、リソースの最適化を進める。2015年第1四半期(1Q、7-9月期)の業績予想では、4Qと同様に売上高260億円、営業利益55億円として、この数字をボトム(底)と考え業績回復に向けてシフトしていくことを提示した。
説明会では、取締役執行役員常務の青柳直樹氏と取締役執行役員の荒木英士氏のふたりが中心となって、4Qの取り組みと今後のゲーム事業について説明した。
はじめに取締役執行役員常務の秋山仁氏が、通期及び4Qの決算概要について説明。2014年5月に開示した通期の業績予想では、売上高1290億円(前期比15.3%減)、営業利益380億円(同21.8%減)、経常利益393億円(同26.2%減)、当期純利益200億円(同11.2%減)を見込んでいたが、結果的に売上高・利益共に計画未達となった。
4Qの営業利益率では、23.1%と前四半期(3Q、4-6月期)に比べ9.0ポイント減少。おもに国内外スタジオの売上減少が大きく影響し、固定費を8億円削減したものの営業利益は61億円まで減少した。
減収減益の原因については、国内スタジオの売上高がそれぞれ想定を下回ったほか、新規タイトルが導入された海外スタジオにおいて、「想定よりもタイミングが遅れた。既存タイトル減衰でカバーできなかった」と秋山氏は説明。
4Qの費用合計は前四半期に比べ3.2%減の205億円となった。広告宣伝費は9億円の増加。なお、固定費に関しては、2013年6月期の通期決算説明会で「1年後までに10%以上は減らせるようにしたい」と示していたが、結果的には3割強固定費を削減できたようだ。
7~9月の業績予想では、売上高260億円、営業利益55億円として、ほぼ4Qと横ばいになる形として計画。今回の予想について秋山氏は、「4Qと1Qによる260億円、60億円前後をボトム(底)にして、2Q(10-12月期)以降から4Q・1Qでリリースしたゲームを中心に売上高の反転を図っていく」と述べた。
コスト面では、広告宣伝費は数億円の減少を見込んでおり、固定費は新規タイトル開発に伴う外注費増やリリースに伴う開発費の償却開始により数億円増加を見込んでいる。
続いて取締役執行役員常務の青柳直樹氏より、2014年6月期のコイン消費状況について説明があった。
通期のスマートフォンにおけるコイン消費の状況では、海外マーケット向けのネイティブゲームの成長がけん引し、スマートフォンのコイン消費は前期に比べ14%増加した。海外のネイティブゲームは、既存タイトルの成長と新たなヒットタイトルの創出に成功した。4Qのコイン消費状況は、前四半期より約12%減少と伸び悩みの色が見えている。
4Qの中身を切り分けてみると、ネイティブゲームでは米国スタジオの軟調により海外マーケットのコイン消費が前四半期より約15%減少している。とはいえ、現在注力している新作ネイティブゲームは好調に推移しているため、「今後反転に努めていきたい」と青柳氏は述べた。
一方ウェブゲームでは、フィーチャーフォンのコイン消費減が大きく影響し、4Qは前四半期比で約11%減少に。『モンスターハンター ロア オブ カード』などの新規タイトルが伸長するも、既存タイトルの減衰をカバーできなかったようだ。
2015年通期の事業方針では、「ネイティブシフトの断行」を掲げた。これまで同社が主力としてきたウェブゲーム事業から大きくシフトする内容である。背景について取締役執行役員の荒木英士氏は、「ウェブゲーム事業の伸び悩みと、ネイティブゲーム市場の著しい成長のため。後者の市場でヒットタイトルを増やしていく」と述べた。
具体的なアクションとしては、まず現在300名が従事している国内(子会社含む)のネイティブゲーム事業の組織規模を約3倍の1000名規模の体制に増強。これによりフルネイティブゲームの開発ライン数を倍増の10→20ライン(内訳:グリー本体は15、ポケラボ5)とし、さらに世界中のエリアや複数のプラットフォームに多様なタイトルを展開していき、売上最大化のためにパブリッシング事業も強化するとのことだ。
事業方針の成功に繋げるため、荒木氏はグリーが考える「ヒットを出すためのロジック」について明かしてくれた。同社は、2014年度に「現在のネイティブゲーム市場で戦えるまでの水準に成長した」ことを前提に、2015年度は打席数の増加を通じてヒットタイトルの創出を目指すとして、次の「打率の向上×打席数の増加=ヒット数の増加」というヒットの方程式を掲げた。
2014年度の取り組みでは「打率の向上」のために、開発プロセスの改善やフルネイティブゲーム開発力の強化に努めた。「実際に高品質のタイトルを複数生み出すことができ、大きな手応えを感じている」と、2014年度の取り組みに結果が出ていることを荒木氏は説明。
2015年度には「打席数の増加」として、前述したウェブゲーム事業からの異動により1000名規模の体制を整え、本格的なフルネイティブゲームの開発ライン数の倍増を実現して、「結果的にTOP5に入るヒットタイトルを複数創出していく」とした。
人員異動は、既存ウェブゲームタイトルの効率運用を進めながら、ウェブゲーム事業の約700名のスタッフが異動する形をとった。懸念点とされる技術面については、フルネイティブゲーム開発人員を短期間で養成する仕組みを構築させて、最短3ヵ月で新規開発にアサインさせるとのこと。
一方、「GREE Platform」を含むウェブゲーム事業はリソースの最適化を進め、巡航モードでの収益貢献を継続していくという。ネイティブシフトにより開発スタッフも減少するため、今後新規タイトルは有力パートナーとの協業を中心にリソースを充てていくようだ。
会場からの質疑応答では、ウェブゲーム事業の人員をネイティブゲーム事業にもシフトすることに、「ほぼ全員が異動になるのではないか。ウェブゲーム事業は問題ないのか」と心配する声が挙がった。
この質問について荒木氏は「現在の内訳としては、国内スタジオでネイティブ開発に従事しているのが約300人、またウェブゲームに従事しているのが約1000人いる。ネイティブが1000人体制になってもウェブは300人程残るため、効率化を進めていくなかで十分まかなえる人数」と説明した。なお、組織変更は9月1日付けに実施予定とのこと。
以下、ネイティブ、ブラウザ、海外と現況についての説明を見ていこう。
まず、4Qにおける国内ネイティブゲームの進捗について。
グリー子会社のWright Flyer Studiosの第一弾タイトル『消滅都市』は、リリース前からの施策が奏功し約1ヵ月で100万ダウンロードを突破。また、継続率が極めて高いうえ、ユーザー規模は大きい水準を維持しているため、今後は新章追加やユーザー間のランキングイベントなどARPU(ユーザー1人当たりの単価)を高める取り組みを実施し売上拡大を狙うという。また、KPIを鑑みながらテレビCMを含めたプロモーションも積極化する。
ポケラボの2014年1月リリースの『戦国のサムライキングダム』は、リリース以降順調に成長し、2014年4月に月商1億円を突破した。現在の課題としては、動作が比較的不安定なAndroid版の売上が相対的に低いため、9月を目処に基盤監修を実施するという。基盤改修後は、プロモーションを積極化しAndroid版の売上拡大を狙う。
また、7~9月は国内スタジオから合計3本のリリースを計画(Wright Flyer Studios『天と大地と女神の魔法』、ポケラボ『クロスサマナー』、パートナータイトル1本)。10~12月に向けて新ジャンルのカジュアルな新規タイトルも開発中とのことだ。
ポケラボ開発のスマートフォン向けアクションRPG『クロスサマナー』は、日本のみならず、英語圏、欧州、中国語圏、韓国へのリリースも同時並行で進行中(今冬予定)。また、業界初の独立コンテンツ型事前登録「ファミコン世代集まれ!懐かしの裏ワザ入力キャンペーン」も話題になった。
▲『クロスサマナー』のプロモーションビデオ
ウェブゲーム事業の4Q実績の内訳では、既存ヒットタイトルの中長期的な運用を前提に、ユーザーのニーズを捉えながら新施策の導入を随時実施してきた。『探検ドリランド』では、ギルドバトルイベントの改善を重ねて人気コンテンツに成長させた結果、2014年4月から6月のコイン消費規模が57%増を果たした。『聖戦ケルベロス』では、初のボイス付カード投入が人気を集めて、同作におけるスマートフォンコイン消費規模が前四半期比で9%増となった。現在ウェブゲーム事業では、新作タイトルを5本開発中。
パートナータイトルでは、グリフォンが提供する『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』が、リリース後2ヵ月で月商1億コインを突破するなどヒットタイトルに成長。今後はプロモーションの積極化によりさらなる消費拡大を目指すという。そして、8月15日リリース予定のKADOKAWAとの協業タイトル『城姫クエスト』では、事前登録キャンペーン施策が奏功し、事前登録数が好調に推移するなどの期待感を示した。「ウェブゲーム事業には、いくつかのセグメントに関して、ユーザーから人気の高いコンテンツが存在している。そうした分野を戦略的に展開していきたい」とした。
また、会場からの質疑応答では、自社開発タイトルの成長を見てか、「このままプラットフォーマーからゲームメーカーに転換するのか」という声が挙がった。この質問について青柳氏は、「ウェブとネイティブはユーザー層が完全に異なるため、今後も混ざらずに両立していくようにと考えている」と事業の舵を振り切るような明言は避けた。
2011年より海外事業を進めてきたグリーだが、2014年3Qには四半期黒字化を達成した。2015年度は、中長期での売上高の持続的成長に向けて、新たなマネジメントを迎え施策を推進するとのこと。海外事業について青柳氏は、「ようやく海外事業の地盤作りができたと考えている。このポジションを今後も高めて大きくしたい」とコメントした。
具体的な海外事業の方針では、新たなユーザー層の獲得による売上拡大のため、従来開発してきたミッドコアタイトルから、よりゲーム性の深いハードコアジャンルの強化にシフトしていくという。また、比較的北米はiOS端末が主流でもあるが、Android版及びヨーロッパを中心とした欧州言語版の展開を加速していき、タイトル売上の最大化を狙うとした。さらに有力デベロッパーとの協業タイトルを随時リリースしていき、「体制強化により新たなステージへ飛躍」すると方針を掲げた。
海外事業の取り組みの直近では、2014年8月より前Kabam社のワールドワイドゲームスタジオ最高責任者のアンドリュー・シェパード氏(写真右)が、GREE International(米国)のCOOとして参画。同氏はKabam社に在任中、累計1億ドル以上の大型ヒットタイトルへの成長をけん引。新たなマネジメントにより、事業推進の加速を図るとした。
また、3Dグラフィックを多用したPCオンラインゲーム級のハードコアタイトルも順次リリースを予定しており、新たなユーザー層を獲得することで上位ランキングを狙うという。海外スタジオの既存タイトルにも変化が表れており、一部のタイトルではAndroid版と欧州言語版をリリースしたところ、iOS版の売上を大きく上回るタイトルが出てきており、クロスプラットフォームにも手応えを感じているようだ。投資先でもあるMunkyFunとの協業タイトル『League of War』の立ち上がりも好調で、今後も有力デベロッパーとの協業タイトルの拡充を推進していくとのこと。
海外事業の展開としては、北米が中心に伸びているものだが、「中国市場を中心としたアジア圏にも改めて取り組んでいきたい」と方針を示した。直近では韓国スタジオで開発したタイトルを、中国語圏で展開したところ一定の成果を収めていると明らかにした。「我々が開発するネイティブゲームが、ようやく“質”という意味で高く評価されるようになった。今後は、有力パートナーとも組んで開発費のリターンにも努めていきたい」とコメントした。
グリーは、事業領域の拡大のため、ホテル予約アプリや子育て支援サービスなど、ここ最近は立て続けで新規サービスをローンチしている。同社は、スマートフォンを活用した利便性の高いサービス展開が、「まだまだより良くできる領域がある」として、主力事業の領域を定めながらもグリーならではの“一気呵成”で新規サービスの創出を伸ばしていくとのことだ。なお、いずれのサービスも小規模チームで開発しているほか、短期間でサービスを立ち上げてきているという。
また、説明会では詳細な発言は無かったが、グリーは8月13日に取締役人事案も発表した。会長・副会長職を新設し、代表取締役会長兼社長に田中良和氏(現社長)が、取締役副会長に山岸広太郎氏(現副社長)が就任した(詳細は関連記事にて)。質疑応答では、「今後全社的な構造改革はあるのか」という発言に対して、秋山氏は「2014年度は、希望退職を含めて固定費の変動に取り組んできたが、現時点で昨年度のような構造改革は考えてない」と明言した。
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決算説明会資料(pdf)
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企画:KADOKAWA/GREE developed by AZITO
説明会で田中良和社長は、新規スマホタイトルのヒット不足が課題であることを述べ、2015年6月期には国内スタジオでネイティブゲーム事業の組織規模を3倍の1000人に増強することを説明した。また「GREE Platform」を含むウェブ(ブラウザ)ゲーム事業は、リソースの最適化を進める。2015年第1四半期(1Q、7-9月期)の業績予想では、4Qと同様に売上高260億円、営業利益55億円として、この数字をボトム(底)と考え業績回復に向けてシフトしていくことを提示した。
説明会では、取締役執行役員常務の青柳直樹氏と取締役執行役員の荒木英士氏のふたりが中心となって、4Qの取り組みと今後のゲーム事業について説明した。
■新作の導入遅延と既存タイトル減衰のため通期・4Q共に減収減益へ
4Qの営業利益率では、23.1%と前四半期(3Q、4-6月期)に比べ9.0ポイント減少。おもに国内外スタジオの売上減少が大きく影響し、固定費を8億円削減したものの営業利益は61億円まで減少した。
減収減益の原因については、国内スタジオの売上高がそれぞれ想定を下回ったほか、新規タイトルが導入された海外スタジオにおいて、「想定よりもタイミングが遅れた。既存タイトル減衰でカバーできなかった」と秋山氏は説明。
■「売上260億円、営利60億円前後をボトム(底)に業績回復を目指す」
4Qの費用合計は前四半期に比べ3.2%減の205億円となった。広告宣伝費は9億円の増加。なお、固定費に関しては、2013年6月期の通期決算説明会で「1年後までに10%以上は減らせるようにしたい」と示していたが、結果的には3割強固定費を削減できたようだ。
7~9月の業績予想では、売上高260億円、営業利益55億円として、ほぼ4Qと横ばいになる形として計画。今回の予想について秋山氏は、「4Qと1Qによる260億円、60億円前後をボトム(底)にして、2Q(10-12月期)以降から4Q・1Qでリリースしたゲームを中心に売上高の反転を図っていく」と述べた。
コスト面では、広告宣伝費は数億円の減少を見込んでおり、固定費は新規タイトル開発に伴う外注費増やリリースに伴う開発費の償却開始により数億円増加を見込んでいる。
■スマホの通期コイン消費は前期比14%増加…4Qでは減少傾向に
続いて取締役執行役員常務の青柳直樹氏より、2014年6月期のコイン消費状況について説明があった。
通期のスマートフォンにおけるコイン消費の状況では、海外マーケット向けのネイティブゲームの成長がけん引し、スマートフォンのコイン消費は前期に比べ14%増加した。海外のネイティブゲームは、既存タイトルの成長と新たなヒットタイトルの創出に成功した。4Qのコイン消費状況は、前四半期より約12%減少と伸び悩みの色が見えている。
4Qの中身を切り分けてみると、ネイティブゲームでは米国スタジオの軟調により海外マーケットのコイン消費が前四半期より約15%減少している。とはいえ、現在注力している新作ネイティブゲームは好調に推移しているため、「今後反転に努めていきたい」と青柳氏は述べた。
一方ウェブゲームでは、フィーチャーフォンのコイン消費減が大きく影響し、4Qは前四半期比で約11%減少に。『モンスターハンター ロア オブ カード』などの新規タイトルが伸長するも、既存タイトルの減衰をカバーできなかったようだ。
▼コイン消費の状況[全体]▼
■グリーが掲げるヒットの方程式…「打率の向上×打席数の増加=ヒット」
2015年通期の事業方針では、「ネイティブシフトの断行」を掲げた。これまで同社が主力としてきたウェブゲーム事業から大きくシフトする内容である。背景について取締役執行役員の荒木英士氏は、「ウェブゲーム事業の伸び悩みと、ネイティブゲーム市場の著しい成長のため。後者の市場でヒットタイトルを増やしていく」と述べた。
具体的なアクションとしては、まず現在300名が従事している国内(子会社含む)のネイティブゲーム事業の組織規模を約3倍の1000名規模の体制に増強。これによりフルネイティブゲームの開発ライン数を倍増の10→20ライン(内訳:グリー本体は15、ポケラボ5)とし、さらに世界中のエリアや複数のプラットフォームに多様なタイトルを展開していき、売上最大化のためにパブリッシング事業も強化するとのことだ。
事業方針の成功に繋げるため、荒木氏はグリーが考える「ヒットを出すためのロジック」について明かしてくれた。同社は、2014年度に「現在のネイティブゲーム市場で戦えるまでの水準に成長した」ことを前提に、2015年度は打席数の増加を通じてヒットタイトルの創出を目指すとして、次の「打率の向上×打席数の増加=ヒット数の増加」というヒットの方程式を掲げた。
2014年度の取り組みでは「打率の向上」のために、開発プロセスの改善やフルネイティブゲーム開発力の強化に努めた。「実際に高品質のタイトルを複数生み出すことができ、大きな手応えを感じている」と、2014年度の取り組みに結果が出ていることを荒木氏は説明。
2015年度には「打席数の増加」として、前述したウェブゲーム事業からの異動により1000名規模の体制を整え、本格的なフルネイティブゲームの開発ライン数の倍増を実現して、「結果的にTOP5に入るヒットタイトルを複数創出していく」とした。
人員異動は、既存ウェブゲームタイトルの効率運用を進めながら、ウェブゲーム事業の約700名のスタッフが異動する形をとった。懸念点とされる技術面については、フルネイティブゲーム開発人員を短期間で養成する仕組みを構築させて、最短3ヵ月で新規開発にアサインさせるとのこと。
■「GREE Platform」は協業中心へ…300人で効率化を図る
一方、「GREE Platform」を含むウェブゲーム事業はリソースの最適化を進め、巡航モードでの収益貢献を継続していくという。ネイティブシフトにより開発スタッフも減少するため、今後新規タイトルは有力パートナーとの協業を中心にリソースを充てていくようだ。
会場からの質疑応答では、ウェブゲーム事業の人員をネイティブゲーム事業にもシフトすることに、「ほぼ全員が異動になるのではないか。ウェブゲーム事業は問題ないのか」と心配する声が挙がった。
この質問について荒木氏は「現在の内訳としては、国内スタジオでネイティブ開発に従事しているのが約300人、またウェブゲームに従事しているのが約1000人いる。ネイティブが1000人体制になってもウェブは300人程残るため、効率化を進めていくなかで十分まかなえる人数」と説明した。なお、組織変更は9月1日付けに実施予定とのこと。
以下、ネイティブ、ブラウザ、海外と現況についての説明を見ていこう。
■ネイティブ:『戦乱のサムライキングダム』は月商1億円、『消滅都市』は極めて高い継続率に
まず、4Qにおける国内ネイティブゲームの進捗について。
グリー子会社のWright Flyer Studiosの第一弾タイトル『消滅都市』は、リリース前からの施策が奏功し約1ヵ月で100万ダウンロードを突破。また、継続率が極めて高いうえ、ユーザー規模は大きい水準を維持しているため、今後は新章追加やユーザー間のランキングイベントなどARPU(ユーザー1人当たりの単価)を高める取り組みを実施し売上拡大を狙うという。また、KPIを鑑みながらテレビCMを含めたプロモーションも積極化する。
ポケラボの2014年1月リリースの『戦国のサムライキングダム』は、リリース以降順調に成長し、2014年4月に月商1億円を突破した。現在の課題としては、動作が比較的不安定なAndroid版の売上が相対的に低いため、9月を目処に基盤監修を実施するという。基盤改修後は、プロモーションを積極化しAndroid版の売上拡大を狙う。
また、7~9月は国内スタジオから合計3本のリリースを計画(Wright Flyer Studios『天と大地と女神の魔法』、ポケラボ『クロスサマナー』、パートナータイトル1本)。10~12月に向けて新ジャンルのカジュアルな新規タイトルも開発中とのことだ。
ポケラボ開発のスマートフォン向けアクションRPG『クロスサマナー』は、日本のみならず、英語圏、欧州、中国語圏、韓国へのリリースも同時並行で進行中(今冬予定)。また、業界初の独立コンテンツ型事前登録「ファミコン世代集まれ!懐かしの裏ワザ入力キャンペーン」も話題になった。
▲『クロスサマナー』のプロモーションビデオ
■ブラウザ:既存ゲームを最適化…『ドリランド』のコイン消費は5割増
ウェブゲーム事業の4Q実績の内訳では、既存ヒットタイトルの中長期的な運用を前提に、ユーザーのニーズを捉えながら新施策の導入を随時実施してきた。『探検ドリランド』では、ギルドバトルイベントの改善を重ねて人気コンテンツに成長させた結果、2014年4月から6月のコイン消費規模が57%増を果たした。『聖戦ケルベロス』では、初のボイス付カード投入が人気を集めて、同作におけるスマートフォンコイン消費規模が前四半期比で9%増となった。現在ウェブゲーム事業では、新作タイトルを5本開発中。
パートナータイトルでは、グリフォンが提供する『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』が、リリース後2ヵ月で月商1億コインを突破するなどヒットタイトルに成長。今後はプロモーションの積極化によりさらなる消費拡大を目指すという。そして、8月15日リリース予定のKADOKAWAとの協業タイトル『城姫クエスト』では、事前登録キャンペーン施策が奏功し、事前登録数が好調に推移するなどの期待感を示した。「ウェブゲーム事業には、いくつかのセグメントに関して、ユーザーから人気の高いコンテンツが存在している。そうした分野を戦略的に展開していきたい」とした。
また、会場からの質疑応答では、自社開発タイトルの成長を見てか、「このままプラットフォーマーからゲームメーカーに転換するのか」という声が挙がった。この質問について青柳氏は、「ウェブとネイティブはユーザー層が完全に異なるため、今後も混ざらずに両立していくようにと考えている」と事業の舵を振り切るような明言は避けた。
■「ゲーム開発の“質の高さ”が評価されてきた」…海外事業は次のステージへ
2011年より海外事業を進めてきたグリーだが、2014年3Qには四半期黒字化を達成した。2015年度は、中長期での売上高の持続的成長に向けて、新たなマネジメントを迎え施策を推進するとのこと。海外事業について青柳氏は、「ようやく海外事業の地盤作りができたと考えている。このポジションを今後も高めて大きくしたい」とコメントした。
具体的な海外事業の方針では、新たなユーザー層の獲得による売上拡大のため、従来開発してきたミッドコアタイトルから、よりゲーム性の深いハードコアジャンルの強化にシフトしていくという。また、比較的北米はiOS端末が主流でもあるが、Android版及びヨーロッパを中心とした欧州言語版の展開を加速していき、タイトル売上の最大化を狙うとした。さらに有力デベロッパーとの協業タイトルを随時リリースしていき、「体制強化により新たなステージへ飛躍」すると方針を掲げた。
海外事業の取り組みの直近では、2014年8月より前Kabam社のワールドワイドゲームスタジオ最高責任者のアンドリュー・シェパード氏(写真右)が、GREE International(米国)のCOOとして参画。同氏はKabam社に在任中、累計1億ドル以上の大型ヒットタイトルへの成長をけん引。新たなマネジメントにより、事業推進の加速を図るとした。
また、3Dグラフィックを多用したPCオンラインゲーム級のハードコアタイトルも順次リリースを予定しており、新たなユーザー層を獲得することで上位ランキングを狙うという。海外スタジオの既存タイトルにも変化が表れており、一部のタイトルではAndroid版と欧州言語版をリリースしたところ、iOS版の売上を大きく上回るタイトルが出てきており、クロスプラットフォームにも手応えを感じているようだ。投資先でもあるMunkyFunとの協業タイトル『League of War』の立ち上がりも好調で、今後も有力デベロッパーとの協業タイトルの拡充を推進していくとのこと。
海外事業の展開としては、北米が中心に伸びているものだが、「中国市場を中心としたアジア圏にも改めて取り組んでいきたい」と方針を示した。直近では韓国スタジオで開発したタイトルを、中国語圏で展開したところ一定の成果を収めていると明らかにした。「我々が開発するネイティブゲームが、ようやく“質”という意味で高く評価されるようになった。今後は、有力パートナーとも組んで開発費のリターンにも努めていきたい」とコメントした。
■グリーならではの“一気呵成”で新規サービス創出にも努める
グリーは、事業領域の拡大のため、ホテル予約アプリや子育て支援サービスなど、ここ最近は立て続けで新規サービスをローンチしている。同社は、スマートフォンを活用した利便性の高いサービス展開が、「まだまだより良くできる領域がある」として、主力事業の領域を定めながらもグリーならではの“一気呵成”で新規サービスの創出を伸ばしていくとのことだ。なお、いずれのサービスも小規模チームで開発しているほか、短期間でサービスを立ち上げてきているという。
また、説明会では詳細な発言は無かったが、グリーは8月13日に取締役人事案も発表した。会長・副会長職を新設し、代表取締役会長兼社長に田中良和氏(現社長)が、取締役副会長に山岸広太郎氏(現副社長)が就任した(詳細は関連記事にて)。質疑応答では、「今後全社的な構造改革はあるのか」という発言に対して、秋山氏は「2014年度は、希望退職を含めて固定費の変動に取り組んできたが、現時点で昨年度のような構造改革は考えてない」と明言した。
■関連リンク
決算説明会資料(pdf)
Copyright © GREE, Inc. All Rights Reserved.
©KADOKAWA CORPORATION 2014 © GREE, Inc.
企画:KADOKAWA/GREE developed by AZITO
会社情報
- 会社名
- グリー株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632