【インタビュー】様々な会社に協力する、“力をかして頂くお手伝い”としてのプロデューサー。IP系スマートフォンタイトル開発に携わるバンダイナムコゲームス・金井健氏が語る仕事のポイント


現在バンダイナムコゲームスは、スマートフォンアプリ/ソーシャルゲームのプロデューサー・ネットワークエンジニアを募集している。

同社は『ドラゴンボールZ』『ONE PIECE』といった多種多彩なコミック、アニメをゲーム化しており、それが他社には見られない大きな独自性となっている。スマートフォンアプリでもその強みは充分に活かされており、『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『ONE PIECE DANCE BATTLE』など、多くの作品が配信されている。

今回、バンダイナムコゲームスでIP系スマートフォンタイトルの開発に携わる金井 健氏にインタビューを実施。コミックやアニメをゲーム化することの魅力、そして難しさについて話してもらった。

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■原作ファンからの意見も開発に役立つ


――:本日はよろしくお願いします。はじめに金井さんがなぜバンダイナムコゲームスで働くことになったのかを教えてください。

私は元々ゲームの開発に関わっていたわけではなく、2011年までナムコが運営するゲームセンターで店長として勤めていました。ただ、学生のころから開発には興味がありまして、ゲームを遊ぶことも大好きだったので、バンダイナムコゲームスで働くことを決意しました。ゲーム会社と言ってもたくさんありますが、ナムコのゲームセンター勤務という経緯があっただけに、バンダイナムコゲームス以外の選択肢は考えていませんでしたね。


――:ゲームセンターとゲームの開発では勤務内容もまったく違うものになるかと思いますが、転籍する際にプレッシャーは感じませんでしたか。

プレッシャー自体は、実はそれほど感じていませんでした。というのも、学生時代に情報資源管理を学んでいたので、それを活かすことができるだろうと考えていました。純粋に「やらせてもらえることが増える」という思いが強く、前向きな気持ちで転籍しました。


――:ゲームに係る仕事をしたいという思いは以前からあったのですか。

学生時代からゲームセンターにはよく足を運んでいて、ゲームセンターで働くことになったのも自然な流れでした。中でも『湾岸ミッドナイト』シリーズは特に好きな作品で、朝からずっと遊び、東京都のランキングに入ったこともありました(笑)。そしていつしか、「ゲームを作る側になりたい」という欲も強くなっていき、現在に至ります。


――:しかしバンダイナムコゲームスに入社してからは、ソーシャルゲームの開発に携わっていますよね。これまで触れてきたアーケードゲームとは勝手が違ったのではないでしょうか。

アーケードや家庭用のゲームと違って、ソーシャルゲームはクライアントとサーバーが絶対に必要になります。会社に入ったばかりのころは、そもそもサーバーで何が行われているのかも分かりませんでした。最初に携わったゲームを開発しているときは常に1から勉強している状態でしたね。


――:現在までに、どのような作品を手がけてきたのですか。

スマートフォンタイトルでは『聖闘士星矢小宇宙スロットル』や『ONE PIECE DANCE BATTLE』、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』などがあります。また、Facebookアプリの『PAC-MAN Casino』や、PCブラウザゲームの『神羅万象フロンティア』などにも関わりました。

私はこれらの作品に対して、多くの場合でプロデューサー職という位置づけで関わっています。しかし、すべての作品に言えることですが、協力会社の方々や、社内関係各署の力を借りながら開発に携わっている立場です。なので、私自身はプロデューサーではなく「お手伝い」と称しています。



――:「お手伝い」という肩書になると、あまり聞かないですね。そうなると、業務も多岐にわたるのでしょうか。
 

直接プログラムを書く場面はほとんどありません。社内、社外問わずたくさんのスタッフに協力を仰ぐことが主な仕事になります。私も多少であればプログラミングを学んでいたことはありますが、やはり専門の知識を持った方が担当したほうが確実に良い作品を作れます。実力のあるスタッフの力を引き出すこと、力をかして頂くことが大きな仕事ですね


――:多くの作品を手がけるとなると、複数のゲームを同時に開発することもあるのですか。

ええ。現在スマートフォンに携わる同じ部署のメンバーは、全員が複数のタイトルにプロデューサーとして関わっています。弊社は1つのIPに対していくつかのゲームを展開することも多く、1人当たりが対応する仕事のボリュームも増えていきます。現在は1年に3、4タイトルのペースで開発に携わっており、今後はさらに増えていくと思われます


――:複数タイトルを掛け持ちすることに難しさは感じますか。

スケジュール面の難しさはありますが、メリットもあります。私が所属するチームはIP物をゲーム化することが多く、原作に触れる機会も自然と増えます。その中で、キャラクターやストーリーの知識も得て、他の作品に活かすこともできるのです。


――:IPを使った作品の魅力はどこにあると感じていますか。

原作を見返しているうちに「ファンの方はきっとここに思い入れを感じているんだろうな」と思う部分が必ず出てきます。それをゲームに落とし込んだとき、ユーザーさんからすぐに反応が返ってくるのは魅力ですね。原作がないオリジナルの作品だと、システム面、ゲーム仕様の意見が多くなりがちですが、原作ファンの皆様からキャラクターの扱い方に関する意見をいただけるのは嬉しい限りです。


――:ちなみに、原作のコミックやアニメは以前からチェックしていたのですか。

好きな作品はとことん好きですが、まったく触れたことのない作品も、数は少ないですがありました。ですから、原作を読み返しなどといった勉強をさせていただくケースもあります。原作を知っていると、キャラクターの得意なものもすぐに分かるので、そこは強みになりますね。


――:バンダイナムコゲームスに限らず、IPを使ったゲームは年々増えています。この市場をどう見ていますか。

オリジナル作品とIPを使ったタイトルを比較すると、元々のユーザー数の差に驚かされます。事前登録やイベントに対する反応もまったく違いますし、IPならではの魅力は確実にあります。弊社に限らず、他社さんでも今後はますます増えてくるのではないでしょうか。


――:ちなみに、金井さん自身が原作のあるゲームの企画を出すこともあるのですか。

色々な方法があり、他の誰かが立ち上げた企画にサポートとして加わることもあれば、自ら発案し、企画を立ち上げることもあります。立ち上げに関しては今後も積極的に執り行うつもりですし、挑戦していきたいと考えています。


――:一方で、版権を持つ方の考えもありますし、自分の企画を導入できないケースもあるのではないでしょうか。

いえ、そんなことはないですよ。私が携わらせていただいたタイトルにはすべて何らかの形でこだわりを入れています。それはシステムであったりイベントの方向性、キャラクターのステータス設計等、様々ですが、どのタイトルにも自分の考えはしっかり入れさせて頂いております。


――:自社のアプリと他社のアプリを比較したとき、最大の違いはどこにあると考えていますか。

弊社だからこその強みといえるのは、外のメディアとの連携ですね。テレビアニメや雑誌の連載とタイミングを合わせることが必須で、調整は難しいものの、新キャラクターの登場等、タイミングがぴったり合えば反響は計り知れないものになります。これは私たちとしても最大のメリットであり、そこでいかに最大化させるかが課題にもなってきます。実際に、メディアとの連携によって初めて手応えを感じるアプリも過去にはありました

また、社内には開発チームがたくさんあり、近い担当者間でノウハウの共有ができていることも違いのひとつですね。スマートフォンに限らず、業務用やコンシューマの開発で得たノウハウが役に立つケースもあり、それを即座に吸収できるのは弊社ならではですね。

 
▼バンダイナムコゲームスの社屋




――:反響が大きければ大きいほど、開発に役立つ部分もありますよね。

そうですね。原作で新キャラクターが登場すれば、当然そのキャラクターに対する関心も強くなります。イベントの更新やガチャの投入などはタイミングが掴みやすいのはメリットのひとつですね。版権元様の監修はどうしても必要になり、その都度意向をお伺いしながらという形にはなりますが、とてもいい環境で実装を進められています。


――:版権元や開発を担当する会社とのコミュニケーションという点で重要視していることはありますか。

一言でIPといっても様々な種類があり、原作のコミックをベースにするかアニメをベースにするかで時間の流れ方も大きく変わります。原作の場合は印刷から雑誌発売までの時間配分を読む必要がありますし、アニメとなると放送タイミングや、声優の方々のスケジュールも重要になってきます。そこに携わるすべての方々の温度感を察知しながら進めることが大切になると思います。


――:温度感、ですか。

どのキャラクターを推していきたいのかが、版権元様と開発チームと違っていては上手くいきませんからね。幸い弊社でお世話になっている版権元様は大変柔軟に、とても丁寧にご対応頂いている場合が多く、ありがたいです。また、プロモーションに関しても版権元様が主導と決まっているわけではなく、相談をしたり、ときにはこちらから効果的だと思うものを提案しながら動きます。


――:ここまでは版権元とのコミュニケーションの話でしたが、開発チーム間でのコミュニケーションは積極的に行われているのですか。

社内にはたくさんの部署があり、もちろん開発チームもたくさん存在しますので、当然コミュニケーションの場は重要になりますね。また、開発チーム内に目を向けても、担当している原作の話をしたりと、かなりにぎやかな雰囲気です。ときには雑誌を回し読みすることもありますね(笑)。雑誌といっても週刊、月刊とたくさんありますし、基本的に漫画・アニメの話題は毎日出てきます。


――:雑誌を読んで、「この作品をゲーム化したら面白そう」と考えることもありますか。

やはりありますね。「この展開であれば、このジャンルでゲーム化したら面白いんじゃないか」とかは考えてしまいます。これはもう、仕事だからというよりも、好きだからこそ起こることなんだと思います。


――:開発チーム内では、どのような方が活躍しているのでしょうか。

本当に様々な経歴を持つスタッフが揃っています。私はゲームセンターの店舗勤務でしたし、バンダイナムコグループの研究部署にいた元研究員もいるんです。弊社のグループ会社は横のつながりも強く、個性的な能力を持った人材が次々に入ってくるのは大きいです


――:まったく違う業界での経験が、ゲーム開発の役に立つことはあるのですか。

実際、私たちの開発チームも順調にアプリをリリースできていますし、どんな経験であっても役に立つ可能性はあると思います。私も、運営をしていく中でのお客様の対応は、ゲームセンターの業務と重なっている部分があると感じています。以前は店舗で、お客様から色々な形で要望を頂くことがありました。お客様が、どういった気持ちで遊んでいるか考えることが、運営の中では多々出てきますが、そのときの経験はつかえると考えています。

 

■2015年は同期型のタイトルを立ち上げたい


――:2015年も新規タイトルを立ち上げていくと思いますが、そのときに気をつけたい点はありますか。

昨今のスマートフォンアプリ市場を見てみると、タイトル数が非常に多くなってきています。そこでいかに手にとってもらえるかを考えることが重要だと考えています。

私たちのようにIPをお借りして作品を作っている立場ですと、原作のどこをメインに打ち出せばお客様に響くかを見誤らないようにしたいです。また、システム面でもその作品ならではの内容を検討する必要があります。



――:では、今後に向けてチャレンジしたいことはありますか。

スマートフォンのタイトルはリッチ化の傾向にあり、システム面では同期で動くことが前提になっています。この流れに乗り遅れないように、リアルタイムで他のユーザーさんと遊べる、PCのオンラインゲームに近いタイトルを立ち上げたいですね。


――:スマートフォンタイトルを開発する中で、PCやコンシューマをどのような目で見ているのでしょうか。

コンシューマのタイトルを見てみると、ダウンロード販売が非常に強くなっていると感じています。PCに目を向けてもSteamが盛り上がっていますし、この流れは今後も続くのではないでしょうか。私たちの開発チームも、スマートフォンに限定しているわけではなく、また違ったプラットフォームで開発を行うことも、可能性としてはあります。なので、時代の流れは常に調べておくようにしています。


――:なるほど。今後も多くのチャレンジを続けていくとは思いますが、将来的に、どのような方と一緒に働きたいと考えていますか。

個人的な意見にはなりますが、貪欲な方と一緒に働きたいですね。誰かに言われて動き始めるのではなく、あらゆる可能性を模索しながら、「こうしたい」という欲を全面に出している人のほうが活躍できると思います。そして、自分の欲を表現するためにも様々なところに目を配り、チャンスを逃さない人が望ましいです。

とはいえ、スタッフが非常に多い会社なので、欲張りでありつつ協力をすること、そして協力を仰ぐことも大切です。私が自分自身のことを「お手伝い」であると考えていることも、周囲の協力があって初めて実現できる業務だと考えているからです。



――:では最後に、読者へ向けたメッセージがあればお願いします。

スマートフォンに限らず多くのハードに言えると思いますが、新しい製品が発売されたときにスペックが下がることはまずあり得ません。スペックが上がり続けると、当然できることも増えます。それがIPとどのような融合をするともっとも良い作品になるかを、これからも考えていきたいです。また、やることは増えたのに、やる人がいないでは難しいので、仲間となれる人を探していきたいです。


――:ありがとうございました。
 

 
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
https://www.bandainamcoent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
設立
1955年6月
代表者
代表取締役社長 宇田川 南欧
決算期
3月
直近業績
売上高2896億5700万円、営業利益442億3600万円、経常利益489億5100万円、最終利益352億5600万円(2023年3月期)
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