【インタビュー】猫だけどガチ戦国! 可愛く見えて硬派な新作アプリ『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』の開発秘話をプロデューサー・廣重氏に訊く


コーエーテクモゲームスは、スマートフォン向けダンジョン探索RPG『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』(App Store/Google Play)のリリースを3月下旬に予定している。

本作は、和猫の「織田のぶニャが」(元武将:織田信長)やシャム猫の「伊達まシャムね」(元武将:伊達政宗)など個性豊かな“ねこ武将”たちが活躍する、ソーシャルゲーム『のぶニャがの野望』シリーズの完全新作タイトル。

織田のぶニャがと時を駆け巡る壮大な物語を軸に、罠と敵が待ち受ける3Dダンジョンを駆け抜け、ねこ武将がぐるぐる回るスロットバトルで敵を撃破していくなど、様々な要素がてんこ盛りのゲームとなっている。さらに “GPS 機能”でリアル世界とも連動し、各地のご当地ねこ武将が手に入るのも特徴だ。

今回「Social Game Info」では、『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』プロデューサーの廣重演久氏にインタビューを実施。本シリーズの立ち上げから、こだわったポイントや今後の展望などを伺ってきた。
 


 

■「のぶニャが」をIPとして世界中で愛されるキャラクターに…




織田のぶニャが 様 (写真中央)
伊達まシャムね 様 (写真右)

株式会社コーエーテクモゲームス
ネットワーク事業部 ネットワーク2部シニアマネジャー
『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』プロデューサー
廣重演久 氏 (写真左)

(※当日は忙しい合間を縫って、織田のぶニャが様と伊達まシャムね様も駆けつけてくれた。…が、本作のPR大使を務める伊達まシャムね様が前に出すぎて、織田のぶニャが様の怒りを買い、そのまま戦闘モードに突入。当日は写真左端にひっそりと居る廣重氏中心に話を伺ってきた)


――:本日はよろしくお願いします。本作『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』からお聞きする前に、まず『のぶニャがの野望』シリーズの立ち上がりから振り返ってお聞きしたいと思います。初代はブラウザのソーシャルゲームでしたよね。

ええ。2015年2月22日(にゃんにゃんにゃん - ねこの日)で4周年を迎えて、現在5年目に突入しました。当時はブラウザゲームが主流で、PCブラウザゲームの主力ゲームというコンセプトで企画を立ち上げました。


――:当初から猫だったのですか。 

いえ、ゲームシステムは現在の形のままで変わりませんが、最初に考えたビジュアルは侍の傭兵団だったんですよ。そして、その企画を会議で提案したところ、「システムは面白いが見た目はライトユーザー向きじゃないね」とビジュアルの面で突っ込みが入ってしまいました。

そこで一度持ち帰ってチーム内で考えていたところ、当時は彦根の白い猫のご当地キャラが人気だったこともあり、猫をモチーフにした「織田のぶニャが」を思いついたのです。



――:戦国武将と猫が融合するなんて、これまでもない試みかと思いますが、社内ではどのようなリアクションだったのでしょうか。

社長にも見せることを考えると、正直、開発チームはビビっていましたね(笑)。あの『信長の野望』を開発したシブサワ・コウ(コーエーテクモゲームス 代表取締役社長 襟川陽一氏)に対して、「戦国武将を猫にします。のぶニャがです」と果たして言っていいものなのかと……。しかし、これが思いのほか好感触で「その発想は無かった」と無事採用されることになったのです。

また、当社会長(コーエーテクモゲームス 代表取締役会長 襟川恵子氏)も大の猫好きで、今回のタイトルの開発を聞きつけると「猫でやるからには、猫の勉強をしなさい」と、海外の猫に関する学術書をたくさん持ってきてくれました。ただ、フランス語のため全く読めず、仕方なくそれらを横に置いて猫に関する雑誌などを買いに行き勉強しました(笑)。



――:(笑)

とはいえ、こだわり始めると、とことんまでこだわるのは、当社の良いところのひとつですね。たとえば『のぶニャがの野望』のキャラクターは、戦国武将の性格と猫の性格を合わせて、かつ名前にも取り入れています。伊達まシャムねはシャム猫、去年大河ドラマに起用された黒田官兵衛は黒田ボンベイといったように、すごい猫好きの人には刺さる内容となっていますね。現在500体以上いますが、キャラクター設定の資料は膨大なものになっています。
 

▲伊達まシャムね、猫種:シャム、元武将:伊達政宗


▲ニャンの利休、猫種:コラット、元武将:千利休


▲お江ニャン、猫種:アメリカンショートヘア、元武将:お江


――:戦国武将と猫を安易に掛け合わせて適当に制作されたものではないことは、キャラクター1体1体見てもひしひしと伝わってきます。

そうですね。「イラストだけ可愛く描きました」というのではなく、今話したように性格を合わせるのはもちろん、当社が得意とする歴史エピソードにも絡めるなど、ゲーム内容はガチの戦国となっています。そうしたギャップがユーザーさんに受け入れられているのかなと思います。

また、「ねこ戦記」というストーリーモードがあるのですが、これがきちんと読むだけでも数時間以上かかるほどの長い読み物になっていて、なおかつ史実に基づきながら猫要素も加えるなど、もう出版物にしたいぐらいの物量がありますね。



――:それから地方のイベントなどにも“織田のぶニャが”含めてご参加されていますよね。

ええ。当社には織田のぶニャが様と伊達まシャムね殿の2体が常駐しており、「関ケ原合戦祭り」や「ぎふ信長まつり」などリアル戦国イベントに訪問してPR活動を行ったりしています。

このほか、舞台をやったり、キャットフードやボーカロイドのIAとコラボしたり、本作のキャラクターソングを大木凡人さんに歌っていただいたり、プロレス団体に乱入したり、その延長戦上で私がリング上で丸坊主にされたりとか、本当に様々なことをやってきましたね(笑)。ある意味当社のチャレンジタイトルとして、位置づけられたのかなと思います。

 

▲織田のぶニャが様


▲伊達まシャムね様


――: IPとして育てていく気概が物凄く感じます(笑)。シリーズのユーザー層はどのような感じですか。一見、女性ユーザーが多そうにも思えますが。

特別「のぶニャが」シリーズは女性向けコンテンツではなく、あくまでもライトユーザー向けとして開発しています。男女比でも男性のほうが多いですが、本家「信長の野望」に比べれば、圧倒的に女性比率は高いのが特徴です。


――:分かりました。さて、そんな人気ブラウザゲームが今回初のスマホネイティブゲーム『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』として登場します。既報では3Dダンジョンなどが注目されていますが、改めて本作におけるコンセプトを教えてください。
 

『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』では、一寸先がわからないというドキドキ感を大切にしました。というのも私、大学生のときに『マインスイーパー』にドハマりしてしまい、2ヵ月間ひたすら『マインスイーパー』をやり続けていた時期がありました。本当に中毒性の高いゲームだったこともあり、これとRPG要素を上手く掛け合わせることはできないかと、色々試行錯誤した結果……まあ、面白いものにまとまらなかったんですよね。

そこで『マインスイーパー』のどこが面白いのかを改めて考えたところ、一歩進んだ先に何があるか分からない緊張感が魅力だと思ったのです。それを馴染み深いゲーム性に落とし込むことを考えたところ、3Dダンジョンが一番適しているのではないかと思い採用しました。

 


――:なるほど。そして、バトル部分はスロット形式を採用していますよね。

はい。もちろん王道のコマンドバトルなども考えたのですが、せっかくスマホゲームで出すのであれば、触っていて気持ちよくないと楽しく遊んでもらえないだろうと。そして、操作が分かりやすく、かつタップしたときの反応の良さを考えたとき、スロットの目押しが面白いだろうとなりました。また、3Dダンジョンと同様に本作のコンセプトでもある“ドキドキ感”を、このスロットバトルでも味わうことができるため採用しました。
 


――:私も実際に遊ばせてもらいましたが、スロットバトルの細やかなシステムには驚きました。目押しのしやすさに工夫がされているほか、後先のことも考える戦略性も兼ね備えていますよね。

そうですね。恐らくスロットを題材にしたゲームアプリは、これまでもいくつか出ていますが、ユーザーさんはどこか操作されている感じになっていると思うんですよ。通常のスロットでも一定の条件を満たさないと777(スリーセブン)は揃わないですし、ただ運要素だけのゲームになってしまうのは寂しいため、ここに少しのゲーム性を持たせることにしたのです。

たとえば、リールの絵柄は一度止めるとそのリールから絵柄が外れて、別の絵柄が入るようになっています。また、次に入る絵柄も表示されています。その仕様を利用することで、あえていらない絵柄をどかして、ボス戦に備え強い絵柄をキープするなど、リールの内容を自ら調整することができるのです。



――:そうです、そうです。黄色が邪魔なときは、あえて雑魚戦で黄色を何回も揃えて、自分が欲しい赤色の絵柄が新しくリールに追加されるのを狙ったり、またはその逆に残したりと、実際に触ると随所で戦略性の高さが垣間見られました。

結局、作りこんでしまいますよね。これまで当社はコンソールゲームを中心に開発してきた会社ということもあり、スマホゲームとは言えど、「やりすぎかな…」というところまでこだわって手掛けてしまいました。実際にソーシャルゲーム『のぶニャがの野望』もデッキ構成なども含め、かなりのやり込み要素があり、当初の想定よりも深くそして長く遊ばれています。


――:また、初代『のぶニャがの野望』にも引けを取らないほど、本作『ぐるニャが』も“時を駆け巡る”など壮大な骨太ストーリーが特徴ですよね。

ええ。シナリオは、これまで様々なゲームに関するシナリオ・書籍を手掛けられた手塚一郎さんにお願いしています。ストーリーモードは、織田信長の一生を書いた実在の書物「信長公記」をベースに、猫要素を織り交ぜた「のぶニャが公記」という名称になっています。

ゲームでは、信長がうつけ者と呼ばれていた時代を過ぎ、ちょうど表舞台に出てくるあたりからストーリーが始まります。世界が闇に覆われて歴史が変わっていくなど、オリジナル展開も取り入れていますが、やはりベースは信長の一生を書いた話ですので、基本的には史実に沿ってストーリーは展開していきます。

また、ストーリーモードとは別のイベントなどには、各大名家から様々な武将が登場します。ちなみにサービス時のキャラクター数は、200体ほどになります。シリーズ通して500体以上いますので、適宜キャラクターは追加していきますし、もちろん『ぐるニャが』オリジナルの描き下ろし武将なども登場します。

 
 


――:そして、個人的に音楽を猛プッシュしたいです! とにもかくにも音楽が格好良すぎですよ。

ありがとうございます(笑)。音楽は『戦国無双』や『太閤立志伝』なども手掛けた、弊社のサウンドクリエイターが担当しています。オーケストラ調のなかに、ロック、和楽器、そして鳴き声など、決して交わらないであろう要素が見事に調和しています。なかでも戦闘中の音楽では、私から「アップテンポな和風ロック」という内容でオーダーしました。加えてスロットバトルなので、テンポ良く耳に残るメロディラインを意識して手掛けています。公式サイトでは3曲視聴できますので、ぜひ聞いてみてください

 
――:本作といえば、GPS機能を活用したコンテンツも特徴的ですよね。
 
はい。GPS機能を駆使することで、全国各地のご当地ねこ武将を手に入れることができます。やり方は簡単で、たとえば旅行で愛知県に訪れたときに、ゲーム画面から位置情報を登録することで、無料ガチャのラインナップにその都道府県に付随したご当地ねこ武将が追加される形になっています。また、フレンドが相互フォロー状態であれば、その人が登録している都道府県のご当地ねこ武将も追加されるので、プレイヤーのコミュニティ次第では割と集まりやすいようになっています。
 
そもそもこのGPS機能の導入は、先ほど話したリアル戦国イベントの参加がきっかけでもあります。私もこの4年間で本当に多くの場所に訪れました。当初は現地で旗を持っている私に声をかけてくれた人に対して、ゲームのシリアルコードを配っていましたが、それだとあまりにも限定した施策になってしまうため、もうゲーム内に直接入れ込んでしまおうというのが、今回のGPS機能です。お城のスタンプラリーじゃないですけど、このゲームをきっかけで現地のご当地イベントに参加するのも良いと思います。こうしてリアルの世界でも“のぶニャがワールド”を感じ取っていただければ幸いですね。


――:さらに特徴的なシステムとして挙げられるのが、「しかばねシステム」と「ニャンデレシステム」です。……といいますか、本作、従来のスマホゲーム同様の立て付けかと思いきや、随所に様々な遊び心が詰まっていますよね。
 

じつは私、ゲームを開発するときに、必ずユーザーさんの心に残る細かい遊び要素を入れるのが大好きで、「これ明らかに楽しんで作ってるな!」というのがユーザーさんに伝わるようなサブ要素は本当に大切にしているんですよ。今回の「しかばねシステム」も“死して屍拾うものあり”という突然のフレーズの思い付きで導入してみました。

本作では、敵とのバトルに敗北すると、「しかばね」としてダンジョン内に取り残されてしまいます。しかばねとなったねこ武将は、ある程度時間が経過するまでパーティーに参加できませんが、取り残されたダンジョン内の復活ポイント「猫塚」に到達することで開放することが可能で、猫塚では自分のねこ武将はもちろん、他のプレイヤーのねこ武将を救出することもできるようになっています。また、ゲームを Twitter などの SNS と連携することで、友人に助けを求めることもできるといった、ソーシャル性も取り入れています。

あとはコンセプトでも話しましたドキドキ感を味わってもらうため、少しばかりの恐怖心を煽りたかったのも導入経緯のひとつです。

 
 
▲しかばねスロット


――:あとは驚きの「ニャンデレシステム」ですね。

これは特別ゲーム性に関係ないですが、ゲーム内のねこ武将を直接なでることで、デレます……(笑)。なでることで1日1回ガチャポイントがもらえますが、ぜひ各ねこ武将に用意しているセリフにも注目してみてください。これも遊び要素のひとつとして取り入れましたが、やはりキャラクターのことをもっと愛して欲しいからこそ取り入れたのも、ひとつの理由ですね。
 
 
▲「ニャンデレシステム」


――:リリース後、どのような運営施策を考えていますか。

すでにいくつかのイベントを準備していますが、いずれは様々な遊び方が楽しめる作品にしていきたいと思います。当然個人で楽しむことを柱に据えつつも、チーム戦や対人戦など、自分が育てて強くなったパーティーをほかの人にもアピールできる場も考えていきます。単純な強さでもいいし、「私のところは伊達家で揃えました」という楽しみ方もありかもしれません。そうした多角的に楽しめるゲームになるよう、運営チームも努めていきます。


――:海外展開についてはいかがでしょうか。

ソーシャルゲームの『のぶニャがの野望』は台湾・中国でサービスしていることもあり、当然『ぐるニャが』でもアジア展開は視野に入れています。もちろん欧米にも進出したいですね。


――:それでは、最後に『のぶニャが』シリーズとしての展望などを教えてください。

やはりIPとしては、日本のみならず、世界中で愛されるキャラクターにしていきたいと思います。ゲームからスタートしたコンテンツですが、先ほどお話したようにイベントの参加やコラボなどで認知度を高め、本当に多くの方々に「のぶニャが」シリーズを知っていただければ幸いです。たとえば、海外の中継などで子供が「のぶニャが」のTシャツを何気なく着ているとか(笑)。それほどの認知度と愛してもらえるようなコンテンツになるよう、これから頑張って目指していきたいと思います。


――:ありがとうございました。
 
(取材・文:編集部 原孝則)


■『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』
 

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株式会社コーエーテクモゲームス
https://www.gamecity.ne.jp/

会社情報

会社名
株式会社コーエーテクモゲームス
設立
1978年7月
代表者
代表取締役会長(CEO) 襟川 陽一/代表取締役社長(COO) 鯉沼 久史
決算期
3月
直近業績
売上高681億700万円、経常利益341億6600万円、最終利益268億5200万円(2023年3月期)
上場区分
非上場
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