【ガンホー決算説明会】「ディバゲは新たな柱」「パズマリ機にスマホ版ユーザー層の拡大へ」…反動減のYonYを物ともせずに2期連続の増収増益を記録


ガンホー・オンライン・エンターテインメント<3765>は、4月28日、2015年12月期第1四半期(1-3月期、1Q)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。売上高は446億1800円(前期比10.6%減)、営業利益236億8000万円(同17.7%減)、経常利益237億7500万円(同15.4%減)、四半期純利益151億2800万円(同11.3%減)だった。

森下一喜社長(写真)は説明会で、主力タイトル『パズル&ドラゴンズ』(以下、『パズドラ』)のMAU(月間活動ユーザー数)が継続的に伸びているほか、『ディバインゲート』がテレビCM放送を機にダウンロード数を飛躍的に伸ばし、“『パズドラ』に続く新たな柱”であることを述べた。

また、同社は公開買付けにより上限1億9500万株、約830億円の自社株買いを実施すると同時に、JASDAQから本則市場(東京証券取引所市場第1部または市場第2部)への市場変更プロジェクトを立ち上げたことも発表。(以下、かぎ括弧内は森下社長の発言)

 

■YonYで減収減益だが、QonQは2期連続の増収増益…『ディバゲ』は新たな柱




四半期ごとの業績推移を見てみると、1Qは四半期推移(QonQ)で売上高が3.2%増、営業利益が13.6%増、経常利益が13.1%増、四半期純利益が22.8%増での着地となった。事前の日経新聞報道やその際に同社がコメントした「2014年12月期第4四半期売上高402億円、営業利益208億円に対して、概ね同水準で推移している」(関連記事)…という数字に比べると、かなり上ブレしての着地となったと言える。

前期比(YonY)では、売上高が10.6%減、純利益が11.3%減の減収減益となった。2014年12月期1Qは、同社の売上・利益ともに四半期として過去最高を記録したこともあり、「当時は予想以上の業績だった。反動減と捉えている」と述べた。「とはいえ、2期連続で増収増益を記録している」と本来頭打ちでトレンドも下降していくところを、未だに業績が伸びていることを強調した。今後もARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均月間課金額)を適切に調整しながら、MAUを着実に伸ばしていく施策をとる方針であることを語った。


▲現在4年目に突入した『パズドラ』は、日本国内で累計3500万ダウンロード(世界累計4500万ダウンロード)を記録。MAUも引き続き堅調に高位安定で推移。


▲2015年3月20日よりテレビCMを実施した『ディバインゲート』のダウンロード数も右肩上がりに成長しており、現在累計400万ダウンロード突破。同作は『パズドラ』と比較して、若年層をターゲットに絞ったタイトル。継続的に運営が奏功していることもあり、ロングテイル型で収益確保している状況で「『パズドラ』に続く新たな柱として成長」と太鼓判を押した。


▲『サモンズボード』は、KADOKAWA主催の「電撃Appアワード2014」で1位を獲得。「将棋やチェスといった戦略性の高いゲームとして、とくにゲーム好きのユーザーに対して非常に響いているタイトル。ファンのロイヤリティが高い」と述べて、新しい顧客の確保を十分に秘めていることを明かした。


販管費は微増。前四半期比では、給与手当は2014年月期第4四半期(10-12月期、4Q)がインセンティブで若干膨らんでいるほか、広告宣伝費は1Qに『パズドラ』3周年の節目に投下した大型テレビCM(関連記事)により増えている。人員数は、前四半期の345名から5名増加で現在350名。今後も緩やかな増加を続けていくとし、「量より質を重要視。より弊社にフィットした人材を採用していく方針」と言葉を添えた。



 

■『パズマリ』機にスマホ版のユーザー層拡大へ 北米にも期待

 
 

2015年4月度の概況として、ニンテンドー3DS向けソフト『パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズ エディション』(以下、『パズマリ』)を2015年4月29日に日本国内で発売することを挙げた。同作は、『パズドラ』と世界中で多くの人に愛されているゲームキャラクター・“マリオ”がタッグを組んだコンシューマ向けの新作パズルRPG。
 
海外では、韓国で5月1日、欧州で5月8日、北米で5月22日に発売予定。販売元は日本国内はガンホー、海外は任天堂<7974>が担当する。『パズマリ』発売のひとつの狙いとして、国内外同様にスマホ版『パズドラ』のユーザー層拡大に繋げていくとしている。「まだ遊ばれていない方も多い。異なるプラットフォームをきっかけに、幅広いユーザー層に向けて、パズルアクションの醍醐味を知ってもらえれば幸い」とした。

なかでも北米に対する期待値を語った。現在スマホ版『パズドラ』の北米ダウンロード数は600万で、売上共に緩やかに成長しているものの「決して大成功しているとは言い切れない」と冷静に捉えて、『パズマリ』をきっかけに『パズドラ』の“遊びそのもの自体”の認知を拡大し、スマホ版の導線を確保していくとした。なお、北米では6月に『パズマリ』のテレビCMも開始予定。

Tencent(テンセント社)と事業提携して配信を予定している中国版は、以前の発表会(関連記事)でも言及した通り「中国仕様に作り替えている。当然パズルアクションの良さは踏襲しているが、我々が見ても別物と思うほど違う作品となっている」と現況を明かした。


 

■脱ソフトバンクに向けて…「自立性を高めていく」

 
決算発表と同時に、自己株式の取得と本則市場への変更も発表された。

自己株式の取得では、1株あたり425円での公開買付けによる上限1億9529万4100株、829億9999万2500円で実施。買付期間は4月30日~6月1日。同社は、4月上旬より、親会社であるソフトバンク<9984>との間で、経営の自由度を高めてよりスピーディな意思決定と実行を行う体制を整え、企業価値の一層の向上を図る目的で、保有株式の取得に向けた協議を進めてきたという。

その協議の中で、ソフトバンクが同社株の保有比率引下げを検討する形となり、今回、4月27日の同社終値455円を6.59%ディスカウントした425円での公開買付けによる自社株買いが実施されることとなった。なお、ガンホーとソフトバンクは公開買付応募契約(1億8823万5200株:保有割合の16.34%)を締結しており、公開買付けが成立すると、ガンホーはソフトバンクの子会社から関連会社に移行する形となる。

これに対して森下社長は「自立性をより高めていく」ことを踏まえ、「資本効率の向上及び株主還元などを明確化していく動き」であることも添えた。なお、公開買付けが完了した後、速やかに半分を消却するものの、もう半分は未定とした。

また、同社はJASDAQから本則市場(東京証券取引所市場第1部または市場第2部)への市場変更プロジェクトを立ち上げ、市場変更に向けた準備を進めている。公開買付けに係る公開買付期間の終了後、2015年6月中をめどに市場変更の申請を行う予定としている。

【ソフトバンクによる公開買付けへの応募前後の保有株式の状況】



説明会の質疑応答では、任天堂とディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>による資本業務提携に関する内容が集中した。同社は今回の取り組みに対して、「我々は『パズマリ』を機に今後も任天堂さんとは良好な関係を続けていきたい」と前置きしながらも、「とはいえ、ひとつのプラットフォームに縛られることは無い。ソニーさんやマイクロソフトさんをはじめ、様々なプラットフォームでワンソース・マルチユースとして展開していくこともあるだろう」と述べた。

また、“仮にガンホーが任天堂と業務提携を結んで、両社でスマホタイトルを出すという未来もあったのか”…といった質問に対しては、任天堂に敬意を表していることを前置きしながらも、きっぱり「我々は組まないと思う」とした。その理由に対して、あくまでも同社はゲーム“開発会社”であることを強調し「黒子にはなりたくない。前に出るプレイヤーとして、ゲームを提供していきたい」と述べて、そもそも同社の経営スタンスと沿わないことを説明した。

そして、近年比較対象にされているミクシィ<2121>の『モンスターストライク』のトップセールスや人気について聞かれた際は、「我々が大切にしているのは、トップセールスで1位を取るということより、『パズドラ』を筆頭に生み出した作品たちが長く愛されること」と述べ、目先の売上のために過度に高ARPPUを狙ったり、たとえ売上が抜かれて一喜一憂したりすることは無いとした。

なお、2015年12月期の業績予想は非開示。コンテンツ関連の新規性の高い事業を展開しており、短期的な事業環境の変化が激しいことなどから、業績の見通しについては適正かつ合理的な数値の算出が困難であるため、としている。ただ、4月の月次売上高の見込みを公開しており、前年同月比9.7%減の140億円だった。
 
(編集部 原孝則)

 
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
http://www.gungho.co.jp/

会社情報

会社名
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
設立
1998年7月
代表者
代表取締役社長CEO 森下 一喜
決算期
12月
直近業績
売上高1253億1500万円、営業利益278億8000万円、経常利益293億800万円、最終利益164億3300万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3765
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