【インタビュー】「日本のゲームです」…仏・ゲームロフトの東京スタジオが贈る『マグナメモリア』に交わる一瞬の記憶と2年間の開発記録


ゲームロフトは、去る5月28日、東京スタジオが開発する初のスマートフォン/タブレット向けゲーム『マグナメモリア』を配信開始した。

同社と言えば、フランスはパリに社を構える世界有数のモバイルゲームメーカー(1999年12月設立)。代表作は、レースゲーム『アスファルト』シリーズをはじめ、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)『モダンコンバット』シリーズのほか、ディズニーやマーベルなど人気IPのゲーム化など数多くのタイトルを手掛けている。2004年4月には、日本法人が設立された。

これまでゲームロフトの日本支社(東京スタジオ)は、本社が開発したゲームのローカライズやマーケティングを担当していたが、今回同社が企画・開発を務めた初のゲームアプリが登場。その開発の舞台裏に迫った。

 

■『マグナメモリア』とは


本作は、新感覚コンボバトルを採用したファンタジーRPG。プレイヤーは、少女型AI「ティケ」(ボイス:花澤香菜さん)とともに、世界の謎を解き明かす冒険の旅に出て行く。

バトルでは、一瞬の記憶を頼りに同じ色のタイルのペアを制限時間内に揃えていき、その数に応じた攻撃を繰り出すといった斬新なシステムとなっている。すべて揃えることでド派手なスキル(連携技)が発動可能だ。アタッカー、ディフェンダー、アシスト、トリックスター、メディックの5種類の戦闘タイプを組み合わせてチームを編成するのだが、チームメンバーによっては連携技も変化し、その数は100種類を超える。

また、「ティケ」の投げられる質問に答えていく、メッセンジャー形式のストーリー展開が独特の臨場感を演出。さらに、タイムラインで他のプレイヤーの行動を見て、助けたい、協力したいと思ったら即タップすることで、クエストやレイドバトルに参加しているユーザーと簡単に協力プレイができる。
 
 
 
 
 
 

■「一瞬の記憶」を題材にしたシステムと2年間の開発記録



ゲームロフト株式会社
ビジネス部 プロダクトマネージャー
松下 健太郎 氏 (写真右)

プロダクション部 シニアゲームデザイナー
小山 玲央 氏 (写真左)


――:本日はよろしくお願いします。まずはおふたりの『マグナメモリア』におけるご担当を教えてください。

松下健太郎氏(以下、松下):『マグナメモリア』では、プロダクトマネージャーとしておもに市場調査やプロモーション戦略を担当しています。

小山玲央氏(以下、小山):私は開発側のリードゲームデザイナーとして、本作のバランス調整や機能追加などのデザイン統括を担っています。


――:そもそも『マグナメモリア』ですが、どのようにして企画が始まったのでしょうか。

松下:本社(フランス・パリ)より「日本市場をターゲットにしたゲームを作ろう」という話が持ち上がり、市場の知見もあることから東京スタジオに白羽の矢が立ったのがきっかけです。プロジェクトが発足したのは2013年頃で、ちょうど日本のゲームアプリ市場が北米を抜いて1位となった時期でもあり、そうした背景も後押しして日本ユーザー向けのゲーム開発が始まったのです。


――:ですが、おもに東京スタジオでは、海外のスタジオが手掛けたゲームのローカライズ・マーケティングを担当するのであって、そもそもゲーム開発できる環境はなかったのでは。

松下:はい、ありませんでした。そのため、すでにいるメンバーで企画を練り上げていき、少しずつエンジニアやデザイナー、プランナーなどを増員していきながら開発を進めていきました。なにぶん、初めての取り組みでしたので、ゲーム開発の前にスタッフを集めるところから始まりましたね。


――:具体的にどのようなフローで開発を進めていったのですか。やはり本社と密に話し合い、ゲーム内容も決めていったのでしょうか。

松下:とくに本社からは、具体的にこういうゲームを作って欲しいという要望はなく、かなり自由な裁量権が東京スタジオに与えられました。もちろん定期的に本社には情報を共有していきましたが、おもに国内だけで企画・開発を担当しています。

企画の立ち上げでは、私のほうで日本のゲームアプリ市場を調査し、海外とのトレンドの違いについて分析していきました。海外では、ゲームロフトも多く手掛けているストラテジーやアクションなどが人気ですが、やはり日本ではRPGが支持されているため、まずはRPGをベースにしたゲームにしようと決めました。

そして、リリースされるのが1~2年後であることを見越し、これまでには無い、かつそのときに通用するシステムを考えたとき、一瞬の記憶を頼りに同じ色のタイルを制限時間内にマッチさせていく、現在のバトルシステムに行き着きました。


――:バトルシステムは本当に独特ですよね。最初見たときはパズルゲームかと思いました。

松下:当初は本当に多くのアイデアが出てきました。そのなかで、関係者が集まり議論を重ねた末、まだ各社どこもやっていない記憶を使ったバトルシステムになりました。

小山:すべてのタイルを引っくり返すことができるとなかなか爽快ですし、ペアを揃えるたび時間が回復するので結構続けやすくなっています。当初は時間制限をつけていませんでしたが、加えた途端一気にゲーム性が確立されました。
 
 


――:バトルと言えば、連携技を決めたときのキャラクターもよく動きますよね。

小山:やはりゲーム好き・アニメ好きと双方が納得できるようなクオリティになるよう、それこそアホ毛の一本まで動くようにこだわりました(笑)。こうした日本人ならではの細かい演出は、海外企業が日本のゲームを真似しても出来ない配慮かと思います。



――:ヒロインである少女型AI「ティケ」(ボイス:花澤香菜さん)も可愛らしいですよね。

松下:ティケは『マグナメモリア』における看板キャラクターを担っています。ゲーム中はもちろんですが、たとえば広告バナーやストアに並ぶアイコンなど、外部露出する際にも際立つキャラクターになっています。デザインや性格に至るところまでこだわり、「『マグナメモリア』と言えばこの子だよね」と思ってもらえれば幸いです。
 
 
 

――:また、ティケと言えば、ナビゲーションキャラクターとして、基本1対1で会話していくのも独特です。

小山:そうですね。こちらもゲームデザイナー側がこだわったとろで、物語により没頭できるようにと、ストーリーテラー的な役割も担当しています。会話中のゲーム画面も、メッセンジャーアプリのようにデザインして、実際にキャラクターとチャットを楽しんでいるような独特な没入感が出るように演出しました。


――:オープニングではアニメーションを取り入れていましたね。内容もかなり豪華でした。



松下:はい。アニメは『マクロスフロンティア』などを手掛けたサテライトさんに依頼しました。先ほど申し上げたように、ゲーム・アニメ好きの双方に訴求できるよう、アニメを取り入れたり、声優に花澤香菜さんを起用したりしています。

海外タイトルでは、マーベルやディズニー、ユニバーサルなど大型IPを題材としたゲームも手掛けていたこともあり、やはり固定ファンが付いてくるため初速のダウンロードは凄いものがあります。しかし、今回は完全オリジナルタイトルのため、様々なところで露出度・知名度を肉付けしていく必要がありましたし、まずは「日本のゲームですよ」というイメージを出したいという思いがありました。


――:先ほど本社から自由な裁量権が与えられているとおっしゃっていましたが、とはいえ開発中は完成間近にて、逐次本社の方に報告しているかと思います。

小山:ええ。企画の立ち上げは、経営陣を含めて「こういうゲームを作ります」ということを共有しました。そこから開発中は、「コンボシステムはどうするのか」「爽快感がないとダメだよね」など、本当に色々なフィードバックがありましたので、ひとつひとつ解消して完成に繋げていきました。


――:『マグナメモリア』における海外展開はいかがでしょうか。

松下:はい、視野に入れています。


――:バトルシステムが特徴的なので、逆に本社や海外のスタジオ側が『マグナメモリア』のシステムやノウハウを活用して、新たなタイトルを手掛けるということもありえますかね。

小山:たしかに、そうした横展開もありえるかもしれないですね。というのもノウハウの共有は、各スタジオで常々行われています。たとえば、もともとゲームロフトのタイトルにはイベント運営というものは存在しませんでしたが、日本や韓国の事例を通して学んでいき、いまでは専門のイベントプランナーを採用しているほどです。


――:『マグナメモリア』の完成後、本社からのリアクションはいかがでしたか。

松下:最終的に本作は10万人の事前登録を集めることができ、リリース後の初速も良い結果を記録することが出来ました。これを見た本社の人に、「事前登録キャンペーンで何をしたのか」「どれだけの費用をかけたのか」など、質問はされましたね。


――:そういう意味では、先ほどのアニメーションや声優さんの起用など、事前登録キャンペーンの段階で、きちんと多くのユーザー層に訴求できたのかと思います。ユーザーさんからの反響はいかがでしたか。

小山:なかでも世界観やティケを含めたキャラクターが好評でした。もちろんバトル部分も「揃えたときの爽快感がある」「新感覚!」という声もいただきました。

松下:ただ、現実的な話で言うとまだまだ多くの課題が残っています。とくにバトルのテンポはスマホゲームの大事なところのため、ミリ単位で調整しています。もう少し早いテンポにするため、チームで共有して次のアップデートに向けて頑張っていきます。


――:ちなみに、今後も東京スタジオでは新作を作る予定は。

松下:まずは『マグナメモリア』をより多くの方に遊んでいただき、コンテンツを長く成長させることが最優先です。そのため、現状はまだ考えておりません。


――:分かりました。それでは最後に、これから始める方に向けてメッセージをいただければ幸いです。

小山:『マグナメモリア』は、新機軸のバトル要素が何よりも魅力です。タイルを揃えるのが結構大変かと思いますが、まずはひとつの属性を覚えてしまい、そこから先に揃えていくと残りの色やめくる枚数も限られていくため、簡単にコンボも繋がり、なおかつ痛快な連携技の演出が見られます。まずはオープニングムービーを見ていただき、世界観に浸ってくれれば幸いです。

松下:一風変わったバトルシステムですが、一度コンボを繋げる楽しさを知ってしまうと、本当にハマるゲームだと思います。ぜひ、「記憶」をテーマにした新感覚のバトルを体験してみてください。


――:本日はありがとうございました。

(取材・文:編集部  原孝則)



■『マグナメモリア』
 

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1999年12月
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