【部長対談】日本企業と欧米企業のフュージョン。エイチームのオリジナリティを現場視点で読み解く



「ほぼ同期です」と語る2人が入社したのは2009年。フィーチャーフォンでのモバイルゲームを開発していた時代からエイチームを支えてきた。前職でコンシューマーゲームのグラフィックデザイナーだった尾関氏(写真右)は今では新規ゲーム開発グループの部長、同じくコンシューマーゲームのプランナーだったメハガン氏(写真左)は、グローバルビジネス部の部長と同時に執行役員も務める。他の職場、そして他の国を肌で知る2人だからこそ、エイチームの特色が相対的に見えてくる内容になった。現場感たっぷりの対談を、どうぞ。
   

■全方位的にコミュニケーションがオープン

 
──:2009年はモバイルゲームが浸透しはじめていたものの、まだまだコンシューマーゲームが主流でした。プラットフォームを変えた理由はどこにあったのでしょう?
 
尾関:当時、コンシューマーゲームに対して感じていたのが、プロジェクトの肥大化でした。段々と小回りが利かなくなってきて、どこか不自由だなと。そこで台頭してきたのがモバイルゲームです。GREEが有名になりはじめていた頃ですね。
 

──:新しいシーンが生まれる前夜ですね。

尾関:モバイルだったらプロジェクトの規模もコンパクトなので、コンシューマーと比べてフットワーク軽く動けそうな気がしました。いろいろと会社を探す中でエイチームを選んだ一番の理由は、林社長のフランクな人柄です。まだまだ小さな会社でしたけど、「ここで働くと楽しそうだな」って純粋に思って。
 
メハガン:私も面接で同じ印象を受けました。プランナーのメンバーとも顔を合わせたのですが、とにかくみんな明るい。「何てコミュニケーションを取りやすい人たちなんだ!」という驚きを感じたほどです。
 


──:メハガンさんのご出身は?
 
メハガン:カナダです。はじめて日本を訪れたのは大学生のときで、故郷のサンダーベイ市の姉妹都市だった岐阜県に留学しました。幼少の頃から日本のゲームが好きで、日本にはすごく興味があったんですよ。大学を卒業してから再度日本に来て、英語の教師をしながら少しずつ日本語を覚えました。とにかく日本でゲームをつくりたくて。


──:入社された当時、エイチームに外国人の方はいらっしゃったのですか?

メハガン:いませんでしたね。でも、外国人でも仕事がしやすいなとすぐに感じました。グループ間に壁やハードルがなくて、やり取りがまわりくどくない。オープンにコミュニケーションを図れるのは欧米的ですね。そこに温かみのある日本的な部分がフュージョンされていて、バランスが非常にいい。転職して本当によかったと、改めて思います。
 
 

──:前職と比べて、どの辺りに違いを感じましたか?

尾関:メンバー全員に社内の情報を開示していることには驚きました。コンシューマーゲームをつくっているときは、「どういう状況になれば成功と言えるんだろう」というラインが分からなかったのですが、それが明確に把握できるようになりました。コストへの意識もかなり強くなったと思います。この文化は、欧米の会社でもあまり見られないんじゃない?

メハガン:そうだね。そういった情報は、欧米でも機密事項として扱われているよ。4半期ごとに売上を開示する会社はあるかもしれないけど、リアルタイムで公開するというのは聞いたことがない。やっぱり数字が漏れてしまうのが不安なんだと思う。

尾関:エイチームは社員を信じているからこそ、全ての情報を開示できるんだろうね。


──:情報が開示されると、仕事への取り組み方は変わりますか?

メハガン:他のグループの成功事例や失敗事例を詳しく知ることができるのは、大きなメリットですね。私もグループリーダーによく聞いていましたよ。「どうやって売上を伸ばしたの?」「失敗の原因は何だったの?」って。そこから自分のプロジェクトに活かせることはたくさんあるし、刺激も受ける。会話の中には具体的な数字が組み込まれるから、ビジネス的な目線を持つことにも自然と慣れていきました。
 
尾関:これって、先ほどメハガンが言ったように、コミュニケーションのバリアがないから成し得ることなんですよ。グループやチームをまたいでフラットに話せるから、気になったことをどんどん聞きに行けるっていう。数字をオープンにしていることの効果が、社内の雰囲気と相まってさらに高められていると思います。
 

──:6年以上のキャリアの中で、ターニングポイントはありましたか?
 
尾関:当初は手数が多かったのですが、それだとヒットを生み出しにくいことに気付き、1つのタイトルをつくり込むというスタイルに移行しました。『ダークサマナー』の頃ですね。それ以前は分析などをあまり行わず、独自路線を貫いていたのですが、他社の成功事例も取り入れるようになりました。他社の真似をするようになったわけではなく、視野を広げた感じでしょうか。
 
メハガン:『ダークサマナー』は北米でもヒットしたのですが、マーケティングも綿密に行いました。企画段階から現地の会社に協力してもらって、現地のユーザーにモンスターのイラストやカードのデザインを見せたり、テストを行ってリアクションを確かめたり。海外ユーザーの視点に立ったゲームづくりを、徹底的に追求しました。

尾関:ゲームのつくり方はそこで大きく変わったよね。ターゲットにするエリアを明確に決めて、そこに住むユーザーの好みを把握した上で開発するようになった。


──:海外ユーザーの志向を捉えるのは、メハガンさんの得意分野では?

メハガン:私の役割は、世界のマーケットと日本との橋渡しになることです。グローバルビジネス部のリーダーとして、現地のホットな話題やゲームデザインの傾向などを日々仕入れていますよ。他にも、海外でタイトルをリリースする際には現地のパブリッシャーとの関係を構築したり、ユーザーのコミュニティサポートを行ったりと、仕事内容は幅広いですね。


───:自主的に動かれている部分も大きいのですか?

メハガン:そうですね。「こうしよう」という提案をまわりに持ちかけながら、積極的に動いています。
 
尾関:裁量は大きいよね。一人あたりが担当できる仕事のボリュームは多いと思う。「あなたはここまでだから」という区分けは特になくて。「もっとできます!」というアピールをすれば、仕事はどんどん任される。「人」を見てくれるので仕事ぶりが評価されやすいです。

メハガン:「この新しい技術を使ってみたい」という声もよく聞くし。みんな、モノづくりが根本的に好きなんだろうね。

尾関:グラフィッカーやプログラマが、3つ4つのプロジェクトを横断して関わるなんてこともよくあるよね。

メハガン:あるある。担当外のプロジェクトに関わるときも、全然堅苦しくないよね。フラッと顔を見せに行って、「そこの調整を手伝わせてくれる?」っていう感じ。これもコミュニケーションが円滑だからこそだよね。

尾関:どのセクションのメンバーであってもシームレスに話ができるから、コミュニケーションで不都合を感じることはないなぁ。それは会社の規模が大きくなっても変わらないと思う。ずっとそうだから。

メハガン:分からないことがあったときも、気軽に質問できるもんね。みんながやさしく相談に乗ってくれるから、どんどん話を聞きに行こうって思える。それが勉強になり、成長へとつながっていくんじゃないかな。エイチームに入社してから、自主的に発信していくことに躊躇するシーンはほとんど感じた事がないですね。もちろん、時には厳しい意見をもらうこともあるけど。

尾関:メハガンもときには厳しいことを言うけど、より良いものをつくるためだし。

メハガン:それは尾関さんも、本部長の中内さんもそうだよ。「なぜこうしないといけないのか」を感情的になることなく、クールに説明するよね。丁寧に伝えようと努力しているのが、傍から見ていてすごくよく分かる。


──:話を聞いていて、会社に対するお2人の想いがひしひしと伝わってきます。

メハガン:エイチームが大好きなんですよ。もっともっと会社を大きくしていきたいし、自然に大きくなると思う。この会社、このメンバーなら大ヒットタイトルをつくれるという確信めいたものがあります。

尾関:成長の余地もあるしね。技術力も高い水準を維持できているけど、もっと高められる余白があると思っていて。今はスマホのスペックが上がって、コンシューマーゲームでスキルを培ってきた人も技術力を余すことなく活かせる。すごいプロが欲しいよね。
 
 

──:今後の展望として、お2人はどういった未来を描いていますか?

メハガン:今はスマホアプリが流行っていますが、5年後、10年後はどのデバイスが主流になっているか分かりません。ですからスマホアプリだけに限定せず、小説や漫画、映画、テレビなど、他のプラットフォームへの派生も考えています。ゲームを中心にコミュニティを形成しつつ、的確なマーチャンダイジングを仕掛けながら、エンタメ全体を巻き込んでいきたいですね。

尾関:海外だと、ゲームのヒットタイトルがアニメや玩具になるって普通にあるもんね。今は世界中のどの会社にもそうなれるチャンスがある。海外では小規模のベンチャー企業がゲームを大ヒットさせて世界的なゲームメーカーになったという例もあるし。

メハガン:日本から世界へ羽ばたくのは、無理な話じゃないんですよ。「無理です」と言うのは言い訳。だから「世界ナンバーワンを目指したい」とは言いたくないですね。「なります」と言い切りたい。なぜならエイチームには、それが実現できるだけのエネルギーもノウハウもあるから。


──:人も大きな武器になりそうですね。

尾関:そうですね。やっぱり仕事をする上では、「誰と働くか」というのはとても大切なことで。エイチームは、いい人が本当に多いんです。お互いに助け合える関係性だからこそ、みんなで思い切ったチャレンジできる。

メハガン:しかもやさしいだけじゃなくて、みんな真剣なんです。これまでのヒットタイトルも、海外のマーケットで何が流行っているのか、今後何が流行るのかを真剣に議論した結果の上にあります。これからもそう。エイチームは中途半端なものをつくりませんよ。


──:本気で世界を獲りに行くと。

メハガン:ファミコン、スーパーファミコンの時代から、日本はゲームというカルチャーを世界規模でリードしてきました。カナダに住んでいた少年時代の私も、そこに魅力を感じた一人です。でも今は「そのレガシーはどこに行ったの?」という疑問を持っていて。私は日本のゲームカルチャーを復活させたい。一緒に本気になれる方なら、エイチームはいつでもお待ちしていますよ。
 

──:本日はありがとうございました。
 
株式会社エイチーム
https://www.a-tm.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社エイチーム
設立
2000年2月
代表者
代表取締役社長 林 高生
決算期
7月
直近業績
売上高275億5200万円、営業利益5億4300万円、経常利益7億1100万円、最終利益1億4300万円(2023年7月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3662
企業データを見る