【サイバーエージェント決算説明会】藤田晋社長「踊り場を作っても中長期的な成長に向けた投資を行う」 AmebaFRESHとAbemaTVの育成に注力



サイバーエージェント<4751>は、10月29日、2015年9月通期の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。同社の発表した通期決算は、売上高2543億円(前期比23.9%増)、営業利益327億円(同47.4%増)、経常利益323億円(同45.6%増)、最終利益147億円(同54.8%増)と過去最高の業績だった。

 


決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「広告とゲームが好調なので、中長期的な成長に向けた投資を行う。かつてブログやスマホに投資して大きな成長につながった。2016年9月期は一旦踊り場になる」とコメントした。AmebaFRESHとAbemaTVという動画分野の新サービスに投資する考えだ(以下、「」内のコメントは藤田社長の発言)。かつてAmebaブログやスマホへの投資で一時的に"踊り場"を作り、その後、高い成長を実現してきた同社だが、その再現を狙っていく。

 

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■第4四半期は決算賞与などが響き増収減益

まず、第4四半期(7~9月期)の連結決算を見ていくと、売上高が692億円(前四半期比19.9%増)、営業利益が57億円(同21.5%減)だった。売上高は過去最高を更新したものの、決算インセンティブとして34億円を計上したことなどが響き、営業減益となった。

 



▲販売管理費の推移。これを見ると、決算インセンティブ34億円が計上されており、営業減益の要因になったことがわかる。
 

事業セグメント別で伸びたのは、ゲーム事業だ。売上高が前四半期比で32.9%増の222億円、営業利益が79.8%増の62億円と急拡大した。『グランブルーファンタジー』が伸びたほか、9月にリリースしたばかりの『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』が早くも業績に寄与した。さらに、ジークレストの提供する『夢王国と眠れる100人の王子様』も好調だった。

 


▲まさに"垂直立ち上がり"となった『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』。


藤田社長は「かねてから申し上げているように、スマートフォンゲーム市場は体力勝負になり、上位数社が残存者利益を獲得する状況になりつつある。当社は、生き残る会社の1社となり、残存者利益を享受しやすくなった。高い運用力、Cygamesのずば抜けた開発力とヒット率の高さ、ノウハウのグループ内での横展開ができている」とコメントした。

また、広告事業は成長トレンドが続いており、スマートフォン広告を中心に引き続き堅調に伸びた。スマートフォン広告でも足元で伸びているのは、SNSやキュレーションメディアなどのインフィード広告と、動画広告の売上が大きく伸びており、重点的に取り組む考えだ。また、市場の成長率を上回る成長率を達成していることから、市場におけるシェアが伸びていることを示しているという。

 




また、Ameba事業は、売上高が78億円で前の四半期並と下げ止まりの動きが出てきたものの、営業利益は37.5%減の5億円だった。ブラウザゲームの苦戦が続いているとのこと。同社としては、「ネイティブアプリとブラウザゲームを総貼りしていたなかで、ブラウザが難しいトレンドになった。軌道修正している。」という。

 


 
■2015年9月期の業績見通し

2016年9月期は、売上高3000億円(前期比17.9%増)、営業利益280億円(同14.5%減)、経常利益274億円(同15.2%減)、最終利益140億円(同5.4%減)と増収減益を見込む。

 



増収減益となる見通しだが、これは先ほど触れたように、動画サービスに先行投資を行うためだ。投じる金額は70億円で、下期以降(2016年4月以降)になるとのこと。投資先の一つは「AmebaFRESH」で、動画配信者向けの生放送動画プラットフォームとなる。12月にリリースすることが目標だが、「遅くとも次の決算発表までに出したい」とのこと。ビジネスモデルは基本無料で、一部チャンネルごとの月額課金になるという。

 


2つ目のサービスは、無料テレビ「AbemaTV」だ。スマートフォンで見る無料のテレビで、オンエアされているチャンネルを"受け身"で視聴するもので、収益は広告モデルで、月間10~15億円の売上高になるとブレークイーブンになる。最も投資を行うサービスで、藤田社長自らがプロデューサーとして関わっているそうだ。コンテンツの仕入れやマーケティングの費用が下期に発生する見通し。TwitterやFacebookを使う感覚で何気なく使用してもらえるようなサービスを目指す。

 


説明会では動画事業に質問が集中した。コンテンツの調達費や制作費が別途かかるため、これまで手がけてきた事業に比べて原価が大きく、これまでの事業に比べてリスクが大きいが、勝機はどこにあるのか、という質問が出た。これに対し、藤田氏はリスクが大きい点を認めたうえで、ネットサービスの9割はコンテンツではなく、プロダクトの成否にかかっていると述べた。コンテンツが良くても、使い勝手が悪いと利用されないという。協業相手であるテレビ朝日も事業に力を入れており、コンテンツの調達でのメリットも出てきているそうだ。

続いて、業績面での"踊り場"は2年続くのかと聞かれると、藤田氏は、「現段階ではわからないが、(軌道に乗っていない場合でも)2年続けるつもりはない。事業として失敗しているのに、ダラダラと金を突っ込むことは経験からしてありえない。ダメと判断したら撤退も早い。」と回答した。これまでのビジネスにはない原価のかかり方をすることも背景にあるようだ。また広告販売の体制は十分整っているため、流行りさえすればマネタイズも早くなるという。

また、2015年9月期の利益を押し下げた決算インセンティブは、2016年9月期は抑えめになる見込み。「(終わった期は)非常に良かったので多めに出すことにした。グループの社員総会で、今期の数字を上回らないと決算インセンティブは出さないと説明している。」と述べた。ただし、全く出さないことで 「やる気をなくされても困る」ため、増益になることがあれば出す可能性があると伝えているという。

なお、事業セグメントの変更も行うとのこと。Amebaのブラウザプラットフォームの成長が見込めないと判断し、Amebaのゲーム部門を「ゲーム事業」に移す。Ameba事業部内でもネイティブゲームを出すようになってきたためだ。Ameba事業のメディアと新規事業(動画事業と755など)を「メディア事業」とする。つまり、2016年9月期からはAmeba事業がなくなる。このほか、メディア事業のブランドを「Ameba」に統一するそうだ。

 
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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