【KLab決算説明会】3QはQonQで増収増益も計画未達 『パズルワンダーランド』と『AoE』投入、積極的な広告宣伝など来期の成長に軸足


KLab<3656>は、11月9日、第3四半期累計(2015年1~9月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内でアナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した業績は、売上高165億7000万円(前年同期比4.0%増)、営業利益22億7100万円(同20.1%増)、経常利益21億3100万円(同6.6%増)、四半期純利益9億3400万円(同27.6%減)だった。過去最高の売上高、営業利益になったという。

第2四半期(7~9月期)の業績を中心に説明が行われた。業績は、売上高61億3500万円(前四半期比[QonQ]で27.9%増)、営業利益7億2000万円(同35.3%増)、経常利益5億1900万円(同15.0%減)、最終利益2億6800万円(同11.8%増)と増収・営業増益となったものの、売上高、利益ともに計画を下回る着地だった。計画未達の要因は、主力タイトル『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(以下、スクフェス)』と、『BLEACH Brave Souls(以下、ブレソル)』が伸び悩んだことが主な要因だ。
 


第4四半期(10~12月期)は減収・減益見通しだが、来期(2016年12月期)以降の成長に向けて"攻め"の姿勢を維持する。費用(広告宣伝費)を削って利益を出すのではなく、年末年始の商戦に向けて広告宣伝費を積極的に投下する考え。また、開発中の『Age of Empires: World Domination』の画面・映像の公開、さらに、新作パズルRPG『パズルワンダーランド』の事前登録もスタートした。


 
■『スクフェス』と『ブレソル』の伸び悩みで予想未達

まず、売上高はQonQで27.9%増の61億3500万円となった。『スクフェス』は、劇場版「ラブライブ! The School Idol Movie」の挿入歌の先行配信など劇場版公開に合わせて新たなコンテンツや施策の投入により、7、8月の売り上げが好調だった。また『ブレソル』も7月23日リリース直後のダウンロードと課金が好調だった。このほか、『天空のクラフトフリート』も堅調だった。

では、なぜ売上高が計画に到達しなかったのか。『スクフェス』については、9月に入って失速したという。劇場版「ラブライブ! The School Idol Movie」の上映が終了し、コンテンツの谷間の時期に突入したが、ゲーム内のコアユーザー熱量の低下が予想よりもみられたため、と説明した。また、9月に提供した施策が不調だったことも一因にあげた。また、『ブレソル』で8月から課金率が低下したことも影響したという。
 

会場からは、バンダイナムコゲームスの『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』の影響への質問が出た。これに対し、真田哲弥社長(写真)は、「類似カテゴリーのゲームなので一定の影響はあるのだろうとは思うが、その影響は計測できない。」と回答した。

また、『Glee Forever!』の近況への質問も出た。想定よりも流入数が少ないうえ、欧米での課金率が低いなど、「厳しい状況が続いている」という。同社では、「Glee」ファンがもっと多くプレイするものと想定していたそうだ。また課金率については徐々に上がってきているものの、当初の想定よりは低いとのこと。

費用面では、売上原価が前四半期比で29.1%増の40億5700万円だった。売上の伸びに伴い、版権使用料やプラットフォーマーへの支払いなど売上に比例して伸びる手数料が伸びたことによる。販売管理費は直前四半期比20.9%の増加となったが、これは主に『ブレソル』の広告宣伝費が増加したことによる。費用が増加したものの、増収効果で営業利益は35.3%増の7億2000万円だった。
 

▲海外売上高の比率は11.9%から10.9%に下落した。比率としては落ちたが、海外売上の絶対額は前四半期では伸びているという。


 
■第4四半期は減収・最終赤字となる見通し 『AOE』の開発状況が明らかに

第4四半期(10~12月期)は、売上高50億円(前四半期比18.5%減)、営業利益ゼロ(前四半期7億2000万円)、経常利益ゼロ(同5億1900万円)、最終損益1億7500万円の赤字(同2億6800万円の黒字)と減収・減益、最終赤字を見込む。
 

まず、主力の『スクフェス』は、コンテンツの谷間の時期にあたるため、売上は減少する見通し。新規コンテンツまでの"隙間"は減少を余儀なくされるという。逆に言えば、『スクフェス』へ新規コンテンツが追加されれば、再び売上を伸ばせるわけだ。新コンテンツの投入で再び勢いを取り戻し、市場からの疑念を払拭したいところだろう。
 
 
また、『ブレソル』については、10月28日に実装した共闘機能の売上への影響は限定的とした。現在実装されているものは機能制限のある「体験版」で、後日、正式版を提供する予定だという。「共闘機能の本番版をリリースすれば伸びると見ている」とのこと。またすでにアナウンスが出ているが、欧米都オセアニアでのリリースの準備も進めているという。世界的な人気IPだけに人気化が期待される。


新作ゲームは、「自信を持ってリリースするが、ゲームに関してはリリースしないとわからない部分があるため、ある程度は予想に組み入れた」とのこと。今回、オリジナルタイトル『パズルワンダーランド』がお披露目となったほか、『Age of Empires: World Domination』は年内配信に向けて順調な仕上がりにあるそうだ。

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また、広告宣伝費は、年末年始にプロモーションを行うため、引き続き6億円を支出する予定だ。真田社長は「広告宣伝費を削って利益を上げるという判断もあるが、今回はあえてそういう判断は見送った。コンテンツの投入や新作のリリースを行うことで、後々伸ばせると考えている。」とコメントし、引き続き攻めの姿勢を維持すると明かした。
 

なお、パイプラインについては、第4四半期以降、リリースに向けて開発及びプロトタイプを開発中のゲームは8タイトルになるとのこと。他社IPが前四半期の2本から3本に増えた。オリジナルタイトルは前四半期と同じ5本で、合計8本になる。ただし、プロト開発と本開発に進んでいるタイトル数であるため、リリース本数をコミットするものではないという。IPタイトルであっても面白くならない場合はリリースしない考えだ。
 


 
▲ゲーム実況スタジオを開設。ゲーム情報番組をインターネットで配信するもので、11月18日から開始する予定。ゲームの運営メンバーが出演し、攻略情報や最新情報を提供する。ネット生番組ならではのリアルタイム性を活かした番組にするという。

 
▲人気アーティストのアリアナ・グランデさんの日本公演を開催し、売上目標は6億円。他社事例を見ていると、ゲームの付帯事業から始めるといつまで小さい事業から抜け出せない。イベント単体で勝負し、業界でもトップクラスを目指す、という姿勢でないと、ノウハウをもった有能な人材が集まらないとの考えを示した。イベント事業を展開することで、IPを持つ版権元との協議が進めやすくなる効果も期待できるそうだ。

 
▲KLab Ventrure Partnersの設立。年内にファンドを組成し、投資活動を本格化する。SBIインベストメントと合弁でコーポレートベンチャーキャピタルを設立したが、今回、100%子会社として設立したのは、技術などの面で支援を行う際、合弁会社のままでは難しいという。例えば、KLabのエンジニアを投資先に派遣する際、合弁会社だと事務手続きが必要になる。このため、100%子会社から投資したほうが良いと判断したそうだ。
 
(編集部 木村英彦)
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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