【年始企画】コロプラ馬場社長が語る2016年の展望 「2016年はVR元年」「新作はスポーツゲーム中心に展開」


スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2015年の市場動向と2016年のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2015-2016」。

今回は、コロプラ<3668>代表取締役 馬場 功淳 氏にインタビューを実施した。『白猫プロジェクト』中心とするスマートフォンアプリが好調に推移する一方、積極的な投資やVRへの展開強化などでも注目を集めた。2015年の振り返りを行ってもらうとともに、2016年の展望を聞いた。


 

■『白猫プロジェクト』はリリース1年経過後に伸びた

 

―――:2015年を振り返っていただきたいのですが。

コロプラにとっては、M&Aや子会社設立など積極的に投資を行った年だったと思います。我々の力だけではなく、外部の力も取り入れて、次の成長の柱を生み出すための取り組みに着手しました。

また、個別のプロダクトを見ると、『白猫プロジェクト』が。リリース後1年経過してもなお、伸びたことが印象的でした。これは私にとっても大きな発見でした。適切に運営できることが重要だと感じましたね。



―――:決算説明会で運用体制が整ったというお話でしたが、もう少し詳しく教えていただけますか?

チームがきちんと組織だって動くことができるようになってきました。面白いゲームを提供するという点に関して、チーム全体が連携して動けるようになった、とい うことです。それをユーザー様に感じ取っていただけたことは大きかったですね。運用メンバーの仕事は素晴らしかったと思います。

加えて、 マーケティング手法を変えたことも大きいです。それ以前のように、テレビCMさえやっておけばOKという考え方から、細かい施策もあわせて取り入れる手法へと転換しました。「浅井P」という個人を立てた運用や、SNSの活用、動画番組の生放送、ビデオメッセージなど、ユーザー様とコミュニケーションをはかる機会を増やしました。昨年の初めに、このままのマーケティング手法ではではいけないと、マーケティングチームが自主的に気づいて、方針を転換したのです。 春先に転換し、夏頃に成果が出てきました。マーケティングチームも頑張ってくれたと考えています。

 
▲「浅井Pのお世話にニャっております!」


―――:最近では『魔法使いと黒猫のウィズ』が復調してきましたね。

そうですね。開発メンバーのクリエイティブ力が高い水準になってきています。リリース当初と比べると別ゲームともいえるものです。これがユーザー様に遊んでいただいている理由の一つだと思います。人気アニメなどとのコラボも複数実施しましたが、それも大いに活きました。

また、企画・開発陣も努力しています。長く運営しているタイトルですから、何もやらないとゲームシステムが古くなり、ユーザー様に飽きられてしまいます。そうならないよう、協力バトルの導入や世界観を変えるようなイベントを実施するなど運用面でも努力してきました。



―――:2015年に3タイトルリリースしましたが、その評価は。

いずれも地道にがんばっていると思います。遊んでいただいているユーザー様は多いですが、収益へのインパクトは現状大きくはありません。『白猫』での経験から、運用 で伸ばすことが可能であるとわかってきましたので、しっかり運用してお客様に遊んでいただき、育てていくことが大事です。
 
▲『バトルガールハイスクール』


―――:『白猫』での成功経験があると大きいですよね。

そうですね。こうすればいい、ということがなんとなくわかりますので、会社として、そのナレッジをどのように共有していくかが課題ですね。2015年はもっと新作を出したかったのですが、開発リソース不足などの要因により、出すことができませんでした。

 

■2016年はスポーツとVRに注力


―――:決算説明会で2016年はスポーツゲームに注力するとのことでしたが。

2016年は昨年以上の新作本数を出せるように頑張ります。これまでリリースしてきたものとは異なり、スポーツゲームを4本出す予定です。ゲームで楽しめるスポー ツとなると、自ずとジャンルは限られてきますよね(笑)。いずれもアクション要素が強く、よりゲームらしいゲームになると思います。


―――:アプリマーケットやコンシューマゲームの状況を見ていると、スマホでもスポーツゲームはもう少し売れても良いのではと感じているのですが。

現状を見ていると、一般の方が思うようなスマートフォンで遊べるスポーツゲームが世の中に少ないからかもしれません。需要と供給の不一致が生じていると感じ ています。例えば、サッカーゲームだと、サッカーをモチーフにしたカードゲームやシミュレーションゲームは多いですが、サッカーそれ自体を楽しめるような ゲームは見たことがありません。その点でいうと、当社が今春リリースを予定している『激突!! J リーグプニコンサッカー』はアクション性の強いサッカーゲームとして楽しめます。


―――:タイトルにもありますが、「ぷにコン」が搭載されているからでしょうか?

そ の通りです。『白猫』リリース以降、コロプラが開発する新作ゲームには原則この「ぷにコン」を搭載していますが、やはりスポーツゲームとの相性が非常に良 いですね。ドリブルやパス、シュートといったアクションを、指一本で簡単に操作できるのです。『プニサカ』がリリースされたら、その操作性を是非体感して いただきたいです。
 
 
▲『激突!! J リーグプニコンサッカー』


―――:なるほど、今から楽しみですね。VRにも引き続き力を入れるのですか?

はい。VRについては、2015年はゲーム開発にとどまらず、VR向けに360度動画サービスを展開する株式会社360Channelの設立や、国内外の VR関連企業を投資対象とする 世界最大級のVR専門ファンドの設立をしました。2016年は、VRのヘッドマウントディスプレイが世界規模で一斉に販売される予定となっているため、 VR元年になると言われています。ようやく一般消費者向けに端末が発売されるようになるため、普及するのはまだ先の話です。一般的に考えて、認識されるのに2~3年、定着するのに5年程度は要するのではないでしょうか。
 

▲『白猫VRプロジェクト』


だからと言って、対応が早すぎるとは考えていません。PCやインターネット、スマート フォンのように、VRは今後新たなプラットフォームになるはずです。VRが新たなプラットフォームとして確立されたときに、優れたVR体験ができるコンテ ンツを提供できるよう、今からしっかり準備をしていきたいと考えています。そのため、2016年は自社開発にも引き続き注力していきます。あくまで努力目 標になりますが、年内に複数のVRゲームタイトルを出せればいいな、と考えています。

 

■スクウェア・エニックスが活躍した2015年、2016年の展望は


―――:少し視点を変えますが、2015年の業界を振り返るといかがでしょうか。

業界的には、スクウェア・エニックスさんの年だったといえるのではないでしょうか。惜しみなくIPタイトルをリリースし、最も躍進した会社さんだったと思います。スクウェア・エニックスさんを筆頭に、コンシューマ系のゲーム会社さんは全体的に元気があったと感じています。それ以外には、2014年から大きな 変化はなかったと思います。

ゲームではありませんが、ラグビーがすごかったですね。私自身、高専時代にラグビーをやっていたのに、なぜラグビーゲームを作らなかったのか…! と反省しました。五郎丸選手のポーズをアイコンに入れるだけで爆発的なダウンロード数になったはずです。



―――:他社の方が口をそろえている点ですが、ゲーム開発の難易度は引き続き上がっていますか?

もちろんです。コンシューマゲームよりも難易度が高くなっている面がありますからね。リソースが小さく、ネットワークも貧弱という環境で、面白いゲームを作ることが難しくなっています。コンシューマゲームの感覚で開発すると、ロードが1分かかるなど、モバイルでは遊べないものに仕上がる可能性があります。モ バイルゲームの開発ノウハウや技術を駆使して普段使いできるアプリをつくるだけでなく、リリース後の運用のことも考慮した開発が求められます。

例えば、予算規模を低く見積もって開発を始めると、「これでは駄目だ、しかし予算は増やせない」となった場合、結果として、中途半端な状態でゲームを出さざるをえません。開発費が必要だと思ったら、思い切って予算を使うという割り切りが必要になりますし、難しい環境で難しいものを作るんだという気概で取り組まないとゴールに辿りつけません。当社もしんどいですが、他社も同じくらいしんどい状況ではないでしょうか。2~3年前と比べて、開発期間が長期化している今、ゲーム開発にはある種のテクニックが必要だと感じはじめています。



―――:気になったトピックスはありますか?

これ、というものはありませんが、ディー・エヌ・エーさんと任天堂さんの取り組み、シリアルコードの問題などが興味深かったですね。また、業績の悪化するスマホゲーム会社が増えてきて、ゲームビジネスの難しさを改めて認識しました。
 


―――:わかりました。気になったタイトルはありますか?

先ほども申し上げた通り、スクウェア・エニックスさんのタイトルですね。ゲームの出来が総じて良く、素晴らしかったと思います。


――――:2016年の展望をお願い致します。

業界全体としては、より厳しさが増すのではないでしょうか。企業のM&A話がさらに進むとみています。またアプリのテーマについては、一昨年はリアルタイム通信、昨年はPvPが流行るのではないかとお話しましたが、2016年は、希望的観測込みとなりますが、スポーツが注目されるのではないかと思っています。オリンピックもありますし、スポーツゲームは現状マーケットにも少ない状況です。スマートフォン端末や通信回線も進歩していますし、ユーザー様 も新しいエンターテインメントを求めているでしょう。そういった中で、アクション性の高いスポーツゲームが出てくれば人気になると考えています。

またコロプラ自身としては、VRに注力していきます。2016年はあくまでVR元年ですので、マーケットとして盛り上がるのはまだ先になるでしょう。2017年、2018年以降の盛り上がりに向けた取り組みを、今年から仕込んでいきたいと思います。時代を見据えていいものをつくり続けることがコロプラの使命であると考えているので、市場環境やユーザー様の声に耳を傾けながら、2016年も新たなエンターテインメントをみなさんにお届けしていきます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 
(編集部 木村英彦)

■コロプラ
 

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株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
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