【サイバーエージェント決算説明会】藤田社長「調子がいい時に次の柱を育てる」 動画サービスの育成に注力 『グラブル』『デレステ』『夢100』などゲーム好調

サイバーエージェント<4751>は、1月28日、2016年9月期の第1四半期(2015年10~12月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。前回の決算発表でも今期が踊り場になると説明していたが、フタを開けてみると増収・営業増益での着地となった。

発表した決算は、売上高740億円(前年同期比16.7%増)、営業利益129億円(同3.6%増)、経常利益128億円(同0.9%増)、最終利益59億円(同7.0%減)だった。売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。営業利益は、カカオ株の利益計上があった前年同期を大きく上回った。また前四半期(15年7~9月期)との比較(QonQ)では、売上高が6.9%増、営業利益が125.3%増、経常利益が154.4%増、最終利益が136.2%増と大きく伸びた。

続く2016年9月期は、売上高3000億円(前期比17.9%増)、営業利益280億円(同14.5%減)、経常利益274億円(同15.2%減)、最終利益140億円(同5.4%減)と増収減益を見込む。通期計画に対する進ちょく率は、売上高が25%だが、営業利益と経常利益は47%、最終利益は43%と高い水準となっている。このままいけば、業績の上ぶれあるいは上方修正は必至のように思える。

 


決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「第1四半期としては通期計画に対する進ちょく率はいいが、下期に先行投資を行うため、業績予想は修正しなかった」と述べた(以下、「」内のコメントは藤田社長の発言)。前回開催した決算説明会で示した方針と変わらない。これは「調子がいい時に次の柱を育てる」という考えにもとづくものだ。そして、「次の柱」として重点的に投資するのは、「AmebaFRESH」と「AbemaTV」という動画分野の新サービスとなる。上期に20億円、下期に70億円を投じる予定で、第1四半期はほとんど投資しなかったという。

以下、第1四半期の決算の状況を見ていこう。


 
■第1四半期はQonQで営業利益136%増に

まず、第1四半期(2015年10~12月期)の連結決算を見ていくと、売上高がQonQで6.9%増の740億円、営業利益が同125.3%増の129億円と大幅な増益を達成した。主力のネット広告事業とゲーム事業が伸びたことに加え、前四半期に計上した決算インセンティブがこの四半期は計上されなかったことによる。

 

 
▲販売管理費の推移。これを見ると、決算インセンティブ34億円が第1四半期で計上されなかったことがわかる。売上の伸びに加え、一時費用が計上されなかったことがQonQでの大幅な増益につながった。


事業セグメント別でもっとも伸びたのはゲーム事業だ。売上高が前四半期比(QonQ)で14.2%増の297億円、営業利益が同45.5%増の88億円と大幅な増益を達成した。前の四半期でも80%近い伸びを達成したが、引き続き驚異的な伸びとなった。売上高、利益ともに過去最高だ。

 


『戦国炎舞』や『ドラゴンクエストモンスターズスーパーライト』、『ジョーカー』などのロングヒットタイトルに加え、『グランブルーファンタジー』、『アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ』、『夢王国と眠れる100人の王子様』など複数のタイトルが伸びたことが主な要因と説明した。『グランブルーファンタジー』と『夢王国と眠れる100人の王子様』など採算性の高いオリジナルタイトルが利益の伸びに貢献したそうだ。

 


スマホゲーム会社との売上比較では、ミクシィ<2121>、ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>に続く3位となっている。「当社は、ゲーム会社というイメージはないかもしれないが、スマホゲームの大手の一角に入った。以前の決算説明会でお話したように、スマホゲーム市場は残存者が絞られて残者利益を取る市場になりつつある。ゲームの開発費も高騰し、ゲームを作れる会社も限られつつある」と述べた。そしてゲーム事業なので多少の浮き沈みはあるだろうと前置きしつつ、今後も安定した収益を上げていくことが可能とコメントした。

 


2016年9月期については、新作として14タイトルをリリースする予定だ。注力するタイトルとして、Cygamesの提供する『Shadowverse』、『ガールフレンド(♪)』、日本テレビとの共同プロジェクト『エンドライト』の3タイトルをあげた。

 


また、広告事業も売上高が1.0%増の392億円、営業利益が20.1%増の33億円と引き続き伸びた。スマートフォン広告を中心に引き続き堅調に伸びた。スマートフォン広告でも足元で伸びているのは、SNSやキュレーションメディアなどのインフィード広告と、動画広告だった。インフィード広告についてはQonQでの伸びが落ちているように見えるが、前四半期に特需的な受注があったことによるもので、トレンドとしては順調に伸びているとの見方を示した。

 


このほか、メディア事業は、売上高が1.8%増の58億円、営業利益が40.7%増の6億円だった。広告・課金ともに売上高は横ばいでの推移となった。の売上で推移している。広告はアメーバブログにくわえスポットライトバイSがのびテイル。月1億円くらいの売り上げ。「アメーバピグ」や「Ameba古着屋」、マンガストア「読者のお時間」、趣味繋がる婚活サービス「タップル誕生」が伸びているほか、「Spotlights」と「by.S」などのキュレーションメディアが寄与した、としている。

 


 
■先行投資事業…下期に集中的に投資

最後に、先行投資事業の説明が行われた。「AmebaFresh」、「AbemaTV」という2つの動画サービスに加え、「755」に大幅なテコ入れを行っていくという。藤田氏は、動画サービスに注力する理由として、10~40代の「テレビ離れ」をあげた。世代別のテレビ視聴状況を見ると、50代以上は変わらないものの、10~40代のテレビ離れが顕在化しているという。「若い人は家に帰ってテレビをつける習慣がなくなっている」一方、10、20代についてはスマホで動画を見るのが当たり前」だという。

 


「AmebaFresh」は、動画配信プラットフォームとなる。先週スタートしたが、200チャンネル、1000番組から配信を始めた。年内に1000チャンネルを目指す。スマートフォンとPCから視聴可能で、デバイスの利用状況は「半々くらい」で、リリース前の想定どおりになっているそうだ。サービス開始後1週間となるが、初速は上々で、内部目標の3倍くらいの規模で推移している。「ダダ滑りということはならないのではないか」 ビジネスモデルは、有料チャンネルであれば課金売上、広告ともにコンテンツプロバイダーとのレベニューシェアになる。

 


また、「AbemaTV」については、インターネットテレビ局ともいうべき存在を目指す。こちらでは、コンテンツを買い付けて放送するもので、先行投資90億円のかなりの部分はこちらに充当される。今後のスケジュールは、2月15日から一部番組の先行配信を行い、4月11日に正式サービスを開始する予定。Abemaニュース(24時間放送)というニュース番組や、バラエティ番組など20chを配信し、7月以降に広告販売を行っていく。こちらもPCとスマホ双方で提供する。放送されている番組は、すべて無料で視聴できるが、過去の番組をタイムシフトでみると有料(サブスクリプション)になるそうだ。

 


サブスクリプション型音楽配信サービス「AWA」については、昨年9月にスタートした。月間の利用時間ランキングでは1位になったほか、課金転換率も伸びているという。「サブスクリプションの文化が定着するまで2、3年かかると想定していた。しっかりと収益化できるのではないかと感じている」とコメントした。質疑応答で、サービスの黒字化のメドについて聞かれ、来年もしくは再来年になるとの見方を示した。

 


「755」については、2月上旬に大幅リニューアルを行う予定。大幅リニューアルする理由について、これまで芸能人がフックになっていたが、1対Nという構図に限界が出てきたためと説明した。今後、一般人対一般人でのコミュニケーションを強化する。例えば、マイページを作れるようにするほか、トークルームを見ると、「mixi」でおなじの「足あと」が残るようにする。これ以外にも、発言に拍手した人が確認できるようにし、拍手した人の写真やページに飛べるようにもする。「内部の回遊性を高めた構成にする」という。

 


 
(編集部 木村英彦)
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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