【TpGS16】「二度ストアから下げた」…諦めずにゲーム性を研ぎ澄ませた『クラッシュ オブ キングス』開発秘話 売上の9割を広告にまわす施策も…


2016年1月28日~2月2日、台湾は台北世界貿易センターにおいて、「台北ゲームショウ2016」が開催。台湾と言えば、人口2300万人ほどにも関わらず、Google Playの世界売上で、中国・日本・アメリカに次ぐTOP5にランクインするほど、成長著しい市場だ。今年は、台湾・香港を中心に世界各国から300社以上のゲーム企業が出展した。

本稿では、「城を奪い返せ!」のフレーズでお馴染みの『クラッシュ オブ キングス』を開発したElexを取材。同作は、全世界で6500万ダウンロードを記録したモバイル向け戦略MMORPG。プレイヤーは一国の王(キング)となり、自分の城や兵士を強化し、他国を攻め落として最強の帝国を作っていく。厳かでリアリティ溢れるゲーム内容を見る限り、思わず北米やヨーロッパの会社が手掛けたタイトルだと勘違いしそうだが、Elexは北京に本社を置く中国ゲーム企業だ。

「台北ゲームショウ2016」に出展したブースでは、再現度の高い登場キャラクターのコンパニオンを大勢集めたほか、会場の入口をはじめ大々的に広告を展開するなど、確かな存在感を示していた。今回は、Elexの副社長兼『クラッシュ オブ キングス』のプロデューサーである、パン・エツ氏にインタビューを実施。開発秘話や日本展開の現状について聞いてきた。

 

■三度目の正直で見事ヒットに その後は売上の9割を広告へ



Elex 代表取締役副社長
『クラッシュ オブ キングス』 プロデューサー
パン・エツ

北京に本社を構えるElexは2008年に設立。社員数は、グループカンパニー全て合わせると600名以上だ。これまで『ハッピーファーム』や『Battle Alert』など、カジュアルなソーシャルゲームを中心に手掛けてきたが、2014年にリリースした『クラッシュ オブ キングス』が全世界で大ヒット。Elexが配信してきた7タイトルの全世界累計ユーザー数は1億人以上を優に超えており、北米やアジア、ヨーロッパ、南米など約40もの国と地域のユーザーから支持されている。

そもそも『クラッシュ オブ キングス』は、どのようにして開発が始まったのか。「“城を攻め落とす”というコンセプトはそのままに、当初は本格シミュレーションゲームとして開発していました」とパン氏。開発メンバー30名ほどで数ヵ月かけて開発したとのことだが、「リリース後はあまりにも評価が悪すぎて、一度(ストアから)下げました」と当時のことを振り返ってくれた。

その後、2ヵ月かけてRPG要素を取り入れたバージョンアップ版を再リリース……するものの「これまた低評価が続き、再び下げました」とパン氏。そして、三度目の正直として、シンプルでも奥が深い、現在の形に行き着いたとのこと。「最初のバージョンを出してから、約9ヵ月かけて現在の形に辿り着きました」と、諦めずゲーム性を研ぎ澄ませたからこそ、現在のヒットに結びついたようだ。ゲームアプリの多くは、一度評価を落としてしまうと、たとえアップデートを繰り返しても再ブレイクを果たすのは困難。しかし、パン氏は「とにかくスピード重視」を意識して、ユーザーに面白いと思ってもらうまで、迅速に検証を続けたという。

先日『クラッシュ オブ キングス』は、全世界累計1億ダウンロードを突破。その半分の5000万は台湾・香港・中国(本土)・北米・日本が占めている。なお、187ヵ国のストアにリリースし、19ヵ国語に対応。トップセールスで1位を獲得したのは70ヵ国、今なお首位を維持しているのは31ヵ国ほど。ちなみに、現在本作に携わるスタッフは200名ほど。160名が開発者で、40名がマーケティングや各国のローカライズを担っている。
 
 
 

日本でも人気を博している同作だが、じつは日本支社は数週間前に立ち上がったばかり。「基本的に海外展開は本社で行っていますが、日本はかなり特徴的な市場です。きちんとローカライズを行い、日本に適したマーケティングを行うために支社を設立しました。Elexにとって初の海外拠点になります」とパン氏。

マーケティングと言えば、日本におけるテレビCMのクリエイティブも話題を呼んだ。俳優・窪塚洋介さんを起用した第1弾は、本作の世界観にタイムスリップして、周囲の兵士たちに窪塚さんが「KING!」と称されるのだが、これは彼が昔出演していたTVドラマの役名を彷彿させる演出にも繋がっており、ユーザー層である20代-30代の方々に響くクリエイティブとなっていた。

そして第2弾では、TOKIOの城島茂さんと女優のあき竹城さんが、ゲームコンセプトでもある「城を奪う」になぞり、それぞれ名前から城を奪われ、「島茂」と「あけ竹」の名前で悲観するところか始まる。数種類あるテレビCM第2弾では、そんなふたりが城を取り戻すために、ときに励ましあい、ときに同盟を結んだりと、ひた向きさとコミカルさが相まって話題を呼んでいる。

ちなみに、他国のテレビCMのクリエイティブは全て共通とのことだが、日本だけ上記のようなクリエイティブを独自で展開している。「日本におけるマーケティングは、まだ始めたばかりですので毎日勉強中です」とパン氏。
 
【第1弾 テレビCM】


【第2弾 テレビCM】


ワンビルドのため、ゲーム内容は全世界共通だが、各国の祝日に合わせたイベントやキャンペーンは実施しているという。各国のユーザーの特徴を聞いてみると、「日本人は争わないので平和です。中国や台湾はPKが好きです。韓国は団結するのが好きです。ロシアは復讐心が強く、やられたらやり返します(笑)」と説明してくれた。

また、プロモーションについては、売上の9割を広告にまわしているという。「各国同じ作戦で展開しています。Machine Zoneやsupercellと一緒で1位を取らないと意味がありません。そのため利益はあまり求めていませんし、1位を取るまでやり続けます」と、驚くべきマーケティング施策を明かしたパン氏。加えて「現在はARPPU(一人当たりの平均月間売上高)を下げる努力しています」と、長期的な運用を続けるために、目の前の収益を考えたキャンペーン施策などは避けているとのこと。
 


【台北ゲームショウでも大々的に広告を展開】



日本のゲームアプリ市場について尋ねてみると、「やはり成熟してきています。課金の理解度は高いが、まだ我々は日本人ならではの習慣を勉強しないといけません。また、個人的に昔から日本のゲームに親しみを持っていますので、日本でゲームを展開できるのは大きな喜びです」とパン氏。日本でも好調であることを伝えたが、「まだまだ頑張らないと。自分たちが求めている数字には届いてないです」と、謙虚ながらも高い目標値を語ってくれた。

一方で台湾市場についても「同じく成熟してきています。ですが、台湾と日本は文化や遊び方が似ているため、日本のタイトルが成功する確率は他国よりも高いと思います。台湾ユーザーは、ゲームが面白ければデバイスを変えてでも、ほかの国のアプリを遊ぶ傾向にあるため、もはやひとつの市場で考えることはしませんね」とパン氏。


 
(取材・文:編集部  原孝則@ha_tatsu
(取材協力:スパイスマート


■『クラッシュ オブ キングス』
 

App Store



■「台北ゲームショウ2016」特集