【グリー決算説明会】コイン消費低迷も『消滅都市』は過去最高売上 『追憶の青』と『ソウルアームズ』『サムキン』、運営受託で挽回期す


グリー<3632>は、2月4日、第2四半期累計(2015年7~12月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高374億円(前年同期比24.4%減)、営業利益83億円(同24.5%減)、経常利益85億円(同43.5%減)、最終利益49億円(前年同期41億円の赤字)だった。減収・営業減益となったが、当初の業績予想に比べると、営業利益で13億円、経常利益では20億円もの上ブレしての着地となった。最終黒字になったが、これは前年同期に計上されたポケラボとOpenFeintののれんの減損損失が今期は発生しなかったことによる。
 

第2四半期(10~12月期)をみると、売上高は前四半期比(QonQ)で11.8%減の181億円、営業利益が同3.9%減の40億円と減収・営業減益だった。ただ、経常利益は同5.2%増の45億円、最終利益は、同1.5%増の25億円と増益での着地となった。10%を超える減収となったものの、大幅なコスト削減を行ったことが奏功したとのことだった。
 


2016年6月期通期の連結業績については、売上高は前期比22.1%減の720億円、営業利益は同30.8%減の140億円、経常利益は同44.0%減の80億円、当期純利益は80億円(前期実績は103億円の赤字、黒字転換)を見込む。

決算説明会に臨んだ田中良和社長(写真)は、通期の業績予想について、「上半期のトレンドを勘案しながら、新作の寄与などを保守的に見込んだ。コストについては、新規事業への投資を引き続き行う一方、コストコントロールを行う余地があるので、こちらにも継続的に取り組みたい」と述べ、第2四半期と同じく、上ブレする可能性があることを示唆した。

 


 
■第2四半期は減収減益も コスト削減効果が発生

第2四半期の状況を中心に見ていこう。売上高はQonQで11.8%減の181億円だった。ネイティブゲームとブラウザゲームともにコイン消費の減少が続いた。特にウェブゲームについては、フィーチャーフォン経由が9.6%減の47億円と50億円を割り込んだほか、スマートフォンも5.9%減の110億円と減少が目立った。またネイティブゲームについても、ここ2四半期連続でプラスだったが、今回はマイナスに転じた。
 


営業利益は、同3.9%減の40億円だった。減益要因は、主に売上高が減少したことによる。ただし、コスト削減が大幅に進んだため、営業利益の減少率は売上のそれよりも小幅にとどまった。コスト削減については、会場からは「驚いた」との声も聞かれた。人件費を5億500万円、外注費を4億9000万円減らし、固定費だけで11億円も減らしたのだ。人件費については、主に人件費が高い北米拠点での人員整理を行ったことによる。他方、広告宣伝費4億円増やしたため、トータルでは8億円の費用減となった。
 


 
■安定化の兆し出てきたゲーム事業 新作2本、VRスタジオを開設

ネイティブゲームについては、『消滅都市』はテレビCMが奏功し、売り上げが伸び、12月は単月で過去最高を記録したとのこと。また『戦乱のサムライキングダム』も堅調に推移した。今年1月に入ってからはテレビCMを開始し、DAUが堅調だという。リリースから2年が経過し、安定したランキング推移となっているが、「もう一段伸ばす」。『NARUTO』や『LINEタワーライジング』についてはアップデートで改善を進めていく。
 

海外ネイティブゲームについては、コイン消費の減少が続いたが、北米拠点のオペレーションを改善したことや、日本での海外向けの運用体制を強化した結果、「安定化の兆しが出てきた」という。『Knights & Dragons』の欧州版を10月にリリースして以来、売り上げが堅調に推移しており、10月から12月にかけて拡大した。下期において『League of War』の欧州展開を図っていく。
 

また、新作については、注目作『追憶の青』を下期にリリースする予定だ。東京ゲームショウや「闘会議」などで公開しており、ユーザーやゲーム業界からの評価も高いという。LINEをマーケティングパートナーとして協業していく考え。ゲームの企画開発、CSなどグリーが担当し、マーケティングはLINEが担う。LINE本体アプリからの送客のほか、公式アカウントを使った情報発信、LINEの周辺サービスでのメディアミックス展開などを行っていく予定。収益は、「細かい契約条件は明かせない」ものの、レベニューシェアになるという。利益率に関しては、『LINEタワーライジング』よりも高めになるとのこと。
 

新作については『ソウルアームズ』が『追憶の青』よりも先にリリースされる予定。1月28日から事前登録を開始した。横スクロールの2DアクションRPGだが、田中社長は『グリムノーツ』のヒットが自信になったと明かした。「2Dの横スクロールのアクションゲームへのニーズはあると思い開発してきた。『グリムノーツ』がマーケットに受け入れられているのを見ると、ニーズが確実にあると再確認できた。品質を上げて、多くの人に知ってもらいたい」と述べた。
 

このほか、GREE VR Studioを設立した。中期的な成長が見込まれるVR市場に初期から参入していく。他社と協業でVRコンテンツの開発を行い、ノウハウと蓄積していく。中長期的には自社開発を目指しているそうだ。田中社長は「VRは、10年、20年前から流行すると言われてきたが、離陸しなかった。新しいハードウェアとプラットフォームを試した時、これまでとは全く異なると感じた」と、VRの成長性を確信したとのことだった。
 


 
■運営専門子会社を設立しセカンダリー市場に参入

ブラウザゲームについては、ソーシャルゲーム運営の専門会社として「ファンプレックス株式会社」を設立することを明らかにした。マイネット<3928>と協業も展開するという。

ファンプレックスは、マイネットやDeNA Games Tokyo、オルトプラス<3672>などと同じく、すでに運営しているソーシャルゲームやスマートフォンゲームの受託あるいは買い取りを行って運営する会社となる。いわゆるモバイルゲームの"セカンダリーマーケット"で事業展開を行う。スマートフォンゲーム会社のなかには、既存ゲームの運営に充てている人員を減らし、新規タイトルの開発にシフトする会社が増えているとのことだが、運営業務の委託ニーズが強いと判断したという。
 

田中社長は、「グリープラットフォームに参画するSAPを見ていると、新規タイトルの開発に着手するため、スタッフを移動させた結果、既存ゲームの運営がおろそかになってしまい、収益を落とすケースが散見された。グリーの持つゲーム運営ノウハウを他社のタイトルにも活用することで、収益を維持あるいは伸ばしていきたい」とコメントした。

なお、グリー本体ではなく、別会社で行う理由については、「新規ゲームの開発を行う人材と、運営を得意とする人材は、別の能力を持っていることが多いためだ。同 じ会社にいる意味が薄いと考えていた。また効率性を高めるため、有期社員の比率を高めるには、別会社のほうがやりやすいことも理由だ」(取締役 執行役員の小竹讃久氏)。すでに一定の収益規模のタイトルを引き継ぐため、事業リスクが相対的に小さく、マーケットとしての拡大余地も大きいという。

会場からはマイネットとの競合の可能性について質問が出た。これに対し、小竹氏は、すみ分けは可能との見方を示した。タイトルの規模によっては、移管・買取をする際、20~30人規模の人員を用意する必要があるため、すべてのゲームを1社だけで運営するのはとても不可能なためだ。両社で協力してマーケット 拡大に努めていくという。

このほか、ゲーム以外の事業の状況は以下のとおりとなる。
 



 
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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