【カヤック決算説明会】売上・利益ともに過去最高更新 『ぼくらの甲子園』好調、Lobiはマネタイズ手法の多様化で本格的な収益化局面に


カヤック<3904>は、2月15日、2015年12月期の決算発表を行うとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高37億0500万円(前の期比27.9%増)、営業利益3億9200万円(同97.8%増)、経常利益3億9500万円(同116.5%増)、最終利益2億6100万円(同120.8%増)と大きく伸び、売上・利益ともに過去最高を更新した。
 


また第4四半期会計期間(15年10~12月期)の数字をみると、売上高10億9600万円(前年同期比9.4%増)、営業利益1億4800万円(同27.4%増)、経常利益1億5500万円(同50.5%増)、四半期純利益1億700万円(同57.3%増)となり、通年だけでなく、四半期ベースでも売上高・利益ともに過去最高の数字となった(季節変動があるため、前四半期比ではなく、前年同期比を使う)。
 


通期と四半期ともに好調な着地となったカヤックだが、クライアントワーク(受託開発)とソーシャルゲーム、Lobiの主力3事業が順調に拡大したことが主な要因だ。ソーシャルゲームについては、『ぼくらの甲子園!ポケット』が12月単月で過去最高を更新するなど好調だったという。先日買収を発表したゲーム開発会社ガルチとの協業についての説明も行われた(写真は代表取締役CEOの柳澤大輔氏)。

第4四半期の状況を中心に業績概要を見ていこう。


 
■ソーシャルゲーム&Lobiが過去最高を更新

第4四半期は、売上高が9.4%増の10億9600万円、営業利益が同27.4%増の1億4800万円だった。『ぼくらの甲子園!ポケット』を中心とするソーシャルゲームの売上が伸びたことに加え、「Lobi」も予想に届かなかったが、順調に拡大したという。他方、広告宣伝費が前年同期の2億3700万円から9500万円に減ったことも大きな増益要因。前年同期は『ぼくらの甲子園!ポケット』のプロモーションを行ったが、この四半期は計上されなかった。
 


 
▲費用の推移。広告宣伝費が前年同期に比べて大きく減ったことが確認できるだろう。人件費は一貫して増加傾向にあるが、人員を増やしたためだ。

 
▲貸借対照表をみると、固定負債が2億5900万円から9400万円に減った。長期借入金を返済したことによる。


サービス別の状況を見ていこう。「クライアントワーク」の売上高は前年同期比2.9%減の3億2500万円だった。高い企画力と最先端の技術を使い、「バズる技術」に特化したクリエイティブの制作を行っており、昨年末に実施した有馬記念のキャンペーンや「チャンリオメーカー」は「順調にバズった」という。しっかりと効果が出たことが次の仕事の依頼につながっており、「引き合いは順調に推移している」とのこと。
 
▲スライドで相殺分とあるのは、社内取引が行われたもの。これを売り上げに含めると過去最高となる。
 


「ソーシャルゲーム」の売上高は、同0.9%増の5億8500万円となり、過去最高を更新した。この数字は、AppleやGoogleなどに支払う手数料を除いたネット売上となる。けん引役は『ぼくらの甲子園!ポケット』で、12月には月次で過去最高を記録した。ニコ生やLobi感謝祭への出演のほか、IPとのコラボイベントなどがユーザーから好評だったという。

他方、『ポケットフットボーラー』は、ユーザーの継続率などに問題があったため、先に『ポケットフットボーラーPLUS』にバージョンアップしたとのこと。経営陣としては、「厳しい状況にあると認識している」が、改修の効果次第でプロモーションなどの施策を検討していく。2016年12月期の業績予想にはほとんど入れていないそうだ。
 


なお、先日買収を発表したガルチについては、ソーシャルゲームの開発ラインの強化に加えて、「クライアントワーク」との協業を行っていく方針だという。スクウェア・エニックスの依頼で『乖離性ミリオンアーサーVR』をクライアントワークで開発したが、足元でもVRゲームへの引き合いが多く、ガルチと共同で開発を行っていく。
 


スマートフォンゲームに特化したコミュニティ「Lobi」も、予想には到達しなかったものの、売上高は58.7%増の1億0900万円と順調に伸びた。コミュニティ数も3.9万件増の23.9万件、導入アプリも50アプリ増の745アプリ、公認コミュニティも5タイトル増の138タイトルとなった。予想に到達しなかった理由は、ユーザー課金の導入を延期し、ユーザー数やトラフィックを増やすことに注力したためだという。
 


目玉の機能として、詳細な条件を指定してマルチプレイのプレイヤーを募集できる「マルチプレイヤー マッチング機能」を12月に実装した。ゲーム内の掲示板よりも詳細な条件で検索できるため、より自分の条件にあった人とマルチプレイが楽しめる。現段階で導入したタイトルはないが、Wright Flyer Studiosの『ソウルアームズ』が導入第1弾タイトルとなることが決定するなど引き合いは順調とのこと。
 


会場からは、課金要素についても質問があった。プレミアム会員などの月額料金や、スタンプなどのアイテム課金の組み合わせになるという。最初はしっかり有料会員ならではの特典を設けることから始めるそうだ。リリース時期については、「第1四半期中に出せるかどうか」(柳澤氏)で、次の説明会で何らかのアナウンスが出せるようにするという。

新規事業の状況は以下のとおり。新規事業については、いずれもまだ投資フェイズにあるという。

 
▲ゲーム音楽オーケストラ「JAGMO」は、10月に講演を行い、満員御礼となった。ドワンゴの闘会議にも出演し、「知名度を上げることができたのでは」という。LOBIの公認コミュニティのリーダーや、ゲームプロデューサーを招いて感謝祭も行ったとのこと。

 
▲スマホゲーム大会「RANKERS」は2月にリリースする予定。ランキングを競い合って上位に入ると賞金がもらえるサービスで、小規模な大会を頻繁に開くことができる。カジュアルゲームでの利用が念頭にあり、ユーザーの増加や継続率の向上などの効果ができる。すでにケイブの『怒首領蜂』での導入が決定しているとのこと。近日中にアプリを公開する予定だ。


 
■2016年12月期の見通し

2016年12月期は、売上高51億円(前期比37.6%増)、営業利益5億1500万円(同31.1%増)、経常利益5億3000万円(同33.9%増)、当期純利益3億3000万円(同26.3%増)と引き続き増収増益を見込む。主力の3事業は引き続き伸びる見通しだ。とりわけ「Lobi」については、ユーザーの増加に伴う広告収益などの増加に加え、課金収益が加わることで前年比で108%の増加を見込む。
 
 
(編集部 木村英彦)
株式会社カヤック
http://www.kayac.com/

会社情報

会社名
株式会社カヤック
設立
2005年1月
代表者
代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
決算期
12月
直近業績
売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3904
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