【ラプラスリンク特集④】OBT対比で動作速度が大幅改善。快適な操作性と新しいゲーム体験を生み出す取り組みとは



gloopsのスマートフォン向け新作RPG『LAPLACE LINK -ラプラスリンク-』(以下、ラプラスリンク)のリリースが迫ってきた。様々なソーシャルゲームの常識に挑戦すると標榜している本作だが、どういった常識を破壊し、そして新しい楽しさを生み出そうとしているのか。Social Game Infoでは、『ラプラスリンク』の特集を5回にわたって行い、その魅力に迫る。

第4回目となる今回は、フロントエンドエンジニアとデザイナーにインタビューを行い、『ラプラスリンク』の示す新しいUI(ユーザーインターフェース)とゲームシステムを実現するための取り組みについて話を聞いた。オープンβテストからはゲームの動作速度が体感でわかるくらい改善されたとの話もでるなど、リリースに向けて順調に開発が進んでいることが明らかになった。今回、開発中の動画も多数掲載しておくので、このあたりの進化も一足早く確認してほしい。


 
■プロフィール

荒井氏:デザイナー。画面の遷移や表示方法、画面レイアウトなどUI全般を担当。

和田氏:フロントエンドエンジニア。画面遷移やUIを含むゲーム設計の実装を担当。




 
■動作速度はオープンβテストから大幅に改善し、快適に

――:よろしくお願いいたします。オープンβテストを終えて、その後の改善点や、『ラプラスリンク』ならではのポイントなどをお聞きできればと思います。製作発表会やオープンβテストでは少しもっさりしている感じがしたんですが、あれからどのくらい改善したんでしょうか。

和田氏:オープンβテストの時と比べると、体感ではありますが、3倍くらい早くなったと思います。端末にもよりますが、明らかに違いを感じるほど快適に遊べるようになっていると思います。アプリ版はネイティブのAPIが直接叩けるため、動作速度はさらに早くなります。オープンβテストの際、新しいゲームとして評価頂き手応えを感じる一方で、動作が重い、ゲームで遊べない、といったご意見も多く頂きました。我々としては、ご指摘を真摯に受け止めて、どの端末でどこまで動くのか検証も入念に行いました。
 

――:どういった取り組みを行ったのでしょうか。

和田氏:『ラプラスリンク』は、そもそも読み込んでいるデータ量が他のソーシャルゲームに比べて格段に多いんです。背景は遠景、中景、近景と3種類もありますし、街の中では5~6人のキャラクターが動いています。さらにサウンドや各種アイコンも読み込む必要があります。これまでのソーシャルゲームのような感覚で作っていたら、マップ移動のたびにいちいち読み込むことになって、動作速度が遅くてとても遊べないものになってしまいます。

そのため、エンジニアとしては、なるべく画像や音などのリソースをローカルにキャッシュし、それを使ってロード時間を短縮するようにしました。いままでDOM(Document Object Model)で構築していたものをCanvas2Dにしていましたが、さらにWebGL(Web Graphics Library) を使うことで、GPUを使った描画速度の高速化も行いました。また横長の背景イラストをすべて読み込むのではなく、画面に表示するものだけを描画するようにしました。相当苦労しましたが、ラプラスリンクの大事にしている奥行きのある世界観を表現することは出来ているんじゃないかなと思います。今は更にロード時間が短くなるように鋭意改良中です。

 


――:ネイティブアプリが注目されがちですが、ブラウザでもこんなんことができるのかと驚きました。ブラウザは技術的にも進歩しているんでしょうか。

和田氏:はい。日々進歩しています。例えば、先ほど触れたWebGLという技術があります。これはOpenGLをブラウザから利用する技術ですが、スマートフォンのブラウザでもサポートされるようになってきており、『ラプラスリンク』の開発でも利用することができました。これはあくまで理論上の話になりますが、3Dのブラウザゲームもやろうと思えばできます。


――:『ラプラスリンク』ならではの要素として、キャラクターを操作して、フィールド上を歩き回る要素がありますが、どういったプロセスで開発したのでしょうか。

和田氏:歩き回る要素は、今までのブラウザゲームではなかったと考えています。それ故に、最初はお客様がどうやって操作するのか、その方法から話し合いました。移動方式では、指でなぞるように移動するかタップした場所に移動するか、移動方向の判別は中心線から右か左かで判別するかなどです。結局何日も話し合って、バトルはタップで、クエストは引っ張ることで動く形がユーザービリティとして最適と判断しました。操作方法は本当に試行錯誤しましたね。バトルとクエストで移動方法が異なるのは、お客様には分かりづらいのではないかという指摘も受けましたが、僕らとしては敢えて異なる方法を取ることにしました。そちらの方がお客様に楽しんで頂けると思ったからです。

具体的にいうと、バトルをタップで移動させる方式にしたのは、敵が範囲攻撃をしてきたり、味方が範囲での回復魔法を使ったりしてくるためです。ここで重要なのは範囲に入るかどうかということ…つまりキャラクターの座標が重視されます。他方、クエストは街やダンジョンを左右に移動するので、右に行くか、左に行くかという意味でのベクトルが大事で、そのために左右に引っ張って移動する形を取りました。操作部分の実装はバトルとクエストで別々に作っており、私が主にクエストを担当して、バトルは別のエンジニアが担当しました。


 
【クエスト】



【バトル】



――:なるほど。クエスト中で見られる背景も相当凝っていますよね。

和田氏:はい。パララックス構造を取り入れています。先程、少し触れましたが、遠景、中景、近景など複数のレイヤーのスクロール速度を変えて、奥行きを出すための手法となります。キャラクターを動かすと、近景が早く動いて、中景や遠景はゆっくり動きます。当初の企画ではクオータービューなど俯瞰する形で移動するものでしたが、世界の広さを感じられるようにするため、目線を下げたほうがいいのではないかという結論に達しました。プレイヤーがキャラクターと同じ視点で街を見ているようにしたかったんです。


 
■キャラクターごとに整理することでメニューは大幅改善

――:UIに関してですが、オープンβテストからは変更しているのでしょうか。

荒井氏:もちろんです。大改良を加えて、とても使いやすくなっていると個人的には思っています。これだけ時間を頂いているので当然とは思うのですが。オープンβテストの時は、装備のやり方やキャラクターの設定が分かりづらいなど、様々な問題が発生しました。今回は1つの挑戦としてマイページの無いUIを採用しているのですが、私自身、マイページの発想が抜け切れず、最初の頃はメニューの中で装備や強化などを機能別に自然と纏めてしまっていることも多かったです。今回のUIはキャラクターに紐付いていて、まずはパーティにいるキャラクターを選択して、そのキャラを強化したり、キャラの装備している武器を選択して、武器を変更・強化したりすることで、使いやすい形になっています。

βテストでは良い意味でも悪い意味でも沢山のご意見を頂き、我々にとって非常に大きな気付きとなりました。そういう意味でも、オープンβテストをやってよかったと思っております。

 

――:メニューの開き方がだいぶ新しいと思うのですが、どういった形になっているんでしょうか?

荒井氏:画面を長押しするとコミュニケーターという、一般的なソーシャルゲームでいうところのメニューが開くような仕様となっております。長押しした後、右上に指を動かして離すとメニューが開き、左上に動かして離すとマップが開くようになっています。和田にせっつかれて、半ば思いつきで出てきたアイデアの1つだったような気がします。このアイディアは、画面上にボタンは配置したくないけれど、メニューはすぐに出せるようにしたい、という問題から出てきたものとなります。ボタンを配置したくなかったのは、せっかく描いてもらった背景に無機質なボタンなどを被せて大事にしている世界観を壊したくなかったからと、そもそも画面は、今回の冒険するRPGとしては、お客様が操作する非常に大事なところでもあります。そのため、少しでもラプラスリンクの世界に没入して頂けるようにこの手段を取りました。
 


――:苦労した点はありますか?

荒井氏:先ほどお話したようにマイページの発想にとらわれていたため、本来マイページが行う機能をコミュニケーターの1機能に集約・整理することには非常に苦労しました。例えば、バトルでBPが切れたとき、回復するアイテムを持っていなかったとします。その場合、アイテムを購入する・しないであったり、購入した場合、そのアイテムを使う・使わないに分岐するなど、要素が入り組んでいます。それらが整理できたと思ったら、忘れていた要素がでてきてもう一度…といったことの繰り返しです。

上田氏:荒井は苦労について申していますが、最終的にここまで綺麗に纏められたのは、手前味噌ながら凄いなと感心してしまいました(笑) そもそもラプラスリンクはバトルを複雑にしたのでパラメーターの種類が多いんです。普通は攻撃力、防御力、HPくらいを表示させれば良いんですが、物理攻撃力、魔法攻撃力、命中、アビリティのキャストタイム、攻撃の威力、ヘイトの蓄積の有無、属性などのパラメーターがあります。どれを優先的に載せるのかと聞かれて、「全てです、全て」と伝えました(笑)情報量がここまで多い中、よくこんなにスマートに整理出来たなと思います。それぞれの機能で一番見たい情報は何かをという所から話を進めていて、キャラの装備を変更するところでは、どのくらい強くなるのかが分かるように、細かいステータスは装備の詳細を見られるようになど、シチュエーションに応じてお客様が何を見たいかを1つ1つ考えていきました。



 
■マイページを廃止することでよりゲームに没入できるように

――:マイページについて何度かお話が出ましたが、『ラプラスリンク』では、ソーシャルゲームによくあるマイページがないですよね。そこについて深掘りさせて下さい。ブラウザゲームでは非常に珍しいかと思います。なくした理由はどういった点にあるのでしょうか。

和田氏:これまでのインタビューでも、ソーシャルゲームの常識を壊したいという話があったかと思いますが、その1つとしてマイページの存在意義についても話をしていました。世界観をこれだけ大切にしているのに、突然、お知らせやバナーが並んでいる状況は、ゲームの世界にそぐわないのではないか、ということになりました。ゲームの中の世界と、運営から発信する情報を切り分ける手段として、ポータルのようなものを設置すれば、ゲームへの没入感を高められるのでは無いかと考えました。

――:ポータルとはどういったものでしょうか?

荒井氏:ゲームをプレイする際には、まず「ポータル」という場所に遷移します。お知らせが出ていたり、ゲーム開始ボタンがあったり、直接マルチバトルにいけたりするページです。そこでPLAYボタン(ゲームを始めるボタン)を押すと、ゲームエリアに遷移し、ゲーム開始となります。ヒントになったのは、先程も触れた通り、家庭用ゲームのホーム画面です。最初は、ゲームの世界観に溶け込んでもらおうと、ガチャページへの遷移をポスターや街中のモニター、気球を飛ばしたりすることなどで表示しようと考えたこともありましたが、ユーザービリティの観点から採用しない形式を取りました。
 


――:そもそもですが、マイページをなくそうというアイディアはどこから出たのですか?

和田氏:飲み会で「なんでマイページがあるんだろうか」という議論したことがきっかけですね。家庭用ゲームソフトではなぜないのか、何が違うのかと議論していました。その場では、「マイページは偉大である」という結論でした(笑) マイページは、考えれば考えるほどよくできていて、情報を伝えるという意味で便利だと改めて感じました。ですが、お客様から「またこの手のゲームか」と思われたくなかったですし、マイページをなくすことでインパクトもあるし、何よりゲームの世界にどっぷり浸かってもらえるなと思いました。マイページに代替するものを考え始めたのは、この時からですね。


――:マイページがないことでフロントの実装で大変だったことはありますか?

和田氏:とくにないですね。強いていえば、これまでマイページとは異なるバナーの出し方をしなければならなかったことですね。先程のポータル上でいわゆるバナーを表示させるのですが、ふよふよと浮いているような動作を取り入れたことと、押すと中身が見られるような工夫を行った部分が該当します。マイページと異なり、社内にソースコードもノウハウもないので、事実上、一から作ることになりましたが、いままでにないものを作ってたこともあり、苦労よりも楽しかった印象です。ふわふわと浮くような形はデザインを見て、アニメーションを付けました。どうせやるならしっかり作り込みたいと思い、勝手に付け加えました(笑)新しい表現を取り入れることで、違うアプローチができていれば幸いです。

あとは、荒井が自由気ままにつくったレイアウトをみたとき、「おい、こんなのくるのか!」と思うこともありました(笑)ですが、実現したら面白そうなレイアウトでしたし、私自身、やれないことはないというスタンスだったりするので、とくに辛いことは無かったです。



――:試行錯誤はずいぶんされたんですか?

荒井氏:これまでのゲームに比べて、モック(試作品)をたくさん作った記憶があります。たいていオジャンになりました(笑) 初めて作るものですから、口頭の説明や画面仕様書だけでは伝わらないものがあります。「いわゆるアレです」という伝え方ができません。モックを作って、実際に触ってみないとわからないんです。メンバーで触ったうえで、「ああした方がいい、こうした方がいい」ととにかく議論を重ねました。つくった時は、非常に良く出来ていたのに、色々と入れ込むとダメになるものもありましたし、見栄えが良かっただけで問題の本質を解決したものではないものもありました。正直、難しいことも多かったです。メニュー画面はその最たるものです。オープンβテストの時から大幅に作り直しており、かなり遊びやすくなったかと思います。


 
■守りに入ると「それでいいの?」

――:ゲームの企画をお聞きになった時、どう思われましたか? これまでのブラウザゲームでは考えられないほどの動きのあるゲームでしたが。

和田氏:もちろん「面白い。やってみよう!」と思いました。ブラウザゲームでどこまでやれるのか、挑戦してみたいと思っていました。今振り返ってみれば、ここまでできるもんなんだなと思っています(笑) 開発当初は、作っては壊しをひたすら繰り返しました。プロトタイプを作ってちゃんと動くようになるまで1年弱かかりました。その間、「これ、本当に動くの?」とせっつかれましたが、必死にチューニングして何とか形になりました。Canvasでここまでつくったゲームは、世界的にみても前例がないかもしれません。
 

――:注目してもらいたいポイントはありますか。

和田氏:操作感が今までのブラウザゲームと違いますし、動作も軽くなっていますので、キャラクターを操作して街を歩き回って楽しんでもらえたら嬉しいですね。

荒井氏:UIに関しては、ゲームの本質的な要素ではないので注目してほしくないです(笑) いままでのソーシャルゲームでは、UIのパーツで世界観を作ってきた部分がありましたが、今回はそうではありません。気にしないで使って頂き、ゲームの世界に没入してもらえたら嬉しいです。



――:チームはどういった雰囲気でつくっているのですか?

荒井氏:チーム全体として、チャレンジするほうが楽しい、既存のやり方じゃないほうが楽しいというムードが強いです。常識に沿ったやり方をとったり、守ろうとしたりすると、「本当にそれでいいの?」と尋ねるような雰囲気や習慣がチームにはあります。『ラプラスリンク』は、ソーシャルゲーム2.0を合言葉に、正解を探りながら開発してきました。ぜひプレイして頂き、我々の行き着いた解答を体感してもらえると嬉しいです。


――:ありがとうございました。



 
■これまでの掲載記事

【第3回】
世界観設定に基づく"根拠のある"デザイン・イラスト・インタラクティブデザイン



【第2回】
gloopsがシナリオにこだわったワケとは? 「取ってつけたシナリオや予定調和のゲームは飽きられている」



【第1回】
gloopsはソーシャルゲーム業界の常識をどう破壊し再構築したのか 上田Pが語る破壊の先で作り上げた"新しい楽しさ"



【制作発表会】
gloopsの新作『LAPLACE LINK』は常識を打ち破る新世代ブラウザゲーム マップ移動型&アクションバトル、"リアル"な世界観・キャラが魅力


 
 
 
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会社名
株式会社gloops
設立
2005年8月
代表者
李 仁
決算期
12月
上場区分
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