【インタビュー】『ぼくとドラゴン』の手触りの良いクエストは『ネズミだくだく』を参考にした 「竜王戦」の実装がターニングポイント


イグニス<3689>の『ぼくとドラゴン』(以下、ぼくドラ)が好調だ。スマートフォンアプリ市場ではいわゆる「IPタイトル」と呼ばれる版権を使ったゲームアプリが人気だが、『ぼくドラ』は、オリジナルタイトルながら、アプリストアの売上ランキングでもTOP20に入るなどヒットしている。今回、開発チームのキーマンにインタビューを行い、『ぼくドラ』の運営を振り返ってもらうとともに、リリース後、人気を集めたきっかけや、ゲームの魅力となっている"手触りの良さ"をどうやって実現したか、といった点について語ってもらった。


 
■インタビュイー紹介

藤野氏(写真右): アートディレクターとしてUIデザイン、3Dグラフィック制作、 開発のパイプライン構築、コンセプトアートのほか、サウンドのディレクションも担当。
米澤氏(写真左):クライアントサイドのエンジニアとして開発に携わった。リリース後はプランナーに。


 
■2015年7月に実装した「竜王戦」がターニングポイントに

――:よろしくお願いします。まず、1年間の運営を振り返っての感想をお願いします。

藤野氏:想像していたよりも、ずっと受け入れていただいたと感じています。リリース当時、リアルタイムバトル(以下、RTB)のゲームは、美麗系のイラストが多かったのですが、RTBゲームで遊んだことのない方々に手にとっていただけるよう、キャラクターやUIのテイストをライトでポップにしましたが、どこまで受け入れていただけるかは未知数で不安なところもありました。

米澤氏:リリース当初は、コンテンツが十分に揃っていない状態で、とにかくイベントを作らないといけない状態でした。計画的にイベントを作り、安定的にゲームが運用できる状態にするまでは大変でしたが、チームメンバーで頑張ってやれたと思います。私個人でも、ゲームを運用する仕事は今回が初めてでした。自分が作ったもので、お客様に盛り上がっていただけるのがとても新鮮に感じた反面、プレッシャーも大変でした。



――:なるほど。リリースして気が付くと人気になっていた印象がありますが、どのあたりがターニングポイントだったんでしょう。

米澤氏:とにかく無我夢中で運用していました。今までと違う手触り感で楽しく遊んでいただていると感じましたが、当時は変化のある遊びが十分に提供できていませんでしたので、「早くイベントを増やしてほしい」というご意見を多く頂戴しました。考えていた要素が全て出揃ったのは、7月に実装した「竜王戦」のころですね。もちろん、いまでも新しいリーグ戦を随時追加しています。運営していて、ここがターニングポイントだったと思います。
 


――:竜王戦とはどういったイベントなのでしょうか。

藤野氏:竜王戦は、ギルドのメンバーと協力してフル3Dの竜王と戦うバトルイベントで、1カ月に1度行われます。『ぼくドラ』は、カジュアルなRTBゲームと思われていましたが、突然、3Dのドラゴンが登場したことで「すごい!」と話題になりました。チームには私以外にもコンシューマゲーム出身の3Dデザイナーが在籍していますので、こうしたコンテンツは問題なく作れますが、我々はなんでもリアルにしなくてはならないとは考えていません。

米澤氏:『ぼくドラ』は、ライトなプレイヤーに提供するというのがコンセプトでしたから、竜王戦の実装前は少し不安でした。というのは、フル3Dのコンテンツは、お客様にとっては驚きとなる反面、コアなゲームと受け止められてしまう可能性もあるからです。幸い、その心配は杞憂で、お客様には喜んで頂き、とても嬉しかったですね。



――:さきほどRTBゲームに触れた人のない人を念頭に、とのことでしたが、実際はその狙いどおりになったのでしょうか。

米澤氏:そう聞いています。『ぼくドラ』で遊んでくださった方のなかには、スマートフォンに変更してから初めてゲームで遊ぶ方や、RTBゲームに初めて触る方も少なくありません。『ぼくドラ』については、そういう方に支えていただているという印象があります。また、イラストがかわいい、というお褒めの言葉もいただきます。


 
■手触りの気持ちよさを重視…『ネズミだくだく』がヒントに

――:『ぼくドラ』がヒットした要因として、ホーム画面でのクエストといいますか、敵を切る爽快感や手触りのよさがあると思いますが、このあたりの開発の経緯を教えて下さい。

藤野氏:カジュアルゲームで遊んでいた方々に受け入れてもらえるよう、ホーム画面については、画面をタップするだけで進行するクエストに少し変化を加え、一定時間ごとに出現するスライムをタップして切っていくものにしました。この「手ざわり」に関しては可能な限り作りこみまして、爽快感のある仕上がりになっているかと思います。

米澤氏:当社がリリースして人気のあった『ネズミだくだく』というカジュアルゲームがヒントでした。『ネズミだくだく』は、いわゆるクリッカーゲームですが、RTBのクエストの機能的な要件を満たしていると思いました。リリース当時は、キャラクターを自由に操作してマップを移動するものも考えましたが、ゲームアプリで遊んでいない方には敷居が高く、ゲームの面白さを分かっていただくには時間がかかると思いました。気軽に触って楽しめる要素として、ライトな手触り感を重視していました。もし『ネズミだくだく』がヒットしていなかったら、違ったものになっていたと思います。

 


――:ホーム画面のクエストについて、どういった点に気をつけたのでしょうか。

米澤氏:スライムを切る部分については、手触りの気持ちよさが重要だと考えています。クオリティを上げることに注力できました。最後の1カ月は、連続で切った時の主人公の動くスピードや、弾ける時の音など細かい調整をしていました。社内からレビューをもらっては直して、もらっては直して…の繰り返しで、リリース直前までやっていました。


――:運営していて気をつけていた点を教えて下さい。

米澤氏:『ぼくドラ』のRTBの特徴として、スキルのバリエーションがすごく多いんです。それを考えるのが大変ですね。スキルの組み合わせを考えて、戦い方や戦略を試行錯誤できるところが面白いと評価いただいています。

藤野氏:運営チームは皆、『ぼくドラ』のプレイヤーとしても遊んでいます。そして、新しいスキルを考える時も、プランナーだけではなく、エンジニアやデザイナーなども提案しています。バトルをより楽しくするため、チーム一丸で取り組んでいます。お客様と同じ温度感を感じながら、喜んでいただけるプロダクトを作っている感覚があります。



――:今後の展開を教えて下さい。

米澤氏:長く運用は続けたいと思っています。今遊んでいる方がもっと楽しめるように、継続的に改善していきたいです。また、ゲームに飽きられないように新しい機能やイベントの導入にも力を入れてきたいです。

藤野氏:『ぼくドラ』は、竜王戦ができて以来、いろいろなことができるようになりつつあります。昨年末、ホーム画面の見た目が変わる機能を入れました。雪景色になったり、クリスマス中にはサンタ服のスライムが出現したりします。戦う以外の部分でも見た目で楽しめるようなことも引き続きやりたいですね。バトルをガッツリ遊んで、ホームでほっこりするというサイクルで『ぼくドラ』を長く楽しんでもらえたら、と思います。


――:ありがとうございました。




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