【サイバーエージェント決算説明会】藤田社長「AbemaTVの事業化に確信」 下期は90億円投じて、ゲームとネット広告に続く中長期の成長の柱に

サイバーエージェント<4751>は、4月21日、東京都内で、証券アナリスト・機関投資家向けの第2四半期累計(15年10月~16年3月期)の決算説明会を開催した。同日発表した決算は、売上高1486億円(前年同期比19.9%増)、営業利益242億円(同16.9%増)、経常利益237億円(同12.9%増)、最終利益112億円(同14.1%増)と2ケタ増収増益での着地となった。

第2四半期(1~3月期)の数字をみると、売上高746億円(前四半期比QonQ0.8%増)、営業利益112億円(同13.3%減)、経常利益109億円(同14.7%減)、最終利益53億円(同9.6%減)と増収減益だった。売上高は四半期ベースで過去最高を更新したものの、営業利益、経常利益、最終利益はいずれも減益となった。

決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は、「営業利益の通期に対する進捗率は87%となっており、かつてない余裕で折り返すことができた。かねてから説明しているように、下期は先行投資を行っていく」と述べた(以下、「」内は藤田社長の発言)。ネット広告とゲーム事業が利益を稼ぎつつ、中長期的な成長を担うメディア事業に投資して育てていく考えだ。
 




 
■第2四半期は微増収・減益に

以下、第2四半期の状況を中心に見ていこう。

まず、第2四半期の連結決算を観ると、売上高がQonQでは0.8%増の746億円、営業利益が同13.3%減の112億円となり、微増収・減益となった。ネット広告事業が過去最高の売上高・営業利益を記録するなど好調に推移したものの、前の四半期で好調だったゲーム事業が年末の需要期の反動が出て減収減益となった。また、AbemaTVなどメディアへの先行投資も負担となったという。
 


なお、営業利益については、QonQで2ケタの減益となったものの、112億円という利益水準は、過去3番目の大きさとなる。そして、2014年10~12月期などのように、一時的な株式売却益が計上されたときを除くと、営業利益は過去2番目の大きさとなる。利益水準は決して低かったわけではないのだ。

 
▲販売管理費の推移。人件費や広告費などが増加傾向にある。

 
▲グループの役職員数はほぼ横ばい。第3四半期から244名の新入社員が加わるとのこと。


 
■過去最高の売上・利益となったネット広告

事業セグメント別にみると、好調だったのはネット広告だ。売上高はQonQで7.9%増の423億円、営業利益は25.0%増の41億円と好調だった。営業利益は過去最高の規模だった。スマートフォン広告がけん引した。また、期末ということもより、予算消化の発注が増える中、採算性の高い自社商材の売上が伸びたことも大きな要因だった。
 

広告商材として伸びたのは、FacebookやTwitterなどのタイムラインに表示するインフィード広告が拡大したほか、動画広告も大きく伸びたとのこと。動画広告については、ブランド広告専門部署を設立し、「AbemaTV」と「Abema TV FRESH!!」の拡販を行う予定で、引き続き成長が期待されるとのことだ。
 


 
■前四半期の反動が出たゲーム事業は減収減益に

ゲーム事業は、売上高が同7.0%減の276億円、営業利益が同21.5%減の69億円だった。四半期ベースで過去2番目の売上高、営業利益だった。藤田社長は、「昨年末はCygamesの『グランブルーファンタジー』を中心に需要期に大きく伸びた。我々が予想できないほどだったが、年明けになって、その反動がでた格好だ」とコメントした。
 

また3月に『グランブルーファンタジー』で自主規制を行い、決算説明資料でも減収要因としたが、「影響は大したことはない」。「誤解を受けているが、(課金者全体のなかで)何十万、何百万円も使うような人は一部のため、自主規制によってユーザーや売上はガクッと減るわけではない」とし、ガチャの確率表記や上限の設定といった施策はゲーム事業の根幹を揺るがさないと強調した。

なお、2016年9月期中、新作として、6タイトルを提供する予定だ。そのなかでも期待のタイトルとして、Cygamesの『Shadowverse』をあげた。『神撃のバハムート』の続編で、第3四半期中に日本と北米でリリースする予定。また日本テレビとの共同プロジェクト『エンドライト』も期待しているとのことだった。
 


 
■メディア事業…社内ベンチャー的に新サービスが生まれる

メディア事業は、売上高が8.6%減の53億円だった。業績面では横ばいが続いているが、AmebaアプリのDAUが前年同期比で1.4倍になるなど、「しっかりと伸びている」という。現在、新しい課金サービスを育てるというコンセプトで、社内ベンチャー的にアプリやサービスが立ち上げているとのこと。特に女性向け電子書籍サービス「読書のお時間です」や、趣味でつながる恋活サービス「タップル誕生」といったサービスが社内ベンチャー的に生まれており、新サービスだけで四半期売上高が9億円規模になったという。
 


 
■『AbemaTV』は好調な立ち上がり 「事業化に確信」

先行投資事業と位置づけている『AbemaTV』と『AbemaTV FRESH!』に質問が集中したが、好調な立ち上がりとなったようだ。特に4月11日に本開局したインターネットテレビ局『AbemaTV』については「想定を上回る好調な出足だ。ビジネスモデルは世界に類似するものはなく、我々自身で組み立てた、全く新しいもの。初速を受けて、事業化できるという確かな手応えを持った」という。
 


藤田社長によると、24時間編成で24チャンネル配信しているが、開局から1週間で視聴数で1日1000万視聴を超えたという。WAU(週次アクティブユーザー数)も100万人、DAU(日次アクティブユーザー数)はその半分になるとのこと。「DAUが100万人までいけば、運用で1000万人まで増やすことができる。マスメディアに成長させることができるのでは」と自信を示した。
 

コンテンツ面で、特に力を入れているのがオリジナル番組だ。1~3チャンネルは、テレビ朝日とともに製作しているという。「PCでヤフーを開くのはニュースがあるから。ニュースは視聴習慣に不可欠の要素だ。そのため、1チャンネルはニュースではなくてはならない」という。そこでAbemaニュースを開局したが、熊本地震でも24時間体制で報じ、大いに利用されたことから社会的な役割を果たせるのではないかと期待しているという。このほか、帯の番組に力を入れているとのこと。

なお、ユーザー属性について質問されると、個人情報を撮ってないため、正確な情報はわからないと前置きしつつ、30代男性が多く、女性が少ないと回答した。チャンネルのランキングでアニメの順位が高いのは、こうしたユーザー属性が反映されたようだ。サービス開始前は、テレビ離れの傾向にある10~20代の男女が多いと想定していたそうだ。ただ、女性の場合、友達からの口コミなどでじわじわと広がる傾向にあるため、浸透に時間がかかるとの見方を示した。若年女性を引き付けるドラマや恋愛バラエティを増やすなど時間をかけて、徐々に軌道修正を図る方針だ。

下半期は、これまでの説明どおり、動画事業への投資を本格化する。投資額は90億円だが、そのうち6割はコンテンツ関連に投資する。コンテンツ投資は、自社制作の番組と、コンテンツ調達費用で半分ずつとなる。また、広告についても5月から導入し、7月からテレビ朝日と協力して、本格的に販売を行っていく考えだ。「出稿いただいている会社はナショナルクライアントが多いが、コンテンツ・プロダクトともにナショナルクライアントが出稿してもらえるクオリティになっているのでは」と述べた。



 
■2016年9月通期の見通し

なお、2016年9月通期は、売上高3000億円(前期比17.9%増)、営業利益280億円(同14.5%減)、経常利益274億円(同15.2%減)、最終利益140億円(同5.4%減)を見込む。進捗率は売上高50%、営業利益と経常利益87%、最終利益80%と高い水準だが、上方修正しない理由は、先行投資が進捗していないためだ。「下期にここから全体で90億円の投資を行う計画。十分な投資を行って次の成長に備えたい」と動画サービスをネット広告とゲーム事業に並ぶ柱に育てる考えを示した。

 
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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