【グリー決算説明会】『ソウルアームズ』は順調な立ち上がり、改修後プロモーション強化 VR分野は「投資・開発・振興の3本立てで展開」

グリー<3632>は、第3四半期(2015年7月~2016年3月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。

第3四半期累計(2015年7月~2016年3月期)の連結は、売上高542億円(前年同期比24.2%減)、営業利益120億円(同25.0%減)、経常利益110億円(同44.6%減)、最終利益63億円(前年同期25億円の赤字)となり、減収・経常減益となった。コイン消費が落ち込んだことに加え、前年同期に計上された為替差益が一転して為替差損になったことが響いた。最終利益は黒字になったが、前年同期に計上されたポケラボとOpenFeintののれんの減損損失が今期は発生しなかったことによる。

決算説明会に臨んだ田中良和社長(写真)は、「スマートフォンゲームの市場は売上ランキングで25位や50位に入った時の売り上げは伸びており、市場規模自体は引き続き拡大しているのでは」との見方を示す一方、ヒットさせるための難易度が上がっていることも強調した。「長期運営タイトルが増える一方、新タイトルの上位に入る難易度が着実に上がっている。新タイトルに求められる品質が上がり続け、1本当たりの投資額も大きくなっている。こうしたなか、当社は本数を絞って、1本1本の投資額と品質を上げていきたい」と述べた(以下「」の発言内は断りがない限り、田中社長の発言)。

こうした観点で開発したタイトルとして、『ソウルアームズ』や『追憶の青』、ポケラボの開発している『激突!クラッシュファイト』などがあげられる。続く2017年6月期の上期(2016年6~12月期)においては、国内向けのタイトルとして、合計5タイトルの新作をリリースする計画だ。VR分野への注力や、ファンプレックスの好調な立ち上がりなど、興味深い展開が見られた決算説明会であった。


 
■第3四半期はコイン消費減りQonQで減収減益に

まず、第3四半期(16年1~3月期)の状況から見ていこう。売上高が前四半期比QonQ13.2%減の168億円と2桁の減収となった。コイン消費の推移を観ると、「GREE」プラットフォームなどで展開するウェブゲームだけでなく、ネイティブゲームのコイン消費が減少したことが主な要因だった。また、海外のネイティブゲームのコイン消費の落ち込みも続いた。
 


他方、営業利益は同3.7%減の36億円だった。売上高が想定よりも弱含んだものの、コストコントロールが効いたことで利益水準は横ばいとなった。具体的には、マスプロモーションを減らしたことで広告宣伝費が減少したことが大きい。固定費の減少は限定的だったが、住まいのビジュアルプラットフォームを展開するLIMIAが下期から連結に加わるため、上期の費用を第2四半期で一括計上したそうだ。このため、下期は第2四半期ほどのインパクトはないという。
 



 
■2016年6月期の見通し

2016年6月期通期の業績については、4月21日に修正しており、売上高700億円(前期比24.3%減)、営業利益140億円(同30.8%減)、経常利益125億円(同50.0%減)、当期純利益115億円(前期103億円の赤字)を計画している。
 


売上高予想を20億円引き下げたが、ネイティブゲームの売上進ちょくが想定よりも弱含んだため。営業利益はコストコントロールが効くため、変更なし。また経常利益を15億円引き下げたが、円高に伴い為替差損が発生することによる。最終利益のみ従来予想を35億円上回る見込みだが、前の期の株式評価損が税務上容認される見込みとなり、税金費用が減少することになった、と説明している。


 
■新作タイトルの状況…『ソウルアームズ』は好調な立ち上がり

これまで開発していた『ソウルアームズ』が4月25日にリリースとなった。いつでも手軽にマルチプレイを楽しめる「乱入式共闘システム」を取り入れた、横スクロール型のアクションRPGだ。田中社長は「順調な立ち上がりになった」とコメントした。会場からは『ソウルアームズ』の初動についての質問が出た。取締役 執行役員の荒木英士氏は「想定よりも多くの方からダウンロードしていただいている。いい反響をいただいているが、技術的な課題やマルチプレイ、サーバーに課題があり、改修してからプロモーションに入りたい」と回答した。
 


現在開発中の新作RPG『追憶の青』についてはβテストに向けた準備を行っているという。『ソウルアームズ』と同じく、横スクロールのアクションRPGで、開発以外にもLINEと協業するマーケティング・プランニングも順調に進んでいるとのこと。
 


このほか、ポケラボが『激突!クラッシュファイト』の開発を行っている。こちらはポケラボ得意のリアルタイム通信を強化した、最大6人で遊ぶリアルタイム対戦ゲームとなる。マイネットに運営中の2タイトルを売却するが、売却した2タイトルよりも売上が見込める新作の開発にリソースを集中させることにしたそうだ。これ以外にも育成アクションRPGの開発も進めていることも明かした。
 


北米事業は、MunkyFun社との共同開発タイトル『League of War: Mercenaries』を3月31日にグローバルリリースした。北米で人気の近代兵器による戦争がテーマのアクションストラテジーゲームだ。「リリースして初速には手ごたえを持っている」という。4月からはいかに大きくするかが北米事業の直近のテーマで、運営体制を強化する一方、日本との共同運営で運営コストの適正化も行っていく考え。
 


 
■新規事業…好調なスタートのファンプレックス VR事業にも注目

新規事業では、ソーシャルゲーム運営を専門に行う子会社ファンプレックスが順調な立ち上がりとなったことを明らかにした。配布された決算説明会資料を見ると、2016年6月期の事業収益は30億コイン程度、そして続く2017年6月期には100億コインを見込んでいるという。

 


ファンプレックスは、マイネット<3928>やDeNA Games Tokyo、オルトプラス<3672>などと同じく、すでに運営しているソーシャルゲームやスマートフォンゲームの受託あるいは買い取りを行って運営する会社だ。今年2月の決算説明会で事業がスタートしたことが明らかになったが、田中社長(は「社内にゲームの買取と受託の営業部隊が存在するが、案件獲得は想定を大きく上回っている」と自信を示した。「GREEプラットフォームだけでなく、他のプラットフォームで半分程度の収益をあげたい。伸びしろが大きく、成長が見込まれる」と述べた。

会場からは2017年6月期の100億コイン達成の現実性について質問が出たが、取締役 執行役員の小竹讃久氏は、「100億コインはコンサバ(保守的)に見ている数字だ。確実に達成できるとは言えないが、80%はいけるとみている。営業利益率は、ゲームの買取の価格で変わってくる部分があるものの、意外と高い方だと思っている。10~15%は出るのではないか」と回答した。

グリーでは、ファンプレックスについて、内製タイトルの長期運用で培ったクロスプロモーションとIPコラボのノウハウによる高いコイン消費の維持能力、そして、ベトナムにあるオフショア拠点を活用した低コストかつ高品質の運営を強みとして、今後の案件獲得に活かしていくとともに、運営を引き受けたタイトルの収益化を図っていく考えだ。

ファンプレックス以外にも、カスタマーエクスペリエンス、つまり、カスタマーサポート(CS)業務を請け負うExPlayのサービスを開始した。こちらはこれまで培った顧客対応ノウハウを生かす。CSについては、他社からも評価されており、ニーズが大きいことからサービス提供することにしたそうだ。ファンプレッスクとともに拡大が見込まれる。

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VRについては、北米のVR優良企業に出資するファンドを設立したほか、開発、市場振興の3本建てで行う。ファンドは、北米のスタートアップを中心に投資する。「日本よりアメリカの方が熱気があり、チャレンジしている会社も多い。このなかからVRで注目すべきアイディアが出てくるという仮説を持っている」という。また、市場振興としてジャパンVRサミットを5月10日に開催する予定。500人程度が集まる国内最大級のイベントで、海外からも有力企業が集まるという。「2~3万のチケットが完売した」とのこと。
 


VR事業の展望について質問が出ると、荒木氏は、「VRは市場が立ち上がるのは来年から」との見方を示した。これからハードウェアが出て、いろいろな取組が徐々に具体化していくという。また、VRゲームについては、PCとコンソール向けでかつハイエンドのゲームが多いが、今年の後半からはモバイルゲームも増えるとみているそうだ。グリーでは、VRはモバイル向けを中心に据え、ハイエンド向けの開発体制の強化は考えていないとのこと。

 
(編集部 木村英彦)
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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