【上期総括】モバイルファクトリー宮嶌裕二社長インタビュー「リアルと結びつくことでもっと豊かな体験にできる」「他社と徹底的に違う遊びを提供したい」



スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2016年上期の市場動向と下期のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2016年上期振り返り」。今回はモバイルファクトリー<3912>の宮嶌 裕二社長にインタビューを行い、上半期の位置情報ゲーム市場と同社としての取り組みを振り返ってもらうとともに、下半期の展望について語ってもらった。



――:よろしくお願いします。まず、位置情報ゲーム市場の上期の動向を振り返っていただきたいのですが。

位置情報ゲームという枠組みで見ると、ガンホーさんが『パズドラレーダー』をリリースした結果、位置情報ゲームで遊ぶユーザー層は広がったように思います。位置情報ゲームで100万ダウンロード突破というのは驚くべきことです。『パズル&ドラゴンズ』で遊んでいる方の一部が位置情報ゲームで遊びはじめ、その面白さを知ってくれたのではないでしょうか。

位置情報ゲームのユーザー層こそ広がりみせたものの、マーケットは従来の成長の延長線上といった印象です。マーケットプレイヤーも、コロプラさんやマピオンさんのほかに、ガンホーさん、Nianticさんなどがいますが、マーケット全体が急成長したようにはみえません。このなかでも、当社は売上と利益ではかなり頑張ったほうだと思います。当社のアプリは、アプリマーケットのランキングでもTOP100に入っています。



――:御社の取り組みを振り返っての感想を教えて下さい。岩手県とのコラボなどの取り組みが目立ちましたが。

『ステーションメモリーズ!(以下、駅メモ!)』と『駅奪取シリーズ』でいろいろな取り組みをやりました。東京メトロや、岩手県との取り組みなどがありますが、DAU(日次アクティブユーザー)に比例して増えている状況です。2016年3月から5月までの期間で開催した「東京トレジャー鉄道」も約7500人の方にご参加いただきました。

O2Oのイベントをやると、これまでは2000~3000人規模が多かったことを思うと、参加者数は格段に増えたと思います。スマホだけで完結するものと違い、実際にその場所に移動する必要があるなどお客様にとってはハードルの高いイベントです。それでもこれだけご参加いただけたのは意味のあることだと思います。

 


――:DAUが増えているとのことでしたが、どういったことが背景にあるのでしょうか。

昨年10〜12月にプロモーションを行った結果、DAUが大きく伸びました。その後、1〜3月はプロモーションを精査したところ、さすがに1~3月のDAUは若干減少しましたが、引き続き高い水準にあります。

プロモーションをきっかけに遊びはじめたお客様の一定割合が固定ファンとして楽しんでくれているようです。そして、ゲームで遊ぶだけでなく、イベントに参加したいという方も増えたとみています。イベントについても、東京都内でやったことで気軽に参加いただけたようです。

 


――:御社のゲームのユーザーは鉄道好きな人が多いのですか?

実はそうでもないんです。当社で調べた限りでは、特に『駅メモ!』に関しては、人気のアイドルリズムゲームや、美少女ゲームなどと一緒に遊んでいる方も多いですね。いわゆるサブカルチャーの好きな方は、超会議やコミケなどのイベントなども含めて様々なイベントに積極的に参加されます。キャラクター性の高い『駅メモ!』は親しみやすいのかもしれませんね。

もちろん、当社で提供するゲームは、駅を中心とした位置情報ゲームですので、鉄道好きな方も多く、熱心に、継続的に遊ぶ方が多いです。イベントなどを行うと、鉄道好きな方や、出張頻度の高い方がランキングの上位に入ってくることが多いです。つまり、鉄道ファンばかりではない、ということです。



――:下期の業界・市場に関する見通しを教えて下さい。新作『Pokémon GO』が注目を集めていますが、市場全体に与える影響はどうご覧になっていますか。

位置情報ゲームの市場全体でいうと、『Pokémon GO』は、非常に大きなインパクトを与えると思います。月商10億円に到達する可能性は十分あるでしょうし、そうなればマーケットの規模も3倍ほどに拡大します。ユーザーの規模についても3倍にすることも可能でしょう。

当社のゲームは、駅を中心とした位置情報ゲームですし、『駅メモ!』についてはキャラクター性の高いゲームです。したがって、『パズドラレーダー』と同様、影響については限定的と見ています。むしろ、位置情報ゲームの面白さや魅力に気づく方が増えて、マーケット全体が一層活性化することを期待しています。

 


――:御社の取り組みとしてはリアル連動イベントを強化していくのでしょうか。

はい。ある調査で、2015年のリアル謎解きゲームの市場規模は400億円で、そのうち、周遊街歩き型が3割の120億円になるそうです。当社のゲームは、街歩きをしながら謎を解いていくものですから、周遊街歩き型に近いものとなっています。周遊街歩き型の謎解きゲーム市場は、2〜3時間遊べて3000〜4000円ですが、当社はそこにフリーミアムを持ち込み、リアルと連動したイベントを行い、シェアを高めていきたいと考えています。フリーミアム化することで参加する方も増えるはずです。

まだ体制を整えている最中ですが、スマホゲーム会社というよりは、リアルと連動したゲーム会社にしていきたいと思います。ゲームアプリはあくまでリアルイベントに参加して遊ぶためのツールという位置づけです。これからリリースするアプリもリアル寄りになっていくはずです。リアルイベントを企画・運営する大変さは身にしみていますが、当社は、もしかすると3年後には半分イベント会社になっているかもしれませんね(笑)



――:音楽業界でもCDの売れ行きは厳しいと聞いていますが、ライブは総じて盛況と聞きます。ゲームでもさらに体験要素を増やしていくと。

はい。エンターテインメントの本質は体験です。ゲームはそれ自体が体験型のコンテンツといえるものですが、それにリアルイベントを加えることで、得られる体験はもっと豊かになっていくと思います。アプリ市場を見ていると飽和状態にありますが、当社は、リアルと連動というところを突き詰め、他のゲーム会社とは徹底的に違う遊びを提供していきたいと考えています。
 


――:熊本の震災や東日本大震災などの復興支援はもとより、地方活性化など位置情報ゲームに期待されていることは多いかと思います。御社として取り組みを教えて下さい。

リアルイベントは、準備と運営が大変ですので、どこまでやれるかわからないところはありますが、熊本の震災への取り組みも検討しています。日本政府が九州旅行の経費を一部負担する「観光復興に向けての総合支援プログラム」がありますが、ちょうど旅行会社などとコンソーシアムを組みましたし、被害の大きい熊本や大分のイベントをやりたいですね。

こうした取り組みは、正直申し上げて当社にはほとんどお金が落ちてきません。ゲームができる社会貢献のひとつですので、当社としては、地域の方だけでなく、熱心に遊んでいただいているユーザーの方にもっと喜んでいただけるよう、そして、地域振興のお役に立てるような取り組みは引き続き行っていきたいと思います。


――:ありがとうございました。

 
(編集部 木村英彦)
株式会社モバイルファクトリー
http://www.mobilefactory.jp/

会社情報

会社名
株式会社モバイルファクトリー
設立
2001年10月
代表者
代表取締役 宮嶌 裕二
決算期
12月
直近業績
売上高33億7000万円、営業利益9億4500万円、経常利益9億4000万円、最終利益ゼロ(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3912
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