【ネクソン】4~6月期は円高の影響で減収・最終減益 「ファンダメンタルズは良好」 中国版『アラド戦記』好調続く 国内苦戦も月1新作で巻き返し期す



ネクソン<3659>は、8月10日に、第2四半期累計(2016年1~6月)の決算発表を行ったが、累計の数字は別途みていただくとして、第2四半期(4~6月期)にフォーカスすると、売上収益381億円(前年同期比11%減)、営業利益133億円(同18%増)、最終利益75億円(同42%減)と減収・営業増益で、最終利益に関しては減益となった。
 

経営企画室長の熊谷峻平氏が当サイトの個別取材に応じ、「ファンダメンタルズは良好だが、円高のインパクトが大きかった」と振り返った。中国人民元と韓国ウォンに対して、円がそれぞれ16%上昇したことで売上が目減りした。同社の海外売上は全体の90%を占めており、売上に大きな影響が出る。また外貨建資産も多く、円高によって為替差損を計上し、最終利益が減益となった。

また、営業利益については2ケタの増益を達成し、業績予想レンジのほぼ上限だった。利益率の高い中国における『アラド戦記』がサービス開始から8年経過したいまもなお売上が好調に推移する一方、ロイヤリティを支払うタイトルの売上が減少したとのこと。また広告宣伝費を計画していたよりも使わなかったことも増益要因となったという。

これ以外にも『アラド戦記』にかかる無形固定資産の減価償却期間が終了したことに伴い、減価償却費が減少したことも利益を押し上げた。月額ベースで7億円、四半期ベースで21億円の増益要因となった。減価償却については昨年8月で完了したため、次の第3四半期まで増益要因として効いてくる見通しとなる。
 


地域別の状況は以下のとおり。

主力となる中国は、前年同期比2%減の156億円だった。為替を一定とすると16%の増収だった。主力タイトル『アラド戦記』が好調だった。労働節(メーデー)と8周年に合わせてアップデートが好評だった。MAUは前年同期比で横ばいだった一方、課金ユーザー数は大幅に増加した。「8年運営するとお金を使うユーザーとそうでないユーザーが固定化されるものだが、ゲーム内での取り組みの結果、お金を使うユーザーが増えた」。
 


韓国は売上収益が同8%減の149億円だった。一定為替レートは10%の増収となる。こちらも円高の影響が出た。『HIT』や『DomiNations』などモバイルゲームが成長した。『メイプルストーリー』の13周年アップデートが好評で、売上が伸びたという。トピックスとして、オープンワールド型のモバイルゲーム『野生の地:Durango』、そして『三國志曹操伝Online』のβテストを実施したそうだ。
 


日本は売上収益が同29%減の38億円と引き続き苦戦した。PC・モバイルともに下落傾向が続いている。新作タイトルが少なく、長期間運営するタイトルが多いためだ。下落トレンドから脱却を目指しており、下半期は新作リリースを強化する。特にモバイルゲームについては、月1本ペースでリリースする予定。8月18日現在、『Chaos Chronicle』や『ファンタジーウォータクティクス』がすでにリリースされている。
 


北米の売上収益は同39%減の17億円、欧州その他が同9%減の19億円だった。北米が大きく売上を減らしているが、これは前年同期においては、『DomiNations』がサービスを開始し、好調なスタートを切ったが、今年はそれに及ばなかったという。ただ、同タイトルは安定的に推移しており、大きく落ち込んでいるわけではないという。このほか、『Riders of Icarus』が第2回クローズドβテストを行ったとのこと。
 


 
■第3四半期の見通し

続く第3四半期(7~9月期)の業績については、売上収益383~413億円(前年同期比23~17%減)、営業利益106~129億円(同42~30%減)、最終利益96~115億円(同50~40%減)の見通し。想定為替レートは、100韓国ウォンあたり9.11円、中国元は15.58円、米ドルは103.98円となっている。
 


減収減益となる見通しだが、為替の円高が影響する。先述の減価償却の減少などのプラス要因もあるものの、減益要因の半分くらいは「為替で説明できる」という。利益率の高い中国市場での売上減も響く。
 


中国市場で展開する『アラド戦記』は減収となるが、ゲームの運営状況の悪化というわけではなく、カレンダーの関係によるところが大きい。この四半期では7月の夏季アップデートと、9月の国慶節アップデートと大きなアップデートが予定されているが、国慶節についてはカレンダーの関係で、昨年に比べてアップデートが数日遅くなる可能性があるそうだ。このため、この四半期中の営業日が少なく、売上が低下すると想定しているという。

また、韓国も為替の影響に加えて、『サドンアタック』と『EA SPORTS FIFA Online 3』の収益が低下する見通し。特に『FIFA』は、前年はワールドカップの翌年としては異例とも言えるほど売上が伸びており、今期はその水準には到達しないとみている。下期においては、『3Dアラド戦記モバイル』や『Epic of Three Kingdom』、『メイプルストーリーM』、『真・三國無双7モバイル』などの新作が控えている。

日本は、30~20%台の減収となる見通し。下落トレンドが続く見通しで、新作のリリースで巻き返しを図る。『ファンタジーウォータクティクス』の配信を開始したが、下期においては月1本のペースでモバイルネイティブアプリをリリースする予定だ。モバイルガンシューティングゲーム『HIDE AND FIRE』の事前登録の受付も開始した。下期には『HIT』もリリースする予定。

他方、北米と欧州は伸びる見通しだ。『Riders of Icarus』と『攻殻機動隊S.A.C.-First Assault Online』のオープンβテストを行った。モバイルゲームでは140カ国でローンチした『HIT』が寄与する見通し。韓国で大ヒットしているタイトルだが、ベトナムや台湾、香港、タイなどで人気を博しているという。「PCオンラインゲームが主流となっている国では特に人気となっている」とのこと。


 
■このほかのトピックス

トピックスとしては、日本のゲームスタジオとのパートナーシップを行うと発表した。山椒Studiosで、カプコン『モンスターハンター』や『バイオハザード』などの人気シリーズに関わってきたメンバーで構成されているという。「欧米のパートナーシップがクローズアップされがちだが、これを皮切りに日本のゲーム会社とのパートナーシップも強化したい。アプリ市場が難しくなり、個性的なアプリが出しづらくなっている。当社とパートナーを組むことで、斬新なゲーム開発を支援したい」と熊谷氏は語る。

また、人気モバイルFPSゲーム『SPECIAL SOLDIER』の開発元であるwellgamesも買収した。モバイルのFPSだが、PCゲームのような操作感を実現しており、ノンプロモーションながら大ヒットしているという。今後、『サドンアタック』を開発したNexon GTとのノウハウを組み合わせたモバイルFPSの提供も行っていく考え。
 


 
(編集部 木村英彦)
株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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