【インタビュー】1周年を迎えた『アイドリッシュセブン』 開発担当ギークスに訊くリズムゲーム開発の裏側


『アイドリッシュセブン』は、株式会社バンダイナムコオンラインが提供するスマートフォン向けリズムゲーム。漫画家種村有菜氏がキャラクター原案、都志見文太氏がシナリオを手掛ける。父親の経営するアイドル事務所「小鳥遊芸能事務所」で働くことになった主人公(プレイヤー)が、所属する7人組男性アイドル「IDOLiSH7」のマネージャーとなり、彼らをトップアイドルに成長させるために奮闘するストーリーが展開される。ゲームのみならず、コミカライズやマーチャンダイジングなど、幅広い展開を行っている。

2016年8月20日にゲーム『アイドリッシュセブン』は配信1周年を迎え、さらにアニメ化プロジェクトの始動も発表され、ますます勢い付く本作。本稿では、開発を担当しているギークス株式会社のディレクター、エンジニアにリズムゲーム開発の裏側や『アイドリッシュセブン』にかける熱い思いを語ってもらう。



ギークス株式会社
ゲーム事業本部ディレクター
T.S


ゲーム事業本部ディレクター
S.H


ゲーム事業本部エンジニア
R.H



--本日はよろしくお願いいたします。まず最初に、お三方は『アイドリッシュセブン』において、どの部分を担当しているのかを教えて下さい。

T.S氏:リリース当初からディレクターとして、第1部配信まではメインのディレクターとしてバンダイナムコオンラインさんとのやりとりや、制作進行管理等を行っていました。現在は、ギークスで開発している他タイトルも担当しており、『アイドリッシュセブン』を含めた複数のタイトルを開発するスタジオ全体を統括しています。

S.H氏:私は『アイドリッシュセブン』リリース初期からライブパート部分を担当しています。アプリがリリースされ運用に入ってからは、T.Sから業務を引き継いだ形で、ディレクターとして制作進行管理を行っています。

R.H氏:エンジニアとしてリズムゲーム部分をメイン携わっています。ギークスで開発・運用している他タイトルでのリズムゲームの経験もあり、『アイドリッシュセブン』でリズムゲームの開発を担当しています。




--『アイドリッシュセブン』はゲームの他に、コミックであったりアニメ化が発表されたり様々なメディアで展開されています。これを読んでいる読者の中でも『アイドリッシュセブン』とは一体なんなんだろう?と疑問に思っている人もいるかもしれません。『アイドリッシュセブン』の全体的なコンセプトを教えてください。



T.S氏:まず最初に、『アイドリッシュセブン』の開発のお話をバンダイナムコオンラインさんからいただいた時に、プロデューサーが「男性アイドルグループの創出を目指す」プロジェクトだと話してらっしゃいました。ゲームやその他のメディアの中で、アイドルをデビューさせる喜びや大変さを感じられるよう、本当に「IDOLiSH7」にデビューさせるようなストーリーを体験してもらえるようにと作られたのが『アイドリッシュセブン』というプロジェクトです。



ゲーム、音楽、コミック、グッズ、そして最近発表されたアニメ化と、幅広く展開していますが、『アイドリッシュセブン』プロジェクトは「アイドルグループと共に成長する」ことがメインコンセプトです。


--こちらバンダイナムコオンラインさんのIPですが、ギークスが開発を担当するにあたった経緯等を教えてください。

T.S氏:弊社がこれまでにリズムゲームの開発・運営の実績を持っていたことで、バンダイナムコオンラインさんからお声がけいただいたことがきっかけです。お話を頂いてからは、ゲームとしての方向性や、リズムゲームの仕様や難易度、アイドルをテーマにしたゲームならではの成長要素をどうするか、など密にコミュニケーションを取りながら、開発を進めてきました。

--これまでの開発・運営からリズムゲームの成功ノウハウをお持ちの御社だと思いますが、技術面においてリズムゲームならではの工夫や苦労した面などはありましたか?

S.H氏:『アイドリッシュセブン』では、いわゆるリズムゲームパートを「ライブ」と呼称しております。そのライブでは、演出部分でエフェクトを使ったり、アニメーション動画を再生したりしています。それらにより、処理が重くなってしまい、端末によってはカクツキやメモリーリークという、アプリが強制終了してしまう現象が起きてしまうことがあります。それを回避するため、試行錯誤しながらパフォーマンスを上げていくことが苦労した部分です。

お客様には最適な状態で遊んでいてもらいたいという気持ちから、可能な限り、快適な状況で遊べる状態になるまではストア配信を公開しない方針です。




--「ライブ」中のアニメーションに関しては、表示を切ることも可能ですよね?

S.H氏:はい。現在ライブ設定では「低」「中」「高」と、演出の表示を任意で設定することができます。ですが、スマートフォンのスペックによっては、演出を「低」にしてもアプリが落ちてしまうこともあります。基本的には、アニメーションを含めてのライブなので、アニメーションがちゃんと過不足なく動くようになるまでは、端末ごとに選定しています。



R.H氏:開発初期段階では、ライブ中、レーザーを飛ばすなどのエフェクトをバンバン入れていました。アプリ内の「ライブ」は、アイドルたちがライブをしているシーンを表現しているので、実際のアイドルのライブを参考にして、レーザーやスポットライトなどをもりもりに入れていました。開発途中で「処理が重すぎる」ということ、また、「アニメーションをよりしっかりと見せたい」という話になり、エフェクトを入れすぎてアニメーションが見えなくなってしまわないように、さらに、プレイヤーが気持ちよくプレイできるバランスを探ってきました。




--スマートフォン自体のスペックはどんどん上がっていて、先日もiPhone7が発売になったばかりですが、今後そのようなエフェクトが盛り込まれたライブというのは実装予定があるのでしょうか?

T.S氏:インパクトとして、「ライブ」のアニメーション動画が登場するところが『アイドリッシュセブン』のお客様が一番楽しんでいる部分だと感じています。その部分を盛り上がりの中心にしたいと思っているので、全体を通して煌びやかなエフェクトをつけたいということではありません。もし、今後スマートフォンの機種自体のスペックが上がった時に都度検討していきたいと思います。

--その他に、リズムゲームの技術面において工夫した部分はありますか?

R.H氏:リズムゲーム周りは既存のシステムと大きく変わっていないので基本的には移植を行うくらいでしたが、スライドマーカーの表示については直接メッシュをさわるなど苦労しました。スキル周りに関して、当初は発動条件やスキル持続時間などを組み合わせていろんなスキルが出せるように設定をしていましたが、演出面との整合性を考えて、現状決まったパターンでスキルが発動するようになっています。今後はより多くの組み合わせを実現していきたいなと思っています。

また、Androidの一部端末ではスペックは足りているのにマーカーの動きがぎこちないという現象に悩まされていましたが、最近ではこれについてマーカーの表示位置計算の仕組みを変えることで滑らかに動かすような検証を進めています。合わせて開発ツールのバージョンアップが必要なので時間がかかってしまいますが、早いうちに実現出来ればと思っています。

T.S氏:カクツキやリズムのズレは、リズムゲームにおいて一番のストレスになってしまうと思います。タップするタイミングや、タップした時の効果音、例えばタップした時にリズムと違った効果音が出てしまうとそれはとても気持ちが悪いので、そういった部分を如何にして緩和するかが重要だと感じております。


--ノーツ(落ちてくる玉)が落ちてきてそれをタイミングよくタップすることでライブをプレイしますが、そのノーツの配置や数といったいわゆる譜面制作について教えてください。

S.H氏:バンダイナムコオンラインさんから楽曲をいただき、そこから譜面を作り始めます。現在『アイドリッシュセブン』では1楽曲につき8難易度が存在しており、楽曲をいただいた時点で一気に8難易度分の譜面を作っていきます。難易度は、通常ノーツや特殊ノーツの数や組み合わせの基準を設けており、それをベースに譜面制作を進めております。

--譜面制作において何か工夫されている部分はありますか?

S.H氏:簡単な難易度でも単調になりすぎないように工夫しています。例えば、同じ位置のタップを連続でやりすぎないようにしたり、楽曲の掛け声にあわせてフリックノーツを配置して楽曲に乗りやすくしたりしています。リズムゲームなので、同じ楽曲の難易度を何回もプレイしていただくことになるので、なるべく飽きない譜面を目指して制作しています。



T.S氏:また、タップの音等の効果音にもこだわりがあります。タップした時の音やスライドの音、それらと楽曲が合わさって1つの楽曲になっています。ですので、これらの効果音については様々な効果を試し、一番楽曲に合ったものを使っています。

S.H氏:プレイヤーキャラクターである主人公は、もともと演出家の設定なので、プレイヤーがノーツをタップすることで彼らのライブを一緒に盛り上げているのを表現しています。




--リズムゲームで主人公は、ライブにおいてどんな作業をしているのでしょうか?

T.S氏:リズムゲーム部分を作る時に「プレイヤーは一体何をしているのか?」という部分を何回か議論をしました。プレイヤーはアイドル本人ではないし、だからと言って観客やファンではありません。ですので、主人公を演出家にして、アイドルのライブを盛り上げていく演出にしました。


--続いてゲーム『アイドリッシュセブン』全体の現状について教えてください。8月20日に1周年を迎えた本作ですが、ユーザーの動向等について特徴的だと感じる現象等ありましたら教えてください。

T.S氏:1年運営してきて感じることは、Twitter等のSNSでの拡散力がとても強いコンテンツだな、ということです。よくタイムラインで誰か1人が『アイドリッシュセブン』のことをつぶやくと、他のプレイヤーさんもそれに呼応する形でつぶやき、タイムラインが『アイドリッシュセブン』で埋まるということがよくあると聞いています。開発・運営としても、各ユーザー様からのキャラクターへの思いをとても強く感じています。



--そんな『アイドリッシュセブン』のユーザーですが、肌感として、どんな属性を持ったユーザーなのでしょうか。

T.S氏:お客様の声を聞いている範囲では10代から20代のお客様が一番多くプレイしていただいていると感じています。さらに、弊社が開発・運営している他タイトルをプレイしてくださっている方、あとはやはり『夢王国と眠れる100人の王子様』や『あんさんぶるスターズ!』といった女性向け人気タイトルを並行して遊んでいる方々が多いのではと思います。

--『アイドリッシュセブン』において、女性ユーザーに向けたゲーム内での工夫等ありましたら教えてください。

T.S氏:『アイドリッシュセブン』はゲームオーバーがありません。ライブパートでどんなに失敗をしてしまっても、途中で楽曲が終わるということがなく、最後までプレイすること可能です。せっかくの素敵な楽曲があって、そしてアイドルたちによるムービーが流れるという演出があるのに、それがミスをしたからといって途中で楽しめなくなってしまうことがないようにしようと、開発当初から決めていました。リズムゲームに慣れていない女性の方でも、すべての楽曲を一曲丸ごと楽しんでもらいたいと考え、この仕様にしました。


--続いて、ゲーム内において今後予定しているアップデートや、構想等がありましたら教えてください。

S.H氏:『アイドリッシュセブン』はストーリーやキャラクターの部分の引きが強いですが、ゲームを開発する身としては「ライブ」の部分で盛り上げていきたいと考えています。ですので、単純にリズムを刻むだけ、ではなく、もっと難しい譜面を用意したりして、やり込み要素を増やしていきたいと思っています。ストーリーを進める際にはあまり難しい譜面をクリアする必要はないように、音ゲーに馴染みの深い方ではイベント等で難しい譜面を遊んでもらおうと考えています。今後はさらなる高難易度の譜面を定期的に追加していく予定です。また、こちらはまだ構想段階ではありますが、新スキル等の追加も考えており、ライブパートをもっと楽しんでもらえるようなアップデートを中心に企画をしております。

--ちなみにですが、ギークスさんとして『アイドリッシュセブン』に入れたい夢の機能とかありますか?

R.H氏:マルチ要素は入れたいですね。自分1人では難しくてクリアできない譜面を、フレンドと協力するといった協力の部分などでマルチ要素を実装したいとは思います。複数人で一個の楽曲を共有するといった体験ができれば楽しいのではと考えています。技術的に可能なのか、そもそもその要素は『アイドリッシュセブン』に必要なのか、といった部分から議論をしなければならないので、具体的に「実装します!」とは今の段階ではまだお約束できませんが、もう少しフレンド、他のプレイヤーの方と楽しめる要素を入れられたらと考えています。



--最後になりますが、ユーザーの皆様にメッセージをお願いします。

R.H氏:歴戦のマネージャーさんたちはご存知かと思いますが、ライブパートにおいて、グッドやパーフェクトでコンボをつなげていくとタップした時のエフェクトが派手になったりといった細かいギミックがあります。そういったところを是非見逃さずに楽しんでいただければと思います。

S.H氏:『アイドリッシュセブン』が多くの人々に遊んでいただけるコンテンツになったのも、プロジェクトの発表からずっと支えてくださったマネージャーの皆様に応援していただいている結果だと思っています。今まで、激励や叱咤などたくさんのご意見をいただきましたが、そういった方々と、もっともっと『アイドリッシュセブン』というコンテンツを大きくしていけたらいいなと感じています。開発者として『アイドリッシュセブン』のために少しでも貢献したいと思っていますので、これからも宜しくお願いします。

T.S氏:『アイドリッシュセブン』を運営して1年が経ち、ゲームとしてもコンテンツとしてもとても大きなものになったと感じています。そして2年目以降も、さらなる拡大を目指して様々なゲーム内施策を行っていきます。マネージャーの皆様に、生き生きとしたアイドル達、そして楽しくプレイできる譜面をお届けできるようさらに頑張っていきますので、引き続き『アイドリッシュセブン』の応援を宜しくお願いします。


--ありがとうございました。





■『アイドリッシュセブン』
 

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© 2015 BANDAI NAMCO Online Inc.
ギークス株式会社
http://geechs.com/

会社情報

会社名
ギークス株式会社
設立
2007年8月
代表者
代表取締役CEO 曽根原 稔人
決算期
3月
直近業績
売上高159億9700万円、営業利益5億8900万円、経常利益5億6700万円、最終利益2億4400万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7060
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