【インタビュー】岡本吉起氏ら著名クリエイターによるゲーム業界セミナートークイベント”Gm4u”…開催経緯をキーマンに訊く


コンフィデンスと総合学園ヒューマンアカデミーは、6月16日金曜日 pm6時30分よりヒューマンアカデミー秋葉原校にてセミナートークイベント「”Gm4u” Game for you」(以下、「Gm4u」)を開催することを発表した。本イベントは毎月1回、全10回にて、著名なゲームクリエイターが登壇し、各回のテーマに沿って講演、来場者とのトークを行う催しになっている。
 
また今回、総合学園ヒューマンアカデミー秋葉原校での講演になるが、その模様は全国の総合学園ヒューマンアカデミー校舎にてライブ中継され、生徒のみならず講義に参加できるという。
 
本稿では、「Gm4u」の仕掛け人でもあり、イベントパーソナリティも務めるゲームプロデューサーの波多紘幸氏(コンフィデンス所属)とヒューマンアカデミー株式会社 藤川真実 氏にインタビューを実施。開催経緯や意気込みについて伺ってきた。
 

Gm4U概要ページ

 

◼︎「ヒットゲームを出して世の中の人に喜んでもらう」…その想いを伝えたい

 
ゲームプロデューサー
波多紘幸 氏(写真右)
(株式会社コンフィデンス ゲームソリューション事業部部長、株式会社イニスJ プロデューサー、株式会社GMJ チーフプロデューサーを兼務)
 
ヒューマンアカデミー株式会社
全日制教育事業部
商品開発室
藤川真実 氏(写真左)
 
—本日はよろしくお願いします。改めて、「Gm4u」の概要をお聞かせ頂けますか。
 
波多 紘幸 氏(以下、波多):「Gm4u」というタイトルの通り、「すべてのゲームファンに」というのをコンセプトにしたセミナーになっています。具体的な技術論ではなくて、面白いゲームを作った人の想いをすべてのゲームファンに伝えるという考えです。ですので、「人」にフォーカスした催しになり、全10回にて著名なクリエイター達に毎月講演いただくセミナーになります。
 
話すテーマは設けていますが、講演者にはテーマからそれた内容も話していただいても良いかなと考えています。元々、テーマの内容を聞きたいと参加された人も、話を聞きながらコミュニケーションをとっていくうちに、クリエーターの方々の魅力に引き込まれていくと思います。人を通じて、何かを感じとってもらいたいと思います。
 
これは他の業界でも見られることで、プロ野球でも、イチロー選手のようなシンボル的な存在がいて、バッティングなどの技術以外にも、その言動や生き様、趣味やファッションなどについて見習いたい部分や真似したいという人は多いですよね。エンターテインメントに関わる人たちにとってもそれは同じだと思います。先人たちがやってきたことや何を思ったかを知って、自分のクリエイティブに反映させるのは大事だと思っており、そういった場にしていきたいです。

 
 
—開催経緯についてもお聞かせいただけますか。
 
波多:私は今までずっとゲームのプロデュースを行っており、ナムコ、カプコンそしてコンセプトにおりました。ヒューマンさんとは以前のコンセプトの頃よりお付き合いがあり、その過程の中で「面白いことがやりたいね」と話していました。今回、私の方からご提案をさせていただき、一緒にパーソナリティを努めさせていただきながらクリエイターにお話頂くという「Gm4u」を開催させていただくことにしました。
 
藤川 真実 氏(以下、藤川):当校としましても、これまで多くのゲーム企業様よりご講演頂く機会はあったのですが、「Gm4u」のような、クリエイターの輪をメインとした枠組みの実施はありませんでした。業界としても広がりがある取り組みは、当校も学生が巣立っていく形で活性化させたいという想いもあり今回実施する運びとなります。

 
 
—きっかけは波多さんからなのですね。
 
波多:きっかけとしては、若いゲームクリエイターや学生さんと話をする際によく聞く「ゲームを作りたい」という想いなんです。「ゲームを作りたい」というのは、ベテランの方も同じ考えで、当たり前の事だと思うのですが、本質としてはもっと深いと思います。本当は「ヒットゲームを世に出したい」なんですよ。ただゲームを作りたいのであれば、ゲーム会社でなくても良いですからね。
 
 
 
—今は個人でも作れる時代になりましたからね。
 
波多:「ゲーム業界に入ってヒットゲームを出す」というアウトプットイメージがないといけない、と考えたときに、そう強く思う動機や動きを出すためにどうすればいいのかというと、シンプルにヒットゲームを作った人の想いや考えを共有できれば良いのかなと思ったのがきっかけです。
 

 
—ヒット作を手掛けた人の想いや考えを聞ける場というのは中々ありません。
 
波多:ゲームエンジンの使い方や、イラストの描き方など、ヒューマンアカデミーさん含めて様々な所で教えられていると思います。ただ、そういったものだけに特化してしまうと、「ゲームが作れたら良い」という考えだけになりがちな人がも多くなるような気がします。でも、本当はそうではないなと思います。キモはそこではない。
 
私もゲームを作っている側として最近考えているのが、「ヒットゲームを出して世の中の人に喜んでもらう」がゴールでないといけなくて「ゲームを作る」だけではダメだと思います。ただ、そういったゴールを見据えた講座やプログラムがほとんどないのが現状です。

 
 
—学習の機会自体も限られていますし、方法論としても確立されづらいですからね。
 
波多:もちろん、体系化ができない分野かもしれません。例えばKPIを分析して、継続率を上げたり、離脱率を抑えるノウハウ等はある程度体系化され、活用されているかもしれませんが、「ヒットゲームを出すには」というノウハウは中々体系化できないと思います。

もう少し深堀りすると、有名IPを使うとか、人気の声優さんを使うとか、ゲームエンジンを流用するとか、そういう外的な合理的ノウハウではなく、純粋にゲームシステムとして面白いものを創造する、ということに関しての体系化です。ただ、ヒットゲームを出した人の言葉から何か、そこに導かれるモノ・コトを感じる事はできると思うんですよね。今回はそこをテーマにしたいと考えました。

 
 
—マインドセットや心構えとも言えますね。
 
波多:開発を進めていると近視眼的になってしまうことがあります。例えば、α版の納期が迫っているから無理やり仕上げないといけない、みたいな。その流れが習慣化するとゲーム作りが創造への挑戦ではなく、義務になってしまって、大型IPや著名なイラストレーター、シナリオライターさんが用意したものや言われたものだけを、予算内でゲーム化するだけになってしまいます。
 
このゲームを世に出して、どう評価されたい、影響を与えたいという考えがなくなってしまいます。ヒットゲームを出したクリエイターはそういった考えを持っていたと思うんですよね。今後ご登壇頂くクリエイターさんにはその点を語っていただこうと思います。

 
 
—ヒューマンアカデミーさんからみた、ご提案時の印象はいかがでしたか。
 
藤川:純粋に楽しそうで、面白い機会を頂けたと思いました。これまでは各社様個別でご講演いただく機会が多かったのですが業界の輪をつなげるというのは在校生はもちろんのこと、中学や高校生の将来、ゲーム業界で仕事をしたいと熱い想いをお持ちの方に対してもよい取り組みだと感じました。

また、昨年度より「制作力を上げる」という取組を実施しておりますので、そういった面でも学生に対し、かなり刺激になるのかと思います。
 
こういった機会をいただけること自体が有り難いことですし、当校を通して、業界を色んな方に知っていただける良い機会なので、今後も行っていきたいと考えています。
 

 
 

◼︎初回の講演者は岡本吉起氏。熱い想いを伝えたい。

 
—「ヒットゲームを世に出す」という考えが大事だと感じた背景は何だったとお考えでしょうか。
 
波多:私個人として振り返ると、カプコンで過ごしてきた経験が大きいですね。始めはナムコに10年お世話になり、そのあとカプコンに10年いましたが、濃密な期間でした。
 
当時は岡本吉起さんを筆頭に名だたるゲーム開発者の方々がいて、その方達の会議模様がすごかったです。熱い想いを日々ぶつけ合っていました。そういった方たちに影響を受けた人たちが、今のゲーム業界にいて、スマートフォンゲームなど様々な分野でご活躍しています。
 
そして、今でもカプコンOBや現役のカプコンスタッフに会うと、「当時の想いはまだ持っているよね」と、お互いカプコンでの経験が原動力になっているDNAを確認するんですよ。そういった経緯もあって第一回は、私の尊敬する岡本吉起さんにお願いしました。

 
 
—岡本吉起さんにご依頼した際のリアクションはいかがでしたか。
 
波多:「ゲームに対する想いを語ってください」とご依頼すると、「1~2時間では話足りないな!! 」とご快諾いただきました(笑)。最大限の時間を設けさせていただくようにしますが、思いの丈を伝えて頂けると思います。
 
 
—ライブ中継というのも珍しい取り組みですね。
 
藤川:そうですね。ライブ中継での実施は初めての試みになります。ヒューマンアカデミーでは全国校舎で本年度からライブ授業を開始しています。。そのシステムを使用し、全国の皆さんと「輪」を持って繋がりを持てればと思います。地方への講演に著名な方にご登壇頂くのもスケジュールの都合上難しいことがございますので、全国実施できるのは良い機会です。
 

また、モニター越しにインタラクティブに対面できるのは、学生にも大変響く試みだと思います。全国の総合学園ヒューマンアカデミーの校舎を通じて行えるのは、他にはない取り組みで、反響も予想がつかないですが、すごく期待しています。
 
 
—インタラクティブ要素のあるプログラムもあるのでしょうか。
 
藤川:講演だけでなく、地方に住んでいる16歳の高校生が岡本吉起さんとコミュニケーションがとれる、そんなインタラクティブな講義ができればと思っています。例えば、岡本吉起さんが「名古屋校のみなさんはどう思いますか」と聞くと、パネルで答えることができる、といったことを考えています。
 
 
—こちらは社会人やゲーム業界に携わっている方も参加できるのでしょうか。
 
藤川:メインは学生の皆さんですが、総合学園ヒューマンアカデミーのWebサイトよりお申し込みを頂けますと、どなたでもお越しいただけます。ただ、講演場所の秋葉原校は席数も限られておりますので、先着順や抽選にさせていただくことになります。
 
 
—社会人も参加可能なのはどういったお考えからでしょうか。
 
藤川:「クリエイターの輪を広げる」という視点もあり、5年、10年を考えていきますと、色んな方に接点を持っていきたいと考えています。他業界でご活躍されている社会人の方でもゲーム業界に興味がございましたら是非ご参加いただきたいです。実際に、30代の方でもゲームの勉強をしたいと熱い想い持ち、日々励んでいる生徒もおりますので、あえて年齢制限を設けず、社会人の方でも広く参加していただきたいと思います。
 
波多:普通の学校を卒表した後に、再度ゲームの勉強をし直す方も最近は多いですね。今回はゲーム業界への人材派遣や就労サポートも行っているコンフィデンスも協力していますので、このGm4uを機会にゲーム業界に入りたいという方はゲーム業界向けにヒューマンリレーションサポートもさせていただいております。

 
 
—ゲーム企業からの反響はいかがでしょうか。
 
波多:ありがたいお話として、各社様から「うちのプロデューサーも講演ゲストとしていかがでしょうか」と協力的な声を頂くことが多いです。「ゲーム会社として」ではなく、「クリエイターとして」誰が何をどういう思いで取り組んでいるかという部分は、各社、垣根を越えて見せていきたい想いはあるのだと思います。
 
 
—企業さんにとっても良い機会だったのかもしれませんね。
 
波多:エンターテインメントという大きな枠で見ると、ゲーム業界はやや特殊かなと思っていまして、映画業界だと「映画配給会社の◯◯」と言われることはなく、個人の名前で呼ばれていますが、ゲーム業界は企業名ありきで言われることがほとんどですよね。クリエイターとして自立し、そういう姿勢にスポットライトが当たっても良いと思います。純粋に、ゲームを作った人、創造した人に光がさすようにしたいですね。
 
 
—最後にメッセージを一言頂けますか。
 
波多:私はゲーム業界に25年いるのですが、苦しかった時や詰まった時に、影響を受けた人や先輩の言葉や生き様に励まされたことが多くありました。
 
ゲーム業界に入る前や入った当初にそういった言葉が聞けるのがすごく重要かなと思っていて、「学生の頃にこのセミナーに参加して、その時の言葉がきっかけで今があるんだ!」というクリエイターが現れる、そういった取り組みになればと思います。
 
もちろん綺麗事だけを言うつもりはなく、社会には努力すべきことがたくさんあると思いますが、ふと立ち戻った際にこのセミナーでの言葉が残ってもらえるようにしたいと思います。
 
 
藤川:専門教育機関として、今回の取り組みやテーマは深いものだと感じております。また、できる限り多くの方に接してもらえる取り組みにしたいと思っています。講演会場は、秋葉原校で、札幌校~那覇校まで全国12校舎でライブ中継します。全力でサポート致しますので、どうぞお早目にお申し込みください。

 
波多:私個人としては、助けて頂いた人への恩返しとしても考えていますね。そして、今度は学生さんにとっても助けになればと思います。セミナーでは二人でパーソナリティも努め、皆さんのサポートを全力でしますので、ご期待ください。
 
—楽しみにしています。本日はありがとうございました。
 

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