【TGS2017】KLab China、スパイスマート、トライエクゼが語る中国ゲーム市場の現状…日本から進出する手法とその可能性は?

 
9月21~24日までの期間、千葉県・幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2017(以下 TGS2017)」。
 
本稿では、21日にKONGZHONG JP(コンゾン・ジャパン)/空中網JPブースにて実施されたカンファレンス「日本から中国市場へのチャレンジと挑戦方法(日本産ゲームタイトル中国進出の現状を語る)」のレポートをお届けしていく。
 

▲Social Game Info編集長代理の達川能孝氏が本講演のモデレーターを務めた。
 
 
▲KLab China CEOの櫻田洋行氏。KLabの中国拠点であるKLab Chinaでは、中国以外の海外も含めたグローバルにモバイルゲーム運営やマーケティングを行っている。
 
 
▲スパイスマート 代表取締役 CEOの張青淳氏。同社では、日本・中国・韓国・香港・台湾における人気タイトルの施策をまとめたレポートなどを提供している。
 
 
▲トライエクゼ 代表取締役 兼 プロデューサーの久田幸司氏。主にパブリッシングやランセンシングを行っている企業である。
 
本カンファレンスでは、中国モバイルゲーム市場について3つのテーマでトークを展開。
 
●テーマ1

最初のテーマである「2016年→2017年 中国モバイルゲーム市場の特徴と変化」では、まず櫻田氏が「トップタイトルがMMORPGから二次元ゲームに変わってきた」と発表。『Fate/Grand Order』や『崩壊3rd』といったタイトルが伸びてきているという。櫻田氏は、10代~20代の二次元を好むユーザーがゲームをプレイするようになってきたことが理由として挙げられると話した。
 

 
この意見に久田氏も「ランキングは随時、拝見しているのですが顔ぶれはほとんど入れ替わりましたね」と賛同。「課金周りでVIP機能が連動されるタイトルは作り方や運営の仕方といったところのクオリティが上がっている印象があります」と続けた。
 
また、中国ではパブリッシングがテンセントやネットイースといった超大手企業に集中しており、ランキング上位30タイトル中5~10タイトルほどを占めることもあるという。人気タイトルのピーク時には1日で6~7億円を売り上げたこともあると張氏は述べた。市場の大半を大企業に占められている中国で成功を収めるには、先ほど挙げた二次元ゲームのように、特定のジャンルに強いパブリッシャーになっていくことがキーになるという話だ。
 

 
そのほか、OS別に見ると、中国にはGoogleが存在しないため、Androidプラットフォームが乱立しているとのこと。2017年にはそういった情勢も少し落ち着いてきており、下記の「Mobile Hardcore Alliance」「Taptap」「Bilibili」といったところに集中してきているとまとめた。
 


 
●テーマ2

 
では、実際に日本のタイトルが中国に進出する際には、どういった点がハードになってくるのか? 各スピーカーより現地の事情が語られた。
 
まず張氏がポイントとして挙げたのは、中国ではYouTube、Facebook、Twitter、Line、Instagram、Kakao Talk、 Tumblr、Snapchat、Flicker、Dropboxなど、海外発サービスがほとんど使用できないという点だ。代わりに中国発サービスが浸透しているため、日本で行われているプロモーション手法は通用しないと念を押した。
 
また、中国においてモバイルゲームを配信するには、”会社単位”と”ゲーム単位”のライセンスが両⽅とも必要になるとのこと。中国製のタイトルであれば申請も比較的通りやすいが、外国製のものだと取得するのに最低半年以上、長いと1年待たされることもあると張氏は語った。
 
【必要なライセンス】
〇会社単位
網絡⽂文化経営許可証
増値電信業務経営許可証
〇ゲーム単位
游戏著作权备案(通称:版号)
 
さらに資本金100万円以上の企業でなければ資格がないなど審査も厳しく、版号に関する膨大な資料を読み込まなければならない。そこをクリアしてApkを中国政府に提出できても、「死亡」「髑髏」「殺す」といった過激な表現が含まれているものや、アダルト向けの要素が入っているものはNGを出されてしまうとの話だった。表現のラインについては明確な定義がなく、担当者ベースで左右される点が最も難しいところだと張氏は説明した。これらの理由に「地方ごとの特色の理解が必要になる」といった点も加わって日本企業の単独進出は難しいため、中国企業をパートナーシップとして進出する手法などがベターとなっている。
 
ここからは「Bilibili」の例をもとに中国のユーザープラットフォームについても言及。
 

▲「Bilibili」は、日本で例えるなら「niconico」のようなSNSサービスとのこと。「二次元」の解釈も日本と異なり、若くて個性があるリッチな層を指す意味で使われているという。
 

▲「Bilibili」で開催されているキャラコンテストで、1位を獲得したキャラは必ずヒットすると言われている。
 

▲アニメ歌謡祭も大盛況で、直近では日本から大黒摩季さんやGARNiDELiAが出演した。櫻田氏は「日本の歌手が出てきて日本語のまま歌っているところに、お客さんが日本語でハモっているのを聴いてコアなファンが集まっていると感じました」とコメントした。
 

▲Bilibili主催で、二次元ユーザー遊園地と銘打ったゲームショウのような空間も提供されている。ここでは、声優サイン会やコスプレ、Bilibiliから誕生したアイドルのステージイベントなどが行われているという。
 
なお、櫻田氏は中国には二次元ファンが約3億人いると言われており、その中でもコアファン(課金層)が3000万人で日本のモバイルゲームユーザーとほぼ同じ数にまで達していると説明を加えた。そのため、コアユーザーのみにターゲットを絞ってビジネスを成立させることも可能だと張氏は語る。現にBilibiliがパブリッシングを手掛ける『Fate/Grand Order』や『夢王国と眠れる100人の王子様』がユーザーの注目を集めているとの話だった。
 


▲世界中にあるゲームをユーザーがレビューしている「Taptap」や、携帯端末アライアンス「硬核連盟MHA」も注目されている。Taptapで9以上のスコアを獲得したタイトルは中国で配信した際に良い結果を得られる傾向があると張氏は話した。
 
また、「硬核連盟MHA」はライトユーザーや女性が手にすることが多いためカジュアルゲームと相性が良いとの話も。中国ではAndroidのシェア率が80~90%、iOSが10~20%と言われている。その中でも、ゲームの売り上げはAndroidが平均60~70%、iOSで30~40%とされているため、プラットフォーム選択は非常に重要な戦略のひとつになるとのことだ。
 

●テーマ3

 
最後のテーマとなったのは、日本企業が中国のモバイルゲーム市場に進出するチャンスについて。
 

▲久田氏は昨今の日中共同制作アニメの視点から切り込んだ。新たなIPとして確立させるため、日本と中国の同時展開やLIVE配信など、様々な試みが行われている。
 

▲ボイスやイラストへのこだわりも語られた。中国のユーザーは原作を大切にしているため、あえてローカライズせずそのままの内容で配信してほしいという意見が多いようだ。「pixiv(ピクシブ)」は中国でも有名とのこと。
 
続いて、ランキングベースで日本と中国の市場を比較。中国ではノンIPタイトルが日本より僅かに多い傾向があるものの、ジャンルについては日本とほぼ変わらず近しいところがあるということが判明した。ゲーム内容についてはビジュアルが最大の注目ポイントで、3Dタイトルが非常に多く「早く、ヌルヌル動くこと」が絶対条件となっているため、世界観に合ったテイストを選んで製品として仕上げていくことが重要だと久田氏は語った。
 

 
最後に久田氏は、2014年~2015年ごろは日本のIPを中国の大手企業が買い取り、スピード感を持って展開していくビジネスモデルが主となっていたが、今後は短期で利益を上げるような考えは難しくなってくると述べる。中国でもIPが生み出される環境が出来上がってきたため、「企画コンセプト」や「世界観」「イラスト」というように強みを活かしながら長い期間をかけて共に展開していくことが重要になってくると話をまとめた。
 


 
 
(取材・文 編集部:山岡広樹)
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る
株式会社スパイスマート
http://corp.spicemart.jp/

会社情報

会社名
株式会社スパイスマート
設立
2015年7月
代表者
代表取締役 久保 真澄
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