【イベント】トップクリエイターが語る「FFらしさ」「王道RPG」とは…スクエニ採用説明会で行われた「FINAL FANTASY制作裏話」をレポート


12月2日、マイナビクリエイター主催による採用説明会がスクウェア・エニックス本社内にて行われた。同社のクリエイターによるトークセッションや座談会など、スクウェア・エニックスのモノづくりがかい間見えるコンテンツも実施された。

本稿では、第8ビジネス・ディビジョン(以下、第8BD)のディビジョン・エグゼクティブであり、『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のプロデューサーでもある広野啓氏をはじめ、『FINAL FANTASY』シリーズのドットグラフィックで有名なグラフィックデザイナーの渋谷員子氏、『FINAL FANTASY』、『半熟英雄』シリーズ、『クロノトリガー』などのディレクション、プロデュースを担当してきた時田貴司氏、また、『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』の宣伝プロモーションを担う野間崇弘氏が登壇したトークセッションの模様を取材。

「FINAL FANTASYと仕事をすることとは?」「スクウェア・エニックスらしさとは?」といったスクウェア・エニックス制作裏話をお届けする。
 

■「その時代での最高のクオリティを提供すること」…各クリエイターが語るFFらしさとは



 
トークセッションでは、「ファイナルファンタジーらしさとは何か?」というテーマが挙げられた。『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のプロデューサーを務める広野氏は、ファイナルファンタジーらしさについて、これまでの制作者の意思や意図、そしてユーザーの期待を汲み取るように心がけているという。

FINAL FANTASYシリーズに限らず、数々の人気シリーズを持つ同社。サガシリーズ等の人気シリーズにおいても、過去の作品を手がけたスタッフとコミュニケーションをとった上で広げていくように意識しているのだと話す。どのシリーズにおいても、原点のリスペクトは大前提となっており、今は社外で活躍している当時のスタッフにもヒアリングに行くそうだ。

『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』の企画が挙がった際は、当時転職してきた広野氏がいきなりFINAL FANTASYシリーズを作るということにプレッシャーが大きかったと振り返る。ただ、自身も作品を愛していることから、「 FINAL FANTASYらしさ」をとことん考え抜いたそうだ。どのシリーズにおいても、それぞれが持っている個性があり、良さがある。その中でも、原点となるエッセンスは取り入れるべきということで、渋谷氏にも協力を仰ぎ、シリーズ生みの親である坂口氏にも作品を見せに行ったという。『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』は坂口氏からのダメ出しを受けながら作り上げた作品だと振り返った。『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』の映像にて坂口氏が出演した経緯には広野氏の原点リスペクトがあったようだ。
 
 

新卒入社として当時のスクウェアに入社し、FINAL FANTASYと共にゲーム業界を過ごしてきた渋谷氏はFINAL FANTASYらしさを「その時代において最高のクオリティを提供すること」と話す。

キャラクターデザインはもちろんのこと、デバイスや表現が変わっても、時代の頂点を求めるべきであり、ドット絵としても最高のクオリティを出すべきだと話した。その考えから、『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』の制作においては制作パートナーの元に自ら出向き、直接指導することも多いそうだ。

そんな渋谷氏が過去に手がけた作品『キングスナイト』のTVCMを見て、スクウェアへの入社を決めた時田氏は細部のこだわりについて語った。
 

ゲームでは、エフェクトこそが時代を反映していると話す時田氏。キャラクターデザインなどはあえてクラシカルに仕上げることもあるが、エフェクトはその時代によって、扱うデバイスや表現方法が常に変わっており、2Dでの表現が良い時もあれば、3Dの表現を求められることもある。その飽くなき追求の為に『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』においては、コンソール部門のエフェクターにも協力して制作することもあるとか。各作品それぞれにこだわって表現しているので、そういった観点でこれまでの作品に触れてみるのも面白いのではと話した。
 

■様々なチャレンジをする場所と機会があるスクウェア・エニックス



 
それぞれのFINAL FANTASYシリーズに対する考えが語られた中、作品を手がけるゲーム企業、「スクウェア・エニックスらしさとは何か?」というテーマも触れられた。ここでは同社の強みとして、様々なチャレンジをする場所と機会があるという特徴が挙がった。

同社では他部門の動きもわかりやすく、「なぜこう動いたのか」「何を意図したのか」など話を聞きに行くことも多いそうだ。特にスマートフォンゲームでは運営やデータによるPDCAが重要になると広野氏は話す。

チャレンジする機会として、時田氏は最近リリースされたスマホ向けタイトル『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!! 』の取り組みを例に挙げた。様々なプラットフォームに展開しているからこそ「買い切り型+F2P型」といった複合的なゲームも作ることができると話す。

また、各部門の動きをみることで、何がユーザーに支持されているか、何がやれていないかが多角的に見えてくる。「このジャンルがやれてないからやってみよう」といったように様々なチャレンジをする場があると言うのだ。その結果、FINAL FANTASYやドラゴンクエストといった王道RPGもあれば、半熟英雄のようにコメディタッチな作品も生まれてくるそうだ。

多角的にみれるからこそ、チャレンジできる場があり、それがスクウェア・エニックスの強みだという。各クリエイターたちが仲間の動きを見ながら、競争・切磋していく様は、まさに巨大なトキワ荘のようだと表現した。

渋谷氏からは女性社員目線としてのスクウェア・エニックスについて語られた。特に第8BDは女性社員が多く、女子会を行うこともあるとか。女性社員の中ではお子さんを持つ方も多いので、働き方の情報交換も盛んとのこと。

社内では労働環境の是正や健康を考える取組みも進めており、その一環でヨガ教室を行うことがあるという。他にも、社内イベントではウォーキングやBBQイベントもあり、執務エリアにトレーナーが出向き、体操を行う「ストレッチ巡回」などが用意されている。

スタッフ同士の連携というと、部門を超えたアートチーム間での技術交換会などの勉強会も盛んだという。様々な分野でトップレベルの知識を持つ社員がおり、比較的話がしやすい環境だという。プロデューサーに限らず、部門間の交流があり、プロジェクトによってはコラボ制作も行っているようだ。

第8BDのミッションとしては、面白いコンテンツを制作し、新しい楽しみを提供することだと広野氏は話す。なので、ジャンルやメディア、プラットフォームを問わずに、チャレンジするようにしているのとのこと。チャレンジの中にはいくつかの軸を持っており、同社の財産であるIPを守ること、自身のオリジナル作品をつくること、世界規模で展開していくこと、そして、新規事業と言える新しいコンテンツを作り出すという軸を持っていると語った。

8BDでは、どのポジションの人でも提案ができるのが印象的と野間氏は話す。プロモーションの立場として運営企画へのアイデアも出すことも多いそうだ。
 

特に第8BDは部門の中でもプロジェクトが多い分、いろんな可能性があると時田氏は話す。そして、スマートフォンゲームが出てきたことによって生のお客様の反響が感じられるのは大きい。やりたいことの空気を伝えるのもこの時代では大きくなっていると時田氏は話す。

それゆえに、ゲーム以外のエンターテインメントも取り入れることはすごく大事だという。どの職種でも、エンタメに関わることは大事であり、スクウェア・エニックスでは最高の物語を届けるというミッションがあるので、必須条件となっていると話した。

■「王道RPG」とはユーザーの期待に応えること



 
トークイベントの最後には参加者から「昨今、王道や本格的を謳うRPGが多い中、それぞれが考える王道とは何か?」という質問が挙がった。FINAL FANTASYやドラゴンクエストという著名なRPGを手がける同社だからこそ投げかけられた質問について、トップクリエイターたちはそれぞれに考えを示した。

広野氏は主人公の物語がきちんと描かれることと挙げた、また、エンターテインメントになるので、ポジティブな形で終えることも王道としては重要だと話した。

時田氏は期待に応えることと話す。クリエイターは期待を裏切るといった奇をてらうのを好みがちだが、まず期待に応えることが大前提だという。ユーザーの期待に応えた上で、裏切ることが大事だと話した。

渋谷氏は特に意識はしていないとコメントし、王道などは考えておらず、目の前のことに全力を尽くすだけと話した。その結果として、王道と言われることは何よりも光栄だと話した。
 

野間氏は、マーケティングに携わる身として、「王道」「本格的」に代わる言葉は常に探している一方で、クリエイターの意図やユーザーの反応を見てあえて使うこともあるという。ただ、とってつけたような形で「王道」は使うべきでないと話す。

トークイベント終了後は、各職種に分かれた座談会が実施された。トークイベントに登壇したトップクリエイターはもちろんのこと、現場スタッフも交わる形となり、社内環境や制作姿勢について参加者とディスカッションも行わられた。チームの人員構成から、100名以上の開発チームでディレクションする場合に実感したことなど、ゲームクリエイターとしてのアドバイスを聞く参加者も多く見られた。
 
 
マイナビクリエイターについて
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マイナビクリエイター:https://mynavi-creator.jp/
株式会社スクウェア・エニックス
https://www.jp.square-enix.com/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
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